活動レポート

DXで味の素社はどう変わる? 〜社会変革をリードする食品メーカーを目指して〜
<味の素社のDX徹底解説 第2弾>

DXとはいったい何なのか、前記事「社会に変革をもたらす、DXってなに? 〜IT化との違いと味の素社での取り組み <味の素社のDX徹底解説 第1弾>にて、ご紹介いたしました。

世の中のデジタル化がさらに加速することによって、私たちの嗜好や行動は今後ますます変化をするでしょう。この変化や人々のニーズをいち早くキャッチするためにも、いま企業は、DXを企業の存続をかけて取り組むべき課題としています。

食品メーカーである味の素社でも、じつはDXに積極的に取り組んでいます。それはなぜか、どんな取り組みなのかを1つずつ紹介していきましょう。

なぜ味の素社はDXに取り組むのか

DX(デジタルトランスフォーメーション※1)とは、お客様に提供できる価値を最大化させるため、デジタルの技術とデータを使い仕事のやり方を含めて会社全体を生まれ変わらせる取り組みです。
この流れは、2020年の新型コロナウイルス禍で大きく加速しました。「テレワーク」の広がりとともに、企業はオンライン上での決済・承認システムの採用など、業務全体を根本的に見直すDXへの取り組みが急務となりました。

さて、味の素社はこれまで、大きく分けて「食品事業本部」および「アミノサイエンス事業本部」の2つの大きな事業の成長と拡大によって「世界トップ10クラスのグローバル食品企業」を目指してきました。

しかし世の中は、世界規模で加速するデジタル化による人々の意識や行動の変化、これによる流通の変化、環境や健康への意識の高まり、さらには新型コロナウイルスの感染拡大状況までもが重なり、大きな変革の時代を迎えたのです。

味の素社は、このような社会全体の変化をポジティブにサポートし、「食と健康の課題解決企業」を目指すために、まずは、味の素社、味の素グループ全体が生まれ変わる必要があると考えました。

具体的な取り組み方を解説

では、味の素社では、DXにどう取り組んでいるのでしょうか。
もともと味の素社は、社会課題を解決し、社会と価値を共創するASV(Ajinomoto Group Shared Value)を掲げ、2030年までに「食と健康の課題解決企業」として、社会変革をリードする存在になることを目指しています。

DXも、このASVの実現を目指すうえで重要な位置を占めており、具体的に味の素社では、4つのステージを設け、ステージ1・2・3をそれぞれ強力に推進することで、2030年に社会変革を実現するゴールを目指しています。

味の素社は、これら大きなデジタル変革について、2018年度から準備し、2019年、CDO(Chief Digital Officer)に福士博司・代表執行役副社長が就任し、2020年にCXO(Chief Transformation Officer) とCIO(Chief Innovation Officer)という新ポストを創設してDXの推進力を強化、現在は香田隆之・執行役常務がCXOに、白神浩・専務執行役員がCIOに就任しています。DXを全社最重要任務として捉え、自社変革に取り組んでいます。

「食と健康」は、重大な社会的課題の一つであり、味の素グループのみならず、他企業団体、行政などの重要関心事項でもあります。

味の素グループはASV(Ajinomoto Group Shared Value)を掲げ、社会的課題の解決と事業(経済)成長の両立を戦略としてきました。そして、この考え方を「食と健康の課題解決企業」というパーパス(志)のもと、しっかりと外向けに発信しました。

これにより、味の素社は他企業団体・行政・大学などのアカデミア、そして医療機関・栄養士などとの連携を一気に進め、すでに連携効果(コレクティブ・インパクト Collective Impact※2)を発揮できるようになってきています。

味の素社がDXで思い描く未来とは?

では、ここからは味の素社が具体的にどのような未来を思い描き、DXの取り組みを進めていくかを見てみましょう。味の素社のDXには、4つの大きな柱があります。

①生活者ひとりひとりのニーズに合った商品・サービスの提供(パーソナライズドマーケティング※3)

②ロボットやAI(人工知能)を活用した「スマートファクトリー(※4)」の導入

③経営やサプライチェーン(※5)のエコシステム(※6)化

④さまざまなプレイヤーが社会課題の解決に向けて協働するための仕組みづくり(コレクティブインパクトを実現する新事業変革)

順番に見ていきましょう。

①パーソナライズドマーケティング

パーソナライズドマーケティングとは、顧客一人一人に合わせたマーケティングのことです。これまでのマスに向けた商品開発・提供ではなく、生活者の属性や行動履歴に基づき、その人に合った製品やサービスを提供していくことです。

インターネット上には、Webサイトやブログ、SNS上で発信される多くの情報があります。マーケティング調査では、これらの中から話題性の高い情報と生活者の購買履歴などの情報を組み合わせて分析することで、生活者の意識や行動を多面的にとらえることができます。

たとえば広告の担当者は、まず家族について書かれたSNSの投稿から、「親が食を通じて子どもたちに伝えたい本音」を分析します。彼らは大量のSNSの投稿からこの結果を分析することで、生活者の潜在的な欲求に響く広告を企画することが可能になります。

このような、パーソナライズドマーケティングと、インタビューやアンケート調査など従来のマーケティング手法を組み合わせれば、生活者のニーズをより的確にとらえることができます。

多様性の時代、生活者が味の素社の商品やサービスに何を期待しているか、何を求めているかはまさに千差万別。しかし、一方でデジタル化が進んだ時代だからこそ、その手掛かりとなるデータも多種多様です。

②スマートファクトリー

スマートファクトリーとは、AIなどデジタル技術を活用した生産性が高く効率的な工場のことです。

工場では、ロボット・AIの積極的な導入はもちろん、調達・製造から消費者に届くまでのすべての工程において無駄をなくし、地球全体の資源や在庫の無駄をなくします。これは、手段や条件をクリアにすることで製品を効率的に生活者に届けることを目的としています。

味の素グループの製品を生み出す工場の建設・改修を行う味の素エンジニアリング株式会社での取り組み「PLANTAXIS®」をご紹介しましょう。

PLANTAXIS®では、工場の敷地全体をレーザースキャンしてデータ化し、設置された機械類のデータには点検履歴や取扱説明書を紐づけます。管理者は、新規機器導入やレイアウト変更を考える際も、PLANTAXIS®で表示した3Dデータ上で検討できるシステムです。

サプライチェーンのエコシステム化もその1つです。

③サプライチェーンのエコシステム

サプライチェーンとは、製品の製造から販売までの一連の流れのこと。
これは、味の素グループの経営やサプライチェーンをスマートネットワーク化することで、より効率的なエコシステム(相互に影響しながら、有機的につながること)を形成することを指します。デジタルテクノロジーやIT技術の進歩で、社内の各組織の機能が向上しています。

ここでいうエコシステムは、それに加えて社外の協力企業までも含めた大きなネットワークを形成し、社員それぞれがさまざまな働き方と責任を持ってそこに参加するものです。

コーポレートサービス(※7)のJV化(※8)やアウトソース化(※9)なども含め、グループとしてのかたち全体を大きく変えていくことになるでしょう。

④コレクティブインパクトを実現する新事業変革

これまでの①〜③を踏まえて新しい事業モデル変革を目指します。

コレクティブインパクト(Collective Impact)とは、共通の目的のためにそれぞれが社会課題の解決に取り組むことを指します。味の素グループ内だけに留まらず、幅広い外部パートナーと協創・協業を行いながら、新しい事業を生み出すためのエコシステムを構築します。

この新しい事業を生みだすエコシステムを、CDOを務める福士副社長やDX推進委員会がバックアップしていきます。

「食と健康の課題解決企業」として社会変革をリードする存在に

ここまで、味の素社と味の素グループが取り組むDXを見てきました。

「食と健康の課題解決企業」になる、という目標を、デジタル技術の力と会社の業務や組織の抜本的な見直しの両輪で進めるDXで実現する、という壮大な構想です。

ビジネスマン自らが「働き方改革」に取り組むように、企業はDXで事業自体の改革に取り組む時代。味の素グループはさらなる新しいアイデアや取り組みに挑んでいきます。

味の素ストーリーでは、味の素グループが変革していく様子や成果、事例をご紹介していきます。味の素グループが拓く新しい未来に、今後ともご注目ください。

※1:DX
DX(ディー・エックス)とは、デジタルトランスフォーメーションの略です。IT技術やデジタルデータを活用することで、企業活動をよりスマートに、効率的に改革していくことを指します。

※2:コレクティブインパクト
Collective Impactとは、立場の異なる組織(行政、企業、NPO、財団、有志団体など)が、組織の壁を越え互いの強みを出し合い社会的課題の解決を目指すアプローチ。

※3:パーソナライズドマーケティング
パーソナライズドマーケティングとは、一人一人の顧客に合った商品やサービスの提供を行うマーケティング手法です。

※4:スマートファクトリー
スマートファクトリーとは、AIやIoTなどのデジタル技術を活用した、生産性が高く効率的な工場のことです。

※5:サプライチェーン
サプライチェーンとは、製品の製造から販売までの一連の流れのことです。メーカーが製品をつくる際に、必要な材料や部品などの調達から製造、在庫管理、配送、小売店での販売、そして生活者の手に渡るまでのことをいいます。

※6:エコシステム
エコシステムは、本来「生態系」という意味の言葉です。すべての生き物は、お互いを利用し合う「食物連鎖」の輪でつながっています。それと同様に、ビジネスにおいても、味の素社のようなメーカー、原材料を供給する一次生産者、流通を担当する商社や運輸会社、そして実際に商品を利用する生活者まで、それぞれが有機的につながった関係にある、ということを意味しています。

※7:コーポレートサービス
コーポレートサービスとは、社員に向けたサービスを提供する部署を指します。総務部のような役割を担います。

※8:JV化
JV化は、joint venture=合弁企業のことです。複数の企業が出資し、新しい会社を立ち上げ事業を行います。

※9:アウトソース化
アウトソース(outsource)とは、業務を外部に委託することです。

2021年9月の情報をもとに掲載しています。

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社会に変革をもたらす、DXってなに? 〜IT化との違いと味の素社での取り組み

ここ最近、「DX」というキーワードを耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。「DXといえば、デラックスでしょ!」と思ったあなた、残念ですがそれはちょっと違います。

今話題になっているDX(ディー・エックス)とは、「デジタル・トランスフォーメーション」。あらゆる企業が「デジタル化」した現代に適応するために、成し遂げなければいけない改革のことです。

多くの企業が、新しい目標としてDXに取り組んでいます。味の素社は、このDXにどう向き合っているのでしょうか。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?

DXとは、「デジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略です。英語の「トランスフォーメーション」には、「変形」「変身」など、「変わる」という訳語があてられます。その他、電気の「変圧」や「変流」、サナギがチョウになるように昆虫が成長にともなって姿を変える「変態」という意味もあります。
また、英語圏では「trans」を「X」と表記することがあり、Digital TransformationもDXと表記されるようになりました。

デジタル・トランスフォーメーションは、あらゆる企業が「デジタル化」した現代に適応するために、成し遂げなければいけない改革のことです。

DXで求められる変革は、単に「デジタル技術を使うこと」や「これまでのやり方をデジタル化すること」ではなく、「業務の進め方や会社としてのあり方自体を、デジタル技術を使って変革していく」ことを意味しています。従来の「IT化」が、ある業務をデジタル技術で代用することだったのに対して、DXは業務の仕組み、さらにビジネスの仕組みそのものをデジタル技術を使って変革していくという点が異なります。

企業が抱く危機感

では、なぜ今企業にDXが求められているのでしょうか。

わたしたちの生活のなかには、想像以上に「デジタル」なものがたくさんあります。10年ほど前を思い出してみてください。そもそも、まだスマホを持ってない人も多かったはず。それが、今ではスマホは生活に欠かせないものになり、学生の就職活動からペットの見守りまで、ありとあらゆる場面で活躍しています。朝起きてから夜寝るまで、スマホがないと落ち着かない、という人も増えたのではないでしょうか。
最近の流行だと、キャッシュレス決済でしょうか。コンビニやファミレス、街の喫茶店からデパートまで、QRコードを使って手軽に支払いを済ませる人の姿を見かけない日はありません。今挙げたものは、すべて「デジタル」の産物です。

こうして、生活場面での「デジタル化」は、わたしたちが気づかないうちに進んでいるのですが、一方で「デジタル化を積極的に進めなければ!」と危機感を抱いているのが、企業です。

コロナ禍で加速した?企業が取り組むDXとは

企業のデジタル化......つまり、デジタルデータを活用しながら、会社の業務全体を見直し、これまでの慣習的な作業工程や管理体制から脱却して、ビジネスの仕組みを変えることは、これから企業が生き残るうえでの急務となっていると言われています。

2018年に経済産業省がDXに関するレポートを出して以降、多くの企業がDXへの取り組みを始めました。その動きを一気に加速させたのが、2020年の新型コロナウイルス感染症の流行です。

緊急事態宣言の影響で「出社できない」という状況になったため、「リモートワーク」や「テレワーク」、余暇と組み合わせた「ワーケーション」というワークスタイルが広まりました。また、会社側もそれまでの業務システムを大きく変える必要に迫られました。一回目の緊急事態宣言が出た時期、「書類にハンコを押すためだけに出社しなきゃいけないなんて」と嘆く会社員の声を報じるニュースを覚えていらっしゃる方もいるでしょう。

しかし、「Aさんが書類を確認した」ことを確認するために、実際にハンコを押す必要が本当にあるのでしょうか? この問題を、デジタルを使って解決するのも、DXのひとつの手法です。デジタル技術をつかって本人確認と書類確認ができるなら、「ハンコのための出社」は不要になります。また、書類をクラウドやサーバー上にアップして各人が確認・修正を加えるようにすれば、そもそも書類を回覧する必要もなくなります。こうなると、書類を印刷して、担当者が確認して、何人もいる上役のデスクを回ってハンコをもらうという手続き自体が不要になることがわかります。

このように、単に「ハンコを押す」ことをデジタル化するのではなく、「なんのためにハンコを押すのか」を根本から考え直し、その業務自体をデジタル技術を使って変革することがDXです。DXを実現できない企業は、効率とスピードの両面で大きく遅れをとっていくことがわかります。

新型コロナウイルス感染症の流行という緊急事態に対応して、生き残るために企業としてのあり方を変える。DXは、持続可能な企業であるための切実なチャレンジだといえるでしょう。

DXで味の素社が思い描く未来とは

IT系以外の企業では、DXへの取り組みも遅れているのではないか?という印象があるかもしれません。しかし味の素社では、グローバルに展開する企業経営の観点でかなり早い段階からDXに着目しており、味の素グループ全体で積極的にDXの推進に取り組んでいます。

味の素社は、社会課題を解決し、社会と価値を共創するASV(Ajinomoto Group Shared Value)を掲げ、2030年までに「食と健康の課題解決企業」として、社会変革をリードする存在になることを目指しています。

この「食と健康の課題解決企業」への変革を、DXを通じて達成しようとしているのです。

味の素社と味の素グループ、外部のパートナーを中心にDXで結びついたエコシステムは、さらに外郭にあたる地方自治体や研究機関、NGO団体や国連・WHOなどとも広く連携し、コレクティブ・インパクト(さまざまなプレイヤーが社会課題の解決に向けて協働すること)の実現を目指します。

持続可能な社会づくりの実現には、味の素グループだけではなく、広く社会全体を巻き込みながら進んでいく姿勢が重要になるのです。

2021年8月の情報をもとに掲載しています。

活動レポート

DXソリューションが実現した工場のリモート設備管理サービス
~クラウド上に再現された「3D工場」とは

味の素グループと「工場の設備管理」「工場を3D化するDXソリューション」………
味の素グループ=食品メーカーというイメージをお持ちの方には、なかなか結びつかないキーワードかもしれません。しかし、味の素グループが取り扱う商品は、ほとんどが「工場」で作られていますよね。

食品工場の建設や改修を担う味の素エンジニアリング㈱では、工場における人財不足、ノウハウの伝承の難しさ、故障やメンテナンスに対する労力の増加……などの課題を解決すべく、またDX(デジタルトランスフォーメーション)への挑戦として、サブスクリプション型の新しいビジネスモデルとなるサービスを開発。
工場に足を運ばなくてもPCの画面内で機械の設置やラインの改修を検討できる、次世代型のサービスを完成させたのです。

工場の現場でも進むDXへの取り組み

DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉をご存知でしょうか。
あらゆる業界の企業経営において注目されているDXとは、デジタル技術とデータを活用して新しいビジネスや仕事のやり方を追求しよう、という考え方のことです。

現在、多くの工場はロボットやコンピュータを駆使したハイテクプラントに変貌し、工場の日常業務でスタッフが直接機械を操作したり、その場で監視したりするようなことは大幅に減りました。
それでも、工場を安全かつスムーズに稼働させるためには、熟練したエンジニアによる細やかなメンテナンスが必要です。とくに厳しい衛生基準が求められる食品製造プラントではなおさらです。

そのうえ、複雑な管理システムに現場が対応できずこれ以上のデジタル化による効率性の向上が進まないといった工場特有の課題も浮き彫りになってきました。

そこで、味の素グループもさまざまなかたちでDXへの取り組みを進めています。
2020年4月、味の素エンジニアリング㈱がリリースした「PLANTAXIS®」(プランタクシス)は、工場を丸ごとスキャンしてデータ化、クラウド上に再現する「3D工場」サービスです。

工場をまるごと3Dデータ化する「PLANTAXIS®」

3Dデジタル工場管理サービス「PLANTAXIS®」は、まず、工場敷地内の建築物から工場内のタンクやコンプレッサーなどの機械設備まで、すべてをレーザースキャンして、無数の「点」のデータとして取り込みます。
取り込んだデータをパソコンに読み込ませると、3Dで表現された、実物そのままの工場が、画面上に出現します。
そして、パソコンやタブレット上で、その工場のどこに何があり、どんな配管になっているのかを確認することができ、機械類にカーソルを合わせると、名称や説明書、点検履歴などを見ることも可能になるのです。

さらに、測量や、機械類をドラッグしてその装置にまつわる基本情報や予備品情報、工事・点検の計画や結果を知ることもできるので、現地視察が不要になり、生産ラインのレイアウト変更や新しい機械の導入などを、正確な検証データに基づいて画面上でプランすることが可能になるのです。

PLANTAXIS® サービス概要

<導入>
1:工場のすべて(建物・レイアウト・設置された機械類)をレーザースキャン

2:クラウド上に3Dデータとして工場を再現

3:設備データを入力し3Dデータを紐付

<システム>
4:設置された機械の名称や説明書、工事履歴、点検履歴も3D画面から閲覧可能に

5:稼働データや工事・点検履歴をもとに補修時期やレイアウト変更を検討可能
6:改修や補修の計画に必要な現場調査(測量)も3Dデータで実施可能

<サービス>
7:工事等による変更箇所の定期的なスキャンによる3Dデータのアップデート

8:保全エンジニアによるデータ解析で進化し続ける設備管理へ

アジャイル開発のメリットと開発者の想い

「PLANTAXIS®」の開発を担当した、味の素エンジニアリング㈱の小林文宏常務と小林隆之氏にお話をうかがいました。

「2018年の秋に、工場を点のデータにすることをビジネスにできないかというアイディアが小林文宏常務から出たのが始まりです」(小林隆之氏)

小林隆之氏(エリア総括本部 川崎事業所 次世代技術部 デジタルビジネスグループ)

当初はeコマースに活用できないかという検討もありましたが、そこからエンジニアリングプラットフォーム、そして工場設備管理サービスへと、このアイディアを生かすための試行錯誤が続いたといいます。

「最初から、アジャイル型開発の手法を取りました」と小林氏。

アジャイル開発とは、短いサイクルで要件定義・設計・開発・テストを繰り返し、開発期間中に発生するさまざまな状況に対応しながら進めることです。

工場設備管理サービスにターゲットを定めてから、開発に要した期間はおよそ8か月。開発には味の素エンジニアリング㈱に加え、3D-CAD互換ソフト等を専門とする世界的企業の㈱エリジオンと共に、少数精鋭チームで開発を行っていきました。

「とにかく他社より早くリリースしたいという思いがありました。開発の早い段階で、外部のお客様からご興味を持っていただいたのも大きかった。実際に使うお客様から『こう活用したい』という要望をうかがって、それを反映しながら開発することができました。
機能の追加や修正、デザインの変更など、アジャイル開発のメリットが出ました」(小林隆之氏)

「社内外の方々から意見やアイディアをいただきながら、ビジネスモデルを固めていきました。まるでロールプレイングゲームのように、開発を進めていくごとに仲間が増えて、助けてもらったようなものです。開発を始めたときと、現在の「PLANTAXIS®」とでは、いい意味でかなり違うものになりました。
「PLANTAXIS®」はこれからもお客様にご利用いただくことを通してSaaS(Software as a Service)として進化し続けます。新しい機能の追加により、お客様への提供価値を最大化していきたいと思っています」(小林文宏常務)

工場での働き方を変えるビジネスモデルの誕生

驚くのは、二人とも「事業開発の経験もサービス開発の経験もないところからのスタートだった」ということです。

社内はもちろん、お客様など外部からもさまざまな意見や協力を得て生み出された「PLANTAXIS®」は、まさに味の素グループ従業員の共通の価値観「味の素グループWay※」でもある「開拓者精神」の発露であり、「新しい価値の創造」にかなうプロジェクトとなりました。

「これまで、味の素グループ以外の企業に向けた当社のビジネスは、「工場を建設し引き渡したらそれで終わり」という単発型のビジネスモデルが中心でしたが、「PLANTAXIS®」は違います。
お客様と長くお付き合いできる、サブスクリプション型の新しいビジネスモデルを打ち立てました。
新規事業開発としては今後のスケールアップが課題であり、まだ「ゼロから1」になった段階です。経営と担当者が密に連携し、さらに外部の力も借りることで新しいアイディアを素早くビジネスの形にすることができました。デジタルを活用し現状を変革するために、とにかく「やってみること」が大切だと思います」(小林文宏常務)

「PLANTAXIS®」は、工場での働き方を大きく変えるイノベーション。味の素エンジニアリング㈱の強みと他社の技術力を融合させた、新しいビジネスのかたちになりました。
ビジネスも働き方も大きく変わろうとしている現在、工場の現場でも、人財不足をはじめとしたさまざまな課題の解決は、より重要性を増しています。
そんな中で実現した「PLANTAXIS®」の開発は、事業活動を通じて新しい社会価値と経済価値を生み出していく味の素グループの「ASV(Ajinomoto Group Shared Value))を体現したひとつの形といえるでしょう。

※味の素グループWay:従業員一人ひとりが共有する価値観、仕事をする上での基本的な考え方、姿勢のこと
「新しい価値の創造」「開拓者精神」「社会への貢献」「人を大切にする」
※ASV:創業以来一貫した、事業を通じて社会価値と経済価値を共創する取り組み

※本記事は、2020年9月時点の内容に基づき、掲載されています。

デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital transformation)
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

<参考:DX の定義>
DX に関しては多くの論文や報告書等でも解説されているが、中でも、IT 専門調査会社の IDC Japan 株式会社は、DX を次のように定義している。※1 企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内 部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラ ットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソ ーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデ ルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図る ことで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること。(※1)Japan IT Market 2018 Top 10 Predictions: デジタルネイティブ企業への変革 - DX エコノミー においてイノベーションを飛躍的に拡大せよ, IDC Japan プレスリリース, 2017 年 12 月 14 日

<参考:SaaSの定義>
Software as a Service(=サービスとしてのソフトウエア)
システムの基盤機能、ネットワーク基盤機能、開発・実行基盤機能、ハード基盤機能とデータセンター(建物・通信ネットワーク機器含)の複合機能をネット経由で提供するサービス。

2020年10月の情報をもとに掲載しています。

活動レポート

味の素社が推進するダイバーシティ&インクルージョンとは?

今、成長する企業に、そして社会に必要なものはダイバーシティの推進です。味の素社は、性別、年齢、国籍、経歴の多様な人財を受け入れ、社員一人ひとりが互いに尊重し、活躍できる会社と社会をめざして、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I ※1)を推進しています。

D&I最初の取り組み「ワークライフバランス向上」

味の素社は、多様なキャリアを持つ人財が集まり、多様性を受け入れ合うことによってイノベーションを生み出すことを、重要な経営戦略として捉えています。そのためには、性別、年齢、国籍、経歴の多様性を重視した人財を受け入れていく取り組みが必要です。

D&Iの最初の取り組みとして、味の素社は2008年、経営戦略に「ワークライフバランス※2向上」を掲げ、「味の素グループ WLBビジョン」を策定しました。すべての社員にとって働きやすく、仕事もプライベートも充実できる職場づくりへの取り組みが、10年以上前から始まりました。

たとえば、2014年には育児中の時短勤務や育児休暇の拡大、フレックスタイムや時間単位有給の採用、テレワーク制度(週1回の在宅勤務制度)の導入などを実施してきました。

2010年代半ばになると、政府が「働き方改革」を掲げ、社会的な意識も高まりました。味の素社は2017年に「週4日どこでもオフィス※3」制度を始め、退社時刻を17時20分から16時30分に繰り上げました。これにより夕方の時間が有効に使えるようになり、例えば育児時短勤務中の社員は、退社時に「お先に失礼します」と周囲に言って帰るストレスから解放されました。

また、コアタイムなしのフレックスの導入にともない、社員一人ひとりが働く時間と場所を柔軟に設計できるようになりました。

女性人財の育成支援策と今後の課題

味の素社は社会に先駆けて働き方改革を進め、社内に基本的な土壌が整いつつあった2017年7月に「ダイバーシティ推進タスクフォース」を設置し、ダイバーシティの取り組みの一環として女性活躍・登用を進めています。

同年、女性人財の育成委員会を設置し、女性の登用計画およびキャリア形成に向けた具体的な支援を開始しました。

同委員会では、女性社員の基幹職(管理職)への就任を支援するためのメンタープログラム、若手女性向けのキャリアワークショップ&カレッジ、30%Club Japan※4の参画企業間での連携施策等などを行っています。

このように10年以上も前から、女性が活躍できる土壌づくりを継続してきた味の素社ですが、社員の女性比率がここ10年ほぼ変わらず30%であるのに対して、基幹職における女性比率は、2019年度で10%に留まっています。D&Iの観点から、味の素社は、社員一人ひとりの働きがいのある職場とキャリア形成を支援すると同時に、2030年度までに基幹職の女性比率を30%まで高めることをめざしています。

味の素グループがめざす将来像とD&I

2017年に設置された「ダイバーシティ推進タスクフォース」は、より広く多様性を包括することをめざして、2019年10月に「D&I推進チーム」にリニューアルしました。これは、身近なジェンダー・ダイバーシティだけでなく、障がいをもつ人、LGBT、国籍や出身地による慣習の違いといったあらゆる多様性を受け入れ合うことで、豊かなキャリア形成に活かすことができる組織文化を育み、社員と会社がともに成長できる職場づくりにつながる活動の推進を意味します。

具体的には、自身の無意識な思い込みに気づきを与えるアンコンシャス・バイアス研修の実施、LGBTパートナー支援制度の導入、事業所内保育所や提携保育所の整備、障がい者の働きやすい環境づくりなどが実施されています。

味の素社のD&I推進がめざす将来像は、性別や年齢、国籍、経験などによらず、社員一人ひとりが互いに尊重し合い、活躍できる会社と社会です。豊かな多様性をもった企業風土は、まさにイノベーションが生まれる土壌です。また、社員一人ひとりが自律的な成長が育まれ、各々が最大の成果を上げる土壌にもなります。これらの活動が味の素社をはじめとした味の素グループだけでなく、日本社会全体にも良い影響を与えられるようになることが、味の素社が見据えるD&Iの姿です。

それはまさに、Ajinomoto Group Shared Value(ASV)※5「グローバルリーダーとして社会課題の解決に貢献し続けること。同時に、企業として成長し続けること」の実現にも直結します。

味の素社は、多様性を受け入れてお互いに生かし合う企業文化の変革へ向けて、今後もダイバーシティ&インクルージョンを推進していきます。

<味の素グループの人財マネジメント基本方針>

<多様性を受容する組織風土づくり>

※1:D&I
ダイバーシティ&インクルージョンの略。直訳すれば「多様性の受容」。近年、ビジネス界のキーワードになりつつある。一人ひとりの異なる価値観を認め、お互いに受け入れ、ともに成長していこうとする考え方。

※2:ワークライフバランス
Work Life Balance=仕事と生活の調和。2000年代、働き過ぎと仕事偏重の生活を改めようという機運の中で登場したキーワード。内閣府の「仕事と生活(ワーク・ライフ・バランス)憲章」には、「誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て・介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう、今こそ、社会全体で仕事と生活の双方の調和の実現を希求していかなければならない。」とある。

※3:週4日どこでもオフィス
自宅やサテライトオフィスの他、セキュリティが確保 され、集中して勤務できる場所であればどこでも勤務できるテレワーク制度

※4:30% Club Japan
2010年に英国で創設された、世界的キャンペーン「30% Club 」の日本版。本キャンペーンは、取締役会を含む企業の重要意思決定機関に占める女性割合の向上を目的とし、現在、14か国で展開。展開国の数は増え続けている。
30% Club Japan は、2019年5月1日に活動を開始。社会全体に働きかける様々なイニシアチブを展開し、効率的・網羅的に企業のダイバーシティをめざす。

※5:Ajinomoto Group Shared Value(ASV)
味の素グループは、解決すべき3つの社会課題として「健康なこころとからだ」「食資源」「地球持続性」を掲げています。独自の技術や知見を活かし、グローバルリーダーとして社会課題の解決に貢献しつづけること。同時に、社会・地域と共有する価値を創造することにより経済価値を向上させ、企業としての成長にもつなげていきます。この取り組み全体をAjinomoto Group Shared Value=ASVと称します。

2020年12月の情報をもとに掲載しています。