パリ2024オリンピックに向けて、「ビクトリープロジェクト®」メンバーは、アスリートのサポート活動を行ってきました。そのサポート活動について、パリ大会に出場した髙市未来選手(柔道女子63kg級)、Shigekix選手(ブレイキン男子)の2人のアスリートへのインタビューを行いました。
インタビュー映像はこちらからご覧になれます。
【味の素KKビクトリープロジェクト Shigekixインタビュー】 パリ2024オリンピックを経て見えたもの
この記事では、パリ2024オリンピックに初の正式種目となったブレイキン男子に出場したShigekix選手のインタビュー内容を抜粋してお届けします。
初の正式種目「本当に楽しめた」
Shigekix氏パリ2024オリンピック出場種目:
ブレイキン男子
上野 祐輝「ビクトリープロジェクト®」
サポートディレクター
パリ2024オリンピックで初の正式種目となったストリートダンス競技「ブレイキン」。その日本代表選手として出場を果たしたShigekix選手は、2022年(令和4年)から味の素社と公益社団法人日本ダンススポーツ連盟 (Japan DanceSport Federation: 略称JDSF)との契約により「ビクトリープロジェクト®」のサポートが始まり、2023年(令和5年)からは味の素社との個別契約でサポートを開始しました。
パリ2024オリンピックではメダルこそ逃したものの堂々4位入賞。そのステージは圧巻で「本当に楽しめた」とShigekix選手は語ります。パリ大会に至るまでの道のりを伺いました。
栄養面におけるアプローチで、可能性が広がった
ーーー「ビクトリープロジェクト®」で上野さんのサポートを得るということで、プレーヤー、ダンサー、アーティストのShigekixさんはこの出会いによって何が自分にプラスされたって感じます?
Shigekix選手
一言でいうと、可能性が広がりましたね。ダンサーとしてこれまで自分なりに考えてやってきた栄養面における身体づくりのアプローチに、専門的な知識やアドバイスが入ることで、より磨きがかかって、自分が本当に求めてるものを、情報としても取り組みとしても得ることができました。
それを実際に実践して成果につなげる、これは目に見えて可能性が広がったと思いますし、上野さんや味の素社のサポートがなければ、今の自分の姿にはなれていなかったと思うので、ダンサーとしての可能性をすごく広げました。
お互いの感覚値を言語化して伝え合う
Shigekix選手
我々Bboy、Bgirlは体重が何グラム増えるっていう感覚までもすごく繊細にキャッチする、それぐらい感覚を研ぎ澄ましています。さまざまな動きをするだけに、ちょっとした変化が大きな変化になったり、もう何が起こるか分からない。体のちいさな変化がどういうふうに動きに影響するか分からないから、栄養面だけに限らず、トレーニングや練習方法も含めて、必ずこれをしていれば結果が良くなりますよとか、記録が伸びますよっていうアプローチはできないカルチャーです。
Shigekix選手
たとえば、最初の頃は「上野さんのアドバイスが自分に合っているかどうかは試してみないと分からないです」っていう場面がたくさんありました。それは別に僕も毛嫌いしてるとか取り入れたくないというわけでもないし、上野さんも強要したいわけでもない。お互いの感覚値を言語化して常に伝え合うことをとても大事にしていました。ブレイキンは、言語化しない限り、なかなか伝わらない抽象的な部分や数字や文字に起こせないような部分がすごく多い。
Shigekix選手
僕は、感覚的なものを自分なりの言葉で常に言語化して上野さんに伝える。上野さんも常に僕が言葉にして情報を提供しやすいように声掛けをしてくれたので、そこから少しずつ少しずつ、そういうコミュニケーションを重ねるにつれて信頼関係が形になっていった、強くなっていったと思いますね。
大会における自分のパフォーマンスの成果は、絶対に結果に反映される。次の大会に向けてその振り返りを生かして、改善して取り組んで、またパフォーマンスと結果が出る。また振り返ってこれを繰り返す。どんどん我々の取り組みが自分たちにとってやりやすいものになり、より信頼関係が強まっていったのかなって思っています。
専門的なアプローチは心強いけど、それだけじゃない
ーーー上野さんってShigekixさんから見ると、どんな方なんですか?
Shigekix選手
すごく人情味はあるんですけど、冷静さもある。プロ意識が高くて、冷静な判断もできて、客観的に物事を見ることができる方なのはもちろん、我々プレーヤーからすると栄養面の専門的なアプローチを頼る上ではすごく心強いんですけど、でもそれだけじゃない。
Shigekix選手
やっぱり寄り添ってもらうというか、より自分の本音や内側の部分を共有するためには、まず信頼関係や関心が大事ですし、さらに僕自身が「上野さんに良い姿を見せたい」って思えるぐらいの関係性がないと、この取り組みはなかなか形にならないのかなって思っています。
僕が実際にどういう気持ちで日々練習したり、栄養面での考えがあったり、大会に取り組んで、うれしい結果だったら、どういうことが身になってうれしいのか?悔しかったら、どういうところが悔しいのか?っていうのをすごく考えていて、常に感じ取ろうとしてくれていたことのを、僕は強く感じました。
あのときはじめて「素のShigekix選手」を見せてくれた
ーーー上野さんとのやり取りの中で、一番の思い出や印象に残っていることは?
Shigekix選手
2023年にベルギーで世界選手権があったんですけど、オリンピック出場の切符が懸かった大会でもあったので、僕としても意気込んでいるし、勝ちたいっていう気持ちはどの大会でも変わらないのですが、準決勝で負けた時、めちゃくちゃ悔しかったんです。
Shigekix選手
3位決定戦に向けて気持ちを切り替えないといけないのは、自分の頭で分かっていたんで、いまの心を早く整えて、次に備えないとって。そこで上野さんにもう「悔しいです」って、とにかく悔しいっていうのを伝えたんです。栄養面のことでも、ブレイキンの技術面のことでもなく、本当にストレートな気持ちの共有というか、そういう言葉のキャッチボール、すごく印象に残っています。
ーーーその時のことは上野さんは覚えていますか?
上野さん
しっかり覚えていますね。あのとき、初めて感情を出してくれたと思っているんですよ。
これまでもいろんな会話したり、いろんなことを教えてもらったり、何が良くて何が良くないとかそういう話は聞かせていただいている仲だったんですけど、あのときはじめて「素のShigekix選手」を見せてくれた、素直に出してくれたという感じがありました。
何かすごく人間味のあるShigekix選手を見られた瞬間だったなと思いますね。より覚悟を決めたっていうか、何とかしたいなっていう。
ここぞというタイミングで「ビーストモード」を出せる体を持ちたい
Shigekix選手
僕はビーストモードと呼んでいるんですが「戦い抜く持久力を持ちながらも、いつどんな時にパワフルな相手が来ても、自分のパワー、エネルギッシュな踊りでそれを押し返す」といったことができる体にしたいと思っていました。パワーをブーストする感じというか、100%出してる姿を見せていたのに、突然120%、150%のものを、さらにここぞというタイミングに出せる。それをちゃんと体現できる体を持ちたいっていうのを相談していました。
Shigekix選手
ここぞ、という逆境のタイミングでそれをはねのける、1.5(倍)のパワーをしっかり内に秘めるような体づくりが必要だということで、自分が日常生活から口にしているエネルギーの量を調節したり、でもただエネルギーを増やすだけではなく、踊ったり、実際に大会でそれによって生まれた体重の差とかで、自分にストレスがあるのかどうなのか、良くなっているのかといったことを約5か月ずっと常にシェアしながら話し合い、より理想的な体を作るという取り組みをパリ大会に向けてやってきました。
上野さん
2年間ずっと見てきて、それだけの運動量、トレーニングを彼は体現しています。そのためにはそのエネルギー源となるエネルギーをしっかり摂るというのは理にかなっているし、当然必要なことだと思っていたので、最終的にうまくいくとは思っていました。
でも、いままで彼が節制してギリギリの状態をいい状態としてやってきたので、当然食べる量も増やす、体重も増えるとなったら感覚としては変わってくる、初めは絶対に重いって感じるだろうなと思っていました。
でも、それは、いままでスポンジが空だったところにしっかり水がブワって行き渡ったというパンパンの状態なだけであって、その重さは余計なものが付いているわけではなく、その体自体を動かすエネルギー源はどんどん大きくなっていっているので、その重さはいずれ消えると思うよというのを、ちょっと我慢をしてもらいながら実践してもらいました。
上野さん
彼はそこですぐあきらめずに、ちゃんと長期的な目線で取り組み続けてくれたので、最終的にはだんだん言葉が変わってきたと思うんですね。
「違和感なくなってきました」「意外と動けました」「バテませんでした」「いけるかもしれない」・・・最初はグッって増やして、最終的には本番でちょっと下げようという戦略だったんですけど、最終的にはこのまま行こうっていう判断を彼自身がしているので取り組んで良かったなと思いますし、普通の人はやろうと思ってもできないんですね。徹底して、それを栄養面だけじゃなくて、トレーニングも継続してやっていたし、そこは彼の強さかなっていう風には思いますね。
オリンピックは新たなスタートであり、これまで作り上げてきたものの中に存在する大きな通過点
ーーーパリ2024オリンピックについて、やはりいままでの大会とは違う特別な空気があったんじゃないかと思います。オリンピックの現場ってどうでしたか?
Shigekix選手
本当に特別なステージだったなという風に思っていますね。僕が本当にステージを一番楽しめたんじゃないかって思うぐらい、当日楽しかったですね。
これまで準備期間は決して楽なものじゃなかったけど、本当に踊っている、その瞬間に、これだけの準備をした甲斐があったなと感じ、それだけ幸せな気持ちになりました。
ーーーブレイキンの魅力は世界中の多くの人に伝わったんじゃないかと思います。やっぱりShigekixさんは、この世界の若くして牽引者だと思います。
Shigekix選手
いま、ブレイキンという業界そのものもすごく成長していると思うんですよね。このオリンピックはすごく追い風になって、僕たちにとってかけがえのないものだったと思うんですけど、僕自身もこれがゴールだとはまったく感じてないですし、新たなスタートであり、これまで作り上げてきたものの中に存在する大きな通過点だと捉えています。
Shigekix選手
だから僕としてはここからがブレイキンの腕の見せどころであり、皆さんがパリ2024オリンピックで見たブレイキンの競技っていう枠にとどまらずに、オリンピックも経験したブレイキンが今後広げていく、そして見せていく世界を皆さんと一緒に切り開いていけたらうれしいなって思います。
そういう志で、これからも1人のプレイヤーとして、ダンサーとしてのレベルアップや可能性を広げていくことももちろんですけど、それを全力でやることはまた業界にプラスになることがあると思いますし、一個人とはいえ、この業界やブレイキンを愛している者として、何か先頭に立ってできるものはあるんじゃないか、今後もその思いを大事にして活動していきたいと思っています。
ーーーそんなShigekixさんに上野さんから最後に一言お願いします。
上野さん
いや、もう素晴らしいですよね。人として素晴らしいですよ、もう全力でサポートしてね。多分成長を一生止めない人だと思うんで、そこにもしがみついて、僕らもちゃんと成長して、その成長に貢献できるようにしていきたいなと思います。
【味の素KKビクトリープロジェクト Shigekixインタビュー】 パリ2024オリンピックを経て見えたもの
Shigekix (半井重幸:なからい しげゆき)
パリ2024オリンピック出場種目:ブレイキン男子
2002年3月11日、大阪府生まれ。第一生命保険所属。
7歳の時に姉の影響でBreakingを始める。11歳の時から海外の大会に挑戦を始めKidsの国際大会を総ナメ。2020年Red Bull BC One World Finalにて世界最年少で優勝。2020、2022、2023年とJDSF全日本ブレイキン選手権で3連覇中。2022年WDSFブレイキン世界選手権にて銀メダルを獲得。初めてオリンピック種目となったパリ2024オリンピックでは堂々たるバトルで4位入賞。
上野 祐輝
「ビクトリープロジェクト®」サポートディレクター
大学時代はアメリカンフットボール部に所属。いちプレイヤーとして「アミノバイタル®」を愛用。2008年、味の素株式会社入社。8年間、九州や東京の大手エリアで家庭用商品の営業として精力的に活動。「いつかスポーツに関わる仕事を」という想いから、2016年に「ビクトリープロジェクト®」メンバー公募に手を挙げる。現在はブレイキン、バドミントンをはじめ、数々のアスリートたちをサポートする、プロジェクトの中核メンバー。
※味の素㈱は、 TEAM JAPANゴールドパートナー(調味料、乾燥スープ、栄養補助食品、冷凍食品、コーヒー豆)です。
2025年3月の情報をもとに掲載しています。