これからDE&Iは、企業にとどまらず学校など社会全体でも重視されていくことでしょう。現代のキーワードともいえる「DE&I」、さてその意味は?
味の素グループの具体的な取り組みとともにご紹介します。
DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)とは
DE&Iとは、Diversity(ダイバーシティ/多様性)、Equity(エクイティ/公平性)、Inclusion(インクルージョン/受容・包括)の3語の頭文字をとった言葉です。
企業におけるDE&Iとは、さまざまな属性や性質をもつ従業員が互いを尊重しながら受け入れ、すべての従業員が自身の能力を最大限に発揮して成長できる環境をつくろうという考え方です。
Diversity(ダイバーシティ/多様性)
Diversity(ダイバーシティ)とは、多様性を意味します。人には性別や年齢はもちろん、国籍、宗教、価値観、性的指向、障がいの有無や、それを踏まえた性質など、さまざまな違いがあります。その違いを互いに認め合いながら共存している状態が「多様性がある」状態と言います。
企業や組織におけるDiversity(ダイバーシティ)とは、多様な人材を登用し、さまざまな意見を取り入れたり、それぞれが持つ違った能力を活かしたりすることで、組織の競争力を高めようとする取り組みを指します。
Equity(エクイティ/公平性)
Equity(エクイティ)とは、公平性を意味します。企業や組織のなかで多様な人たち一人ひとりのニーズや状況に応じた支援を行い、公平なチャンスを提供することです。
すべての従業員に公平性が担保されることで、自身の能力を最大限に発揮できる環境が整えられます。
Inclusion(インクルージョン/受容・包括)
Inclusion(インクルージョン)とは、受容・包括を意味します。従業員一人ひとりの違いを受け入れ、互いに尊重し、共創しながら仕事に取り組む状態を指します。
異なる個性をもつ従業員が共創しながら活動できる環境を創り出すことで、組織全体にイノベーションが生まれる可能性も向上します。
DE&Iのイメージをイラストで見てみましょう。下のイラストは社会における「平等」「公平」「公正」の概念を示すイメージ図です。
身長の違う3人がフェンスの外からサッカー観戦をしています。それぞれの身長が180cm、150cm、120cmだとしましょう。「現実」の図では、それぞれの立場によって格差がある状態を示しています。「平等」の図では、踏み台が1人1つずつ支給され、同じ支援を受けている様子を表しています。

しかし、踏み台1つでは120cmの人には不十分です。一方、もともと踏み台がなくてもグラウンドが見える180cmの人は、さらに好条件で観戦できるようになります。「身長」という個々人の意志で変化させることができない違いに対し、「平等に」一方的に設定した同じ高さの踏み台を支給するだけでは「公平性」は実現しないのです。
120cmの人も180cmの人も同じように観戦しやすい環境にするには、「公平」の図のように、120cmの人には踏み台を2つ、180cmの人は踏み台なしにするなど、各自の特性に応じたサポートが必要です。これが「公平性」の考え方です。
D&IからDE&Iへ進化した理由
DE&Iは、従来のD&I(ディーアンドアイ)にEquity(公平性)の視点を取り入れて進化した考え方です。
D&Iも異なる属性や性質をもつ多様な人々を尊重して受け入れ、その多様性を社会や組織の中に活かすことで成長、発展していこうという考え方です。ここでも公平性はある程度、考慮されてきました。
それでもDE&Iにシフトしてきたのは、D&Iでは解決できない「不平等・不公平」が明らかになってきたからです。
たとえば、出産育児や介護で会社を休む場合、キャリアを描き難くなることがあります。家庭の都合や個人の会社外での通学などにより、出社や残業がしにくい人もいるでしょう。また、障がいがある、日本語能力が十分ではない人もいます。このようにスタートの時点で個々人の差を鑑みることなく、すべての人財に同じ仕事、同じ働き方、同じチャンスが「平等に」提供されたとして、みなが同じように活躍できるでしょうか?
スタートラインの時点で大きな差がある以上、おのずと差が出てしまうおそれがあります。各人がその能力を十分に活かすためには、それぞれの状況に応じた環境を提供する必要がある......という考え方がD&IからDE&Iにシフトしてきた背景です。
DE&Iを推進するメリットとは
経営方針にDE&I推進を取り入れることを「ダイバーシティ経営」「ダイバーシティマネジメント」と言います。
では、企業にとってDE&Iはどんな必要性やメリットがあるのでしょう。ダイバーシティ経営によって期待できる成果をまとめます。
(1)エンゲージメントの向上
多様な個性をもつ人々が公平に扱われ、個性が尊重される職場環境では、従業員は安心感をもって働くことができます。働きやすさ、心理的安全性の高まりにより、組織への帰属意識や貢献意欲、すなわちエンゲージメントの向上が期待されます。
(2)イノベーションの創出
多様な人財が集まり、異なる視点や発想が活かされることで、イノベーションが促進され、新しい製品やサービスの開発が進みます。また、多様な顧客ニーズへの理解が深まり、市場の変化にも柔軟に対応できるようになると期待できます。
(3)企業価値の向上と優秀な人財確保
DE&Iの取り組みが進むほど、従業員のエンゲージメントの向上だけでなく、社会的評価も高まります。企業価値が高まれば、おのずと優秀な人財も集まりやすくなるでしょう。
(4)企業のリスクマネジメント、ガバナンス向上
似たような背景や価値観を持つ人だけで集まると、組織の欠陥や市場の変化に気づけなくなる「同質性の罠」に陥ることがあります。
このような事象に対し、多様な視点を持つメンバーが議論に参加することで、「それは不適切ではないか?」「特定の層を傷つけないか?」といったブレーキがかかるようになります。同時に、誰もが声を上げやすい環境(心理的安全性)があれば、不正やミスが隠蔽されず、重大な不祥事に発展する前に芽を摘むことが期待できます。
このように企業にとってDE&Iの取り組みは、単に社会からの要請に応えるだけのものではありません。働く人々の意欲と能力を引き出して組織全体の力を高め、企業の革新性を高めて業績を伸ばし、持続可能な成長を支える重要な経営戦略のひとつなのです。
味の素グループの取り組み
味の素グループでは、2023年(令和5年)4月にD&IからDE&Iにシフトし、次のように宣言しています。
「一人ひとりのニーズや状況に合わせた環境を提供します。」
「誰もが等しく挑戦・成長する機会を得ることができるように、必要な人には選択肢の用意や支援を行う」ことで、「全員が同じスタートラインに立ち、適切に評価・登用される仕組みを構築する」としています。その取り組みを詳しく見ていきましょう。
味の素グループでは2008年(平成20年)より、ワークライフバランス(以下WLB)をキーワードに、働き方改革を推進し、働く時間と場所の柔軟性を高め、働く環境を整えてからダイバーシティ推進につなげて、成果を積み上げてきました。
DE&I推進の歩み
第1フェーズ 制度導入 従業員と会社の共成長を目指してワークライフバランスの概念を導入
- 2008年
- 「味の素グループ WLBビジョン」策定、組合主導でWLBに関する啓発開始
- 2009年
- 再雇用制度導入
- 2010年
- 育短勤務利用期間拡大、育児休職15日分有給化
- 2012年
- 職場主体によるWLB向上の取り組み開始
- 2013年
- 「Work@A~味の素流働き方改革~」の立ち上げ
- 2014年
- フレックス(コアタイムなし)、時間単位有休、週1テレワーク(在宅勤務等)
第2フェーズ 制度拡充 全社で働き方の柔軟性を向上する「働き方改革」推進
- 2015年
- 「ダイバーシティ&WLBコンセプト」策定
- 2015年
- パートナーと一緒に参加する育児家事と仕事の両立支援セミナー開始
- 2016年
- WLB休暇(3日間/年)、企画・専門型裁量労働制導入
- 2017年
- 週4日「どこでもオフィス」スタート、軽量モバイルPC貸与
- 2017年
- 所定労働時間短縮と前倒し(8:15~16:30)
第3フェーズ D&I推進 互いの違いを受容し、多様な「知と経験×属性」を融合し、チーム力を結集できる組織開発
- 2017年
- 7月「ダイバーシティ推進タスクフォース」設置
- 2017年
- WLB休職の拡大(海外転勤帯同休職、不妊治療休職)
- 2018年
- メンタープログラム開始、事業所内保育所開設・提携保育所契約、組織文化醸成に向けた各種研修開始
- 2020年
- 「どこでもオフィス」週5日。女性キャリア支援研修「Ajipanna Academy」開始
- 2020年
- ランチ時間を活用したD&Iセミナー、Workplaceコミュニケーション
- 2021年
- 人財・組織マネジメントシステムの導入
- 2022年
- 障がい者の働きがい/雇用向上の計画案策定と採用再開、D&Iについて理解・浸透度合いを測るSurvey実施
- 2023年
- D&IからDE&Iに進化
- 2025年
- 人事部内にDE&I推進グループ発足、パートナーシップ制度開始
第1フェーズ/従業員と会社の共成長を目指してWLBの概念導入
制度導入期の第1フェーズは、WLBを従業員と組織がともに成長する包括的概念と捉え、組合と会社で一緒に労使WLBプロジェクトを立ち上げました。そして、プロジェクトで議論を重ねた結果として、育児・介護の両立支援だけにとどまらない全社的なWLBビジョンを掲げ、より多くの従業員にとって働きやすく、仕事とプライベートが両立できる職場づくりに取り組みました。
第2フェーズ/全社で働き方の柔軟性を向上する「働き方改革」推進
制度拡充期の第2フェーズでは、政府の「働き方改革」が進行し、社会的な意識も高まりました。味の素グループは「週4日*どこでもオフィス」など現在のリモートワークを先取りした仕組みを全社員を対象に取り入れ、仕事もプライベートも充実させることができる職場づくりに取り組みました。
*2020年(令和2年)より、「週5日どこでもオフィス」が可能に。
https://story.ajinomoto.co.jp/report/040.html
第3フェーズ/DE&I推進 互いの違いを受容し、多様な「知と経験×属性」を融合し、チーム力を結集できる組織開発
ジェンダー・ダイバーシティだけでなく、障がいの有無、性的指向・性自認、国籍や出身地による慣習の違いといった属性に加え、個々人が有している知や経験の多様性を受け入れ合うことで、従業員と会社がともに成長できる職場づくりにつながる取り組みを推進し、イノベーション創出に繋げていくことを目指しています。
外部からの評価/受賞歴
2017年
・平成30年度なでしこ銘柄の選定(経済産業省と東京証券取引所が共同で認定)
2018年
・平成30年度なでしこ銘柄の選定
・平成30年度「テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)」『優秀賞』
2019年
・令和元年度「新・ダイバーシティ経営企業100選」の選定(経済産業省)
・令和元年度女性が輝く先進企業表彰「内閣府特命担当大臣表彰(男女共同参画)」の受賞(内閣 府表彰)
・令和元年度準なでしこ銘柄の選定
2020年
・令和2年度準なでしこ銘柄の選定
・PRIDE指標2019シルバーの認定(職場におけるLGBT取り組みの評価指標)
2021年
・令和3年度なでしこ銘柄の選定
・PRIDE指標2021ゴールドの認定
2022年
・令和4年度なでしこ銘柄の選定
・PRIDE指標2022ゴールドの認定
2023年
・令和5年度なでしこ銘柄の選定
・PRIDE指標2023ゴールドの認定
2024年
・令和6年度なでしこ銘柄の選定
・PRIDE指標2024ゴールドの認定
経営戦略としてのDE&I推進
味の素グループではDE&Iを経営戦略として取り入れています。
2023年(令和5年)6月、味の素グループは外部へのコミットメントとして、「コーポレート・ガバナンスに関する基本方針」第8章 ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進(CGC 原則 2-4)を次のように改訂しました。(以下一部抜粋)
「味の素グループは、世界で働く一人ひとりが、人種・国籍・性別・年齢・文化・慣習などを問わず成長して活躍できるよう、人財の属性や価値観の多様性を尊重するとともに、味の素グループの人財が企業や国を超えて更にグローバルに自分らしく活躍できるよう、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの向上に努めます。」

アンコンシャス・バイアスってなに?
アンコンシャス・バイアス(unconscious bias)とは、無意識の 偏ったものの見方のことです。これまでの経験や見聞きしたことに影響を受け、無意識のうちに「きっとこうだ」と思い込むことです。
たとえば、
「親が単身赴任」と聞くと、父親を思い浮かべる。
「普通は○○だ」「たいてい○○だ」と思うことがある。
挑戦する前に、「私にはきっと無理」と思う。
などで、誰にでもあり、「相手」に対しても、「自分」に対しても、もつものです。
味の素グループでは、アンコンシャス・バイアスが誰にでもあることを知り、それ自体は個人の価値観であり悪いことではないが、組織において、とくに人に関する言動を行う場合に、自身の思い込みをコントロールすることで、DE&Iを推進できる組織風土づくりをしています
味の素グループが2030年までに目指す姿とは
味の素グループは、DE&I推進を経営戦略として取り組んでいます。互いの違いを受容し、多様な「知と経験×属性」を融合し、チーム力を結集し、イノベーションを創出することをめざしています。

多様な人財を受け容れ合い、自発的な行動を促すことによって「イノベーションを加速させる企業文化の醸成」を促す味の素グループの「DE&I推進」。
DE&Iの推進によって、従業員の志を実現する取り組みであるASVの向上に直結し、個人と会社がともに成長していける環境で、持続可能な社会的・経済的価値を創出できると考えています。
そうした観点から、味の素グループは従業員エンゲージメントスコアを2030年(令和12年)には85%まで高めることも目指しています。

味の素グループは「アミノサイエンス®で、人・社会・地球のWell-beingへの貢献する」ことを目指し、その実現の土台にもなるDE&Iを、今も力強く推進中です。
2024年4月の情報をもとに掲載しています。
<用語解説>
ASV
ASVとは、「Ajinomoto Group Creating Shared Value」を略した言葉です。 CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)に由来しており、企業が自社の売上や利益を追求するだけでなく、自社の事業を通じて社会が抱える課題や問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的な価値も創造されることを意味します。
エンゲージメントスコア
エンゲージメントスコアとは、従業員が会社に愛着心や信頼感があり自発的に会社に貢献しようという姿勢を数値化したもの。エンゲージメント(engagement)は、約束や誓約、関与などの意味を持ちます。米ギャラップ社の調査によると、2022年(令和4年)の日本企業の平均エンゲージメントスコアは5%と、非常に低く、調査対象129か国中128位。味の素グループのエンゲージメントスコアは2023年度(令和5年度)に76%を達成。