活動レポート

マテリアリティってなに?いまさら聞けないサステナビリティ関連用語を学ぼう②

「マテリアリティ」という言葉についてご存知ですか? 

味の素社のサイトには「味の素グループのマテリアリティ」というページがありますし、「ASVレポート(統合報告書)」や「サステナビリティレポート」にも頻繁に出てくるキーワードです。

どうやら非常に重要な言葉のようですが、どういう意味かと言われると、うまく説明できない方も多いのではないでしょうか?

ストーリー編集部では、味の素グループのサステナビリティの取り組みについて、みなさんによりくわしくご理解いただくために、サステナビリティに関連するキーワードをご紹介していきます。

今回は「マテリアリティ」という言葉についてご紹介していきましょう。

マテリアリティとは

一般的に「マテリアリティ」とは、組織・企業にとっての「重要課題」を指す言葉です。

自社の企業活動において重要とされる課題をわかりやすく示すものとして多くの企業において「マテリアリティ」が活用されています。

そもそも「マテリアリティ」とは、企業が投資家や株主などのステークホルダーに対して、取り組みを発信するために活用されている非財務指標のひとつです。
財務指標とは、企業の業績を判断する数字で評価される指標です。これに対して非財務指標とは、経営理念、経営戦略、や環境や社会への取り組みなど、数値化しにくい企業の指標や価値のことをいいます。

つまり「マテリアリティ」とは、サステナビリティの観点から、社会課題の解決と持続可能な発展に向けた重要課題であり、その課題そのものも外部からの評価の対象となる項目といえるでしょう。

なぜ企業はマテリアリティを発信するのか?

現代においては、企業の価値は売上や利益だけでは測れない時代です。財務指標ではなく非財務指標が重要視され、社会的な責任をどう果たしているか、世界や社会の課題にどう取り組んでいるかをきちんと発信することが、企業の責務のひとつとなっているのではないでしょうか。

さらに、ESG投資という言葉をご存知でしょうか?

ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)を考慮して投資先を決定することです。この考え方が、機関投資家やアナリストにとって重要視されるようになるなかで、マテリアリティという言葉は「企業が、自社の持続可能な発展のために、どのようなことを重要項目として取り組んでいるか」をあらわすようになりました。

こういった流れから多くの企業がマテリアリティを掲げるようになったと考えられます。

味の素グループでも、「ASVレポート(統合報告書)」や「サステナビリティレポート」を通じて、これらの取り組みへの発信を続けています。このとき、取り組みのキーストーンとして重要なのが「マテリアリティ」なのです。

味の素グループにとっての重要事項(マテリアリティ)とは?

味の素グループは、2015年(平成27年)から重要事項(マテリアリティ)への取り組みを続けています。

刻々と変化する社会情勢に対応し、また消費者・協力企業・従業員・株主などステークホルダーの意見・期待を踏まえて、継続的に見直しを行っています。

2021年(令和3年)4月に取締役会の下部機関としてサステナビリティ諮問会議が設置され、長期にわたりASV (Ajinomoto Group Creating Shared Value)を実現し続けるために、多様な関係者から期待される「味の素グループにとっての重要事項(マテリアリティ)は何か」を議論してきました。

サステナビリティ推進体制の強化およびサステナビリティ諮問会議委員決定のお知らせ(2021年3月8日)

2023年(令和5年)、味の素グループは4年ぶりに味の素グループにとっての重要事項(マテリアリティ)を改訂しました。これは新しいアプローチによる大きな改訂となり、社内だけでなく社外からも大きな注目を集めています。

味の素グループのユニークな取り組み

2023年(令和5年)に大きく改訂した味の素グループにとっての重要事項(マテリアリティ)は、個別の課題を並べるだけのものではありません。ありたい姿の実現や長期の企業価値向上に向けた重要な事項を掲げ、そのつながりを整理したものとなっています。

サステナビリティ諮問会議の各メンバーがそれぞれの立場を代表して抽出した味の素グループにとっての課題/機会を、継続的な変革およびイノベーションを実現するプロセスとして、つながりを整理しモデル化しました。

これは大変ユニークな取り組みで、一般的な課題の整理だけにとどまらず、長期視点で高みを目指した重要事項(マテリアリティ)となっています。

その重要事項(マテリアリティ)を「"AminoScience for Well-being" アミノサイエンス®によるWell-being」という言葉に集約しました。

味の素グループの重要事項(マテリアリティ)を象徴する「環」

「"AminoScience for Well-being" アミノサイエンス®によるWell-being」とは、アミノサイエンス®の力や可能性(Scientific Possibilities)と人、社会、地球のWell-beingに貢献するストーリーの力 (Story of Wellbeing)を結び付け、価値創造のプロセスを回すことで、サステナブルに成長していくという考え方です。

この価値創造プロセスを環にたとえ、4つのドメインを設定しました。
この環には、インフィニティ(永遠)を象徴するイメージがあり、この環をぐるぐると回し続けることで、サステナブルに企業価値を向上し続けるという意味を込めています。

味の素グループにとっての重要事項(マテリアリティ)一覧表

環によって表された「アミノサイエンス®によるWell-being」に記された味の素グループの重要事項(マテリアリティ)。「4つのドメイン」と「12の要件」「28の期待」を一覧でご紹介しましょう。

1. 共創力

1.1 変革能力

フードシステムの質や、レジリエンス、サステナビリティを高めるイノベーションを促進する、「アミノ・バイオサイエンス」の深化と応用。

1.1.1 アミノ・バイオサイエンスにより強化されるフードシステムおよびウェルビーイングソリューションズ

1.1.2 アミノ・バイオサイエンスの深化と貢献

1.1.3 モノはローカル、コトはグローバル

1.2 透明性・客観性

社会・環境課題のソリューション推進に不可欠なガバナンス体制を進化させ、社会価値・経済価値の創出を評価・測定するためのスタンダードづくりに積極的に参画する。

1.2.1 サステナブルウェルビーイング(WB)を理解し、測定する

1.2.2 環境と社会(E&S)のためのガバナンス

1.2.3 スタンダード作りに貢献

1.3 共同力

グローバルな知のプラットフォームに組み込まれた地域の資産、資源を効率的に活用できる誠実なプラットフォーマーとして、地域社会の長期的な発展を総合的に(ホリスティック)に促進。

1.3.1 ホリスティックなコミュニティ促進

1.3.2 長期的ビジョンのプラットフォーマー

1.3.3 共栄(共存)のための公正なプラットフォーマー

2. 生活者視点*

2.1 ホリスティック&インクルーシブ視点

個人それぞれの主観的ウェルビーイングを向上するための、生活者視点を起点とするR&D能力の向上。

2.1.1 個々人の主観的ウェルビーイングを科学的に強化する

2.1.2 包括的な成長ストーリー

2.2 地域コミュニティ視点

現地の文化や価値観への理解と尊重に基づき、地域の権利を尊重し、権益を促進するような食製品、生産の推進。

2.2.1 ローカル(地域)のニーズに合わせたソリューションの提供

2.2.2 グローバルな多様性・文化への尊重に根ざしたビジネスの推進

2.2.3 地域農業の付加価値化を支援

2.3 未来世代の視点

将来の人口動態におけるライフステージ課題を理解し、長期的な健康に対する意識を高め、栄養をベースとしたソリューションを通じて、より良いライフスタイルに貢献する。

2.3.1 地域の栄養と健康をサポート

2.3.2 将来の人口動態を見据えたソリューション

*「生活者」は日本語固有のコンセプトで、単なるビジネスにおける「消費者」や、ポリティカルサイエンスにおける「市民」ではなく、人をホリスティック(包括的)に定義しようとするものである。生活者は、コミュニティの価値と長期的な権益の(共有された)解釈に基づいて、自分の生活における優先順位を定義するという選択の自由を持つ人である。生活者は社会で共に生きる人間を代表する、究極的かつ最も基本的なステークホルダーである。

3. ウェルビーイング

3.1 ヒューマン・ウェルビーイング

短期的・長期的な事業活動を通じた、権利としてのヒューマン・ウェルビーイングの推進・支援。

3.1.1 食を通じたウェルビーイング

3.1.2 人権としてのウェルビーイング

3.2 コミュニティ・ウェルビーイング

職場を含む様々なコミュニティで、ライフとワークの両面において、個人がやりがいと充実感を得られるよう、個人のウェルビーイングを促進・支援する。

3.2.1 豊かな(flourishing)暮らしを実現する

3.3 地球のウェルビーイング

地球全体のサステナビリティが確保できる食の入手可能性、アクセス、利用を促進する。

3.3.1 地球環境のウェルビーイングを推進

3.3.2 食の安全保障

4. 価値共創(ASV)

4.1 健幸寿命

現在および将来世代が、トレードオフや妥協に陥らず、自身の健康的なライフスタイルを表現し、共創し、実現できるようにエンパワーする。

4.1.1 (健幸)人類の繁栄に貢献するソリューション

4.1.2 自分たちらしい未来を共創する

4.1.3 未来の世代の声を届ける

4.2 コー・ウェルビーイング

地域、資源、能力の違いに関わらず、人々のウェルビーイングを促進するような価値を創造・共有するバリューチェーンにより、サステナブルなビジネスモデルを創造する。

4.2.1 共同ウェルビーイングの促進

4.2.2 インパクトとインフルエンスのあるプラットフォーム

4.3 ソリューションによる価値創造

事業のコアコンピタンスを活用し、リジェネラティブ(再生可能)なフードシステムおよび社会を実現する広がりのあるソリューションを共創する。

4.3.1 コアコンピタンスに基づく拡大可能なソリューションによる価値創造

4.3.2 持続を超え、再生への進化

それぞれの項目のくわしい内容は、こちらのページをご覧ください。

まとめ

最後に、マテリアリティについて今回ご紹介した内容をまとめます。

・マテリアリティとは、「企業が、自社の持続可能な発展のために、どのようなことを重要項目として取り組んでいるか」を意味する。

・企業の価値がビジネスだけでは測れない現代においては、ESG投資の観点からも企業は自社のマテリアリティを積極的に発信していく必要がある。

・味の素グループは2015年(平成27年)から重要事項(マテリアリティ)に取り組んでおり、長期にわたりASV (Ajinomoto Group Creating Shared Value)を実現し続けるため、2023年(令和5年)に大きな改訂を行った。

・味の素グループにとっての重要事項(マテリアリティ)は、一般的な課題の整理や個別の課題を並べるものだけにとどまらず、ありたい姿の実現や長期視点で高みを目指した取組みとして「"AminoScience for Well-being" アミノサイエンス®によるWell-being」という言葉に集約している。

・「"AminoScience for Well-being" アミノサイエンス®によるWell-being」のサイクルを環にたとえ、「4つのドメイン」を設定し、さらに「12の要件」「28の期待」を設定している。

・環には、インフィニティ(永遠)を象徴するイメージがあり、サステナブルに企業価値を向上し続けるという意味を込めている。

<用語集>

ESG(イーエスジー)
ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字を組み合わせた言葉です。近年、ESGの視点を投資判断に取り込む投資家が増え、企業が長期的に成長するためには、ESGの3つの観点が必要だという考え方が広まっており、ESGは現在では企業の価値を評価する材料として使われています。

ASV(エーエスブイ)
ASVとは、「Ajinomoto Group Creating Shared Value」を略した言葉です。 CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)に由来しており、企業が自社の売上や利益を追求するだけでなく、自社の事業を通じて社会が抱える課題や問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的な価値も創造されることを意味します。

このように経済価値と社会価値の2つをともにつくる取り組みがASVであり、ASVを進化させていくことが、味の素グループのビジョンの実現につながると考えています。

2024年4月の情報をもとに掲載しています。

味の素グループは、アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献します

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