「なんとなく意味はわかるけど、具体的には……」という方に向けて、今回はこの「ステークホルダー」についてご紹介したいと思います。
ステークホルダーとは
「ステークホルダー(stakeholder)」は、「出資金(Stake)」と「保有者(Holder)」を掛け合わせてできた言葉で、アメリカのビジネス論理学者、R・エドワード・フリーマンが1980年代に広めたとされています。
フリーマンは、「株主」を表す「ストックホルダー(stockholder)」という言葉をもじり、「組織の目標達成に影響を受ける、または影響を与えることができるすべてのグループまたは個人」という意味でステークホルダーという言葉を使い始めました。現在、日本語では「利害関係者」と訳されます。
では、企業にとっての「利害関係者」って、具体的にどんな立場の人たちでしょうか?
じつは明確な定義はありませんが、一般に下記のような人たちが企業にとってのステークホルダーとされます。
〇お客さま・生活者
〇株主・投資家
〇取引先
〇従業員
〇地域社会
〇社外有識者
〇NPO・NGO
〇業界団体
〇行政機関など
ちょっと意外かもしれないのが、「行政機関」。これは「企業の業績によって税収が変化する」ということで、「利害関係がある」からです。
「地域社会」も一見、企業活動と関係がなさそうですが、「雇用の創出、公害・環境負荷の発生」などの間接的な影響を受けるため、ステークホルダーに含まれます。
なお、「ステークホルダー」と混同しがちな言葉に、「シェアホルダー(shareholder)」があります。
「シェアホルダー」は、議決権を行使する株主の中でも企業の経営に影響を与えるような「大株主」のことです。
ステークホルダーが注目されている背景
ひと昔前と比べて、企業の社会的責任は格段に大きくなってきています。
自然環境の保護、労働環境の整備、人権への配慮、雇用創出、製品品質の保証......など、社会や地球環境のサステナビリティに関する多様な役割を果たすためには、社外の組織や団体との協力・共創が欠かせなくなってきています。
つまり、「ステークホルダー」のさまざまな声を聞いて企業活動に反映させる傾向が強くなっています。
そして近年、「企業は自社や株主だけでなく、ステークホルダー全体の利益に配慮すべきだ」という「ステークホルダー資本主義」の考え方が世界の主流になりつつあります。
各社が自社の利益のみを追求していては、地球規模で考えた場合、「持続可能な成長」を実現できないからです。
それにともない、企業とステークホルダーとの相互理解やコミュニケーションがより重要になってきています。
味の素グループはステークホルダーとの対話を重視
味の素グループは、各ステークホルダーとの双方向のコミュニケーションは重要で不可欠なものと考え、各ステークホルダーの方々とさまざまな場面で継続的な対話を行い、 そこでいただいたご意見を企業活動に反映しています。
お客さま・生活者
・ お客さまの声を反映した製品の改善
・ 生活者の栄養、健康、Well-beingの向上に貢献する提案(減塩、たんぱく質摂取の促進など)、情報提供サステナビリティ情報開示の拡充
株主・投資家
・ 説明会などを通じた当社グループの成長戦略や強みへの理解浸透
・ WEBサイトにおける説明会動画や、無形資産・ガバナンス強化の取り組みに関連する動画の公開
・ 個人株主・投資家向け活動の充実化
・ 投資家からいただく意見の経営やIR活動改善への反映ご意見を経営やIR活動へ反映
取引先
・ 小売店舗や外食店における栄養・健康、Well-beingの向上に貢献する提案(減塩、たんぱく質摂取促進など)、環境負荷削減に貢献する提案など
・ B2B顧客への製品提供、顧客との共創を通じた、環境負荷削減への貢献
・ 当社バリューチェーンにおける人権デュー・ディリジェンスの着実な推進
従業員
・ 経営と従業員の労働安全衛生や給与・福利厚生等、労働環境についての相互理解促進
・ ホットラインなどへの相談内容に基づく職場の改善
・ 外国人技能実習生、特定技能外国人の責任ある雇用の実践
地域社会
・ 各地域に存在する健康・栄養課題の把握、課題解決に向けた取り組み推進(自治体と協働した減塩セミナー、野菜摂取や朝食摂取促進イベントやメニュー提案、ベトナムやインドネシアでの学校給食プロジェクト)
社外有識者/ NPO・ NGO /業界団体など
・ グループポリシーやガイドライン・ 考え方の改定
・ 製配販の業界団体、行政と連携した、日本の加工食品物流の効率化・労働環境改善に向けた取り組みの推進
・ 職場の栄養改善活動の強化
また、味の素グループでは、サステナビリティの観点から企業価値向上を追求していくために、2021年(令和3年)、取締役会の下部機構としてサステナビリティ諮問会議を設置。さまざまなステークホルダーから各分野を代表する方々に参画いただき、味の素グループならではのサステナビリティについて、議論を行い、取締役会へ答申をしました。
そして2023年(令和5年)4月からは、第二期サステナビリティ諮問会議として、決定されたマテリアリティの実装、その進捗についての開示および対話、それらを通じてステークホルダーとの関係構築を行っていくことについて、取締役会のモニタリングを強化する視点で答申を行います。
今後も味の素グループではステークホルダーの方々との対話を大切にして、持続可能な社会の実現に取り組んでいきます。
まとめ
最後に、ステークホルダーについて今回ご紹介した内容をまとめます。
・ 「ステークホルダー(stakeholder)」は、「株主」を表す「ストックホルダー(stockholder)」という言葉をもじり、「出資金(Stake)」と「保有者(Holder)」を掛け合わせてつくられた言葉。
・ 1980年代にアメリカのビジネス論理学者、R・エドワード・フリーマンが広めた。
・ 日本語では「利害関係者」と訳されることが多いが、金銭関係に関わらず、「企業から何らかの影響を受けている人」すべてが含まれる。
・ 「持続可能な成長」を実現するために、世界ではあらゆるステークホルダーの利益に配慮した「ステークホルダー資本主義」が主流になりつつある。
・ 味の素社ではステークホルダーとの対話を大切にし、いただいたご意見を企業活動に反映している。
いかがでしょうか。次回もサステナビリティに関連するキーワードをご紹介していきます。
2024年7月の情報をもとに掲載しています。