活動レポート

白熱したボッチャ&ブラインドサッカー®体験!「勝ち飯®」教室から学ぶ「DE&I」と「Well-being」<後編>

2025年(令和7年)2月11日(祝)、東京都パラスポーツトレーニングセンターで開催された「勝ち飯®」教室。鈴木孝幸選手、山本篤さん、鳥居健人選手のパラリピアン3名をゲストに迎え、小学生とその保護者42名が参加しました。

今回の「勝ち飯®」教室は勉強会とパラスポーツ体験会の二部構成となっており、後編記事では二部のパラスポーツ体験会の模様をお届けします。

パラスポーツ体験会を通じて、参加者、パラリンピアン、味の素社従業員はなにを学び、なにを思ったのか。それぞれの言葉で語っていただきました。

鈴木 孝幸 氏

パリ2024パラリンピック競技大会、パラ水泳日本代表。男子50m平泳ぎ(SB3)金メダルなど計4個のメダルを獲得。

鳥居 健人 氏

パリ2024パラリンピック競技大会、ブラインドフットボール日本代表メンバーとして出場。

山本 篤 氏

元パラリンピック陸上競技日本代表。北京2008パラリンピック競技大会から4大会連続出場。2024年5月に現役引退。

パラスポーツ体験を通じて、DE&Iとwell-beingを考える

前編の記事はこちら

今回の「勝ち飯®」教室の目的の1つは、味の素社が推進している「DE&I」や「Well-being」(ウェルビーイング:心身ともに健康で、社会的にも満たされた状態)の大切さを広く伝えることです。

「座学だけではなく、体験することに意義がある」。そう話すのは、味の素社グローバルコミュニケーション部の蘆名真平さん。味の素社による「ビクトリープロジェクト®」のサポートディレクターを担当しており、アスリートやパラアスリートの挑戦を「食」と「栄養」の面から後押ししています。その活動の一環として、蘆名さんが勉強会の進行役を務めました。

司会を担当したのは、同じく味の素社従業員の尾城淳一さんです。尾城さんは生まれつき聴覚に障がいがありますが、手話やテキスト読み上げアプリを活用。表情豊かに進行する姿に誰もが親しみを覚えたことでしょう。

勉強会で司会を務めた尾城さん

また、ゲストの山本篤さん(元パラ陸上選手)、鳥居健人選手(ブラインドフットボール)、鈴木孝幸選手(パラ水泳)がこうして顔を合わせるのは初めてのこと。勉強会の最後には、鈴木選手からのサプライズもあり、大盛り上がり。その様子は前編でお伝えしています。

ゲスト3名が「食」と「栄養」を語った勉強会の記事はこちらから

出るか、ミラクルショット⁉︎山本さんと鈴木選手が参加者とともにボッチャに挑戦

勉強会を終えたら、続いては第二部のパラスポーツ体験会へ。参加者たちが体育室に移動すると、そこには「ボッチャ」用と「ブラインドフットボール」用のコートが準備されていました。手のひらサイズの青・赤・白のボールや、少し小ぶりなサッカーボールと目隠し用アイマスクなど、競技用器具も普段見慣れないものばかり。「これからなにがはじまるの?」と、子どもたちの目が好奇心で輝きます。

この体験会のポイントは、パラリンピアン3名と参加者が一緒にプレーすること。小学生、保護者、パラアスリートなど、体格や体力が異なる人同士でも競い合えるのがパラスポーツの醍醐味です。

参加者は二つのグループに分かれて、パラスポーツを体験します。ボッチャのコーナーには山本さんと鈴木選手が参加しました。それぞれの分野でトップに上り詰めたアスリートたちが交わる特別な一戦。まさに夢の対決です。

チェスさながらの頭脳戦! 駆け引きが魅力のボッチャ

ボッチャは、ヨーロッパ発祥のパラスポーツ。運動能力に重度の障がいがある人たちでも楽しめるスポーツとして考案されました。白いボール(ジャックボール)に向かって、対戦者同士で赤色と青色のカラーボールを投げ合い、目標にどこまで近づけるかを競います。そのルールから「カーリング」にたとえられることも。ボールを転がしたり、脚で蹴ったりするのも許されているので、攻め方は多種多様。直接投げられない人は「ランプ」という、スロープのような器具を使って投球します。見た目以上に奥が深く、自分のボールで相手のボールを弾いたり、ボールのコースをふさいだりと、チェスやビリヤードのような駆け引きも楽しめます。

勝敗がわかりにくいときは審判が目標とカラーボールとの距離をチェック

みんなでウォーミングアップをしたのち、山本さんのチームと鈴木選手のチームで対戦がスタート。鈴木選手はボッチャ経験者とあって、クールな表情で冷静に試合を進めていきます。

ボッチャ経験者だけあって、落ち着いた投球を見せる鈴木選手

一方、山本さんのプレーは情熱的。「あ〜、今のは惜しかった!」「審判!ジャックボールとの距離測ってみて!」と、試合を盛り上げます。

最初は緊張気味にプレーしていた参加者たちも、山本さんの熱量に感化されたのか、次第にヒートアップ。大人も子どもも投球に夢中です。

「次は決めよう!」「ナイスショット!」と、いつしかエールをおくり合うようになり、ファインプレーが飛び出すとチームメイト同士でハイタッチする場面も見られました。

狙いを定めて、慎重に......

親子の絆が活かされる? 参加者たちがブラインドフットボールの醍醐味を体験

お隣のブラインドフットボール(ブラインドサッカー®)体験もボッチャ体験に負けないほどの熱気に包まれました。この日集まった参加者の多くは、おそらくブラインドフットボール未経験。はじめは「目隠しをしながらのサッカーなんて、本当にできるの?」と半信半疑の様子でした。しかし、その疑問はすぐに払拭されることになります。

鳥居選手がデモンストレーションを披露するなり、参加者の視線は一斉に鳥居選手の足もとに集中。ボールの動きを完全に把握しているような華麗な脚さばきに、参加者たちから拍手が起こります。

アイマスクごしに鳥居選手の真剣な表情が伝わってきます

「想像よりもボールが重たい」と、ブラインドフットボールにも興味津々の山本さん

試合中は歓声NG⁉︎ 聴覚を研ぎ澄ませて、ゴールを目指す

ブラインドフットボールは、視覚を完全に閉ざした状態でプレーする5人制のサッカーです。アイマスクを着用した4人がフィールドプレーヤーとなり、弱視の人または目の見える人がゴールキーパーを務めます。

目隠し状態にも関わらず、フィールドプレーヤーはどのようにボールの位置を把握しているのでしょうか。その秘密はボールにあります。転がるとシャカシャカと音が鳴る構造になっており、フィールドプレーヤーはこの音を頼りにボールを追いかけるのです。

試合中の戦略的な指示は、相手ゴールの裏にスタンバイしている「コーラー」の役目です。だから、試合中は観客からの声かけはNG。その分、ゴールの瞬間に一際大きな歓声が上がります。

参加者たちは、基礎的なボールワークに挑戦しました。鳥居選手のレクチャーがあったとはいえ、目隠しをしているので簡単にはいきません。転がってくるボールを脚で止めたり、カラーコーンにボールを当てたり。想像以上の難しさに戸惑いを隠せない参加者も。

しかし、コーラー役に先導されながら、少しずつコツを掴んでいきます。保護者の声を頼りに、お子さんがシュート!連携プレーがものをいうだけに、親子の息がぴったり合ったときの達成感は格別です。

Aさん

今日の目当ては座学の方でしたが、パラスポーツ体験も印象的でした。新しい世界の扉が開かれたような気分です

Bさん

パラアスリートがどのような気持ちでプレーに臨んでいるのか、少しわかった気がしました

Bさんの
お子さん

鈴木選手のメダルがかっこよかった!パラスポーツはちょっと難しいけど、楽しかった

「勝ち飯®」教室で広がる、パラアスリートの可能性。新たなコラボの兆しも

今回の「勝ち飯®」教室は、ゲスト3名にとっても刺激になったようです。イベントの感想や今後の展望について、うかがいました。

―――「勝ち飯®」教室を終えての感想を教えてください。

山本さん

親子で一緒に参加し、パラスポーツに興味をもってもらえたことがとてもうれしかったです。

鈴木選手

勉強会では熱心にメモを取る保護者の方もいましたね。水泳を学んでいる子が話しかけてくれましたよ。

鳥居選手

座学で登壇する機会はあまりないので、私も楽しめました。こういうかたちでも貢献できるのだと気づき、可能性が広がったように思います。

―――今回はパラスポーツ体験会もセットで行われました。

鈴木選手

参加者の皆さんが楽しんでくれたようでなにより。お子さんや保護者の方の笑顔が見られてよかったです。

山本さん

私も含め参加者は初対面ですが、自然とチームワークが生まれていくんですよね。今回のイベントを通じて、私自身もボッチャやパラスポーツへの理解が深まったと感じています。

鳥居選手

勉強するだけでなく、楽しみながら体験することが大切なんだと改めて実感しました。

―――こういった場で3名が集まるのは初めてですね。

山本さん

そうなんですよ。だからとても新鮮な気持ちでイベントに臨めました。

鳥居選手

それぞれ競技は異なりますが、アスリートとして共感できる部分が多くありました。

鈴木選手

鳥居選手の調理動画が衝撃的でした(笑)。私も料理をするので、いつかコラボできるといいですね。

―――今後の展望を教えてください。

山本さん

今後も後進の育成をメインにやっていければ。パラスポーツを応援する取り組みも変わらず続けていくつもりです。

鳥居選手

パリ2024パラリンピック競技大会を終えて、自分のなかで一区切りがつきました。今後は国内での活動を中心とし、ロサンゼルス2028パラリンピック競技大会を目指す選手たちを支えていきたいです。

鈴木選手

ロサンゼルスを目指す!といいたいところですが、年齢的には一年先の見通しもわからない状態。まずは半年ごとに結果が出せるように、ベストを尽くしていきます。

「勝ち飯®」教室のフィナーレを飾る、風味豊かな極上の一杯

勉強会、パラスポーツ体験会と続きましたが、「勝ち飯®」教室はまだ終わりではありません。体育室からエントランスへ向かうと、どこからともなくおだしの香りが漂ってきます。

思わず足を止め、香りのもとを辿ると、館内の一室に「Café du Dashi(カフェ ドゥ ダシ)」コーナーが。「Café du Dashi」はいわば、スタンディング形式の簡易カフェ。パリ2024パラリンピック競技大会にも出張し、日本代表選手団に「ほんだし®」をお湯に溶いた「だし湯」や、コーヒーを提供しました。

特別仕様のCafé du Dashiが「勝ち飯®」教室に登場

「Café du Dashi」はこちらの記事でもご紹介しています。

この日の「Café du Dashi」は特別仕様。味の素グループのオンラインストア「AJI MALL」やAmazon、楽天市場などのECで販売している「SIIDA®(シーダ)」を使っただし湯が参加者たちにふるまわれました。

料理の引き立て役が主役に変身! 「だし」の常識を覆す「SIIDA®

2024年(令和6年)、「ほんだし®」でおなじみの味の素社が新たなブランドを展開しました。その名も「SIIDA®」。料理の引き立て役だった「だし」をブラッシュアップし、単体でも満足のいく味わいに仕上げました。ラインナップは「焚(HUN)」「燻(KUN)」「酵(KOU)」の3種類で、それぞれ原料や製法などが異なります。たとえば、「燻(KUN)」は、スモーキーで個性豊かな風味が絶品。「酵(KOU)」は上品でまろやかでありながら、深い余韻を残します。だし茶漬けやしゃぶしゃぶ用のだしなど用途はさまざまですが、まずはうどんなどのシンプルなメニューで「SIIDA®」本来の味を堪能してみてください。飲み進めるほどに、「SIIDA®」完成までのストーリーが目に浮かんでくるようです。

参加者には、焚(HUN)のだし湯が提供されました。試飲カップからは湯気とともに香りが立ち上がり、まるで「焚き火」を囲んでいるかのような気分に。口に運ぶと力強い風味が押し寄せ、あとからコクと酸味が追いかけてきます。

なんという満ち足りた味わい――。食欲が一気に加速します。「これでだし茶漬けを......いや、雑炊も合うに違いない......!」なんてことを考えていたら、いつのまにか「Café du Dashi」のまわりに人だかりが。「もう一杯!」と、おかわりを求めるお子さんの声が「SIIDA®」のおいしさを物語っているようでした。

最後は、参加者全員におみやげが配られ、「勝ち飯®」教室はフィナーレへ。この日の思い出を胸に、それぞれが充実した表情で帰路につきました。

コミュニケーションから生まれる一体感。その先にはなにがある?

今回の「勝ち飯®」教室には、蘆名さんや尾城さんだけでなく、ほかの味の素社従業員もボランティアスタッフとして参加しました。彼らがどのような発見を得たのか、その一部をご紹介します。

「SIIDA®」を使っただし湯を振る舞うボランティアスタッフ

田中 大地さん(人事部)
『DE&Iへの理解を深め、パラスポーツを体験したい思いでボランティアに参加しました。とくに印象的だったのは、ブラインドフットボールやボッチャを通じて参加者同士のコミュニケーションが深まり、一体感が生まれていたこと。勉強会では、トップアスリートの方々から「食の大切さ」と「自分らしく生きる」という強いメッセージを感じました。』

今村 光さん(労働組合)
『コンテンツが盛りだくさんで、私自身も大変勉強になりました。お子さんたちもとても楽しそうにされていて、参加者の方々の反応を知る貴重な機会となりました。今回の「勝ち飯®」教室で学んだことや感じたことを活かし、組合としてもDE&I推進に向けた取り組みを進めていきたいです。』

参加者、パラリンピアン、味の素社従業員----それぞれ異なる立場でありながら、「勝ち飯®」教室を通じて、一つのチームのように心を通わせました。今回のイベントで得た学びを糧に、味の素社はこれからも共感の輪を広げ、DE&I推進に取り組んでいきます。

鈴木 孝幸

1987年生まれ、静岡県浜松市出身。早稲田大学教育学部卒業後、2009年株式会社ゴールドウイン入社。アテネ2004パラリンピックから6大会連続でパラリンピックに出場。東京2020パラリンピックでは出場した5種目すべてでメダルを獲得。その功績を認められ令和3年度紫綬褒章を受章。パリ2024パラリンピックでは男子50m平泳ぎ(SB3)金メダル他、銀メダル2個、銅メダル1個を獲得。

鳥居 健人

1991年生まれ、埼玉県越谷市出身。小学5年生のとき、担任教諭のすすめでブラインドフットボールの世界へ。その4年後、アルゼンチンで行われた国際試合に初出場。2007年より、3人制のパラスポーツ「ゴールボール」のプレーヤーとしても活動。2019年10月より参天製薬株式会社 基本理念・CSV推進部に所属。パリ2024パラリンピックの日本代表メンバーとして出場。

山本 篤

1982年生まれ、静岡県掛川市出身。左足の大腿部を切断。義肢装具士の専門学校で競技用義足に出合い、陸上を始める。北京2008パラリンピックから4大会連続出場。リオデジャネイロ2016パラリンピックでは走り幅跳びで銀メダル、4×100mリレーで銅メダルを獲得。パラリンピック冬季競技のスノーボードへの挑戦をきっかけに、2017年よりプロに転向。平昌2018冬季パラリンピックに、スノーボードで出場を果たした二刀流アスリート。東京2020パラリンピックの走り幅跳び(T63)では4位入賞。2024年5月、神戸で開催された世界パラ陸上競技選手権の後に現役を引退。

尾城 淳一

味の素株式会社 グローバルコミュニケーション部
2013年味の素社に入社。Web、SNSなど、自社のデジタルコンテンツ関連に携わる。「自身の目で見て何を感じたか」をモットーとしており、日頃から足を使って情報を集めることを心がけている。
味の素グループのWorkplace(味の素グループ内でのSNS型コミュニケーションプラットフォーム)では、DE&I推進の取り組みを通して感じたことや気づきを自ら発信する「OSHIRO'S EYE」という動画を積極的に配信している。

蘆名 真平

味の素株式会社 コーポレート本部 グローバルコミュニケーション部
スポーツ栄養推進グループ マネージャー

2006年入社。2012年ブラジル法人に出向。「アミノバイタル®」事業と「ビクトリープロジェクト®」を立ち上げる。リオデジャネイロ2016大会は現地にて日本代表選手団をサポート。4年後の東京大会は打倒日本を掲げてブラジル版「ビクトリープロジェクト®」の立ち上げ、ブラジル選手団をサポート。2023年より現職。

※味の素㈱は、TEAM JAPANゴールドパートナー(調味料、乾燥スープ、栄養補助食品、冷凍食品、コーヒー豆)です。

2025年7月の情報をもとに掲載しています。

味の素グループは、アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献します

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