プレスリリース「味の素㈱のコーポレートブランド「Ajinomoto」が「Best of the Best」受賞」
味の素社のコーポレートブランド「Ajinomoto」のブランディング活動が、総合的に優れた取り組みとして高く評価されたのです。ところで、そもそも「ブランド」や「ブランディング」とは何を指すのでしょうか。
日常的に気軽に使っている言葉であっても、実際に私たちは正しい意味を理解していないのかも知れません。
この記事では「ブランド」「ブランディング」の意味や使い方についてご紹介していきます。
また、「Ajinomoto」のブランディング活動が高く評価された理由にも迫ってみたいと思います。
ブランドとは
ブランドと聞くと、ファッションの高級ブランドを思い浮かべる方も多いと思います。しかし、本来の意味はどういうことを指すのでしょうか。
ブランド(Brand)は、日本語では「銘柄」「商標」と訳されます。
そのままの言葉としてとらえると、ブランドとは製品やサービスの銘柄や商標を指すといえるのですが、経営やマーケティングの世界では、その意味だけにとどまらないと考えられているようです。
マーケティング業務に携わる人にとって「近代マーケティングの父」と称されるフィリップ・コトラー氏は、「ブランド」について次のように定義しています。
「ブランドとは、個別の売り手または売り手集団の財やサービスを識別させ、競合する売り手の製品やサービスと区別するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはこれらの組み合わせ」
ブランドとは、高級ブランドのことだけを指すのではなく、製品・サービスを識別するためのものであり、それは「名称、言葉、記号、シンボル、デザイン」だけでなく「これらの組み合わせ」であるとコトラー氏はいいます。
「ブランド」の由来は「牛の烙印」だった!?
ブランド(Brand)という言葉の由来について調べてみたところ、なんと、その由来は家畜である牛につけた焼印だったとのことです。
ところで由来といえば、「味の素®」の由来については、「ストーリー」の記事でも紹介していますが、当初のアイデアでは「味の元」だったといわれています。
創業家である鈴木家一家全員が揃ってネーミング会議を開き、二代目鈴木三郎助の長男(のちの三代目鈴木三郎助)が提案したのが「味の元」でした。しかし、「元」が日本舞踊などの家元を連想させるのではという意見が持ち上がり、二代目の弟・忠治の提案で「素」が採用に。
協議では「だしの元」「鰹の元」「味の王」などの候補も挙げられ、「味の元」が選ばれたあとにも"あ・じ・の・も・と"と五音では商品名として長いのではないか?といった意見も持ち上がるなど、創業家全員が意見を出し合い、懸命な協議を交わしたことが伺えます。
「元」と「素」では、随分と印象が異なりますね。「味の元」が採用されていたら、今ごろ、どんな会社になっていたでしょうか?
こういったさまざまな試行錯誤の積み重ねが物語となり、いまの味の素グループを形作っているといえるかも知れませんね。
ブランディングとは
ブランディング(Branding)とは、ターゲットとする顧客層や社会全般において、企業の価値や印象を高く認知してもらうための取り組みです。
とくに、企業や製品、サービスに対して、こちらが意図した良好なイメージを想起いただくための働きかけを、従業員も巻き込みながら主体的に行うブランド構築活動全般を、「ブランディング」と強調して表現することが主流となりつつあります。
ブランディングは、ステークホルダーに多くのメリットをもたらすビジネス戦略のひとつといえます。
ブランディングが成功すると、積極的なプロモーション活動を行わなくても、製品やサービスを求める顧客が増えたり、社会全般にポジティブな印象を与えることができます。
ブランドの果たす役割として、単なる「識別」や「区別」だけでなく、顧客に対して「信頼」や「愛着」などさまざまなイメージを想起させます。
そのため、一般の生活者が「これが欲しい」「これがしたい」と思ったとき、自社のブランドを想起してもらえることや、同じような見た目や機能をもつ製品が2つある場合、たとえ価格が高くても自社の製品を選んでもらえる、といったこともブランディングによって実現できるともいえます。
また、ブランドには「顧客との約束である」という考え方もあり、一方的に発信するだけではなく、顧客や社会に認められることではじめて価値が生まれます。
そのため、長期的で地道な活動が欠かせない「ブランディング」への取り組みは、企業活動の重要テーマの一つといえるでしょう。
味の素グループのブランディングの考え方
味の素グループでは、製品・サービスや情報発信を通じて味の素グループの社会価値を実感していただくことでブランド価値向上をはかり、より多くのお客さまからの信頼・支持を獲得することを目標としています。
2017年(平成29年)10月、味の素グループでは、「味の素グループグローバルブランドロゴ(Ajinomoto Group Global Brand Logo、以下、AGB)」を導入しました。
これにより、ASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value) を通じて創造した社会価値をAGBに集約・蓄積していくことで、グローバルでのコーポレートブランド強化、世界中で一層信頼される企業グループへの成長を目指しました。
「ASVレポート2022」では、「味の素グループのブランディングの考え方」について紹介しています。
味の素グループは、企業の信頼を高め製品・サービスをサポートする支援価値(「おいしさ」「健康によい」「安心安全」「環境に配慮」)と、お客さまのウェルネスにつながる6つの貢献価値(「調理(つくりだす歓び)」「絆(人と交わる歓び)」「栄養(カラダが満ちる歓び)」「体調(カラダが整う歓び)」「リラクゼーション(前を向く歓び)」「時間(解放される歓び)」)を、製品やサービスを通じて体験・実感いただくことで、さらなるブランド価値向上を目指します。
また、企業および製品・サービスを通じた情報発信と、サステナビリティの取り組みを実践することで、「食と健康の課題解決企業」に向けた良好なパーセプションを形成していきます。
「Ajinomoto」が高く評価された理由とは?
ASVの取り組みを推進し、社会価値を実感していただくことでブランド価値向上をめざしてきた味の素株式会社は、2022年に開催された「Japan Branding Awards 2022」において、最高位である「Best of the Best」を受賞しました。
「Japan Branding Awards」とは、インターブランドジャパン社が主催するアワードで、ブランドの戦略・体験基盤の構築、クリエイティブ開発、コミュニケーション活動などのあらゆる視点から、その実績と効果による社会貢献度などを複合的に評価し、優れたブランドを表彰するものです。
<Japan Branding Awards 2022 概要>
Japan Branding Awards 2022の最高賞となる「Best of the Best」を受賞したコーポレートブランド「Ajinomoto」について、以下のような評価がされています。
事業を通じて社会価値と経済価値を共創するASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value) 経営をベースとした、「アミノ酸のはたらきで、食と健康の課題解決」の浸透とグローバルブランドAjinomotoの価値向上を目指した活動
具体的な評価ポイントとしては、「アミノ酸のはたらきで食と健康の課題を解決する」というパーパス(志)の実現に向け、ASV経営を推進する、グローバルで一貫した継続的なブランド価値向上を目指した取り組みにより、2022年2月時点でブランド価値が約12億米ドル相当(2016年2月比86%増)に達したことなどが挙げられました。
Japan Branding Awards 2022 「Best of the Best」審査員の評価コメント
本活動は、「アミノ酸のはたらきで、食と健康の課題解決」に貢献する企業になるというパーパス(志)の実現に向け、ASV経営を推進する全社的なブランディング活動です。
グローバルブランドロゴの策定やコーポレートスローガンといったブランドの一貫性をグローバルで実現するための仕組みを整備するとともに、ASVの実現に向けて、従業員が組織の意図を理解し、顧客と価値を共創し、株主・投資家に評価してもらうという企業価値向上のためのサイクルを回し、同社独自のグローバル統合調査等を通じてブランドの状態を常に把握することで、適切な改善が実行されています。
本活動は、グローバルレベルで、パーパスドリブン経営を継続的に推進し、ブランドの価値を高めていくための仕組みを創りあげている特筆すべき活動と言えます。
あらためて今回の「Ajinomoto」のブランディングに対する受賞ポイントや評価を見ると、「ASV経営を推進する全社的なブランディング活動」という点に高い評価をいただいていることがわかります。
ASVとは「Ajinomoto Group Creating Shared Value」を略した言葉です。 CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)に由来しており、企業が自社の売上や利益を追求するだけでなく、自社の事業を通じて社会が抱える課題や問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的な価値も創造されることを意味しています。
「おいしく食べて健康づくり」という創業の志は、味の素グループにとって、まさに原点であり、現在の味の素グループのASVにつながっています。
こういったブランドを取り巻く傾向や今回の受賞での評価内容から、味の素グループのASVの取り組みの推進が、確かにグローバルレベルのブランドの価値向上につながっていると考えられるのではないでしょうか。
これからも味の素グループは「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」という志(パーパス)のもと、グループ全体でASVの取り組みをさらに推進していきます。
参考:MarkeZine「主張と意義のないブランドは淘汰される」コトラーが語る、ブランド・アクティビズムの重要性
関連情報
<用語解説>
株式会社インターブランドジャパン
インターブランドは、1974 年のロンドンでの設立以来、40 年以上にわたり、常に世界をリードするブラン ディング専門会社として、戦略、クリエイティブ、テクノロジーの組み合わせにより、クライアントのブラ ンドとビジネス双方の成長を促進する支援を行っています。インターブランドジャパンは、ロンドン、ニューヨークに次ぐ、インターブランド第3の拠点として、 1983 年に東京で設立されました。「カスタマー・エージェンシー」として、オンラインコミュニティ運営、 顧客との共創ワークショップなどを通じて経営に顧客視点を組み込む支援をグローバルで展開しているグル ープ会社 C Space(本社:ボストンおよびロンドン、国内拠点:東京都渋谷区)とともに、日系企業、外資 系企業、政府・官公庁など様々な組織・団体に対し、トータルなブランディングサービスを提供しています。
フィリップ・コトラー (Philip Kotler)
1931年米国生まれ。シカゴ大学で経済学の修士号を取得し、マサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学の博士号を取得。その後、ノースウェスタン大学のケロッグ経営大学院にて教授に就任。現在はSCジョンソン特別教授。現代マーケティングの第一人者として知られ、時代とともに変遷するマーケティングの概念を分析し、わかりやすく定義し説明しており、「近代マーケティングの父」、「マーケティングの神様」と評されています。
パーセプション
パーセプション(Perception)とは、英語で「認識」「認知」「知覚」を意味します。マーケティング用語としては、企業やブランド、商品やサービスに対する認識のことで、存在や名前だけを認知しているだけではなく、そこにどのような価値があるか、どんな存在であるかを知覚している状態のことを指します。これは消費者の購買行動を左右する大きな要因とされています。
ウェルネス
ウェルネス(wellness)は「健康」という意味の英単語ですが、ここでは健康をより広く総合的に捉えた概念として「毎日をよりよく生きるための健康維持・増進に向けた生活態度全般」を指します。1961年にアメリカのハルバート・ダン医師が「輝くように生き生きしている状態」と提唱したのが始まりで、その後世界中の研究者がさまざまな解釈をしてきました。世界保健機関(WHO)による「健康」=「肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」よりもさらに広い意味での健康観として「前向きに生きようとする心」「自分が望む生き方やライフスタイルデザインの確立」など、より自発的な健康促進にも重きが置かれています。
2023年3月の情報をもとに掲載しています。
現在使われている「ブランド(BRAND)」という言葉は、古ノルド語で『焼き印をつける』という意味の「ブランドル(BRANDR)」が語源だといわれています。
古ノルド語は、8世紀~14世紀にかけスカンジナビア人によって使われていたといわれる、北欧の古い言語です。
放牧している牛などの家畜が、他人の家畜と紛れてしまわないよう、自らの所有物であることを示すために「焼き印」を付けたことがブランドの始まりだといわれています。
出典:一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会ウェブサイトより