活動レポート

そのアイデア、やってみよう!
社員なら誰でも新規事業を立ち上げられる味の素社の「A-STARTERS」とは

「自分の会社でこういうビジネスを始めたら面白いんじゃないか」とか「うちの会社の研究開発と技術をうまく使えば画期的な新規事業ができそうだ」とか「自分の得意分野を活かせばもっと活躍できるんじゃないか」などと考えていても、なかなか現実には実行するのが難しいですよね。

新しい製品のアイデアやビジネスのプランがあっても、実際に実行するためにはいろいろな課題があるし、さらにそれが既存の路線からかけ離れていればいるほど障壁が多い。そう考えている人も多いのではないでしょうか。

じつは、味の素社には「社員なら誰でも新規事業を立ち上げることができ、リーダーとして活躍できる」という「A-STARTERS」と名付けられた取り組みがあります。

これは、どんな部署にいても、どんな役職でも、どんなキャリアであっても、アイデアが採択されれば新規事業のリーダーとなって推進できるという画期的な取り組みです。

今回の記事では、その新規事業を創出するための社内制度「A-STARTERS」とはいったいどのようなものなのか?実際にどのように運営されているのかなどについて「A-STARTERS」事務局担当の皆さんにお話をうかがいます。

「A-STARTERS」とは?

味の素社では2020年(令和2年)3月から「A-STARTERS」というプロジェクトを開始しました。

A-STARTERS ロゴ

「A-STARTERS」は、味の素社の新規事業創出プロジェクトです。味の素社の全従業員を対象に、新規事業立ち上げを望む社員を公募・選抜し、新規ビジネスプランの事業化を推進するものです。2020年(令和2年)を第一期としてスタートし、2022年(令和4年)で第三期を迎えています。

「A-STARTERS」では毎年、事業アイデアの募集と選考を行います。その後、採択されたアイデアのブラッシュアップとテストマーケティングを行い、新規事業として市場参入します。2030年(令和12年)には、それらの新規事業を味の素社の事業として大きく展開させようという長期的な取り組みです

"味の素社の社員であれば誰にでも新規事業の提案ができ、採択されれば、実際に事業化に向けてリーダーシップをとり、事業の責任者として活躍できる。"

この思い切った取り組みには、社内から大きな注目が集まっており、「A-STARTERS」の社内コミュニティには第一期(2020年)と第二期(2021年)を合わせて、500名近いメンバーが参加しており、その中からのべ180件の応募がありました。

『自分で"想い"のあるプロジェクトを推進できる!』『自分のキャリアを自分で切り拓くことができる!』『知識・視野が広がり、社内外のつながりも増える!』『経営陣から、事業化に関するアドバイスを受けることができる!』『チャレンジそのものが評価される!』といったことに魅力を感じる社員も多く、当初の予想を大きく上回る成果を得ています。

第三期となる2022年(令和4年)は8月よりエントリーを受け付けており、今回も多くのユニークな事業アイデアが集まってくるだろうと事務局では大きな期待を寄せています。

なぜ、すべての社員を対象にした提案の機会があるのか?

では、なぜ味の素社は「A-STARTERS」のような思い切った取り組みを推進しているのでしょうか。

味の素社は「食と健康の課題解決」企業となるため、さまざまな変化(地球環境、個人の価値観、技術の変化など)に対し、既存事業の対応に加え、新しい事業モデルを創り出し、自ら変革していく必要があると考えています。

事業モデルの変革を推進するためには、新しい事業アイデアを継続して創出し、磨き上げていく仕組み作りが重要になります。

「A-STARTERS」事務局担当の髙木さん、山田さん、梅津さん、蛭田さんは、新しい事業アイデアを一般の社員から応募を募る理由をこう語ります。

山田:常に新しいアイデアを創出するためには、経営部門や新規事業の役割を担った各部門・グループの担当者が考え続けるだけではなく、より多くの社員ひとりひとりの熱い想いや経歴、経験を活かした幅広いアイデアを集めるべきだと考え、味の素社のすべての社員を対象とした「A-STARTERS」の取り組みがスタートしました。

毎年1回、従業員から新事業アイデアを広く募集し採択されたテーマは、その後、全社の取り組みとして推進していきます。発案した社員は事業の責任者としてリーダーシップをとっていくことになります。

山田:「A-STARTERS」の目標は次世代の事業が生まれることです。また、新しい事業が生まれていくなかで、常に継続してどんどん新規事業が生まれていくような企業風土が定着することも大きな目標です。自律的な人財が育つことが、企業としても大きく成長することにつながります。ですから、社員ひとりひとりが参加することは、企業にとって大きな価値を生むことになるのではないでしょうか。

そもそも味の素社は、いまから約110年前、1909年(明治42年)に、たった二人の人物によって創業したスタートアップ企業であり、フードテック・ベンチャーだったといえます。

「うま味」の発見者 池田菊苗、味の素グループの創始者 二代 鈴木三郎助の写真

「うま味」の発見者 池田菊苗(左)、味の素グループの創始者 二代 鈴木三郎助(右)

「うま味」の発見者、池田菊苗博士(東京帝国大学教授)の「日本人の栄養状態を改善したい」という強い願いを共有した三代鈴木三郎助は事業を開始、世界初のうま味調味料「味の素®」を発売しました。

「食と健康の課題解決」を目指し、常に継続して新しい事業を生み出していくという企業風土は、味の素社のDNAとして根付いているといってよいかもしれません。

走りながら進化しつづける「A-STARTERS」

「A-STARTERS」事務局も今年で3年目。運営していくうえでさまざまな変化があったそうです。

髙木:第一期、第二期と最終選考されなかったテーマに対して、第三期の事前相談をフライング気味に開始しました。第二期のアフターフォローとも呼べるかもしれません。その結果、自分の想いを大切にして、第三期も同じテーマで応募をしようとしている人が複数人いました。

選考に落選したあとも、そのアイデアを断続的に検討するなかで、自然に生活者の体験や属性を深掘りすることができ、ニーズや価値の明確化が進み、アイデアの内容も見ちがえるほどに進化していたそうです。

髙木:また一方で第二期のアフターフォローをしていると、第三期は別のチーム体制で新しいテーマを考えているという人も一定割合でいます。アイデアの筋が悪ければ、過去を忘れて、迅速に新しいチャレンジに向かう。スパッと竹を割るような性格もすごく素敵だなと感じました。「A-STARTERS」は何回でも挑戦できるというような受け皿になりつつありますね。

さらに新規の応募者のために、新事業発案に役立つ勉強会を開催するなど、常に事務局の形も変化しているようです。

髙木:新規事業を担当しているので、応募する方や経営陣の意見も伺い、少しずつ運営のやり方も改善しています。目標、なりたい姿のイメージは変えていませんが、そこにたどり着くやり方は試行錯誤をして進化していきたいと考えています。

新規事業提案の「うま味」発見!個人の想いが形になる

三期目を迎えた2022年(令和4年)の段階で、「A-STARTERS」から生まれ、世に出た新規事業はまだありません。その点において成果はまだ先の話になりますが、運営事務局ではすでに大きな手ごたえを感じているようです。

梅津:「人が育っているな」という実感が強いです。「A-STARTERS」のエントリーフォームは入力するのも結構大変なのですが、応募者からは「応募することで勉強になった」とか、「自身の振り返りになった」といった意見をたくさん聞きます。

また、提案から選考にあたって行われるディスカッションを通じて、応募者自身の現在の部署での仕事にも良い影響を受けているという人も多いそうです。

梅津:社員ひとりひとりの熱い想いやこれまでの経歴、経験を活かして幅広いアイデアが集まっていることから、手ごたえを感じています。ひとりひとりの成長が総和となって、それが、やがて会社の成長につながると思います。事業をつくるということは、社員が成長しているという証だといえるのではないでしょうか。これはまさに、新規事業提案の「うま味」になると思っています。私たちはその一役を担っていきたいです。

また、社外のスタートアップ企業の起業家の方々と対話する勉強会を開催するなど、外部からの刺激を受けることで、応募者の自律性がさらに向上したと感じているようです。

梅津:もともと味の素社の社員は自律している人が多いのですが、携わる社員の自律性、人財育成の観点からも大きく進化しているという印象があります。じつは、これまでの味の素社では考えられなかったような面白いテーマがたくさん集まっています。まだお見せできないのが残念なのですが(笑)

アイデアは、熟成肉のように寝かせておいてもおいしくならない

「A-STARTERS」の今後の課題についても聞いてみました。

蛭田:多くの社員に応募してもらう、という割に応募に対するハードルが高いと思っています。心理的障壁を1ミリでも縮めてあげたいと思っています。そのためには事務局と応募者の距離感を縮める努力が必要だと思い、アフターフォローや社内広報を積極的に行っています。また、募集テーマをひろく、応募しやすくしたいと考えています。

また、社員のなかで「A-STARTERS」を浸透させていきたいと語ります。

蛭田:毎年、夏に募集をかけて、12月に採択をするスケジュールで進めています。味の素社の創立記念日である6月17日ごろには、そわそわしながら、若手社員の同期同僚や部門の上司後輩で「今年はどうする~?」というような会話が生まれるようになることを期待しています。

「A-STARTERS」は、社員ひとりひとりに対して、自分の枠を超えて挑戦する機会を与えています。既存事業やいまの現場の中で仕事をしながら、自分の枠に当てはまらないもの、新しい提案に挑戦したいという姿勢を常に応援していきたいと考えており、いずれ将来的にはこの取り組みを海外のグループ会社にも広げていきたいと考えているそうです。

髙木:「自分の想い=企業の課題・機会=社会の解決すべき課題」となる新規事業を作り続けられるような"型"を浸透させることを目指しています。アイデアは寝かせておいても、熟成肉のようにはおいしくなりません。「そのアイデア、やってみよう!」と評価して頂けるアイデアを見つけ、育て、その先に「食と健康の課題解決」企業への変革を実現し、未来のASV創造に向けて、将来の味の素グループを支える新しい事業モデルをつくっていきます!

今後、「ストーリー」では「A-STARTERS」の活動に注目し、「A-STARTERS」から生まれた事業を紹介していく予定です。ご期待ください!

R&B企画部 「A-STARTERS事務局」 髙木秀祐氏、山田和輝氏、梅津友美江氏、蛭田聡子氏の写真

R&B企画部「A-STARTERS事務局」の皆さん(後列左から髙木秀祐氏、山田和輝氏、前列左から梅津友美江氏、蛭田聡子氏)

<用語集>

ASV
ASVとはAjinomoto Group Shared Valueの略称です。味の素グループでは、事業を通じて社会価値と経済価値を共創する取り組みにより、成長してきました。この取り組みをASVと称し、現在も経営の基本方針(ASV経営)としています。

2022年9月の情報をもとに掲載しています。

味の素グループは、アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献します

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