活動レポート

なぜ「eスポーツ」に味の素社が?コンマ数秒の攻防を支える新規プロジェクトとは

食品、スキンケア製品、半導体材料……と、アミノサイエンス®を軸にさまざまな事業を展開する味の素社。あらゆる分野に挑戦してきましたが、未知の領域がまだ残されていました。そう、その領域とはeスポーツの世界です。味の素社では2024年(令和6年)に立ち上がった「eスポーツ支援プロジェクト」を通じて、eスポーツイベントの協賛やプレーヤーのサポートに取り組んでいます。

「味の素社とeスポーツ」は意外性しかない組み合わせですが、その背景には「知れば納得のストーリー」がありました。味の素社で「eスポーツ支援プロジェクト」を立案し、自らがリーダーとなった野中拓哉さんに、発足の経緯やeスポーツの魅力を伺いました。

野中拓哉

味の素株式会社
R&B企画部
事業創出基盤開発グループ

なぜ、eスポーツ? 味の素社が足を踏み入れた未知の領域

「東京eスポーツフェスタ」や「EVO Japan 2026」など、さまざまなeスポーツイベントに協賛する味の素社。しかしなぜ、eスポーツのイベントに...!?

じつは、こうした取り組みは味の素社の「eスポーツ支援プロジェクト」によるもの。新規事業創出プロジェクト「A-STARTERS」で採択されたことをきっかけに発足して以降、各種イベントにアミノバイタル®製品や冷凍弁当の「あえて、®」などを提供してきました。

味の素社の新規事業創出プロジェクト「A-STARTERS」は、2026年(令和8年)4月より新事業創出プラットフォーム「INNOSEED by Ajinomoto Group」(以下、INNOSEED )として進化しました。

https://story.ajinomoto.co.jp/report/216.html

しかし、キーボードやコントローラーを握るプレーヤーに、アスリートのような栄養サポートが必要なのでしょうか。

そんな素朴な疑問に答えてくれたのが「eスポーツ支援プロジェクト」の発起人である、味の素社R&B企画部 野中拓哉さん。X公式アカウントで活動報告しながら、各種メディアにも積極的に出演。ご自身も現役のプレーヤーとしてイベントに参加し、競技者としてもその魅力を探求し続けています。

プロジェクトオリジナルのリストバンド(非売品)。野中さんのみが保有する超レアアイテム

インタビュー中も格闘ゲームのポーズを決めてくれるなど、サービス精神たっぷり。言葉の端々からゲーム愛がほとばしります!

賞金総額100億円超えの世界大会も。日本でも熱狂が広がるeスポーツとは?

eスポーツとは「エレクトロニック・スポーツ(Electronic Sports)」の略称で、コンピューターゲームやビデオゲームを競技として行うスポーツのことを指します。

競技種目には、チームで戦う対戦型ゲームや個人で順位を競うゲームなどがあり、近年はプロプレーヤーも増えています。「たかがゲーム」と侮ることなかれ。国際大会では賞金総額が100億円に達するケースも珍しくありません。

そこで繰り広げられるのは、奇跡の逆転劇や息の合った連携プレー、そしてプレーヤーたちが織りなす悲喜こもごもの人間ドラマ。ゲームのルールを知らなくても、思わず手に汗を握ってしまう場面が数多くあります。

さらに、2026年(令和8年)に愛知県名古屋市で開催されるアジア最大のスポーツの祭典では正式なメダル競技として採用され、国内でも注目度が高まっています。

熱意を武器に、研究職からeスポーツの道へ

手探りの中、eスポーツ業界で活動する野中さん。今回は「eスポーツ支援プロジェクト」を立ち上げた経緯や活動を続ける思いを伺いました。

ーーー「eスポーツ支援プロジェクト」を立ち上げた経緯を教えてください。

野中さん

私はもともと味の素社の研究所に在籍し、化粧品などに使われる香粧品素材の研究開発を担当していました。とくに人前に立つタイプではなかったのですが、入社当初から「いつかビジネスを立ち上げたい」という思いは持ち続けていたんです。

野中さん

そんなときに出会ったのが「A-STARTERS」(現INNOSEED)です。ただ、当時入社2年目だった私にはプロジェクト立ち上げの経験もノウハウもありません。けれども、自分が本気で熱意を注げる「ゲーム」なら勝算はあるかもしれない。そう思って、応募を決めました。

ーーー入社2年目で新規プロジェクトを⁉それこそゲームのストーリーみたいですね。

野中さん

採択の決め手は2つあると思っています。1つは、eスポーツの将来性をしっかり示せたこと。もう1つは、プロジェクトをやり遂げられる人間だと、熱量を持って伝えられたことです。実際にプレーヤーの皆さんにヒアリングやアンケートを重ねてプレゼンしたことで「野中になら任せられる」と感じてもらえたのかなと思います。

国内最大級のスマブラSPオフライン大会「篝火#15」(2026年5月3日〜5日開催・幕張メッセ)にも行きました(野中さん)

ーーーそれにしても味の素社とeスポーツとは意外な組み合わせです。

野中さん

単にゲームが好きだったから立ち上げたわけではなく、やはりプレーヤーの健康問題をなんとかしたいという思いが強かったです。実際、体調を崩したプロプレーヤーが引退に追い込まれるケースも散見され、深刻な課題になっています。「体調管理」や「コンディション維持」という観点でいうと、味の素社は食を通じた健康・栄養の取り組みを広く行ってきているため、その知見をeスポーツの分野でも活かせると感じました。

ーーーイベントに協賛している企業は多いものの、プレーヤーの健康課題まで考えている企業は、正直あまり見かけません。プロモーション内容とイベントの内容が噛み合っていなくて、あまり印象に残らないケースもありますね。

野中さん

プレーヤーとして見ても、自分たちの活動と協賛企業との関係がいまいち実感しづらいことがあります。だから「eスポーツ支援プロジェクト」は、マーケティングだけに寄らず、業界の将来を見据えて動いていきたいんです。

コンマ数秒の攻防に賭ける、プロプレーヤーの世界

多くの人を熱狂させるeスポーツ。しかし、ゲームに馴染みのない人にとっては「なぜそこまで夢中になれるの?」と不思議に感じるかもしれません。eスポーツならではの魅力や、その奥深さを伺いました。

ーーー単刀直入に聞きますが、eスポーツってそもそもスポーツなのでしょうか?

野中さん

多様な楽しみ方がありつつも、eスポーツは十分にスポーツだと思っています。プロのプレーヤーたちは勝つために日々努力を重ねており、その姿勢は一般的なフィジカルスポーツと同様です。

野中さん

たとえば格闘ゲームでは、技やコンボの入力精度を高めるために、同じ動作を何度も反復します。ただし、それは単に決まった操作を覚えるだけではありません。相手との距離、残り体力、ゲージ状況、時間、相手の癖など、刻一刻と変わる状況の中で、最適な判断を瞬時に選び取り、それを本番の緊張感の中でも正確に実行する必要があります。

ーーーなるほど...そうですよね!

野中さん

これは、野球やサッカーで基礎練習を何百回も繰り返し、試合の一瞬で自然に身体が動くように仕上げていく感覚に近いものです。ゲームを知らない人からすれば、画面の前で指を動かしているだけに見えるかもしれません。しかし、プロの現場では、その一つひとつの操作に勝敗を左右する意味があります。だからこそ選手たちは、細かな入力精度や判断のズレを徹底的に修正し、本番で再現できる状態まで磨き込みます。

ーーーまさに、アスリートそのものですね。

野中さん

さらに、ゲームには「フレーム」という考え方があります。多くの格闘ゲームでは、1秒間を60フレームに分けてゲームが進行していきます。プロは「ボタンを押してから技が出るまでに何フレームかかるのか」「攻撃を出した後、次に動けるまでに何フレームの隙が生じるのか」といったデータを細かく把握しています。

ーーーすごい...そんなに繊細な駆け引きがあるとは知りませんでした。

野中さん

1フレームが1/60秒なので、だいたい0.017秒くらい。それほど短い時間の中で判断する必要があるため、相手の動きを見てから反応していては間に合わない場面も多く、ある程度先読みしなくてはなりません。そのため、プロはフレームを理解するための座学も取り入れています。私自身も机に向かってデータを確認したり、戦略を考えたりすることがよくありますが、そのあたりは情熱だけでは超えられない壁があるとも思います。

技別のフレームデータ。ストリートファイター公式ページより ※2026年7月22日時点のものです

ーーーコンマ数秒の精密な操作が求められるところは、モータースポーツなどにも通じるものがありますね。

野中さん

eスポーツのファンは、そういったストイックな世界に惹かれている面もあると思います。プレーヤーたちが喜びや悔しさをあらわにする瞬間は、ゲームを知らない人でも思わず胸が熱くなるはずです。

ーーー会場の盛り上がりもすごいですよね!配信を見ていてもこみ上げてくるものがあります。

野中さん

けれども、ストイックゆえに健康管理が後回しになっている部分もあると思います。私自身も飲まず食わずで大会に臨んで、帰る頃にはふらふら......なんて経験があります。身をもって知っているからこそ、味の素社がコンディショニングをサポートする意味は大きい。世間では「eスポーツ=不健康」というイメージが先行しがちですが、その誤解が解ければ、もっと広く受け入れられるのではないでしょうか。

ーーー日本のプロプレーヤーは世界的に見て、どの程度のレベルなんでしょうか?

野中さん

格闘ゲームであれば、大会上位に食いこむプレーヤーがたくさんいます。1990年代から続く格闘ゲームブームによって、日本国内で競技シーンやプレーヤー層が長く育まれてきたことが、その土台になっているのだと思います。

ーーーなるほど、日本の格闘ゲームで世界的に有名なタイトルもありますね。

野中さん

一方、FPS(First-person shooter:一人称視点のシューティングゲーム)のような団体競技では、欧米や韓国などと比べると、競技人口や競技文化の厚みにまだ差があるように感じます。海外ではFPSが長く親しまれ、チームで戦う競技としての土壌が早くから形成されてきました。ただ、日本でもここ数年は世界大会で結果を残すチームが出てきており、競技レベルは着実に世界へ近づいています。

ーーーそんなeスポーツプレーヤーをサポートする味の素社製品とは、どういったものがあるんでしょうか?

野中さん

たとえば、手早く栄養補給できる「アミノバイタル®」のゼリードリンクはおすすめです。実際、大会やイベントで配布すると、結構喜んでもらえるんですよ。個人的には「アミノバイタル®ami活®」のフレーバーや食感が好きです。

GRAPHTCUP2026で「アミノバイタル®ami活®」を提供しました

単なる娯楽じゃない。誰もが主役になれる、eスポーツの可能性

野中さんによると、eスポーツは味の素社が推進するDE&Iにも通じているそうです。単なる娯楽にとどまらない、eスポーツの可能性について聞いてみました。

ーーー野中さん自身はプレーヤーとして、eスポーツにどのような魅力を感じていますか?

野中さん

プロアマ問わず当てはまると思いますが、eスポーツは自己実現の手段としても大きな魅力があります。上達してゲーム内のランクが上がったり、難しいアクションがこなせるようになったりと、ちょっとした成功体験が積み重なっていくんです。

ーーー自己実現の手段、たしかにそうですね。

野中さん

それにデジタル上で行われるので、参加するにあたって身体的なハードルが低いんですよ。年齢や体格、障がいの有無といった条件に左右されず、誰もが平等に競えるのはeスポーツならではですね。

ーーーお話を聞いていると、ゲームをやりたくなってきました! 最後に今後について教えてください。注目の集まる大きな大会でのサポートを行って活動をアピールしていく展開でしょうか?

野中さん

それもありますが、いわゆる中小規模のコミュニティ大会などもサポートしながらeスポーツ全体を盛り上げていくことを重視したいです。そして、もっと深い部分までプレーヤーをサポートしていきたいですね。やはり、食品を配布するだけでは健康問題の根本的な解決にはつながらないと思うんです。そもそもeスポーツにおける「食」の重要性を示したデータが少ないので、どんどんプレーヤーと連携して、実態を調査する必要があると感じています。

ーーーまず、サポートしながら現状を知るということですね。

野中さん

「食」を見直すことでプレーヤーのコンディションや競技力が向上すれば、業界全体のレベルアップにもつながるはずです。その結果、ファン層の拡大にもつながっていくのではないでしょうか。将来的には、野球やサッカーのように観る人もプレーする人も幅広く楽しめる競技として定着してほしいです。

今回のプロジェクトについて「いち従業員の取り組みではなく、味の素社の取り組みとして認知度を上げたい」と語る野中さん。言葉の裏には、eスポーツの可能性を信じ、プレーヤーの健康と競技の発展に向き合う強い意志が宿っています。その姿は、困難なステージに挑戦し続けるゲームの主人公そのものです。味の素グループはこれからも、従業員一人ひとりの挑戦を後押ししながら、新たな価値の創造に取り組んでいきます。

味の素社がプロeスポーツチーム「REJECT」とスポンサー契約を締結しました!

2026年(令和8年)4月1日に、味の素社は、プロeスポーツチーム「REJECT」とスポンサー契約を締結しました。味の素社は冷凍弁当「あえて、®」の提供などを通じた同チームの栄養サポート活動を行い、eスポーツ領域で、アミノサイエンス®による貢献を目指します。

プロチームとの連携によって栄養サポート等の知見を蓄積していくことで、「食品を配布するだけでは健康問題の根本的な解決にはつながらない」(野中さん)という課題の解決も期待されます。

この取り組みが、より多くのeスポーツプレーヤー、ファンの皆さまのWell-beingへの貢献や、今後のeスポーツシーン全体の発展につながっていくのでないでしょうか。今後の活動にも注目ください!

2026年7月の情報をもとに掲載しています。

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