D&I最初の取り組み「ワークライフバランス向上」
味の素社は、多様なキャリアを持つ人財が集まり、多様性を受け入れ合うことによってイノベーションを生み出すことを、重要な経営戦略として捉えています。そのためには、性別、年齢、国籍、経歴の多様性を重視した人財を受け入れていく取り組みが必要です。
D&Iの最初の取り組みとして、味の素社は2008年、経営戦略に「ワークライフバランス※2向上」を掲げ、「味の素グループ WLBビジョン」を策定しました。すべての社員にとって働きやすく、仕事もプライベートも充実できる職場づくりへの取り組みが、10年以上前から始まりました。
たとえば、2014年には育児中の時短勤務や育児休暇の拡大、フレックスタイムや時間単位有給の採用、テレワーク制度(週1回の在宅勤務制度)の導入などを実施してきました。
2010年代半ばになると、政府が「働き方改革」を掲げ、社会的な意識も高まりました。味の素社は2017年に「週4日どこでもオフィス※3」制度を始め、退社時刻を17時20分から16時30分に繰り上げました。これにより夕方の時間が有効に使えるようになり、例えば育児時短勤務中の社員は、退社時に「お先に失礼します」と周囲に言って帰るストレスから解放されました。
また、コアタイムなしのフレックスの導入にともない、社員一人ひとりが働く時間と場所を柔軟に設計できるようになりました。
女性人財の育成支援策と今後の課題
味の素社は社会に先駆けて働き方改革を進め、社内に基本的な土壌が整いつつあった2017年7月に「ダイバーシティ推進タスクフォース」を設置し、ダイバーシティの取り組みの一環として女性活躍・登用を進めています。
同年、女性人財の育成委員会を設置し、女性の登用計画およびキャリア形成に向けた具体的な支援を開始しました。
同委員会では、女性社員の基幹職(管理職)への就任を支援するためのメンタープログラム、若手女性向けのキャリアワークショップ&カレッジ、30%Club Japan※4の参画企業間での連携施策等などを行っています。
このように10年以上も前から、女性が活躍できる土壌づくりを継続してきた味の素社ですが、社員の女性比率がここ10年ほぼ変わらず30%であるのに対して、基幹職における女性比率は、2019年度で10%に留まっています。D&Iの観点から、味の素社は、社員一人ひとりの働きがいのある職場とキャリア形成を支援すると同時に、2030年度までに基幹職の女性比率を30%まで高めることをめざしています。
味の素グループがめざす将来像とD&Iの取り組み
2017年に設置された「ダイバーシティ推進タスクフォース」は、より広く多様性を包括することをめざして、2019年10月に「D&I推進チーム」にリニューアルしました。これは、身近なジェンダー・ダイバーシティだけでなく、障がいをもつ人、LGBT、国籍や出身地による慣習の違いといったあらゆる多様性を受け入れ合うことで、豊かなキャリア形成に活かすことができる組織文化を育み、社員と会社がともに成長できる職場づくりにつながる活動の推進を意味します。
具体的には、自身の無意識な思い込みに気づきを与えるアンコンシャス・バイアス研修の実施、LGBTパートナー支援制度の導入、事業所内保育所や提携保育所の整備、障がい者の働きやすい環境づくりなどが実施されています。
味の素社のD&I推進がめざす将来像は、性別や年齢、国籍、経験などによらず、社員一人ひとりが互いに尊重し合い、活躍できる会社と社会です。豊かな多様性をもった企業風土は、まさにイノベーションが生まれる土壌です。また、社員一人ひとりが自律的な成長が育まれ、各々が最大の成果を上げる土壌にもなります。これらの活動が味の素社をはじめとした味の素グループだけでなく、日本社会全体にも良い影響を与えられるようになることが、味の素社が見据えるD&Iの姿です。
それはまさに、Ajinomoto Group Creating Shared Value(ASV)※5「グローバルリーダーとして社会課題の解決に貢献し続けること。同時に、企業として成長し続けること」の実現にも直結します。
味の素社は、多様性を受け入れてお互いに生かし合う企業文化の変革へ向けて、今後もダイバーシティ&インクルージョンを推進していきます。
<味の素グループの人財マネジメント基本方針>
<多様性を受容する組織風土づくり>
2020年12月の情報をもとに掲載しています。
- 味の素グループを読み解く
キーワード
※1:D&I
ダイバーシティ&インクルージョンの略。直訳すれば「多様性の受容」。近年、ビジネス界のキーワードになりつつある。一人ひとりの異なる価値観を認め、お互いに受け入れ、ともに成長していこうとする考え方。
※2:ワークライフバランス
Work Life Balance=仕事と生活の調和。2000年代、働き過ぎと仕事偏重の生活を改めようという機運の中で登場したキーワード。内閣府の「仕事と生活(ワーク・ライフ・バランス)憲章」には、「誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て・介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう、今こそ、社会全体で仕事と生活の双方の調和の実現を希求していかなければならない。」とある。
※3:週4日どこでもオフィス
自宅やサテライトオフィスの他、セキュリティが確保 され、集中して勤務できる場所であればどこでも勤務できるテレワーク制度
※4:30% Club Japan
2010年に英国で創設された、世界的キャンペーン「30% Club 」の日本版。本キャンペーンは、取締役会を含む企業の重要意思決定機関に占める女性割合の向上を目的とし、現在、14か国で展開。展開国の数は増え続けている。
30% Club Japan は、2019年5月1日に活動を開始。社会全体に働きかける様々なイニシアチブを展開し、効率的・網羅的に企業のダイバーシティをめざす。
※5:Ajinomoto Group Creating Shared Value(ASV)
味の素グループは、解決すべき3つの社会課題として「健康なこころとからだ」「食資源」「地球持続性」を掲げています。独自の技術や知見を活かし、グローバルリーダーとして社会課題の解決に貢献しつづけること。同時に、社会・地域と共有する価値を創造することにより経済価値を向上させ、企業としての成長にもつなげていきます。この取り組み全体をAjinomoto Group Creating Shared Value=ASVと称します。