活動レポート

「あえて、®」冷凍ストックご飯の宅配を味の素社がスタート。
なぜ今「まぜご飯とおかず」のサブスクなのか

2024年(令和6年)1月、味の素社は、まぜご飯とおかずの一食完結型宅配冷凍ストックご飯「あえて、®」の販売を開始しました。
https://aete.ajinomoto.co.jp/

新型コロナウイルスの流行を機に、食品デリバリーやECサービスは社会に浸透し、手軽に健康的な食事がとれる冷凍宅配弁当のニーズは高まっています。スタートアップ企業などによる競争が激しくなっているこの市場に、今なぜ、味の素社が参入するのか。

「目指したのは、意図的に生活の中に取り入れたくなる冷凍弁当です。忙しいから、時間がないからではなく、積極的に選んで食べたくなる商品を作ろう!というところから開発がスタートしました」

「あえて、®」の開発者である羽藤耕一郎さんに、そのサービス内容や開発秘話、目指す未来などを詳しく聞きます。

冷凍ストックご飯「あえて、®」はどんなサービスですか?

羽藤:「あえて、®」は、おいしくてからだにいいものを手軽にとることのできる冷凍ストックご飯(以下冷凍弁当)のサブスクリプションサービスです。容器の中には、さまざまな具材と大麦が入ったまぜご飯と、栄養満点のおかずが入っていて、冷凍庫にストックしおいて、食べたいときに容器のままレンジで6分ほど加熱すれば食べられます。

ーー他とは違う「あえて、®」ならではのこだわりはどこにありますか?

羽藤:まずは「おいしさ」ですね。味の素グループには長年積み重ねてきた冷凍食品の知見があり、「冷凍でおいしいもの」を作るノウハウを持っています。だからこそ便利なだけではなく、ちゃんと「おいしい」ものを作ることができました。

また食物繊維・塩分相当量・野菜配合率において1日あたりの摂取量目安の1/3の量を目標に開発しているため、「からだにいい」も実現しています

※ 1⽇当たりの摂取⽬安量は、栄養素等表⽰基準値(18歳以上、基準熱量2,200kcal)に基づく
※ 厚⽣労働省推進・健康⽇本21の野菜摂取⽬標量(1⽇350g)に基づく
※ 実際の商品毎の栄養成分値は、原材料等の要因により前後致しますので、各商品ページにてご確認ください。

ーーご飯とおかずが一度に電子レンジで温められて、これだけで食事が完結できるところも便利ですね。

羽藤:そこもポイントです。他の冷凍宅配弁当はおかずだけのことが多いんですが、「あえて、®」には、「ご飯とおかず」を入れました。これは調査で「おかずのみの冷凍弁当ユーザーも自分でご飯を用意して食べている」ことが分かったから。だったらご飯も一緒に入っている方が便利ですよね。「手間を抜いて、大切な時間を増やそう」という開発テーマだったので、電子レンジで温める以外のことはしない、究極の手間抜きを実現させました。

ーー注文はWEBで行い、選択したコースに沿って自宅に冷凍弁当が届くという仕組みですよね。

羽藤:そうです。6食、12食、20食コースがあり、それぞれお届けペースを1週間・2週間・3週間・4週間に1回の中から選択することができます。

ーーメニューは毎回変更できるんですか?

羽藤:はい。次回出荷予定の6日目までにマイページで変更をすることができます。現在は24種類のメニューがありますので、ぜひ、いろいろな商品を試して、お気に入りを見つけていただきたいですね。

ーーすべてのメニューが「まぜご飯」になっているところがうれしい驚きでした

羽藤:自分で用意しやすい白米より、まぜご飯のほうが特別感ありますよね。炊き込みご飯も考えたんですが、まぜご飯の方が少ない塩分でおいしく仕上げられるんです。「枝豆と干しえび」「しらすと蓮根」「さつまいもとたけのこ」など種類も豊富なので、楽しく選んでいただけるのではないでしょうか。

予想を上回る反響があったとか。どんな方々が購入しているのでしょう?

羽藤:2024年(令和6年)1月に販売をスタートし、4月中に10万食の販売を達成、6月に20万食を突破しました。想定していたファミリー層はもちろん、20代から80代以上の幅広い方からお申し込みいただいていて、忙しく働く若者や、子育て中の方、高齢のご夫婦などが利用してくださっています。

ーーその方々から「あえて、®」はどんな評価を受けていますか?

羽藤:「家にストックしておけるところ」「おいしさ」「栄養バランス」の3点で好評をいただいています。たとえば「忙しくて今日は何もしたくない!という日のお助けアイテムだ」と言ってもらえたり、「簡単でも、おいしくてからだにいいから安心できる」という声をいただいたり。「味の素社が出しているのだからおいしいはず」という理由で選んでくださる方も多く、長年積み重ねてきた実績、ブランド力の大切さを改めて実感しました。

ーー「あえて、」というネーミングには、どんな由来が?

羽藤:「あえて」という言葉には、「意図的に、積極的に」というニュアンスが含まれています。「仕方なく手に取るのではなくて、意図的に生活の中で冷凍弁当を利用してほしい。そういう商品にしたい」という想いをここに込めました。私自身、冷凍食品の仕事に携わり、冷凍食品を使用する際に「後ろめたさ」を感じている方がまだ一部には残っていることを感じてきました。良いものを作り、それを払拭したかったんです。その他にも「、」があることで一呼吸おける世界観をお伝えできるように、などの意図があります。

「あえて、®」の開発について語るR&B企画室の羽藤氏

なぜ今、冷凍弁当のサブスクを味の素社が手掛けるのでしょう?

ーー毎日の食事作りをより簡単にしてくれる食品宅配サービスや冷凍食品の利用は年々増加傾向にあります。冷凍弁当の宅配サービスはスタートアップ企業が先行してサービスを開始していますが、味の素社が今、そこに参入していく理由について教えてください。

羽藤:理由は2つほどあります。1つ目は世の中にニーズがあること。市場の動きはもちろんですが、周囲にいる共働きのメンバーなども予想以上におかずの作り置きや冷凍弁当などのサービスを利用していて、「ストック型の食事」のニーズは実感していました。2つ目の理由は、味の素社が掲げるパーパス、「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」に適した、新たな挑戦だからです。

味の素社が2030年に向けて注力する4つの成長領域の中に「フード&ウェルネス」分野があるのですが、ここで叶えようとしているのは「食を通じた生きる歓びの実現」です。多くの人にこれを感じてもらうためには、幅広いお客さまが良いと言ってくれる商品を届けるだけでなく、より深く1人1人の生活にダイクレトに深く貢献し、食生活、食習慣を変えられるようなサービスも必要。だからこそ手軽でおいしく健康的な冷凍弁当を届ける「あえて、®」を企画しました。

ーーなるほど。世の中的なニーズと、企業としてのニーズをともに満たす挑戦だったのですね。ただ味の素冷凍食品の人気商品である「ギョーザ」なども手軽でおいしく「食を通じた生きる歓びの実現」には貢献している気がしますが......。

羽藤:そうですね。ただこれを食べるまでには「冷凍餃子を買いに行く」「調理する」という手間が必要で、それすら「難しい」「省きたい!」という日がある方もいらっしゃると思います。そこにもアプローチできるサービスを作り、これまで以上に多くの人に「食を通じた生きる歓び」を届けたいと今回は考えました。

ーー宅配にした理由がそこにあるんですね。ちなみにサブスクにした理由は?

羽藤:お客さまのニーズを調査していくと、こうしたサービスを利用する方は9割以上が週に1回以上の利用率で、さらに継続する方も多いことが分かりました。そこから定期的に決まった数を届けするサブスクリプションが最適だと考えました。

工場からは「できないし、売れないよ」と言われました(笑)

ーーご飯とおかずが両方入った冷凍弁当は他に見たことがありません。何か理由があったんでしょうか?

羽藤:最初は「できないし、売れないよ」とさまざまな工場で言われました(笑)。そもそも技術的に冷凍のご飯とおかずを一緒に電子レンジで温めて、おいしい状態を保つことは難しいんです。ベチャっとなってしまったり、加熱ムラが出てしまったり、加熱時間が長くなってしまったり。課題がたくさんあったからこそ誰もやってこなかったんだなと私自身も開発をスタートしてから実感しました。

ーーそれをどう解決したのですか?

羽藤:まず、全国各地を回ってご飯とおかずが両方入った弁当を作ることができるパートナー工場を探し、一緒に開発を進めました。そんななかで「ご飯の上におかずをのせることでご飯もおいしくレンジアップする」という方法にたどりつき、「あえて、®」が完成したんです。

※特許出願中の独自技術

ーー20種以上あるメニューづくりはどう進められたのですか?

羽藤:メニューはパズルのように作っていきましたね。定番で人気のハンバーグ、唐揚げ、もちろん餃子などに加え、ガパオやタンドリーチキンなどのレストランメニューや魚料理などをおかずに設定し、そこに合うまぜご飯を組み合わせていきました。味はもちろんですが、色味にも気を配り、赤、緑、黄色の食材が入った彩り豊かなメニューに仕上げました。

ーーなるほど。栄養も彩りもバランスよく仕上げるのはなかなか大変そうですが、「あえて、®」は開発開始から1年ほどで販売にこぎ着けたとか。そこにはどんな協力者がいたのですか?

羽藤:先ほどからお話ししているように生産工場の方や、少数精鋭で集まってくれた社内プロジェクトチームメンバーの協力を得て形になっていきました。また社外パートナーとして、株式会社イングリウッド(小売業特化型のDXソリューションプロバイダー企業)の協力をいただき、スピード感を持って、サービスの実現化を進めていきました。

ーーインクリウッド社とはどういった点で協業をしたのでしょう。

羽藤:商品を作る過程から、デジタルマーケティングやECシステム領域まで幅広く伴走していただきました。1食完結型の商品づくりは味の素社では初めてに近い試みでしたし、WEBでのD2Cサービスの展開もまだ不慣れだったので、そこを支えていただきました。

※D2Cとは、Direct to Consumer(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)の略。メーカーが仲介業者を通すことや店舗販売をすることなく、自社のECサイトなどから直接顧客に販売するビジネスモデル。

ーープロジェクトはどんなふうに進めていきましたか?

羽藤:まずは社内で、注力領域の事業を加速・拡大させる「事業モデル変革(BMX)」という仕組みを使って事業を起こしました。BMXは事前調査や手続きに時間をかけすぎることなく、価値の創造にフォーカスできる仕組みになっているため、プロジェクトの進行を加速させることができるんです。私自身、新たな挑戦には逆風も強いのではと思っていたんですが、思いのほか皆さん応援してくれて、びっくりしましたね(笑)。周囲のメンバー、上司、経営陣からも応援とアイデアをいただいて、「成功させなければ」という気持ちが高まりました。

「あえて、®」で生活にゆとりと豊かさを

ーーいよいよサービスが本格スタートした「あえて、®」ですが、ぜひこれからの展望などを聞かせてください。

羽藤:まずはたくさんの方にご利用いただけてうれしく思っています。今後はD2C領域でしっかりと販売規模を拡大していけるよう、サービスレベルを上げていきたいですね。現状は自分の中ではまだ100点中50点くらい。ここからメニュー数の拡充を実現し、味の素社が掲げる「売上100億円規模の事業を複数創出していく」というコンセプトに見合う事業に育てていきたいです。

ーーメニュー数はどのくらいまで増やす予定ですか?

羽藤:将来的には50種以上を目指したいですね。現状は24種ですが、今年中に40種くらいまで増やせればと思っています。

ーー「あえて、®」はBtoBでもニーズがありそうに思えますが。

羽藤:そうですね。BtoBでいえば社員食堂やホテル、医療施設などにもニーズはあるはず。今後は「あえて、®」がどの分野で事業展開できそうかを見極めつつ、BtoBでも挑戦の糸口を探していければと考えてはいます。

ーー最後に「あえて、®」のASVを教えてください。

羽藤:「あえて、®」は食事づくりの時短を実現し、ゆとりのある生活を提供することができるサービスです。また「あえて、®」を選択するということは、各家庭のキッチンで行っていた調理を、味の素社の大きな給食室で行うということ。これはエネルギー効率の向上や食品ロスの軽減にもつながるはずです。さらに栄養バランスのよい食事を1食完結型で提供できる点では、健康寿命の延伸にも貢献できる。そういう意味ではとても分かりやすい形でASVを実現できるサービスなんです。

これからも必要としてくれている人に確実に届けられるよう、プロジェクトメンバー全員で「あえて、®」のサービス拡大に力を尽くしていきます。みなさんもこれを読んだあとには「あえて、®」のサイトにアクセスいただき、ぜひ試してみてください。皆さんの生活にゆとりと豊かさを提供できるはずです。どうぞよろしくお願いします!

<用語解説>

スタートアップ企業
スタートアップ企業とは、革新的なアイデアで短期間に急成長する企業のことです。イノベーションを起こし、社会貢献を意識したビジネスモデルや、出口戦略まで検討していることも特徴としてあげられます。

羽藤 耕一郎

コーポレート本部 R&B企画室 アクセラレーショングループ マネージャー
2004年、味の素社へ入社。営業、人事を経て、マーケテイングと事業開発・管理でキャリアを積む。うま味調味料「味の素®」「ほんだし®」などのプロダクトマネージャー、冷凍食品の事業戦略構築、ASEANエリアへの冷凍Gyoza進出の担当を歴任。2024年1月、冷凍ストックご飯「あえて、®」発売において新事業開発と運営を担当。
プライベートでは、ラグビーチームのコーチとして毎週末活動しています。

2024年8月の情報をもとに掲載しています。

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