パラリンピックにおいても、リオ2016パラリンピック競技大会以降アスリート支援を実施し、おもに食事・環境面からのサポートを行ってきました。
そして2026年(令和8年)に開催されるミラノ・コルティナ2026パラリンピック冬季競技大会(以下、ミラノ・コルティナ2026冬季大会)では、これまでよりもさらに強力に選手をサポートする計画が進行中。なんと今回は、冷凍弁当「あえて、®」や「おべんとPON!®」などの冷凍食品を現地で提供するというのです。
「なぜ、味の素社が選手の食事を提供するの?」「冷凍食品の輸送や保管など大変なのでは?」
ストーリーでは、味の素社の「ビクトリープロジェクト®」サポートディレクターの蘆名真平さん、篠澤尚人さん、そして味の素冷凍食品株式会社で冷凍食品のマーケティングを担当している片岡知さんに、湧き出るさまざまな疑問をぶつけてきました。
味の素社と味の素冷凍食品社がタッグを組んで挑む「本気の」支援プロジェクトの内容に迫ります。
*「ビクトリープロジェクト®」とは、国を代表する選手やその候補選手を対象に、国際競技力の向上およびメダル獲得増のため、味の素社が行う「食とアミノ酸」によるコンディショニングサポート活動です。

蘆名 真平
味の素株式会社
コーポレート本部 グローバルコミュニケーション部 スポーツ栄養推進グループ

篠澤 尚人
味の素株式会社
コーポレート本部 グローバルコミュニケーション部 スポーツ栄養推進グループ

片岡 知
味の素冷凍食品株式会社
経営企画部 経営企画グループ
これまでのオリンピック・パラリンピックで、味の素社はどんな支援をしてきたの?
味の素社は、2003年(平成15年)から日本オリンピック委員会(JOC)のオフィシャルパートナーとなり、トップアスリートの強化支援を行ってきました。さらに「オリンピック競技だけでなく、パラリンピック競技もサポートしよう」という思いのもと、2015年(平成27年)には日本パラスポーツ協会(JPSA)のオフィシャルパートナーとなり、広くパラアスリートたちの支援を行ってきました。
現在は、日本パラリンピック委員会、一般社団法人 日本パラ水泳連盟、一般社団法人 日本車いすバスケットボール連盟、NPO法人日本ブラインドサッカー®協会と契約するとともに、選手個人ともパートナー契約を結び、栄養サポートを行っています。
ーーーパラアスリートへは、これまでどのような支援を行ってきたのですか?
蘆名
味の素社は、パラアスリートへアミノ酸や調味料、スープや冷凍食品などを活用した食事や、栄養バランスについての情報提供を実施しています。パラアスリートがコンディショニングを崩さず最後まで戦うための栄養サポートです。
これは、「ビクトリープロジェクト®」の活動から誕生した、"おいしく食べてカラダづくりを行う栄養プログラム「勝ち飯®」"の知見を生かしています。

篠澤
味の素社は、リオ2016大会以降のパラリンピックで日本代表選手団へのサポートを行いました。私自身は蘆名と一緒に2023年(令和5年)の杭州2022 アジアパラ競技大会、2024年(令和6年)のパリ2024パラリンピック競技大会で日本代表選手団の現地サポートを経験し、パラアスリートたちが現地でどのような支援を必要としているかを肌で感じてきました。
ーーー味の素社は、これまでの国際大会でも食のサポートを広く展開しています。ただ、選手村でも幅広いメニューでの食事が提供されているはず......。なぜ、それ以上の食の支援を行っているのでしょうか?
蘆名
確かに選手村で食事はできるんです。でも大会期間中を通しておいしくしっかり食べ続け、「自分のコンディションを整える」ことは容易ではありません。だからこそ味の素社は、現地にてJOCおよびJPCと共同で食の支援を行っています。
そこでは日本人が普段から親しんでいる「だし」や「うま味」がきいた補食を提供し、選手たちの体と心にほっとしてもらえる、元気になれる場所を作ってきました。
篠澤
パリ2024パラリンピック競技大会では、「Café Du Dashi(カフェ・ドゥ・ダシ)」という屋台風の「だし湯」提供スペースを作りました。

篠澤
緊張感が高まる大会期間中でも、ここで選手の皆さんのリラックスした顔を見ることができ、コンディションニング維持に貢献できたのではないかと感じました。
パリ2024パラリンピック競技大会では、「だし湯」でほっと一息つく時間を提供
味の素社は、「ビクトリープロジェクト®」の一環として、パリ2024パラリンピック競技大会で屋台風の「Café du Dashi」を出店。「だし湯」や、味の素AGF社の香り豊かなレギュラコーヒーなどを提供しました。そのほかにもサポートブースでは「アミノバイタル®」等のサプリメントの他、「たんぱく質がしっかりとれる」シリーズの味噌汁とスープ、「クノール®ポタージュで食べる豆と野菜」やおかゆなどを提供。それぞれの選手が必要な栄養素を必要な分だけ補給でき、日本の味を思い出して安心してもらえるよう、多くの商品を用意してパラアスリートたちをサポートしました。

ミラノ・コルティナ2026冬季大会では、冷凍弁当「あえて、®」など冷凍食品の現地提供に初挑戦!
ーーーミラノ・コルティナ2026冬季大会は、2026年(令和8年)3月6日(金)に開幕し、3月15日(日)まで10日間にわたって開催されます。今回、日本代表選手団は選手・スタッフを含めて90名以上になることが予想されています(北京2022パラリンピック冬季競技大会では73名)。今回はさらなる挑戦ということで冷凍食品を提供する、ということなんですね?
蘆名
はい。今回は冷凍食品を現地で提供したいと考えています。「もっと現地でサポートできることはないか」と考えているなかでたどり着いたのが、グループ企業である味の素冷凍食品社と当社が協働して展開している冷凍弁当「あえて、®」です。
レンジで温めるだけで、栄養価が高く、食物繊維量や塩分の量にも配慮されたおいしい食事が摂れる。これをぜひ現地で提供したいと思い、味の素冷凍食品社に声をかけました。
片岡
お話を聞いたときは、素直に「うれしい!」と感じました。「あえて、®」は「まぜご飯とおかず」が入った冷凍弁当で、これひとつで1日あたりの摂取目安の1/3の野菜・食塩・食物繊維を目標に開発しています。

片岡
手軽でおいしい「あえて、®」を日本から遠く離れたイタリアでがんばるパラアスリートの皆さんに食べてもらい、そのパフォーマンスを少しでも支えることができれば、こんなにうれしいことはありません。
蘆名
パラアスリートの体調管理はとても繊細です。少しの環境の違い、食事内容の違いで体調を崩してしまうことも少なくありません。そんななかで栄養バランスの良い、慣れ親しんだ日本の味が食べられる「あえて、®」は良いサポートをしてくれそうだと期待しています。
篠澤
「あえて、®」のほかにも、冷凍食品の「おべんとPON®」も現地に持っていく予定です。

左から「おべんとPON®」からあげ、「おべんとPON®」とり天 https://www.ffa.ajinomoto.com/obentopon
篠澤
「おべんとPON」はレンジで解凍しなくても、自然解凍でいつでも「からあげ」などの栄養価の高い食品が食べられます。過去の大会では「地面が凍っているから転倒したくない」と自室にこもり、ずっと味の素社のおかゆやスープを食べていた選手もいました。そんな方たちにとって、これは救いになるはずです。
片岡
「あえて、®」には約60種類のメニューがあります。今回はそのなかから、たんぱく質などアスリートに必要な栄養素を多く含んだメニュー6種を現地で提供する予定です。
冷凍弁当「あえて、®」とは
「あえて、®」は、2024年(令和6年)に味の素社が販売をスタートした「まぜご飯とおかずの一食完結型宅配冷凍ストックご飯」です。人気の「ギョーザと干しエビのまぜご飯」など、現在60種類以上のラインナップがあり、6食、12食、20食の中からコースを選択。月1回の定期便で自宅に「あえて、®」をお届けしています。
日本から大会会場までの輸送にかかる時間は、約24時間!?「あえて、®」を、現地まで溶けることなく運べるのか?
ーーー冷凍弁当の「あえて、®」や冷凍食品を日本から遠いイタリアまで持って行き、現地で提供することは簡単ではないような気がしますが......。
篠澤
そのとおりです。じつは冷凍食品を長時間、品質が変わらない状態で空輸するというのがなかなか難しくて......。今、そのハードルをどう越えていくかをさまざまな協力機関と相談、調整しています。

片岡
私たちも工場があるタイから日本まで飛行機でサンプルを運ぶことはありますが、この場合は、冷凍状態を保つ必要があるのは6時間程度なんです。しかしイタリアまで運ぶとなるとフライトが15~20時間程度、空港から数時間かけて荷物を出し、現地に冷凍車で運ぶことを考えると約24時間は冷凍状態を保っていたいところです。
篠澤
どのような形状の発泡スチロールボックスを用意し、どのくらいのドライアイスを入れていればこれが実現できるのか。そして、それらをどう効率的に現地まで運ぶか。今まさに、地道に計算しているところです。
片岡
私たちにとって、冷凍食品をこんなに長い時間をかけて遠くまで運ぶのは初めての挑戦です。途中で溶けてしまっては、おいしくて安全な食事を選手に提供できなくなってしまうので、なんとかこのコールドチェーン(消費者まで一定の低温状態を保ち、流通させる仕組み)を確立させたいです。

ーーーミラノ・コルティナ2026冬季大会は、都市部から山岳部まで広い地区で競技が開催されるそうですね。選手村もミラノ地区、コルティナ地区、ヴァル・ディ・フィエンメ地区の3か所に設置されるとか。そのなかで味の素社は、どちらのサポートを予定しているのでしょうか?
蘆名
日本パラリンピック委員会(JPC)と連携して、3か所で補食の提供を行います。
その中でもっとも過酷な山岳部コルティナ地区ではパリ大会の「Café Du Dashi(カフェ・ドゥ・ダシ)」に代わる「いつでも、ふぅ。広場」を展開予定です。ここで前回大会時よりもさらに風味豊かなだし湯と、イタリアの硬水でもおいしく飲める味の素AGF社のコーヒーなどを提供します。
ーーー冷凍食品を提供するのは、コルティナ地区のみなんですか?
蘆名
そうなんです。じつはコルティナの選手村の敷地は横長で、宿泊施設も簡易的なコンテナ式になる予定です。こうした点から、利便性も含めておそらく選手のコンディション維持がもっとも難しい拠点になるはず。だからこそ、大会開催日の約1週間前から私たちも現地に入り、この場所でしっかりと選手のサポートをしていきたいと考えています。
篠澤
ミラノとコルティナ間の移動は約5時間かかることもあり、コルティナ以外の拠点は日本パラリンピック委員会(JPC)に運営をお任せして、「アミノバイタル®」などのサプリメント、レトルトのおかゆや「クノール®」のスープ、インスタントコーヒーなどを提供する計画を立てています。
前人未到のこの取り組みを通じて、パラアスリートの魅力を発信していきたい
ーーー味の素社とグループ会社である味の素冷凍食品社がタッグを組んでのパラアスリート支援。楽しみではありますが、海外への輸送、現地運営など、乗り越えるべき課題もたくさんありそうですね。「それでも実現してみせる」という強い思いは、どこから生まれてきたのでしょうか。
蘆名
じつは今回の企画は、動き出すまでにもさまざまな困難があったんです。当初、周囲の反応は「無理だろう」という意見が大半でしたし(苦笑)
ーーーそうなんですか?
蘆名
でも、味の素社は、DE&I、つまり「多様性」を取り込み、それぞれに「公平」な機会提供のもとで、互いに尊重しながら成長できる環境づくりを目指すことを掲げています。だからこそこのパラアスリートの支援は「私たちがやるべきことだ」と信じて篠澤さんと一緒に動いてきました。

蘆名
味の素冷凍食品社との連携が叶ったのは、篠澤さんが長年築いてきた人脈と経験のおかげです。これを駆使して片岡さんにつながり、プロジェクトが本格的に動き出しました。
篠澤
グループの力を結集すれば「できないことはない」と感じていましたね。「食を通じてWell-beingを実現しよう」とする味の素社にとって、間違いなくやる意義のある企画。実現に向けて動き出すことができうれしく感じます。
冷凍食品は、それ自体が味の素グループのイノベーションの塊だと思っています。おいしさ・栄養・冷凍の技術のつまったこの商品に、新たに「輸送」という技術が加わる。これによってまた新しいイノベーションが生まれるのではと期待しています。
片岡
そのなかでも「あえて、®」は、難しいと言われていた「ご飯とおかずを同時に温める」ことを実現した、味の素グループの新たな挑戦とイノベーションを象徴する商品です。栄養バランスがよく、手軽な「あえて、®」ならではのおいしさと魅力で、アスリートたちを支えていきたいですね。そして、冷凍食品はただ便利なだけじゃないと多くの人に知ってほしいです。
ーーー企画の実現に向けて最後にメッセージをお願いします。
片岡
今日、話を聞いていて蘆名さんと篠澤さんの経験や知識をもっと吸収し、味の素グループの一員として自分に何ができるのかをさらに見つめたいと感じました。この活動を通して、自分がどう変化していくのか楽しみです。
蘆名
パラアスリートとの関わりは、自分の世界を広げてくれます。「障がい者=かわいそう」という感覚が「競技用車いすや義足をかっこよく使いこなすスゴイ人だ」というものに変わり、人々の世界や幅を広げてくれる光景をたくさん見てきました。片岡さんにもぜひそんな変化を味わってほしいですね。
篠澤
パラアスリートの活躍はまだまだ日本ではそう知られていません。この支援を通して、「あえて、®」を含めた冷凍食品のなかにあるイノベーションや魅力とともに、パラアスリートの魅力をどんどん発信していきたいですね。これらの活動はすべて「Eat Well, Live Well.」につながっていますから。
蘆名
誰もがより良く生きるためには、運動と食事が大切です。その食事と食べてほっとする時間を、いつでもどこでも提供していきたい。「そこまでやるの?」と感じる方もいるかもしれませんが、DE&Iにもつながるこの考えを社内外に伝え、誰もがより良く生きるための「気づき」を多くの方に与えることができればうれしいです。そのために私たちは挑戦し続けたいと思っています。


蘆名 真平
味の素株式会社
コーポレート本部 グローバルコミュニケーション部 スポーツ栄養推進グループ マネージャー
2006年入社。2012年ブラジル法人に出向。「アミノバイタル®」事業と「ビクトリープロジェクト®」を立ち上げる。リオ2016大会は現地にて日本代表選手団をサポート。4年後の東京2020大会は打倒日本を掲げてブラジル版「ビクトリープロジェクト®」の立ち上げ、ブラジル選手団をサポート。2023年より現職。

篠澤 尚人
味の素株式会社
コーポレート本部 グローバルコミュニケーション部 スポーツ栄養推進グループ
1990年入社。入社以降、地方営業所を含め、グループ内でさまざまな経験を積み、幅広い人脈を築く。「ビクトリープロジェクト®」メンバーとして、杭州2022アジアパラ競技大会とパリ2024パラリンピック競技大会の現地サポートを経験。スポーツ庁での経験などを活かして、パラスポーツの魅力の発信に取り組む。

片岡 知
味の素冷凍食品株式会社
経営企画部 経営企画グループ
2008年入社。経営企画部でEC-D2Cのオリジナル商品の企画開発を担当。冷凍弁当「あえて、®」ではセールスも手掛けている。今回、蘆名、篠澤からの声がけにより、グループ内でタッグを組んで冷凍食品によるパラアスリート支援に挑戦。冷凍食品の魅力を世の中に発信していきたいと意気込む。
※味の素㈱は、 TEAM JAPANゴールドパートナー(調味料、乾燥スープ、栄養補助食品、冷凍食品、コーヒー豆)です。
2026年2月の情報をもとに掲載しています。

