かつて企業の定番行事だった社員旅行や社内運動会は敬遠されがちですが、それらが従業員同士のコミュニケーションやチームワークを高める役目を担ってきたのも事実。では、令和の社内交流イベントはどうあるべき?
そんな中、味の素グループでは、2025年(令和7年)の新入社員、キャリア入社者のグループ合同交流会という非常に珍しい社内イベントを開催しました。はたしてどんなイベントなのでしょうか。「ストーリー」編集部が取材してきました。
コミュニケーションが深まり、企業理念を実践できて一挙両得!社内交流イベントの人気復活!?
2024年(令和6年)に行われた、ある「社内コミュニケーションの課題と対策」に関するアンケートによると、社内コミュニケーションに課題を感じている企業は大企業では76%、中堅企業では89%といずれも高い数字です。中でも、「部門別」のコミュニケーションに課題を感じている企業が80%ほどに上ります。
参照:https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=399
とくに、コロナ禍以降に定着したリモートワークの普及が従業員間のコミュニケーションの有り様を変えました。とりわけコロナ禍に学生時代や入社時を過ごした世代にとって、その影響は大きいと言えるでしょう。
そんな中、お互いを知る絶好の機会として社内交流イベントが見直されています。単に従業員同士のコミュニケーションを活性化するだけでなく、企業理念の浸透、さらにそれを実践、実感する機会の提供、エンゲージメントや企業への満足度を高める施策としても、社内交流イベントが注目されているのです。
さすがに泊まりがけの社員旅行は減りましたが、バーベキュー大会や、ボーリングやバドミントンなどのスポーツ大会など、一日がかりのイベントは今も健在です。また、クイズ大会、ビンゴ大会、eスポーツ大会など手軽に開けるイベントのバリエーションも広がっています。
社内交流イベントは、コミュニケーションの活性化にとどまらず、さまざまな効果を生み出す重要施策として注目され、そのプログラムの質が追求され始めています。
味の素グループの新入社員とキャリア入社者が味スタに大集合!
味の素グループは、2025年(令和7年)4月28日、グループ全体の新入社員とキャリア入社者の交流会を開催しました。例年、味の素本社、グループ会社それぞれで新入社員研修を行いますが、グループ会社とキャリア入社者を含めての交流イベントを開くのは初めての試みでした。
開催地は「味の素スタジアム」(東京都調布市)です。だれもが知るスタジアムでありながら、だれもが入れるわけではないグラウンドで開かれた交流イベントに、味の素グループ11社から約300名が参加しました。かつてない規模の交流会です。
午前のメインイベントはブラインドフットボール(以下ブラインドサッカー®)でした。参加者の、おそらくほぼ全員が初めての体験です。約300名の参加者は、味の素グループ11社、新入社員/キャリア入社者をシャッフルした4グループに分かれて行動しました。
これには、味の素グループの中には年齢もキャリアもさまざまな仲間がいることを実感し、DE&Iを体感してほしいという意図があります。実際に、初めて会う人と同じ立場、同じ目線でコミュニケーションすることの大切さを実感できる体験になったようです。
ファシリテーターを務めたのは日本ブラインドサッカー協会の岡村康平さん。
「見えないことを実感して初めて、見える人と見えない人がどうコミュニケーションを取ったらいいかを考えられると思います。いろんな感情が出てくると思います。そこからできるだけ多くの気づきを持ち帰っていただきたい」と話しました。
元ブラインドサッカー®男子日本代表の寺西一選手と加藤健人選手が登場してパス交換を披露。手叩きの音と「ハイ、ハイ、ハイ」の声掛けで味方をリードしていました。
初めてのブラインドサッカー®。相方にうまくパスできるか?
「初めまして」の2人が組んで、ゲームを行います。緊張しながらも、それぞれがコミュニケーションをとろうと必死です。
2人ひと組で準備体操。言葉だけで相方に動作を指示する練習ですが、こちらはかなりむずかしかったようですね。
ゲームが1回終わるごとにチーム内で作戦タイム。属する会社や年齢に関係なく、ニックネームで呼び合っていたのが印象的でした。
Shigekix選手と山本篤さんが登場!自分らしさ全開の熱いエールをもらい、忘れられない一日に
午後の部は、味の素㈱「ビクトリープロジェクト®」のサポートアスリートであるShigekix選手の劇的な登場でスタートしました。
味の素スタジアムの屋内通路に設えられた小さなステージにShigekix選手が現れ、数秒後にはブレイキンが始まり、みんな仰天!
その後、元パラ陸上選手の山本篤さん、Shigekix選手各々の講演会が開かれました。
パリ2024オリンピック競技大会にも出場したShigekix選手のトーク「自分らしく最後までかます」
Shigekix選手にとって自分らしさとは?という質問に、「常に、その瞬間を楽んでいるところ。自分らしさで一番大きな部分を占めているのは、楽しむということ」と答えました。「ネガティブなときほど、自分らしさが浮き彫りになる。そこでも自分らしさをちゃんと持つことを意識して大事にしています」
「挑戦という言葉が大好きです」と語る山本さん。「大学に行って陸上に挑戦し、スノーボードにも挑戦しました。人生、挑戦しつづけて終われたらいいなと思っています」
ふたりのプロ意識あふれる「自分らしさ」や「挑戦」のトークに、参加者はジッと聞き入っていました。
元パラリンピック陸上競技日本代表。北京2008パラリンピック競技大会から4大会連続出場し、銀メダル2つ、銅メダル1つを獲得したパラアスリート山本篤さんのトーク
イベントの最後に、参加した味の素グループ各社の代表者が「決意表明」。仕事への熱い思い、今日をともに過ごせた喜びが、それぞれの言葉で語られた感動的なシーンとなりました。
オーロラビジョンには約300名の参加者一人ひとりの決意表明メッセージ写真や合同入社を祝う会、今日の交流会イベントまでの映像が流れ、一人ひとりが「味の素グループに入って良かった!」と実感できるエンディングムービーが流れました。
イベントの最後に中村茂雄社長からメッセージが。
「今日出会った人とのつながりを大事にしてください。つながりは財産です」
重要資産である味の素スタジアムを、新入社員・キャリア入社者という無形資産を育む場に使う
今回の味の素グループ合同交流会を企画したのは、味の素株式会社人事部の田中大地さんです。交流会に込められた想いやプログラムの意図について聞いてきました。
ーーーまず、今回の交流会の開催意図をお聞かせください。
田中
大きく2つあります。ひとつは、参加者のみなさんに味の素グループには多様な仲間がいること、その人たちとのつながりを深めて、入社して本当によかったと実感してもらいたいということ。もうひとつは、トップアスリートの2名に講演いただいたテーマでもありますが、「自分らしさ」を大切にしてほしいということ。このふたつを通して、DE&Iの理解を深めてほしいという意図がありました。
ーーーそもそもなぜ田中さんは交流会の担当になったのですか?
田中
じつは私自身、キャリア入社です。一昨年に手を挙げて営業部門から人事部に異動してきました。常々、キャリアで入社したからこそ、味の素グループの良さをもっと伝えたい、味の素グループだからこそできる他社に先駆けた取り組みをしたいと思っていましたが、私の部署が研修担当になったのを機に、これまでになかった取り組み、他社にはない取り組みをしようと意気込んだ次第です。
ーーー今年の交流会は田中さん自身のチャレンジでもあったのですね。新入社員とキャリア入社者を一堂に集めての開催も田中さんのアイデアですか?
田中
そうですね。私自身、新入社員とつながれる機会がもっとあればいいと思っていましたから。今回、味の素スタジアムで一堂に会する交流会が実施できて、味の素社に来て夢がひとつかなった気分です。
ーーーその「味の素スタジアム」を開催地に選んだ理由は?
田中
味の素グループの従業員でも、味の素スタジアムのピッチに立てる機会はなかなかないんですよね。だからこそ、交流会でピッチに立つことは、サッカーファンでなくても特別な経験になるだろうと思いました。
田中
また、私自身がキャリア入社だからだと思いますが、味の素グループが持っている資産をもっとよく知りたかったし、常々、「味の素スタジアムという味の素グループの重要な資産を十分使い切れているのだろうか?」と疑問に思っていました。
当社の重要資産である味の素スタジアムを、新入社員という当社の無形資産を育む場に使う。味の素スタジアムという素晴らしい施設を使い倒したい!という気持ちでした。
ーーー味の素スタジアムだからこその演出が光っていました。オープニングはサッカー選手と同じゲートから入場し、最後はスタジアムの巨大オーロラビジョンにエンディングムービーが流れ、それに見入る参加者たちの表情に熱いものがありました。
田中
参加者のみなさんに、同じ場所で同じ時間を過ごしたことを心に刻んでもらいたい、味の素グループに入社して本当によかったと心から実感してほしい。そのために何が必要か。2024年(令和6年)5月から計画を仕込み始め、1年がかりで準備してきました。
ーーーメインプログラムのひとつがブラインドサッカー®でしたが、この意図は何でしょうか?
田中
新卒入社とキャリア入社、味の素グループ会社同士、会社も年齢も立場も関係なく、同じ目線でコミュニケーションを行えるプログラムとは何だろう?と考えた結果がブラインドサッカー®でした。「初めまして」の人と同じ目線で向き合い、しかもブラインドでコミュニケーションをとる。その難しさを知り、どう工夫すれば伝わるのかを考える機会になります。また、DE&Iを言葉による理解だけでなく「腹落ち」してもらうのに最適なコンテンツだと思いました。
ーーーみなさん、お揃いのアジパンダ®Tシャツにニックネームを書いたゼッケンを貼っていました。
田中
新入社員とキャリア入社者の間の壁をどうしたら取り払えるか?と考えてニックネームを採用しました。とくに今年の新入社員はコロナ世代で、コミュニケーションに苦手意識をもっている人もいます。ニックネームなら年上の人も呼びやすいですよね。
ーーーランチタイムのお弁当は味の素社「スマ塩®」の「味豚丼」と「ラブベジ®」の「ベジタコス」でした。取材班もおいしくいただきました。
田中
味の素グループの中には直接食品を扱わない会社も職場もあり、その従業員たちは味の素社の商品やプロジェクトに触れる機会が少なかったりします。「スマ塩®」は味の素社のASV*を体現する取り組みであり、グループ会社を含めて従業員全員に知っていただいきたい取り組みです。実際に「スマ塩®」のお弁当を食べることでASVを体感し、「理解から腹落ち」に至ってほしいという思いがありました。
スマ塩のレシピ「味豚どーん」のお弁当
「ラブベジ®」とは、日本人の野菜不足解消を目的に、2015年(平成27年)からスタートした味の素社のプロジェクト。その名の由来は、Love(愛)+ Vegetable(野菜)。スーパーの店頭でメニューブックを配布したり、野菜収穫&調理体験イベントを実施したり、その取り組みは全国へ広がっています。
日本人の野菜不足を解消したい!味の素社の「ラブベジ®」プロジェクトとは?
https://story.ajinomoto.co.jp/report/069.html
ーーー交流会を終えての感想や来年に向けての課題を聞かせてください。
田中
参加者や裏方スタッフからのフィードバックが続々届いていますので、これを参考にしながら、さらなるブラッシュアップを考えていきます。今回の参加者は11社約300名でしたが、次回はもっと多くの方に参加頂き、味の素グループの多様な人財とつながって、味の素グループに入って良かったという輪が広がるとうれしいです。参加者が増えることはDE&Iの理解、促進にもつながるでしょう。
田中
「同じ釜の飯を食う」という言葉がありますが、この交流会が参加者にとって、「あのとき同じ場所で同じ体験をした」という共通言語になってくれたらうれしいですね。
ーーーありがとうございました。
*ASV:Ajinomoto Group Creating Shared Valueの略。事業を通じて社会価値と企業の経済価値の共創に取り組むこと。味の素グループが「将来ありたい姿」「志(パーパス)」を実現するための基本的な考え方。
昼休みに聞いてみました。「キャリアの方」と「新卒の方」と知り合えてよかった!
最後に、参加者の当日の声をいくつかご紹介しましょう。
味の素株式会社の新入社員。左から、窪田さん、秋澤さん、前井さん
新卒入社
前井さん
グループ会社の方と知り合う機会がなかったので、ブラインドサッカー®を楽しみながら仲良くなれたのがうれしかったですね。ブラインドサッカー®はむずかしかった!
窪田さん
ブラインドサッカー®というスポーツを通して、キャリアの方やグループ会社の方ともすぐ仲良くなれました。ニックネームは仲良くなるのに有効だなと思いました。
秋澤さん
キャリア入社の方が「味の素社のよさ」を話してくれました。自分は味の素社しか知らないのですごく貴重なお話でした!
味の素株式会社の新入社員。左から、瀬田さん、吉見さん
吉見さん
たまたま5月から一緒に働くキャリアの人と話ができました。さっそく部署の話をいろいろ聞かせてもらいました!
瀬田さん
ピッチに下りることが初めて。ブラインドサッカー®も初めて。味の素社に入ってよかった!と思っています。
味の素デジタルビジネスパートナー株式会社のキャリア入社者。左から、千葉さん、辻さん
キャリア入社
千葉さん
こんなに大きなグループに私は入社したのか!と規模感を実感しています。ブラインドサッカー®ははじめは不安でしたが、見えない状況下で声を掛け合って仲間との信頼関係を作っていき、だんだんチームとしてまとまっていくのを感じました。この人たちと仕事していくんだなーいう思いを新たにしました。
辻さん
スタジアムの壮大さに圧倒されました。職場は第二新卒の人ばかりなので、新卒の方がフレッシュでまぶしかった!ブラインドサッカー®のボール回しでは親切に声かけしてくれてうれしかったですね。
田中 大地
味の素株式会社 人事部 キャリア開発グループ
金融業界を経て2016年に味の素株式会社にキャリア入社。東京・名古屋で家庭用商品の営業を担当。2023年、人財公募にて人事部へ異動。味の素社の人財育成担当として、全社研修の企画、運営、キャリア入社者オンボーディングやアルムナイ施策等を推進。マイパーパスは「自分が本気で好きなビジネス・モノを通じて、人の役に立ちたい」。
休日は家族でゆっくり過ごしたり、子ども達と外出して遊んでいます!
2025年8月の情報をもとに掲載しています。
「スマ塩®」とは、「Smart Salt®」の略で、味の素社が提案する「おいしい減塩」のこと。減塩の「味が物足りない」「おいしくない」「手間がかかる」「家族が好まない」というお悩みを解決することを目指し、役立つ商品の開発やレシピを提案しています。
「スマ塩」プロジェクトはどのようにして生まれたのか?味の素グループの減塩への取り組み動画公開
https://story.ajinomoto.co.jp/report/097.html
塩分摂りすぎ??「減塩=おいしくない」はもう古い!味の素社が進める「Smart Salt(スマ塩)」プロジェクト
https://story.ajinomoto.co.jp/health/027.html