2023年(令和5年)に厚生労働省が実施した「国民健康・栄養調査」によると、全国平均の野菜摂取量は1日あたり256gにとどまりました。さらに、男女ともに野菜摂取量は有意に減少しており、年々減少傾向にあることが明らかになっています。*1。
野菜には、体を整える栄養素が豊富に含まれています。野菜不足は、健康の維持に関わる重要な問題です。
しかし、「なかなか料理に時間を割けない」「野菜料理のレパートリーが少ない」「子どもが食べてくれない」といった声も聞かれます。こうしたお悩みを解決するための取り組みが、今、全国で広がっています。
野菜の摂取量が足りない?日本人の野菜不足
健康的な体を保つために、1日の野菜摂取目標量は350g*2とされています。しかし、先述のとおり、2023年(令和5年)の調査では全国平均は256gにとどまっています。しかも、年々減少傾向が続いています。都道府県別に見ても、目標値に達している自治体はひとつもありません。
特に若い世代の摂取量の少なさが目立ちます。朝食をとらない、野菜を食べない、昼食が麺類や丼もの、ファストフードなど炭水化物類に偏ったり、野菜不足になりがちです。
野菜は、ビタミン、ミネラル、食物繊維といった、健康に欠かせない栄養素を豊富に含んでいます。ビタミンは摂取した栄養素が体内で利用されるのを助け、ミネラルは身体機能の維持や調整を行います。食物繊維はお腹の調子を整えるなどの働きがあります。健やかな毎日の生活に、野菜摂取は不可欠です。
そんな日本人の野菜不足を解消しようと、2015年(平成27年)から味の素社はプロジェクトを開始しました。このプロジェクトは、Love(愛)と Vegetable(野菜)を組み合わせて「ラブベジ®」と名付けられました。
*2:野菜の摂取目標量は350g......「21世紀における国民健康づくり運動〈健康日本21(第2次)〉」で推奨されている野菜の摂取目標量
野菜摂取量最下位の愛知県エリアから始まった「ラブベジ®」
「ラブベジ®」は、地元への愛情が深い若手営業メンバーが、愛知県の野菜摂取量の少なさにショックを受けたことをきっかけにスタートしました。
愛知県は野菜の生産額が全国5位以内に入る一方で、県民一人あたりの野菜摂取量は全国最下位*3でした。
「ラブベジ®」は、地元への愛着と「味の素社として何か取り組むべきではないか」という想いに突き動かされてスタートした自発的なプロジェクトです。プロジェクトの目標は、当社商品の販売活動を通じて、地域の人々の食生活改善に貢献することでした。
当時のプロジェクトメンバーは、「それまでは、営業として自社商品の売上を第一に考えるのが当然だと思っていました。しかし、メンバーで話すうちに、『モノを売るだけが営業の価値ではない』という想いが高まっていった」と振り返ります。
「挑戦」が評価される味の素グループにおいて、上司や支社長たちが、「おもしろいことはどんどんやれ、遠慮なく挑戦しろ」と全面的に応援したことも、彼らの行動を後押ししました。
*3:愛知県民の野菜摂取量の平均値:「平成24年国民健康・栄養調査報告」
名古屋支社の営業メンバーは、メニュー開発担当者と連携して、旬の野菜を取り入れたレシピを作成したり、椙山女学園大学(名古屋市)管理栄養学科の協力を得て作ったメニューブックをスーパーの店頭や健康イベント時に配布したり、地域の保護者コミュニティの協力で、子どもがよろこぶ野菜メニューの開発をしたり、さまざまな活動に取り組みました。ローカル番組や雑誌などのメディアとのコラボイベントも企画し、賛同者を少しずつ増やしていったのです。
名古屋で始まった「ラブベジ®」の活動は、やがて長崎(九州支社)や大阪(大阪支社)にも広がっていきました。いずれも、野菜摂取量が全国平均より低いエリアです。
野菜350gは、実際にはこれくらいの量です。
2020年(令和2年)、味の素社は3月1日を「ラブベジ®」の日に制定し(「サ・イ=菜」の語呂合わせ)、「野菜をもっととろうよ!」をスローガンに、各地の野菜摂取量を増やすべく、全支社を挙げて活動を始めました。現在、その活動は全国に広がっています。
「ラブベジ®」は、各地の営業メンバーが主体となって進めているプロジェクトです。それぞれがアイデアを出し合いながら地域の皆さんにアプローチし、協業に広げていった点が、味の素社の中でも非常にユニークな特徴となっています。
なぜ「ラブベジ®」は全国に広がったのか
「ラブベジ®」プロジェクトは、2021年(令和3年)11月、厚生労働省・スポーツ庁主催のスマート・ライフ・プロジェクト「健康寿命*4をのばそう!アワード」《生活習慣病予防分野》において厚生労働大臣最優秀賞を受賞しました。
これは国民の健康づくりをサポートするプロジェクトで、健康増進・生活習慣病予防推進についてすぐれた取り組みを行う企業・団体・自治体を表彰するイベントです。
なぜ、名古屋支社に端を発した取り組みが、ここまで全国的に認知され、評価されるに至ったのでしょうか?
その理由の1つが、先述した「野菜摂取量の目標値をクリアしている都道府県がゼロ」という現状です。つまり、野菜不足は全国の行政や自治体に共通する課題でもあったのです。
そして、2つ目の理由は、地域のさまざまな人たちを活動に巻き込んだことです。地元の協業者(自治体を含む)やスーパーなどの量販店、生産者、さらには各地の地域コミュニティ、大学、メディアなど、実に多様な方々の協力を得ながら進めてきました。その結果、ビジネスにおいて異なる強みを持つ多様な立場の人たちが共存共栄する「エコシステム」という仕組みを築くことができました。それこそが、「ラブベジ®」を全国展開できた最大の理由なのです。
*4:健康寿命とは、2000年にWHO(世界保健機関)が提唱した「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」です。日本人の平均寿命と健康寿命の差は、男性は8.73年、女性は12.06年(2019年)となっています。
地域の皆さんや自治体と連携し「ラブベジ®」を盛り上げる!
「ラブベジ®」の活動は、各地の協業の皆さんとともに、エリアごとの食文化や地域で生産される野菜を活かしながら、全国へと拡大していきました。各地の営業現場での取り組みを通じて、地域に寄り添った提案ができること。これこそが、「ラブベジ®」の大きな特長です。
ここからは、全国各地に広がる、さまざまな取り組み事例をご紹介します。
近畿地方/店頭イベントで、より多くの人に野菜のおいしさを届ける
近畿地方では、2府4県3政令市*5の協力を得て、「ALL 近畿ラブベジ®」と名付けられたイベントを定期的に開催しています。スーパーの店頭などでメニューブックの配布や野菜クイズ、センサーに手をかざすことで自分の野菜摂取量がわかる機器を使った野菜摂取量測定会など、多彩な取り組みを実施し、多くの方々に野菜の魅力を伝えるとともに、野菜摂取への関心を高めていただく活動を続けています。
*5:大阪府・大阪市・兵庫県・神戸市・京都府・京都市・滋賀県・奈良県・和歌山県
(左)京都府・京都市・流通企業・生命保険相互会社と連携した「ラブベジ®」イベントの様子
(右)北海道のスーパー店頭での野菜摂取量測定会の様子
長崎県/地元の野菜に触れて好きになる!収穫・調理イベント企画
長崎県は、九州の中でも野菜摂取量が最も少ない県です。2025年(令和7年)3月には、地元スーパーや島原市の農家、長崎県と協働し、野菜の収穫および調理体験イベントを実施しました。キャベツを収穫し、それを「Cook Do®」<回鍋肉用>を使って調理する体験を通して、「野菜を好きになるきっかけになった」と参加した親子から多くの喜びの声をいただきました。
長崎県と協働の収穫×調理イベントの様子
三重県/振り付けは地元の高校生!「ラブベジ®」ダンス
味の素社と三重県は、2017年(平成29年)に食と健康の連携協定を締結しました。その一環として、県内の音楽家が『みんなで「ラブベジ®」』という楽曲を作詞・作曲し、県立三重高等学校ダンス部が振り付けを手がけたダンスパフォーマンス動画を制作しました。かわいい衣装と個性あふれるダンスは必見です。
気軽につくれる野菜しっかりレシピをご紹介!
知る人ぞ知る?ご当地レシピが全国各地から大集合!
味の素社のホームページでは、野菜をふんだんに使ったご当地レシピや、当社の商品で野菜のおいしさを引き立てるスペシャルメニューを紹介しています。
各地のスーパー店頭で、オリジナルのレシピブックを配布中!
スーパー店頭では、味の素社と地域の自治体がコラボした野菜料理満載のレシピブックを配布する取り組みも行われています。ご自宅で手軽においしい野菜料理をぜひお試しください。
秋田県と発行したレシピブック(第4弾)では、「減塩」と「プラス野菜・果物」をキーワードに、洋食レシピを紹介しています。目印は、かわいい秋田犬と、ちょっぴりこわいなまはげのイラストです。
熊本県と発行したレシピブックでは、県内の野菜摂取量が、1日350gという目標に対して約100g不足している現状をふまえ、1品で野菜が100g摂れるお手軽レシピを紹介しています。
野菜の魅力を伝える!「ラブベジ®」公式キャラクター「サイくん」
特設サイト「たのしい!おいしい!やさいのひみつ」では、野菜が大好きな公式キャラクターの「サイくん」が、野菜の生育過程や、子どもにも食べやすい調理の工夫など、野菜にまつわるあれこれを教えてくれます。
サイトからDLできる、野菜となかよしになれるメニューBOOK「やぁ!サイくんのふしぎなキッチン」
野菜を売らない味の素社が「ラブベジ®」に取り組む理由
味の素社にとって「ラブベジ®」の活動にはどのような意味があるのでしょうか。味の素社は野菜自体を販売しているわけではないため、直接的に売上につながるわけではありません。それにもかかわらず、なぜ「野菜をもっと食べよう」と呼びかけているのでしょうか。
その根底には「食と健康の課題解決」という志があります。
味の素社は、2030年(令和12年)までに「10億人の健康寿命の延伸」と「環境負荷の50%削減」を目標としています。そのうち、「10億人の健康寿命の延伸」を実現するためには、栄養バランスの良い食事が欠かせません。
また、味の素グループは、「妥協なき栄養」を掲げ、栄養に関する課題解決のテーマのひとつとして"野菜の摂取量を増やすこと"を重視しています。「ラブベジ®」は、まさにこのテーマに沿った取り組みです。
味の素社は今後も地域のみなさんとエコシステムを築きながら、地域に寄り添った野菜摂取量向上の取り組みを推進し、その先の人々のより健康的で豊かな生活に貢献していきます。
「アジパンダ®」も「ラブベジ®」を応援!
野菜をかぶったキュートな「アジパンダ®」(味の素グループのグローバルアンバサダー)が登場!
キャベツ、ナス、トマト......あなたのお好みはどの「アジパンダ®」?
野菜の可能性を探る⁉︎『野菜で自由研究』
特設サイト『野菜で自由研究』では、野菜をテーマにした自由研究のやり方を、とってもわかりやすく解説。野菜の切り方でどんなふうに味が変わるかを実験したり、玉ねぎの皮で染め物をしたり、子どもも大人も楽しめる充実の内容です。夏休みの自由研究のヒントにも!
2025年8月の情報をもとに掲載しています。