活動レポート

従業員が手挙げで挑戦!味の素本社移転プロジェクトとは?

2026年(令和8年)7月1日、味の素社は35年ぶりに本社を移転しました。この本社移転を単なる引っ越しで終わらせず、会社のさらなる価値創出につなげていこうと、2024年(令和6年)から組織横断の手挙げチームで「本社移転プロジェクト」が始動しました。経営層でも総務部でもない従業員が、自ら手を挙げて経営層と一緒に働く場所の設計をリードする画期的な取り組みでした。

このプロジェクトによって生まれた新オフィスには、偶然の出会いや雑談からイノベーションを生むための仕掛けが盛り込まれています。「本社移転プロジェクト」の舞台裏をお伝えします。

TRY&A-CROSS 移転プロジェクトチームより、今回の座談会に参加した味の素株式会社のみなさん

写真左から、稲角裕子(グローバルコミュニケーション部)、原田真志(バイオ&ファインケミカル統括部)、髙井悠紀子(サステナビリティ推進部)、伊藤紀子(冷凍食品事業部)、内藤健佑(コンシューマーフーズ事業部)

味の素本社が移転する理由とは?

味の素社の新オフィスは東京駅八重洲中央口から徒歩7分ほど、中央通りに面したTODA BUILDINGの23階から27階です。

移転前の味の素本社は、新オフィスにほど近い昭和通り沿いに立つ自社ビルでした。

今回、移転となった理由は、本社オフィスを「さらなる共創・共成長を生み出す場」へとアップグレードするため、味の素グループのパーパス実現を見据えた投資の一環でもあります。また、建設から35年が経ち、物理的にも機能的にも古くなっていたことも移転の一つの要因です。

新オフィスに入る従業員は約1,400名。移転前は本社ビルに約1,200名、周辺のビルに約200名と分散していましたが、新オフィスにすべて集約されました。

新オフィスが入るTODA BUILDINGは、高い環境性能(ZEB※1認定)とBCP※2(事業継続計画)を備えた先進的な複合ビルです。

※1 ZEB
ZEBとはNet Zero Energy Buildingの略称で「ゼブ」と読みます。エネルギー消費を減らすとともに太陽光発電などでエネルギーを創出することで、年間に消費するエネルギーの収支をゼロにすることを目指す建物のこと。認定は国の制度に基づき、第三者機関によって行われます。

※2 BCP
BCPとはBusiness Continuity Planの略称。地震などの自然災害、感染症の蔓延、サイバー攻撃など、企業活動に甚大な影響を及ぼす緊急事態が生じた際に、企業の損害を抑え、事業が継続するための行動計画のこと。

TODA BUILDINGは戸田建設の本社ビルですが、テナントとしてアートギャラリーやミュージアム、レストランが入居し、その23階から27階が味の素社の新オフィスです。


2024年(令和6年)にオープンしたTODA BUILDING。アート&カルチャーのイベントや展示が楽しめる複合施設で、一般の人やインバウンドも多く訪れます

味の素本社 125年の歴史

1909年(明治42年)を創業年としている味の素社。その本社建物の変遷をご紹介します。

1901年(明治34年)東京市京橋区弥左衛門町11番地(現・銀座4丁目)

創業者二代鈴木三郎助が広さ6坪の一軒家を借り、東京事務所としました。

1908年(明治41年)東京市麹町区八重洲1の1丸の内三菱一号館

:味の素社の前身、合資会社鈴木製薬所の事務所を置きました。「味の素®」が発売されたのは翌1909年(明治42年)です。

1909年(明治42年) 東京市京橋区南伝馬町1-12(現・京橋1-6)

中央通りに面した3階建ての事務所に移転。味の素社が京橋の地に初めて置いた本社です。この年を、創業年と定めています。

本社は震災後に再建されました


1932年(昭和7年) 東京都京橋区宝町1-7(現・京橋1-15)

(株)鈴木商店の本店ビルが竣工しました。地上8階建てで、建屋内は冷房が完備された当時としては立派なビルでした。

1972年(昭和47年)東京都中央区京橋1-6

1909年に本店事務所を置いた京橋1-6に地上9階建ての新本店ビルを建設しました。

1991年(平成3年)東京都中央区京橋1-15

地上14階、地下2階の本社ビルA棟が竣工しました。35年を経て、2026年(令和8年)6月30日、その役目を終えました。

「本社移転プロジェクト」に手を挙げたのはワクワクが大好きな人たち

一般的なオフィス移転では、重要事項は経営層と総務部を中心に決定し、その後は専門のコンサルタントが移転計画を担うケースが一般的です。

今回の移転で画期的だったのは、従業員が手挙げで「本社移転プロジェクトチーム」に参画し、新しいオフィスの在り方を作り上げたことです。そして、その構成メンバーは部署や部門を超えた組織横断型のチームであるということです。

味の素社は2024年度(令和6年度)から、ふだんの仕事とは別に、社内横断型のプロジェクトに自主的に参画する「TRY&A-CROSS」を実施しています。本社移転2年前、そのひとつに「本社移転プロジェクト」が始動し、30数名が集まりました。

TRY&A-CROSSとは

「TRY&A-CROSS」とは、味の素社の取り組みで、2024年度(令和6年度)より組織横断プロジェクトへの手挙げ参画施策(社内副業)として導入しました。

この施策を通じて、テーマに即して所属部門の担当業務の枠を超えて組織横断する働き方を促進しています。従業員が失敗を恐れず自発的に社内外にオープンにつながり、多様なリーダーシップ・経験・知識に触れて自身を磨くとともに、他者の挑戦も応援することで成長実感や貢献実感を高め合い、イノベーションを共創し、働きがいが向上している姿を目指しています。

プロジェクトのメンバーは、部署もキャリアもさまざま。いったいどんな理由で参画したのでしょうか? 「本社移転プロジェクト」のメンバーに聞いてみました。

伊藤さん

本社が移転するなんて一生に一度あるかないかの大イベントです。こんなワクワクできる機会を絶対逃してはいけない!と思いましたし、「本社移転プロジェクト」という名前にワクワクしました。

原田さん

以前から、縦割りになりがちな組織の壁を打ち破りたいと思っていたので、多様なメンバーとワクワクできる新オフィスをつくりたいという思いがあふれ、手を挙げました。

稲角さん

私はキャリア採用なので、10年以上経っても社内に知り合いが少なかったんです。もっと他部署の人とつながりたいなと思って参加しました。

思いはそれぞれですが、ワクワクする新オフィスをつくりたい思いは共通していたようでした。

プロジェクトメンバーによる会議の様子

新オフィスでは知らない人とも役員とも自然につながる?

味の素グループのパーパスは、「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」ことです。そして、新オフィスは「パーパスとASV※3を体感し、さらなる共創・共成長を生み出す場」と位置づけられています。

※3 ASV
ASVはAjinomoto Group Creating Shared Valueを略した言葉です。 CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)に由来しており、企業が自社の売上や利益を追求するだけでなく、自社の事業を通じて社会が抱える課題や問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的な価値も創造されることを意味します。

では、このコンセプトをどのようにフロアに落とし込んでいったのでしょうか?

新オフィスは23〜27階の5フロア、約11,900㎡(約3,610坪)に及びます。「個性の発揮が共創・共成長につながる」という考えのもと、それぞれのフロアに次の5つの「共創コンセプト」が策定されました。

各フロアのコンセプト

27階 五感のもと - Sense Base -

"味の素KK玄関"(来訪者エントランス)、展示スペース、"味の素KK食堂"、カフェ、売店など/食とアートを通じて、五感でグローバルな多様性を感じられる場。社内外の来訪者との接点。

26階 熟考のもと - Mind Base -

部門ネイバーフッド&共創エリア/思索と熟考の場。アイデアや考えを深めることができる。

25階 共鳴のもと - Echo Base -

部門ネイバーフッド&共創エリア/人とつながり、共鳴が生まれる場。オープンな場所での発表・コミュニケーションができる。

24階 試行のもと - Trial Base -

部門ネイバーフッド&共創エリア/ワークショップ、プロジェクト推進などを日常的に挑戦する場。

23階 交差のもと - Hello Base -

個人ロッカー、執務ラウンジ、役員エリア/部署を超えた交流・共創の起点。

とくにユニークなのが、23階の「交差のもと」です。ここには従業員約1,400名のロッカーが集合。しかも部署ごとではなく、ランダムに配置しています。「交差のもと」の執務ラウンジには9個の棚があって、各部署が今発信したいことが展示されています。出社するたびにさまざまな部門からのメッセージが自然と目に触れるレイアウトです。自分の部署だけ、自分の仕事だけに向きがちな視線を外に向けさせ、新たなつながりを生むきっかけを提供しています。

23階 交差のもと

原田さん

旧本社ビルではエントランスからエレベータに乗り、自分の部署階に直行する人がほとんどで、ほかの階の人たちと話す機会が少なかったと思います。新オフィスではロッカーで部署もキャリアも異なる人と顔を合わせ、話したこともない人とも自然に会話できるようにというのが狙いです。

「役員エリア」が同じフロアに配置されていることも特徴的です。

髙井さん

旧本社ビルでは役員エリアは最上階にあり、ふだん従業員が行き来する場所ではありませんでした。新オフィスでは、各フロアに役員室や役員エリアがあり、また役員も自由に席を選択いただいていることから、顔を合わせることが増え役員と従業員との距離感が近くなったと感じます。

偶然の出会いと会話、そこから発見やアイデアが生まれそうな動線が張り巡らされていることが、新オフィスの大きな特徴と言えるかもしれません。

25階 共鳴のもと

働き方はどう変わるか?ポイントは"雑談"にあり?

新オフィスは、はどのフロアにも固定席はありません。仕事内容に合わせて働く場所を選べる「ABW※4と、部署ごとのゆるやかな活動エリア「ネイバーフッド※5の2本立てが特徴です。

※4 ABW
ABWとはActivity Based Workingの略。その日の業務内容や気分に合わせて、従業員が自主的に仕事する場(席)や時間を選んで仕事するスタイル。「フリーアドレス」が単に席を固定しないオフィススタイルを指すのに対し、ABWは生産性向上やイノベーション創出が期待されたワーキングスタイルです。

※5 ネイバーフッド
ネイバーフッドとは、「近隣」を意味するneighborhoodsを由来としたビジネス用語。部署やプロジェクトチームなど、仕事の関連性の高い従業員の席を近接させるオフィス内のレイアウトを指します。

ーーー新オフィスはABWとネイバーフッドの2本立てということですが、以前と比べてどのように変わったのでしょうか?

原田さん

旧本社ではフリーアドレス制を採用していました。出社してから自席を確保するのですが、だいたいみなさん、いつもと同じテーブルや席に着くことが多く、気がつけば、ほとんどの人が部署ごとに固まっていました。共創を促進するため、この状況を脱却することも、「本社移転プロジェクト」のひとつの挑戦でした。

ーーーフリーアドレスではそれほど流動的にならなかったのですね?

原田さん

はい。そこでABWを採用するとともに、部署ごとのゆるやかなゾーニングであるネイバーフッドにも、さまざまなエリアを設けることにしました。たとえば、人と話がしやすいテーブル、ひとりで集中できるデスク、隣の部署とコラボレーションできるスペースなど。ネイバーフッドの中でも一人ひとりが自律的に席を選べるようにしたことが、新オフィスの大きな変化です。

ーーー中には、自席が決まっていたほうがいいという人もいらっしゃるのではないですか?

髙井さん

ええ。いきなり席は自由にどうぞと言われても不安に感じるという方はいらっしゃいます。そういう意見も大切にしながら検討を重ねました。

髙井さん

実際に働いてみたら「意外といい!」ということがたくさんあると思っていて、私自身、新オフィスに移転してから積極的に様々なエリアで仕事をしています。
「ここ、緑が多いし、眺めも良くて仕事に集中できますよ!」と周りのメンバーにおすすめしたり、逆にみなさんのお気に入りスポットを教えてもらったりしています。

内藤さん

ぜひ、みなさんにお気に入りの場所を複数みつけてほしいですね。なので、「一日中、同じ席に座らないでくださいね」ということはアピールしていきたいです(笑)会議などで長く席を外す場合は、荷物ごと移動してくださいとアナウンスしています。ロッカーを活用して荷物をスリムにするのもいいかもしれないですね。

ーーー「本社移転プロジェクト」に対して、ほかにどんな声が寄せられていたんですか?

内藤さん

「会議室が少ない」という声がありました。大人数が入れる会議室が減って困ると。でも大丈夫です。同じビル内にレンタル会議室もありますし、新オフィスにはオープンな環境で話せるスペースを多く設けています。

髙井さん

そもそも会議って会議室でやる必要あるの?という考え方もあると思います。閉めきった部屋を出て、眺めのいいオープンな場所で打ち合わせをしたっていいのでは?新しいアイデアが出てくるかもしれないし、通りがかりの人を巻き込んで思いがけない視点をもらえるかもしれません。そんな偶然の出会いや発見が生まれたら、なんだかワクワクしますよね。

ーーー先日、中村社長が新オフィスへの期待として「雑談ができるとええな」とおっしゃっていました。

稲角さん

私たちも"雑談"が大切だと思っています。個人の成長と組織の共創力を高めるちょっとしたきっかけやエンジンとして人を動かすのが"雑談"だと思います。そのために、もっとオープンに話す場があればよいと考えました。

髙井さん

偶然の出会いを増やしていきたいんです。個性と個性が出会い、ぶつかり合うところにイノベーションは生まれてくると思います。共創スペースの配置やデザイン、人の動線、すべては偶然の出会いを狙ったものです。

新オフィスの働き方が組織と社会を変えていく!?組織横断プロジェクトは続く

2026年(令和8年)7月1日、味の素グループは新オフィスTODA BUILDINGで稼働開始しました。「本社移転プロジェクト」もひとつの区切りを迎えました。

ーーーみなさんがプロジェクトに参画したことで得た気づきや学びについて教えてください。

伊藤さん

社内でいつも同じ人としか話をしていなかったなと、あらためて感じました。同時に、いろんな人の考えを聞くことの難しさに気づかされました。組織横断って、簡単じゃないけれど大事だなと思います。

原田さん

従業員同士がもっとお互いのことを知れば、相乗効果でいいものが生まれることが実感できました。社内の個性を集め、ブラッシュアップしていけば、絶対、イノベーションが生まれると確信しています。

稲角さん

新オフィスが味の素グループの価値共創の発信ベースとなるのだから、一貫性を持った発信体制にできないかと上司に相談したところ、後押しする形で新オフィスコミュニケーション設計チームが結成されました。これからもチャレンジを続けていきたいです。

メンバーの言葉から、あらためて、ふだんは別々の部署で働く従業員が集まって活動することの意義が感じられます。

髙井さん

新オフィスを私たち自身はもちろん、自分たちの子どもたち、未来の人たちがここで働きたいと思える場にしていきたいですね。

一人ひとりがいきいきと働きながら成長できる、そんな持続可能な働き方をこれからも模索していきたいと思います。 私たち自身も挑戦し続けることで進化していきたい。その挑戦が味の素グループだけでなく、社会にとっても良い変化につながればうれしいですし、きっとつながっていくと信じています!

「本社移転プロジェクト」は今後、新オフィスの運用に関わるプロジェクトにアップデートして継続する予定です。

本社移転というビッグイベントを機に、企業と従業員はどのように変わり、どのように成長していくのでしょうか?そしてそこからどんなイノベーションが生まれるのでしょうか?移転後に生まれるストーリーが楽しみです。

次なるステージへ。味の素㈱新本社移転の記録

2026年8月の情報をもとに掲載しています。

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