活動レポート

「九州力作野菜®・果物®」ってなに?副生物を有効活用してCO2削減へ!

九州地区のイオン系列の店舗では「九州力作野菜®」「九州力作果物®」というブランドの野菜や果物を販売しています。
これらの野菜や果物は、作り方やおいしさにこだわっているととても評判となり、各方面から注目を浴びています。

じつはこの「九州力作野菜®」と「九州力作果物®」は、「味の素社の環境問題への取り組み」と深い関係があるんです。

「九州力作野菜®・果物®」を育てるバイオサイクルとは?

「九州力作野菜®」「九州力作果物®」とは、味の素社がアミノ酸を作る際の副生物(Co-Products・コプロ)を活用した「たい肥」で育てられた農作物です。

うま味調味料「味の素®」をはじめ味の素グループの製品に使われる主なアミノ酸は、それぞれの地域で入手しやすいサトウキビやキャッサバ芋などを原料にして、「発酵法」という方法で作られます。この製造過程で生まれるコプロには、栄養が豊富に含まれているため、地域の農作物の肥料や家畜・水産物の飼料として活用しているのです。

味の素社では、このような地域に根ざした資源循環型アミノ酸発酵生産方式を「バイオサイクル」と呼んでいます。

本サイト「ストーリー」でご紹介した、バイオサイクルの取り組みの記事がこちらです。

味の素社九州事業所でのアミノ酸製造方法

九州・佐賀県にある味の素社九州事業所でも、「発酵法」でアミノ酸を生産しています。

まず、大きな発酵タンクに原料(サトウキビの糖蜜など)を入れ、その中に発酵菌を加えます。すると発酵菌が発酵液のなかの糖分をエネルギーとして使い、アミノ酸を生み出します。

そして、この発酵液からアミノ酸を取り出した後に残るコプロが「九州力作野菜®・果物®」を生み出すために大活躍するのです。

その活躍ぶりについて、くわしくご説明しましょう。

イオン九州との出会いと「九州力作堆肥®」の誕生

九州事業所ではコプロを固形肥料として活用するために、乾燥処理を行っていました。しかし、乾燥させるために用いる重油の量は年間600キロリットル、それに伴い大気中に放出するCO2量は2,000トンにものぼりました。

九州事業所は「環境配慮=資源物の循環」を目標として掲げているからこそ、コプロを肥料化するために乾燥させていましたが、乾燥に使う重油の燃焼によりCO2を大量に発生させるなんて元も子もありません。

重油を使わずにコプロを乾燥させるためには、どうしたらいいのか......。さまざまな試行錯誤を繰り返すなかで出会ったのが、イオン九州でした。

イオン九州との取り組みのなかでたどり着いた解決法が、「たい肥」への活用です。たい肥とは、稲や麦のわら、おがくず、牛や豚のふんなどを発酵させ、野菜や果物を育てるための土作りに使うものです。最近は、家庭でも生ごみなどを材料にした「コンポスト」でたい肥を作っている人も増えてきました。もちろん、多くの農家さんが「たい肥」を使っています。

「たい肥」が発酵するときには、およそ60~80℃の熱が発生します。ということは、「たい肥」が発酵する時の熱を使えば、コプロを自然乾燥させることが出来るのではないか。また、このコプロには一般的に脱臭効果があると言われている活性炭が含まれており、たい肥場の臭気を低減することも期待されます。これはコプロを活用したい味の素社だけでなく、農家の方、たい肥場の方にも喜ばれる三方よしのアイデアだったのです。

このコプロをまずは「たい肥」へ、このたい肥で「九州の農業を元気にしたい!」という思いを込めて、このプロジェクトに「九州力作」、コプロを活用して完成したたい肥に「九州力作堆肥®」という名前をつけました。

そう、「九州力作野菜®」「九州力作果物®」とは、この「九州力作堆肥®」で育った野菜と果物のことなのです。

店頭に並んだ「九州力作野菜®」

合言葉は「九州の農業を元気に!」

イオン九州の契約農場で、「九州力作堆肥®」を用い行った試験栽培で実った野菜や果物はどれも素晴らしい出来栄え!甘味・うま味成分がアップしたこれらの野菜や果物はイオン九州の多くの店舗で取り扱うようになりました。

これまで肥料として使うために、重油を使い、CO2を排出していたこのコプロをきっかけに、
「九州の農業を元気に!」という思いを持って、農業関係者、流通が協働してバリューチェーンを構築し、地域の農業活性化を推進しています。

その後、「九州力作野菜®・果物®」の取り組みは低炭素2014最優秀ストーリー賞、
平成26年度地球温暖化防止活動環境大臣賞、2019年第3回ジャパンSDGsアワードの「SDGs推進副本部長(内閣官房長官)賞」を受賞(イオン九州と共同受賞)。社会にも広く認められる取り組みとなりました。

「九州力作野菜®」プロジェクトが
「第3回ジャパンSDGsアワードSDGs推進副本部長(内閣官房長官)賞」受賞

味の素社では、アミノ酸発酵工程から発生する副生バイオマスを有効活用して高品質の肥料を生産しています。味の素社はこの肥料を使って作られた農作物に「九州力作」ブランドを付けて、イオン九州で販売する「九州力作野菜®」「九州力作果物®」プロジェクトを展開。こうした持続可能なバリューチェーン構築への貢献が評価されました。

https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/activity/csr/pdf/2020/SDB2020jp_092-093.pdf

さらに広がる「力作の輪」

毎年1回、イオン九州の契約農家さんをはじめとした関係者が集まり、「力作会議」を開催しています。この会議では「九州事業所の環境負荷低減への取り組み」を知っていただいた上で、「九州力作」を地域農業の活性化につなげるために活発な議論を行っています。なにしろ、発酵法で取り出されるコプロは年間数千トン。どうすればもっとより良く活用できるのか、みんなで知恵を絞っています。

現在、「九州力作野菜®」のうちブロッコリーやピーマンなどは九州以外の一部店舗でも販売。もっと全国の皆さんにも食べていただきたい、と九州事業所は挑戦を続けていきます。

また、「九州力作」プロジェクトメンバーである九州支社の企画により、2022年(令和4年)8月に「九州事業所&九州力作農場ツアー」が開催され、「九州力作野菜®・果物®」を購入されたお客さまの中から親子10組20名が九州事業所に招待されました。

この企画は、環境月間取り組みの一環として「九州力作」の認知度を向上させることを目的としており、来場者は、味の素グループのバイオサイクル、発酵法でのアミノ酸の作り方、そして九州事業所の「九州力作」の取り組みについて学んだ後、実際にコプロが生まれる製造現場を見学しました。

このイベントは工場見学だけでは終わりません。「九州力作野菜®」を生産している農家さんの協力により、農場まで足を運んで「九州力作野菜®」の試食ができるのです。

参加者からは「味の素社の環境に配慮した取り組みがよく分かった」「力作野菜を使った料理がおいしかった」とのうれしい声があがりました。

味の素のエコマーク

収穫作業中の契約農家さん

楽しく学んで、おいしく理解する。とくに、これから学校でもSDGsについて学んでいく小学生の皆さんにとって、この力作ツアーの経験が「ごはんを食べ残さない。食材を大事に使う」といった意識の向上につながっていくことを願っています。

「九州力作野菜®」は、SDGsに対する企業の取り組みとして、高校の教科書にも掲載されています。

おいしさや健康に貢献するアミノ酸。そのアミノ酸を製造する過程から出たコプロを、環境に負荷をかけない方法を選んで付加価値の高いたい肥を作る。このたい肥を使って作った野菜や果物をお客様へお届けする。バイオサイクルが目指す「資源物活用の循環」が、九州を起点に大きな広がりを見せています。九州事業所では、「九州力作野菜®・果物®」を全国の皆さんへ、いつかお届け出来る日が来ることを目標に、取り組みを続けていきます。

多良 千鶴

アミノサイエンス事業本部九州事業所総務部企画管理グループ
現在、事業所内のコプロダクトの高付加価値化、マーケティング・販売を担当。
どんなときも「ありがとう」の感謝の気持を忘れず、笑顔とともに本音のコミュニケーションを心がけています。
趣味は海外旅行。中でも、トルコとモロッコが大好きです。

2023年2月の情報をもとに掲載しています。

味の素グループは、アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献します

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