中編は「新入社員のころから社長になりたいと思っていましたか?」です。
藤江さんが社長になるまでの道のりを中心に質問してみました。
「2023年度新入社員3人からの質問」シリーズ
<前編>藤江さんはどんな新入社員でしたか?
浪川晶衣さん
アミノサイエンス事業本部
ダイレクトマーケティング部
販売マーケティンググループ
イギリスの大学でマーケティングを学んでいたという浪川さん。「藤江さんの海外でのご経験と、自分が感じたことに重なるところがあるのではと思い、直接お話を伺いたいと思いました」
石川知真さん
食品研究所
包装設計グループ
高校時代は遠泳、大学時代はバンド活動に熱中していたという石川さん。「私は研究所勤務で、本社にいらっしゃる藤江さんとお会いできる機会が少なそうなので、この企画は直接お話できるチャンスと思い、参加しました」
田中梨紗さん
食品事業本部
調味料事業部
SCMグループ
大学時代は地元福島の農産物のPR活動を行っていたという田中さん。「入社式のときに、藤江さんのお話の内容がとても魅力的で、もっとお話をして藤江さんからたくさん吸収したいと思い参加しました」
新入社員のころから社長になりたいと思っていましたか?
石川さん
藤江さんは新入社員の頃からすでに社長になりたいと考えてらっしゃいましたか?私の同期で「僕は社長になる!」と言っている人がいます。藤江さんも新入社員の頃から社長になることを意識されていたのか気になります。
藤江社長
まったく考えていませんでした。
人事部で採用を担当していたとき、上司が「採用担当者は、自分が採用に関わった人から将来の社長を輩出することが一番の喜びである」と言っていました。
人事部には当時「磨けば光る原石を見つけよう」という合言葉や「人を求めてやまず、人を活かす」というキャッチフレーズがあったので、私も自分が採用に関わった人の中から、将来の味の素グループをリードして行くような人財を採用したいという気持ちがありました。
ですから、自分が社長になりたいということは、1回も考えたことがなかったですね。
石川さん
1回もですか?
藤江社長
なかったですね。
石川さん
では、逆に、ご自身が社長になりそうだと思い始めたのはいつごろですか?
藤江社長
前社長の西井さんから「君がCEO候補となったよ」と告げられたときです。
石川さん
ええ!!最近ですね。
藤江社長
私は西井さんが相当ご苦労されているのを間近で見てきました。西井さんの時代は、業績が一度落ち込んだり、いろいろなアセットライト(自社の保有資産を軽くすること。資産(Asset)の保有を抑えて、財務を軽く(Light)することを目指す経営)をやっていかないと、会社が成長路線へシフトできない状態で、本当に大変だったと思います。それでも懸命に奮闘されている姿を近くで見ていたんです。
そんな中で声をかけていただいたので「こりゃ断れないな」と、そういう感じですね。
石川さん
目指してなったわけではなくて、声をかけられたことが始まりだったんですね。
準備しておけば良かった(笑)
藤江社長
誰が社長になるかというのは、会社がいまどういうタイプのリーダーを求めているかということだと思うんです。私の場合は優秀だからというわけではないと思います。優秀な人は私の周りにもたくさんいらっしゃるから。
選ばれたのは、いまは藤江に期待をしている、ということだと思います。
ただ、若いときから社長をやってみたいと思う人はとても偉いなと思いますよ。
石川さん
はい。同期に伝えておきます。
藤江社長
偉いなと思うし、そのためにどういうことをやるんだという準備もできる。
うーん、自分も準備しておけば良かった(笑)。
全員
(笑)
藤江社長
いまでもヒーヒー言いながら一生懸命勉強しています。
若いうちからいろいろな経験をしたり、学んだりすることはとても大事だと思います。そして、若い人たちのためにそういう機会をつくっていくことが、私たちの役割だと思っています。
海外で一番印象に残っているエピソードとは
浪川さん
中国、フィリピン、ブラジルといった藤江さんの海外でのご経験の中で、一番印象に残っているエピソードを教えていただけますか?
藤江社長
いろいろありますが、一番思い出に残っているのが中国ですね。2006年(平成18年)に味の素(中国)社広州支店長として赴任したとき、会社は慢性的に赤字を抱えていて、従業員にお給料を払うためのキャッシュを前日まで用意できなかったということがありました。
石川さん
そんなことがあったんですね・・・。
浪川さん
なんだか想像できない・・・。
藤江社長
もちろん、今はそんなこともなくなりましたが、当時はそういう状況でした。
やはり、給料がきちんと払える会社であるべきです。企業業績が良くないと、いろんなことがうまく進まないですからね。
そこで、中国の従業員と一緒に取り組んだのが「まず儲けよう、そしてその儲けをみんなで三等分しよう」という方針です。
1/3は給料、ボーナス、福利厚生など、従業員の労働条件の向上。1/3は、将来への投資です。従業員の研修や広告、設備投資に使う。最後の1/3は会社の利益としていただく。売上はもちろん、儲けを大きくして、それぞれを三等分しようと言い続けました。
それは、いまでも思い出に残っているというか。そうなってはいけないという戒めも含めての思い出ですね。
またの名を"黒字化請負人"
藤江さんは2008年(平成20年)に中国食品事業部長、2011年(平成23年)にフィリピン味の素社社長、2015年(平成27年)にはブラジル味の素社社長を歴任。それぞれの会社で低迷していた業績をV字回復させてきたことから"黒字化請負人"と言われていました。
困難な状況に直面したら「ありたい姿」に戻る
浪川さん
そういう困難な状況に直面したときに焦ってしまったり、不安になってしまう気持ちもあると思うんですが、ご自分の中でどういったマインドセットを持って乗り越えて来られたのですか?
藤江社長
私の場合は、「ありたい姿」に照らし合わせてどうなのか、と考えるようにしています。迷ったときに戻るところがありますよね。その戻るところは「ありたい姿」だと思います。
皆さんがいろんな選択をするときに、右に行く場合、左に行く場合、真ん中に行く場合、どれに行っても絶対に怒られる、失敗するということがありますよね?
全員
はい。
藤江社長
どれも嫌だ、でもそこに留まるのはもっと嫌だ。逃げたいんだけど、逃げようもないという状態で、それでも絶対に何かを選択しなくてはならない。
そんな時は「ありたい姿」に戻る。
いまで言えば、味の素グループの「志」である「アミノサイエンス®で、人・社会・地球のWell-beingに貢献する」に照らしてみる。そこでどっちの選択をしたらいいのかなと。
または、グループ共通の大切な価値観である「味の素グループWay」とか「ASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)」とか「Our Philosophy」、「Eat Well, Live Well.」というスローガンがある。こういったものに戻って照らし合わせてみるんです。
藤江社長
さらに皆さんそれぞれが持っている人生における「志」もあると思いますが、常にそこに戻って選択してみる。とはいえ、全部うまくいく訳じゃないから、その時はまた機敏に打ち手を変えていく。
つまり、「ありたい姿」に戻ることで、さまざまな選択肢が生まれるし、打ち手を変えることもできると考えています。
浪川さん
私は仕事中にひとつのことに夢中になってしまい、まわりが見えなくなることもあります。「ありたい姿」へ原点回帰ですね。すごく勉強になりました。
藤江社長
たしかに目先の短期的なことばかりに集中してしまうことは自分にもあります。
人間はそういうものですね。だからこそ、なるべく中長期的な「ありたい姿」から遡って、目の前の仕事に取り組んだ方が精神衛生上もいいと思いますよ。追われるよりも追うほうが前向きにがんばれるんじゃないかな。
思い描く理想のリーダー像とは?
田中さん
藤江さんがこれまで味の素社で出会った上司や先輩のことをとても楽しそうに話していらっしゃるのが印象的なのですが、藤江さんご自身が思い描く理想のリーダー像はありますか?
藤江社長
「いつもは厳しいんだけど、いざとなったら優しい」ですかね。
いつも怒られたり、小言を言われたりするけど、本当に困って相談に行ったら、とても親身になって相談に乗ってくれたり、応援してくれたりする。いつもは厳しいんだけれども、いざとなったら優しい、温かい。そういうリーダーに憧れがありますね。
味の素社は、その厳しくも優しい「風土」を持っていると、私は思っています。
一人ひとり切磋琢磨して、厳しいことや難しいことにみんなで挑戦するとか、失敗したり困ったことがあったりしたら助け合うような「職場風土」ですね。
田中さん
その風土に私も恩恵を受けながら、いつかはそういった立場で活躍できる人財になりたいと強く思いました。ありがとうございます。
いかがでしたでしょうか。藤江さんが社長になるまでの経緯や、海外での経験、困難への向き合い方など非常に貴重なお話をたくさん伺えたと思います。
さて、「後編」では、「藤江さんが私たちに求めること」を中心に、「志×熱×磨」についてのお話などを伺いました。
次の記事を読む「藤江さんが私たちに求めるものとは?~教えて!藤江さん」
ストーリーでは、さまざまな質問に藤江社長が答える「Knock Knock 社長室 〜教えて!藤江さん〜」を連載しています。ぜひご覧ください。
2023年8月の情報をもとに掲載しています。
関連リンク