今話題になっているDX(ディー・エックス)とは、「デジタル・トランスフォーメーション」。あらゆる企業が「デジタル化」した現代に適応するために、成し遂げなければいけない改革のことです。
多くの企業が、新しい目標としてDXに取り組んでいます。味の素社は、このDXにどう向き合っているのでしょうか。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?
DXとは、「デジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略です。英語の「トランスフォーメーション」には、「変形」「変身」など、「変わる」という訳語があてられます。その他、電気の「変圧」や「変流」、サナギがチョウになるように昆虫が成長にともなって姿を変える「変態」という意味もあります。
また、英語圏では「trans」を「X」と表記することがあり、Digital TransformationもDXと表記されるようになりました。
デジタル・トランスフォーメーションは、あらゆる企業が「デジタル化」した現代に適応するために、成し遂げなければいけない改革のことです。
DXで求められる変革は、単に「デジタル技術を使うこと」や「これまでのやり方をデジタル化すること」ではなく、「業務の進め方や会社としてのあり方自体を、デジタル技術を使って変革していく」ことを意味しています。従来の「IT化」が、ある業務をデジタル技術で代用することだったのに対して、DXは業務の仕組み、さらにビジネスの仕組みそのものをデジタル技術を使って変革していくという点が異なります。
企業が抱く危機感
では、なぜ今企業にDXが求められているのでしょうか。
わたしたちの生活のなかには、想像以上に「デジタル」なものがたくさんあります。10年ほど前を思い出してみてください。そもそも、まだスマホを持ってない人も多かったはず。それが、今ではスマホは生活に欠かせないものになり、学生の就職活動からペットの見守りまで、ありとあらゆる場面で活躍しています。朝起きてから夜寝るまで、スマホがないと落ち着かない、という人も増えたのではないでしょうか。
最近の流行だと、キャッシュレス決済でしょうか。コンビニやファミレス、街の喫茶店からデパートまで、QRコードを使って手軽に支払いを済ませる人の姿を見かけない日はありません。今挙げたものは、すべて「デジタル」の産物です。
こうして、生活場面での「デジタル化」は、わたしたちが気づかないうちに進んでいるのですが、一方で「デジタル化を積極的に進めなければ!」と危機感を抱いているのが、企業です。
コロナ禍で加速した?企業が取り組むDXとは
企業のデジタル化......つまり、デジタルデータを活用しながら、会社の業務全体を見直し、これまでの慣習的な作業工程や管理体制から脱却して、ビジネスの仕組みを変えることは、これから企業が生き残るうえでの急務となっていると言われています。
2018年に経済産業省がDXに関するレポートを出して以降、多くの企業がDXへの取り組みを始めました。その動きを一気に加速させたのが、2020年の新型コロナウイルス感染症の流行です。
緊急事態宣言の影響で「出社できない」という状況になったため、「リモートワーク」や「テレワーク」、余暇と組み合わせた「ワーケーション」というワークスタイルが広まりました。また、会社側もそれまでの業務システムを大きく変える必要に迫られました。一回目の緊急事態宣言が出た時期、「書類にハンコを押すためだけに出社しなきゃいけないなんて」と嘆く会社員の声を報じるニュースを覚えていらっしゃる方もいるでしょう。
しかし、「Aさんが書類を確認した」ことを確認するために、実際にハンコを押す必要が本当にあるのでしょうか? この問題を、デジタルを使って解決するのも、DXのひとつの手法です。デジタル技術をつかって本人確認と書類確認ができるなら、「ハンコのための出社」は不要になります。また、書類をクラウドやサーバー上にアップして各人が確認・修正を加えるようにすれば、そもそも書類を回覧する必要もなくなります。こうなると、書類を印刷して、担当者が確認して、何人もいる上役のデスクを回ってハンコをもらうという手続き自体が不要になることがわかります。
このように、単に「ハンコを押す」ことをデジタル化するのではなく、「なんのためにハンコを押すのか」を根本から考え直し、その業務自体をデジタル技術を使って変革することがDXです。DXを実現できない企業は、効率とスピードの両面で大きく遅れをとっていくことがわかります。
新型コロナウイルス感染症の流行という緊急事態に対応して、生き残るために企業としてのあり方を変える。DXは、持続可能な企業であるための切実なチャレンジだといえるでしょう。
DXで味の素社が思い描く未来とは
IT系以外の企業では、DXへの取り組みも遅れているのではないか?という印象があるかもしれません。しかし味の素社では、グローバルに展開する企業経営の観点でかなり早い段階からDXに着目しており、味の素グループ全体で積極的にDXの推進に取り組んでいます。
味の素社は、社会課題を解決し、社会と価値を共創するASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)を掲げ、2030年までに「食と健康の課題解決企業」として、社会変革をリードする存在になることを目指しています。
この「食と健康の課題解決企業」への変革を、DXを通じて達成しようとしているのです。
味の素社と味の素グループ、外部のパートナーを中心にDXで結びついたエコシステムは、さらに外郭にあたる地方自治体や研究機関、NGO団体や国連・WHOなどとも広く連携し、コレクティブ・インパクト(さまざまなプレイヤーが社会課題の解決に向けて協働すること)の実現を目指します。
持続可能な社会づくりの実現には、味の素グループだけではなく、広く社会全体を巻き込みながら進んでいく姿勢が重要になるのです。
2021年8月の情報をもとに掲載しています。