活動レポート

DE&Iってなに?
味の素グループの取り組みからわかるD&Iとの違いとは?

「DE&I(DEI)」は、従来のD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)に「Equity(エクイティ)」の概念を加え、D&Iからさらに一歩進んだ考え方として世界的に推進されています。

味の素グループでは、2023年(令和5年)4月から、従来のD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)に進化させました。

今回の記事では、DE&Iとはなにか?味の素グループの具体的な取り組みとともにご紹介します。

DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)とは

DE&Iとは、Diversity(ダイバーシティ/多様性)、 Equity(エクイティ/公平性)、Inclusion(インクルージョン/受容)の頭文字をとった言葉で、「多様性」を「受容・包括」し、それぞれに「公平」な機会提供のもとで、互いに尊重しながら成長できる環境づくりを目指した考え方です。

ダイバーシティという考えは、1950年代のアメリカ、人種差別撤廃を目指した公民権運動から発展してきました。その後、人種だけでなく、性別や年齢、国籍、経歴、さらには障がいの有無、価値観などを含め、あらゆる人を差別しない、多様な人々とともに生きる「共生社会」へ向けてのキーワードに成長してきました。

ダイバーシティにインクルージョンが加わったD&Iは、おもに企業で推進されてきました。日本においては、経済産業省が経営戦略としての「ダイバーシティ経営の推進」を後押ししています。

経済産業省は、ダイバーシティ経営を「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」と定義しています。女性をはじめとする多様な人々の活躍は、少子高齢化が進む中、人材を確保し、多様化する市場ニーズやリスクへの対応力を高める「ダイバーシティ経営」の推進と、日本経済の持続的成長にとって不可欠と考えているからです。

DE&IのE(エクイティ)とは?

Equity(エクイティ)は、「公平性」と訳されます。

従来のD&Iでも、「公平性」は考慮されてきました。それでもDE&Iにシフトしているわけは、D&Iだけでは解決できない「不平等さ・不自由さ」が意識されるようになったことが要因です。

たとえば、出産育児や介護で会社を休む場合、どうしてもキャリアが遅れてしまいます。また業務に復帰しても家庭の都合で出社や残業がしにくい人もいるでしょう。

そうした状況が存在するなかで、同じ働き方、同じ仕事、同じ機会が平等に提供されたとしても、みなが同じようにパフォーマンスを発揮できるでしょうか?

スタート地点に大きな差がある以上、おのずと差が出てしまうおそれがあります。各人がその能力を十分に活かすためには、それぞれの状況に合った環境を提供することが必要である......という考え方がD&IからDE&Iにシフトしてきた背景です。

味の素グループでは、2023年(令和5年)4月にD&IからDE&Iにシフトし、次のように宣言しています。

「一人ひとりのニーズや状況に合わせた環境を提供します。」

「誰もが等しく挑戦・成長する機会を得ることができるように、必要な人には選択肢の用意や支援を行う」ことで、「全員が同じスタートラインに立ち、適切に評価・登用される仕組みを構築する」としています。

では、その取り組みを詳しく見ていきましょう。

味の素グループの取り組み

味の素グループでは2008年(平成20年)より、働き方改革を推進し、働く時間と場所の柔軟性を高め、働く環境を整えてからダイバーシティ推進につなげて、成果を積み上げてきました。

ダイバーシティ推進・働き方改革推進の歩み

第1フェーズ 制度導入 主に時間的制約のある女性

2008年
「味の素グループ WLBビジョン」策定
2009年
再雇用制度導入
2010年
育短勤務利用期間拡大、育児休職15日分有給化
2012年
職場主体によるWLB向上の取組み開始
2013年
「Work@A~味の素流働き方改革~」の立ち上げ
2014年
フレックス(コアタイムなし)、時間単位有休、週1テレワーク(在宅勤務等)

第2フェーズ 制度拡充 全従業員

2015年
「ダイバーシティ&WLBコンセプト」策定
2015年
パートナーと一緒に参加する育児家事と仕事の両立支援セミナー開始
2016年
WLB休暇(3日間/年)、企画・専門型裁量労働制導入
2017年
週4日「どこでもオフィス」スタート、軽量モバイルPC貸与
2017年
所定労働時間短縮と前倒し(8:15~16:30)

第3フェーズ D&I推進 選択肢を増やし選択できる環境

2017年
7月「ダイバーシティ推進タスクフォース」設置、 女性版人財委員会発足
2017年
WLB休職の拡大(海外転勤帯同休職、不妊治療休職)
2018年
メンタープログラム開始、事業所内保育所開設・提携保育所契約、組織風土改(アンコンシャス・バイアス研修、LGBT研修、ダイバーシティ研修)
2020年
どこでもオフィス週5日。ITツール拡充、AjiPanna Academy
2020年
ランチ時間を活用したD&Iセミナー、Workplaceコミュニケーション
2021年
人財・組織マネジメントシステムの導入
2022年
障がい者の働きがい/雇用向上の計画案策定と採用再開、AGP(D&I設問)追加
2023年
D&IからDE&Iに進化

第1フェーズ(制度導入期)/時間的制約のある女性を主な対象に

制度導入期の第1フェーズは、より多くの従業員にとって働きやすく、仕事とプライベートが両立できる職場づくりに取り組みました。

第2フェーズ(制度拡充期)/全従業員を対象に

制度拡充期の第2フェーズでは、政府の「働き方改革」が進行し、社会的な意識も高まりました。味の素グループは「週4日*どこでもオフィス」など現在のリモートワークを先取りした仕組みを全社員を対象に取り入れ、仕事もプライベートも充実させることができる職場づくりに取り組みました。

*2020年(令和2年)より、「週5日どこでもオフィス」が可能に。

第3フェーズ(D&I推進期)/選択肢を増やし、選択できる環境整備

ジェンダー・ダイバーシティだけでなく、障がいの有無、性的指向・性自認、国籍や出身地による慣習の違いといった多様性を受け入れ合うことで、豊かなキャリア形成に活かすことができる組織文化を育み、従業員と会社がともに成長できる職場づくりにつながる取り組みを推進しています。

外部からの評価/受賞歴

2017年

・平成30年度なでしこ銘柄の選定(経済産業省と東京証券取引所が共同で認定)

2018年

・平成30年度なでしこ銘柄の選定

・平成30年度「テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)」『優秀賞』

2019年

・令和元年度「新・ダイバーシティ経営企業100選」の選定(経済産業省)

・令和元年度女性が輝く先進企業表彰「内閣府特命担当大臣表彰(男女共同参画)」の受賞(内閣 府表彰)

・令和元年度準なでしこ銘柄の選定

2020年

・令和2年度準なでしこ銘柄の選定

・PRIDE指標2019シルバーの認定(職場におけるLGBT取り組みの評価指標)

2021年

・令和3年度なでしこ銘柄の選定

・PRIDE指標2021ゴールドの認定

2022年

・令和4年度なでしこ銘柄の選定

・PRIDE指標2022ゴールドの認定

2023年

・令和5年度なでしこ銘柄の選定

・PRIDE指標2023ゴールドの認定

経営戦略としてのDE&I推進

2023年(令和5年)6月、味の素グループは外部へのコミットメントとして、「コーポレート・ガバナンスに関する基本方針」第8章 ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進(CGC 原則 2-4)
を次のように改訂しました。(以下一部抜粋)

「味の素グループは、世界で働く一人ひとりが、人種・国籍・性別・年齢・文化・慣習などを問わず成長して活躍できるよう、人財の属性や価値観の多様性を尊重するとともに、味の素グループの人財が企業や国を超えて更にグローバルに自分らしく活躍できるよう、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの向上に努めます。」

味の素グループでは、「DE&I推進は経営戦略」であるとしており、取締役で代表執行役副社長の白神浩氏は、「イノベーションには多様な価値観を融合させていくことが大切で、DE&Iについてもさらに推進していきます。」と語っています。

人事部人事グループDE&I推進チームの小池さんは、「味の素社は2008年(平成20年)から働き方改革を進めてきた実績があり、みなが同じスタートラインに立ち働けるようになったうえで、DE&I推進をスタートしているのが大きな特徴です」と話します。

現在、味の素グループは、「一人ひとりの状況をきちんと見ることを、全社で取り組んでいく」というDE&I推進の意思表明を「ASVレポート(統合報告書)」に明記し、社内外に力強く発信しています。

社内的には、「何と言ってもマインドチェンジが重要」(前出小池さん)として、2017年度(平成29年)以降、D&I時代にスタートした「アンコンシャス・バイアス研修」や「LGBT研修」「ダイバーシティ研修」を継続しています。

手応えと今後の見通しについて、特に2020年のコロナ禍よりオンライン配信で開始した、「お昼の時間を利用した"ランチセミナー"は、前出の全社員研修からのアンケート等を参考にテーマを選定し開催することが多いのですが、リピーターの方が多いです。従業員の3割がDE&Iのフォロアーになってくれれば会社の雰囲気が変わってくると思います」と話します。

アンコンシャス・バイアスってなに?

アンコンシャス・バイアス(unconscious bias)とは、無意識の 偏ったものの見方のことです。これまでの経験や見聞きしたことに影響を受け、無意識のうちに「きっとこうだ」と思い込むことです。

たとえば、

「親が単身赴任」と聞くと、父親を思い浮かべる。
「普通は○○だ」「たいてい○○だ」と思うことがある。
挑戦する前に、「私にはきっと無理」と思う。

などで、誰にでもあり、「相手」に対しても、「自分」に対しても、もつものです。
味の素グループでは、アンコンシャス・バイアスが誰にでもあることを知り、それ自体は個人の価値観であり悪いことでは無いが、組織において、特に人に関する言動を行う場合に、自身の思い込みをコントロールすることで、DE&Iを推進できる組織風土づくりをしています。

味の素グループが2030年までに目指す姿とは

味の素グループは2008年(平成20年)から15年以上、多様性を受容する組織風土づくりを進めてきました。これから2030年(令和12年)に向けた「DE&Iのありたい姿」について次のように描いています。

多様な人財を受け容れ合い、自発的な行動を促すことによってイノベーションを加速させる、企業文化の醸成を促す、味の素グループの「DE&I推進」。こうした取り組みは、従業員の志を実現する取り組みASVの向上に直結し、個人と会社がともに成長していける会社だからこそ、持続可能な社会的・経済的価値を創出できると考えています。

そうした観点から、味の素グループは従業員エンゲージメントスコアを2030年(令和12年)には85%まで高めることも目指しています。

味の素グループは「アミノサイエンス®で、人・社会・地球のWell-beingへの貢献する」ことを目指し、その実現をその土台にもなるDE&Iを、味の素グループは今も力強く推進中です。

<用語解説>

ASV
ASVとは、「Ajinomoto Group Creating Shared Value」を略した言葉です。 CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)に由来しており、企業が自社の売上や利益を追求するだけでなく、自社の事業を通じて社会が抱える課題や問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的な価値も創造されることを意味します。

エンゲージメントスコア
エンゲージメントスコアとは、従業員が会社に愛着心や信頼感があり自発的に会社に貢献しようという姿勢を数値化したもの。エンゲージメント(engagement)は、約束や誓約、関与などの意味を持ちます。米ギャラップ社の調査によると、2022年(令和4年)の日本企業の平均エンゲージメントスコアは5%と、非常に低く、調査対象129か国中128位。味の素グループのエンゲージメントスコアは2023年度(令和5年度)に76%を達成。

2024年4月の情報をもとに掲載しています。

味の素グループは、アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献します

味の素グループは、

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