活動レポート

カーボンニュートラルってなに?いまさら聞けないサステナビリティ関連用語を学ぼう④

テレビやネットで「カーボンニュートラル」という言葉がよく語られるようになってきました。

なんとなく「石油やガソリンを使わないということだろう」「太陽光発電や風力発電を活用すること?」と思っている方は多いと思います。たしかにそれは「カーボンニュートラル」の取り組みの一部ではありますが、「カーボンニュートラル」そのものを示しているものではありません。

では、カーボンニュートラルとはどういう意味なのでしょうか?

本サイトの連載「いまさら聞けないサステナビリティ関連用語を学ぼう」では、知ってはいるけれど、じつはよくわからないサステナビリティに関するキーワードを紹介しています。今回の記事では、この「カーボンニュートラル」の意味について探ってみましょう。

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラル(Carbon Neutrality)とは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」と「吸収量」を「均衡させること」を意味します。

地球温暖化の一因である二酸化炭素など温室効果ガス(Greenhouse Gas:GHG)の「排出量」 から、植林、森林管理などによる温室効果ガスの「吸収量」を差し引いて、その合計を実質的にゼロにすること、つまり「排出量」と「吸収量」が中立(ニュートラル)な状態にすることをあらわしています。

出典:環境省 脱炭素ポータル(https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/about/)

人間の産業活動によって排出される「排出量」と「吸収量」を差し引いて、温室効果ガス(GHG)の排出を全体としてゼロにすることを「ネットゼロ(Net Zero)」または「正味ゼロ」といいます。

2015年(平成27年)に開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において、2020年(令和2年)以降の温室効果ガス(GHG)排出削減などのための新たな国際枠組みである「パリ協定」が採択され、現在では120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げています。

その目標に伴い、世界中のあらゆる企業では事業活動におけるカーボンニュートラルに向けた目標を設定し、温室効果ガス(GHG)削減の取り組みを急速に進めています。

2050年カーボンニュートラルに向けたさまざまな取り組み

温室効果ガス(GHG)はその気体の性質から、地球温暖化の原因と考えられています。

石炭や石油などの化石燃料を燃焼することにより、二酸化炭素などの温室効果ガス(GHG)が発生します。大気中の温室効果ガス(GHG)が増えることで温室効果が強まると、地球の表面の気温が高くなります。その結果、温暖化が起因と考えられる洪水、渇水、高温や海面上昇による水害などの災害の激甚化が進み、人間や地球上のすべての生物の生命に多くのリスクがもたらされるといわれています。

いま世界中の国や企業、団体では「2050年カーボンニュートラル社会の実現」に向けて取り組みを進化させています。

自然の力で電力やエネルギーを発生させる太陽光、風力、地熱などによる「再生可能エネルギー」、水素を燃焼させることで電力やエネルギーを発生させる技術などは、温室効果ガス(GHG)を発生させないため、「排出量」を削減するための取り組みといわれています。

また、カーボンニュートラル燃料として「バイオマス」の活用も注目されています。

​バイオマス(biomass)とは「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」で、動植物などから生まれた生物資源の総称です。

木材などのバイオマス資源を燃焼させた場合、二酸化炭素は発生します。しかし、植物の成長過程で光合成により二酸化炭素を吸収して成長するため、実質的には二酸化炭素を増加させないと考えられています。そのため、バイオマス資源の燃焼によるエネルギーは正味ゼロ(ネットゼロ)であり、バイオマスは「カーボンニュートラル」な資源といわれています。

また、森林の管理・保護や循環型社会の構築などを通じた自然環境保護活動によって、温室効果ガス(GHG)の「吸収量」を増大させることも重要な取り組みです。

カーボンニュートラルの取り組みとは、こういったあらゆる方法で取り組むことを意味しています。

さらに企業においては、自社の事業活動だけではなく、サプライチェーン全体の温室効果ガス(GHG)排出量に対しての取り組みも注目されています。

サプライチェーン排出量とは

サプライチェーン排出量とは、温室効果ガス(GHG)の排出について、自社の自らの排出だけでなく、事業活動に関係するあらゆる排出を合計した排出量を指しています。

つまり、原材料調達・製造・物流・販売・廃棄など、一連の流れ全体から発生する温室効果ガス(GHG)排出量をサプライチェーン排出量といいます。また、サプライチェーン排出量はその段階によってスコープ1、スコープ2、スコープ3と区分されています。

サプライチェーン排出量=「スコープ1排出量」+「スコープ2排出量」+「スコープ3排出量」

出典:環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/supply_chain.html)

スコープ1(Scope1)
事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス、車両等)
スコープ2(Scope2)
他者から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
スコープ3(Scope3)
その他の排出(製品の使用・廃棄、輸送、従業員の出張・通勤、投資等)

企業におけるカーボンニュートラルへの取り組みは、自社だけでなく、サプライチェーン全体で目標を設定し、取り組むことが必要だといわれています。

サプライチェーン排出量のネットゼロに取り組む味の素グループ

農産物をはじめ多くの自然の恵みを利用する味の素グループにとって、気候変動への対応は持続的に事業活動を行う上で喫緊の課題です。

そのため味の素グループは「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に基づき、対応策の検討と関連情報の開示を進めているほか、温室効果ガス(GHG)排出量の削減目標については、主要なグローバル企業が賛同している共同団体SBTイニシアティブ(Science Based Targets initiative:SBTi)の認定を取得するとともに、電力の100%再生可能エネルギー化を目指すRE100への参画しています。

加えて、2022年(令和4年)3月には、SBTiへ、2050年度までに温室効果ガス(GHG)排出量を正味ゼロ(ネットゼロ)とするコミットメントレターを提出しました。

味の素グループでは、天然ガスやバイオマスなど、温室効果ガス(GHG)排出係数が低い燃料への転換や再生可能エネルギー(電力)の調達、イノベーションによる新技術・新製法の導入を積極的に進めてきました。

今後は国内外の拠点でさらに加速させ、2030年にスコープ1とスコープ2について「環境負荷50%削減」というアウトカムを実現し、2050年度までにサプライチェーン排出量全体でのカーボンニュートラルを目指していきます。

川崎市の産業エリアのカーボンニュートラルを目指す世界的プロジェクトへの参画に賛同

2023年(令和5年)1月20日に味の素社は新たな発表を行いました。

味の素社の川崎事業所の立地自治体である川崎市が、世界経済フォーラムの主導する「産業クラスターのネットゼロ移行イニシアティブ(Transitioning Industrial Clusters Towards Net ZeroInitiative)」に、「川崎カーボンニュートラルコンビナート(Kawasaki Carbon Neutral IndustrialComplex)」として、日本で初めて参画しました。

この取り組みは、世界経済フォーラムにより設立・運営されており、世界的な課題であるカーボンニュートラルの実現に向け、重要な役割を担う産業クラスターについて、国際的なクラスター間のノウハウ・知見を共有し、協業によるネットゼロ(カーボンニュートラル)を目指すものです。

川崎カーボンニュートラルコンビナート形成推進協議会/川崎港カーボンニュートラルポート形成推進協議会の会員である味の素社川崎事業所は、この川崎市の参画に賛同し、協力することを決定しました。

今後、味の素社では、自社やグループ全体の取り組みだけでなく、川崎市や他の賛同企業とともに、イニシアティブを積極的に活用し、国際的な情報発信及び他の産業クラスターとの連携に取り組み、川崎臨海部、ひいては首都圏のカーボンニュートラル化に貢献していきます。

まとめ

最後に、カーボンニュートラルと味の素グループの取り組みについて今回ご紹介した内容をまとめます。

・ カーボンニュートラル(Carbon Neutrality)とは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」と「吸収量」を「均衡させること」を意味する。

・ 世界中の国や企業、団体では「2050年カーボンニュートラル社会の実現」に向けて、排出量の削減のために「再生可能エネルギー」や新しいエネルギーの開発、吸収量の増大のために森林保護などに取り組んでいる。

・ 企業においては、自社の事業活動だけではなく、原材料調達・製造・物流・販売・廃棄など、一連の流れ全体から発生する温室効果ガス(GHG)排出量をサプライチェーン排出量といい、サプライチェーン排出量はその段階によってスコープ1、スコープ2、スコープ3と区分されている。

・ 味の素グループは、2030年にスコープ1とスコープ2について「環境負荷50%削減」というアウトカムを実現し、2050年度までにサプライチェーン排出量全体でのカーボンニュートラルを目指していく。

・ 味の素社の川崎事業所の立地自治体である川崎市が、世界経済フォーラムの主導する「産業クラスターのネットゼロ移行イニシアティブ」に、「川崎カーボンニュートラルコンビナート」として、日本で初めて参画した。

・ 2023年(令和5年)1月、味の素社川崎事業所は、この川崎市の参画に賛同し、協力することを決定。今後、味の素社では、川崎市や他の賛同企業とともに、イニシアティブを積極的に活用し、国際的な情報発信及び他の産業クラスターとの連携に取り組み、川崎臨海部、ひいては首都圏のカーボンニュートラル化に貢献していく。


いかがでしょうか。次回もサステナビリティに関連するキーワードをご紹介していきます。
その他のキーワードもぜひ読んでみてください。

<用語集>


GHG(温室効果ガス)
GHGとはGreenhouse Gasの略語で、温室効果ガスのことです。温室効果ガスは二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガスのことを指します。
なかでも二酸化炭素は地球温暖化に及ぼす影響がもっとも大きいとされており、石炭、石油など化石燃料の消費により大量の二酸化炭素が大気中に放出されます。また二酸化炭素の吸収源である森林が減少しており、大気中の二酸化炭素は年々増加しています。

サプライチェーン
サプライチェーンとは、商品や製品が消費者のもとに届くまでの「原材料調達」「生産・製造」「在庫管理」「物流」「販売」「使用(消費)」といった一連の流れのことをいいます。この一連の流れのなかで繰り返される、受発注や入出荷といった取引のサイクルがチェーン(鎖)に見立てられるため、サプライチェーンと呼ばれています。

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)
2015年(平成27年)、G20からの要請を受け、金融安定理事会(FSB)により民間主導の「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」が設置されました。TCFDは企業に対して、気候変動がもたらす「リスク」及び「機会」の財務的影響を把握し、開示することを提言しています。

RE100
RE100とは、企業が自らの事業の使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す、国際的なイニシアティブのこと。2018年6月、環境省が公的機関としては世界で初めてアンバサダーとして参画しました。味の素グループも参画を表明しています。
出典:環境省 (https://www.env.go.jp/earth/re100.html

SBTイニシアチティブ(SBTi)
SBTとはScience Based Targetsの略語で、「科学的根拠に基づく目標」という意味です。SBTイニシアティブ(SBTi)とは国連グローバル・コンパクト、CDP、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)が共同で設立し、産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑えるための科学的根拠に基づいた目標の設定を企業に働きかけています。
The Science Based Targets initiative

産業クラスターのネットゼロ移行イニシアティブ
産業クラスターのネットゼロ移行イニシアティブ(Transitioning Industrial Clusters Towards Net ZeroInitiative)とは、グローバルな視点・アクセスを活用しつつ、加盟する産業クラスター間のノウハウ・知見の共有などにより、産業クラスターのネットゼロを目指す取り組みです。
Transitioning Industrial Clusters towards Net Zero

世界経済フォーラム
世界経済フォーラム(World Economic Forum)とは、官民両セクターの協力を通じて世界情勢の改善に取り組む国際機関です。
世界経済フォーラム

2023年3月の情報をもとに掲載しています。

味の素グループは、アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献します

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