活動レポート

従業員の「自分ごと化」から社会の課題を解決!
味の素グループの「ASVマネジメントサイクル」とは?

多くの企業では、経営理念や経営方針を掲げており、その実現についてさまざまな取り組みを推進しています。

こういった取り組みには、従業員の「自分ごと化」が必須です。一般的に難しいとされるこの課題について、味の素グループではある仕組みを導入することで、「志」の醸成と共感、エンゲージメント向上に向けた取り組みを組織的に推進しています。

「私たちの成長が、社会的な課題も解決する!」

なぜそんなことができるのか? 味の素グループの「志」との関係も含め、従業員の「自分ごと化」によって、社会価値と経済価値を創出するためのプロセスについてくわしくご紹介します。

ASVマネジメントサイクルとは

味の素グループは、2023年(令和5年)に「志(パーパス)」を進化させました。

「アミノサイエンス®で、人・社会・地球のWell-beingに貢献する」

健康で幸せな暮らしのため、2030年までに、環境負荷の50%削減と10億人の健康寿命の延伸という、2つのアウトカムの両立実現に向けて取り組みを進めています。

味の素グループの「Our Philosophy」はコーポレートスローガン、志、ASV、AGWの4つで構成されている

この「志(パーパス)」を実現するのが「ASV」です。

ASVとは「Ajinomoto Group Creating Shared Value」を略した言葉です。

ASVとは、企業が自社の売上や利益を追求するだけでなく、自社の事業を通じて社会が抱える課題や問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的な価値も創造されることを意味します。

ASVを実現するためには、味の素社の経営層の取り組みだけではなく、世界中の味の素グループの「従業員一人ひとりの行動」が不可欠です。

味の素グループの「志」と従業員一人ひとりの「志」が重なる部分を考え、従業員一人ひとりが主人公となり、「ありたい姿」の実現に挑戦し続けるという企業文化を、味の素グループは目指しています。

個人によるASVの「自分ごと化」から、組織として成果を創出するまでの一連のプロセスを強化するため、味の素グループでは独自の「ASVマネジメントサイクル」という仕組みを導入しています。

ASVマネジメントサイクルのイメージ図。

味の素グループのエンゲージメントスコアが高い理由とは?

一般的に「自分ごと化」とは、ビジネスにおいて、組織の一員として働く従業員が企業の目標や課題を自分自身の問題として捉えることや、当事者意識を持ち、主体的に取り組むことをいいます。 「自分ごと化」は、従業員のエンゲージメントや生産性の向上、チームの結束力強化につながると考えられています。

しかし、これを言葉で言うことは簡単ですが、実践するとなると難しいといわれています。

米国の世論調査・コンサルティング会社のギャラップ社が発表した「グローバルワークプレイスの現状2023年版」によると「従業員エンゲージメントの強い社員」の割合は、日本の順位は125か国中124位と低かったと示されています。

ところが、2023年度(令和5年度)の調査において、味の素グループの従業員エンゲージメントスコアは76%を達成しました。

従業員エンゲージメントスコアとは
従業員エンゲージメントとは、一般的に「従業員が会社に対して愛着や思い入れをより深めること」や「従業員と会社とのつながりの強さ」などをあらわす言葉として使われています。その従業員エンゲージメントを数値化し成果を確認するものを「従業員エンゲージメントスコア」といいます。後述する「エンゲージメントサーベイ」によってASVの「自分ごと化」の達成度や成果を分析し、ASV実現に向けての指標として毎年測定しています。

その数字を達成した理由のひとつに、味の素グループでは、2020年度(令和2年度)よりASVの「自分ごと化」を高める「ASVマネジメントサイクル」に取り組み、各ステップの中で、さまざまな施策を展開していることがあげられます。

注目を集める味の素グループの「無形資産」

また、「ASVマネジメントサイクル」を実施する背景として「無形資産」の強化という目的もあります。

味の素グループでは「志(パーパス)」の実現のために「無形資産」への重点的投資を行っています。味の素グループの「無形資産」とは「技術資産」「人財資産」「顧客資産」「組織資産」の4つです。

無形資産とは
無形資産とは、企業が所有する土地や建物、機械、設備など物理的に形を持つ「有形資産」ではなく、人の生み出すスキルや経験といった人的資産や経営手段、技術ノウハウ、情報などの知的財産、ブランド価値などが含まれます。

味の素グループが定義する4つの「無形資産」のなかで最も重要だと考えているのが「人財資産」です。

「志(パーパス)」の実現のために熱意あふれる人、顧客の課題と技術をマッチングさせて新たな価値を生み出す人、世界各国の人や文化に密着する人など、多様な価値の人財を獲得し育成していくことが、未来に向けたイノベーションを創出するための人財戦略につながると考えています。

その人財戦略において、「志(パーパス)」の実現に向けた取り組みとして実施されているのが「ASVマネジメントサイクル」です。

とくに日本国内では、2023年(令和5年)3月期から有価証券報告書において「人的資本の情報開示をすること」が義務づけられました。ここでは、従業員の育成方針、目標、実績に加え、男女の賃金格差、女性管理職比率などのダイバーシティー(多様性)に関する指標の記載が義務とされています。

味の素グループがすでに取り組んでいる「ASVマネジメントサイクル」は、人的資本経営において重視される育成方針、目標設定、自分ごと化、多様性、独自のエンゲージメントサーベイの実施などが含まれています。

「ASVマネジメントサイクル」は、味の素グループの「無形資産」の強化ポイントである「人財戦略」において重要な取り組みであるといえます。

では、「ASVマネジメントサイクル」について、次項より順を追ってご紹介していきましょう。

ASVマネジメントサイクルの4つのステップ

「ASVマネジメントサイクル」には大きく分けて4つのステップがあります。

理解/納得」、「共感/共鳴」、「実行/実現」、「モニタリング/改善」というそれぞれのステップによって進められています。

理解/納得

ASVマネジメントサイクルの最初のステップは「理解/納得」です。

ASVエンゲージメント向上のプロセスは、CEOや本部長、グループ会社の法人長などの経営層が従業員との対話を実施することから始まります。

2022年度(令和4年度)のCEOとの対話には国内外グループ会社で全63回、のべ5,106名の従業員が参加しました。

このような経営層との対話を通じて、従業員は経営方針や「志」に理解、納得をして「自分ごと化」したうえで、組織目標とリンクした個人目標を設定します。

共感/共鳴

ASVマネジメントサイクルの2番目のステップは「共感/共鳴」です。

「共感/共鳴」では、個人目標発表会を行います。従業員自身の目標において、「顧客」と「提供価値」を明確にし、その仕事がどうASVにつながるのかを言語化した個人目標を、仲間の前で発表します。互いの目標を認め合い、安心して挑戦できる組織づくりへと進化させます。

従業員が自分の仕事を通じて実現したいASVを個人目標発表会で発表することで、共感を得ながらチャレンジできる企業風土を作っています。個人目標発表会を通じて、従業員一人ひとりが工夫した事例をお互いに共有し、それぞれの課題について活発な議論を通じて、各組織が自走して改善を行い、チーム全体でASVの実現に向けて取り組んでいます。2022年度(令和4年度)の個人目標発表会は、国内外のグループ会社30社で実施されました。

たとえばタイ味の素社では、2023年(令和5年)の従業員参加率が100%(計1,800名が参加)。タイ味の素社には、研究、生産、事業、コーポレートと多様な部門がありますが、参加者の質疑応答も活発に行われ、互いの目標を認め合い、安心して挑戦できる組織作りにもつながっています。

タイ味の素社の2023年(令和5年)の個人目標発表会の従業員参加率は100%!

ブラジル味の素社においては、リモート会議を活用した個人目標発表会が開催されました。生産部門における排水・廃棄物を出さない技術、DXを活用した生産管理、ラテンアメリカにおける食と健康の課題など、さまざまな個人目標が発表されました。

ブラジル味の素社ではリモートによる個人目標発表会が行われた

味の素グループのWorkplace(味の素グループ内でのSNS型コミュニケーションプラットフォーム)や当サイト「ストーリー」でも「私が語るASV」というシリーズを連載し、味の素グループ従業員のASV事例を紹介しています。



実行/実現

ASVマネジメントサイクルの3番目のステップは「実行/実現」です。

「実現/実行」は、ASVを自分ごと化した従業員一人ひとりが自発的に挑戦し、組織やあらゆる壁を越え、チームでASVの実現に向けて取り組むステップです。
また、最もASVを体現した取り組みを表彰する「ASVアワード」を開催しています。

さらに味の素社では、従業員による新規事業創出プログラム「A-STARTERS」の運営も行っています。

取り組みを通じて創出した成果や喜びが、従業員のASVエンゲージメントを向上させ、企業価値を高めていきます。

ASVアワードとは

「ASVアワード」は、ASVを体現した取り組みのうち、とくに秀逸な事例を表彰する制度です。

2022年度(令和4年度)はMSG・核酸事業(うま味調味料のグルタミン酸ナトリウムとイノシン酸の製造事業)におけるグローバルワンチームによる「温室効果ガス削減への貢献」の取り組みが金賞を受賞。

この取り組みのテーマは「無形資産価値の最大化(地球のWell-beingへの貢献)によるSpeed-up x Scaleupへの挑戦」。MSG・核酸事業でのASVを実現するため、海外法人を巻き込んだバリューチェーン横断型プロジェクト「BRIDGE」を立ち上げました。

BRIDGE代表のS&I事業部(当時)・石川浩平さんは「BRIDGEのメンバーは笑顔でASVを実現しています」と語ります。「ASVは会社における私の行動基準。仕事で迷ったときはASVを基準に判断するよう心がけています」という言葉に象徴されるように、業務とASVが密接に結びついていることがわかります。

当サイト「ストーリー」でも「ASVアワード」に関連する記事を公開しています。



A-STARTERSとは

また、2020年(令和2年)3月から、味の素社では、従業員による新規事業創出プログラム「A-STARTERS」というプロジェクトを開始しました。

これは、どんな部署にいても、どんな役職でも、どんなキャリアであっても、アイデアが採択されれば新規事業のリーダーとなって推進できるという画期的な取り組みです。

2023年(令和5年)8月には第1号事業である「LaboMe®」がサービスを開始し、注目されています。


モニタリング/改善

ASVマネジメントサイクルの最後のステップは「モニタリング/改善」です。

「モニタリング/改善」では、毎年実施する「エンゲージメントサーベイ」で、ASVエンゲージメントの進度を測るために分析を行い、その結果から抽出した課題を翌年の計画へ反映させています。

この取り組みの結果、味の素グループの従業員エンゲージメントスコアは2023年度(令和5年度)に76%を達成。2030年度には85%を目指しています。

一方で、エンゲージメントスコアを高めるだけでなく、「エンゲージメントと業績との関係性」まで踏み込んで進化させることも重要だと考えています。

2022年度(令和4年度)よりエンゲージメントと業績の関係性を開示し、2023年度(令和5年度)からは「ASV実現プロセス」の考え方を導入しました。エンゲージメントサーベイの関連設問のスコアから機会と課題の可視化を加速、各組織にエンゲージメントサーベイ結果の分析担当者などを設置し、ワークショップ(初級・上級)などを通じた教育を行うなど、各組織での自律的な活用を推進しています。

無形資産強化の1つである「従業員エンゲージメントスコア」の測定方法は、個人によるASVの理解・納得から、組織として成果を創出するまでの各ステップの実態を把握できる9設問の平均値としています。

エンゲージメントサーベイの9設問
「志への共感」「顧客志向」「ASVの自分ごと化」「チャレンジの推奨」「インクルージョンによる共創」「生産性向上」「イノベーション創出」「社会・経済価値の創出」

どのエンゲージメントサーベイのスコアを改善すれば当社の業績に好影響があるのかを特定し、味の素グループ横断の各社・組織で組織運営や風土改革に取り組んでいます。

ASVエンゲージメントと業績の相関関係とは?

このような取り組みを経て、ASVエンゲージメントが向上することで、業績にどのように影響するのでしょうか。

味の素グループでは、毎年「エンゲージメントサーベイ」の結果を更新して、業績との相関分析を実施しています。過去5回の結果より、「志への共感」「顧客志向」「生産性向上」が一人当たりの売上高・事業利益に相関することが確認されました。

「理解/納得」し、「共感/共鳴」し、「実行/実現」し、「モニタリング/改善」する。従業員一人ひとりの行動が社会課題を解決し、よりよい未来をつくる。「ASVの自分ごと化」を推進し、ASV実現に向け取り組むことで、いま、この瞬間にも、新たな社会価値、経済価値が生まれています。

味の素グループは、「ASVマネジメントサイクル」の取り組みをさらに進化させることで、これからも個人と組織が共に成長しながら、持続的に企業価値を向上させていきます。

ASVの取り組みから生まれたおもなプロジェクト

本記事で紹介した事例以外にも、ストーリーではASVの取り組みから生まれたプロジェクトを紹介しています。ぜひご覧ください。

<用語解説>


エンゲージメント
エンゲージメント(engagement)とは、一般的に「婚約」「約束」「契約」などのことをいいます。エンゲージメントリング(婚約指輪)という言葉でなじみのある言葉です。 企業の人事領域においては「従業員エンゲージメント」として「従業員が会社に対して愛着や思い入れをより深めること」や「従業員と会社とのつながりの強さ」などをあらわす言葉として使われています。
エンゲージメントが低いと人材流出や生産性低下などさまざまな問題を引き起こすため、エンゲージメントを高める取り組みが重要です。エンゲージメントが高いと会社への貢献に直結するため、企業価値を最大化するためには非常に重要な要素といわれています。


エンゲージメントサーベイ
エンゲージメントサーベイ(engagement survey)とは、エンゲージメントの高さを測定する調査のことをいいます
従業員の視点からみた「会社とのつながりの強さ」を数値化して現状を把握するための調査で、従業員が会社や自分の仕事に対してどれだけポジティブな感情を持っているのかを測定することができます。

2024年1月の情報をもとに掲載しています。

味の素グループは、アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献します

味の素グループは、

アミノサイエンス®で人・社会・地球の

Well-beingに貢献します

「最新記事」一覧を見る