そもそも海洋ごみとは何なのか?どうしてこのような問題が起こるのか。そして、海洋ごみ問題に対して、国や地域、企業ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。
今回の記事では、海洋ごみ問題についてより深く知っていただくため、味の素社の川崎事業所や東海事業所が取り組む事例とともに、くわしくご紹介いたします。
「海洋ごみ」のことを知っていますか?
豊かで美しい海に四方を囲まれた国、日本。ですが、その美しい海を汚す大きな問題が潜んでいることを、ご存じでしょうか。そう、海洋ごみです。
海洋ごみ(または海ごみ)は、大きく分けて3種類に分類されています。まず私たちが海岸で目にするのが「漂着ごみ」。もう一つは海中を漂っている「漂流ごみ」。そして、海底に沈んでいる「海底ごみ」です。
陸上から流れ込む大量の海洋ごみ
海洋ごみのおよそ8割は、陸上から河川などを通じて海に流れ出たものです。
とくに、日本の沿岸で見つかった漂着ごみの多くを占めるペットボトルのキャップやボトル本体、ポリ袋などは、私たちの日常生活のなかから出たごみです。海洋ごみを減らすためには、まず私たちの生活のありかたを見直す必要があることがわかります。
年間800万トンのプラスチックごみが海に流入!まだまだ低い、日本の環境意識
海洋ごみは、本来、海中にはなかった物質のため、海の生物の生息環境に影響を与えます。さらにその影響は、海の生物を海産物として摂取する私たち人間にも及びます。
WWFジャパンによれば、世界の海には1億5千万トンものプラスチックごみがあるとされています。さらに、毎年800万トンが新たに流入しているといわれます(※2018年時点)。これは、たとえば車1台が1トンとすると、800万台もの車が海に捨てられているということになります。
さらに近年問題視されているのは、マイクロプラスチックです。
マイクロプラスチックとは、5mm以下の微細なプラスチック類を指します。おもにビニール袋や発泡スチロール、ペットボトルなどが海に流れ込み、それが破損し砕けて小さくなったものです。
さらに、化粧品や歯磨き粉などに使用される20μmm以下のマイクロプラスチックビーズという素材があります。これらは下水処理施設などのフィルターを通り抜け、そのまま海洋へ流れ出します。
2019年(令和元年)に開催されたG20大阪サミットでは、「海洋プラスチックごみに関して2050年までに新たな汚染をゼロにすることを目指す」という宣言が採択されました。
そんな中、味の素社の川崎事業所(神奈川県川崎市)と東海事業所(三重県四日市市)では、「ごみ拾いで海の未来を変えていこう!」として、連携して海洋ごみに関する取り組みを行っています。
ここからは川崎事業所、東海事業所それぞれの取り組みと成果をご紹介します。
海に流れ出るプラスチックごみを食い止める!川崎事業所の取り組みとは?
味の素社の川崎事業所(神奈川県川崎市)では、以前から従業員に向けて環境教育を行ってきました。2024年(令和6年)には名称を「エコ活キャンペーン」とし、その一環として産官学⺠が連携する海洋ごみ対策プロジェクト「海ごみゼロウィーク」に参加。事業所周辺のごみ拾いを行い、参加人数420名・ごみ回収量100kgの実績を残しました。
ここからは「海ごみゼロ活動」の担当者、川崎事業所の森さんにお話をうかがいます。

森 久子
味の素株式会社
川崎事業所 環境担当
ーーー「海ごみゼロ活動」をスタートしたきっかけを教えてください。
森さん
地球環境問題の中でも「海洋プラスチック問題」は喫緊の課題であり、企業としても取り組むべき課題であると認識しています。
ですが、プラスチックは汎用性が高く、すぐに別の素材に変えることは非常に困難です。
今すぐ行動できること、そして川崎事業所が多摩川横にある立地や、約4,000名という従業員数を考えた時、「海ごみゼロ活動」を実施し、多摩川から海洋に流れ出るごみを減らそうと思いました。海洋ごみの8割は陸(街)から川を伝って海に流れ出したものといわれており、ごみ拾いは海洋ごみ問題に有効とされているからです。
2024年(令和6年)9月、コロナ禍以降5年ぶりに、川崎事業所周辺の多摩川沿いおよび幹線道路沿いの清掃活動を再開。さらに東海事業所とも連携し、海洋ごみ問題を自分ごと化し、海の未来を変えるべく「海ごみゼロ活動」をスタートいたしました。
ーーー2025年(令和7年)には、どんな活動をされましたか?
森さん
2025年度(令和7年度)は、旭化成ホームプロダクツ株式会社様が主催する「ジップロック®リサイクルプログラム」と連携し、リサイクルしたトングを使用し活動を行いました。「海ごみゼロ活動」にちなみ、青い軍手(ジーンズ再生糸網軍手)と、腕には活動がわかるよう腕章も配布しました。

海ごみゼロ活動の腕章。「海ごみゼロ」の文字に「アジパンダ®」「アジパンナ®」を入れたデザインを作成しました


参加者の皆さんはリサイクルのトングを持ち、青い軍手と腕章を身につけています
森さん
多くの従業員が参加しました。川崎事業所は多摩川と幹線道路沿いにある横長の敷地であるため、活動は多摩川、幹線道路、住宅街に分かれて行われました。

多摩川エリアでの活動の様子

事業所付近の一般道での活動の様子
森さん
天気も良く気持ちのいい活動に、思わず夢中になってごみを拾い、当日のごみ回収量は約100kgに!みんな笑顔で、集めた大量のごみを誇らしげに見せてくれました。


たくさん集まったごみの山
ーーー「海ごみゼロ活動」を実施した感想や今後の展望についてお聞かせください。
森さん
活動を終えた従業員からは「多摩川の消波ブロック周辺にたくさんのごみが集まっていて、もう少しで川に流れ、海洋ごみになるところだった」「こうした活動が海をきれいに守っていくのだと実感できた」という声をもらいました。

森さん
これからも私たちは、「海洋ごみ問題を正しく理解し、実際の活動で街中のごみが海に流れ出る想像力を培う」そして「一人ひとりがこの問題を"自分ごと"として捉える」きっかけをつくりたいと考えています。
2024年度エコ活キャンペーンのレポートはこちら
海ごみゼロウィークとは
日本財団と環境省が共同で推進する、海洋ごみ削減に向けた全国一斉清掃活動です。「海ごみゼロ」を合言葉に、2019年(令和元年)からスタート。5月30日の「ごみゼロの日」から6月8日の「世界海洋デー」までを「春の海ごみゼロウィーク」、秋にも「秋の海ごみゼロウィーク」として全国で清掃活動が行われています。
奈佐の浜に、伊勢湾に、豊かな海を取り戻す!東海事業所の活動
三重県鳥羽市答志島(とうしじま)は、伊勢湾の出口に位置する三重県最大の離島。美しく雄大な自然と漁村文化が息づく素晴らしい島です。この答志島の奈佐の浜は、潮流の関係で伊勢湾内の漂流物の多くが流れ着く場所になっており、年間約3,000トンの海ごみが漂着するといわれています。

味の素社の東海事業所(三重県四日市市)では、2012年(平成24年)から答志島で開催される三重県産業廃棄物対策推進協議会の研修会に合わせて、奈佐の浜の漂着ごみの現地確認と海岸清掃を行っています。
これは、将来的に奈佐の浜のごみゼロを目指し、豊かな伊勢湾を守ろうという活動です。2024年(令和6年)には、民間企業と団体で構成される清掃活動で、2.1トンのごみ回収を実施しました。
東海事業所の清掃実績(直近の過去3年)
2022年11月:総勢48名(内行政6名)4.5トン回収
2023年3月:総勢39名(内行政7名)3.8トン回収
2024年11月:総勢44名(行政内4名)2.1トン回収
海ごみゼロを目指すために必要なこと
2025年(令和7年)11月14日。東海事業所では有志を募り、行政と民間企業とで構成された清掃活動に参加しました。
ここからは、東海事業所の橋本さんにお話をうかがいます。

橋本 隆
味の素株式会社
東海事業所 安全環境部 環境グループ
ーーー川崎事業所の森さんからのお声がけによって、2024年(令和6年)から「海ごみゼロ活動」連携が実現したんですよね。
橋本さん
はい。元々、東海事業所としても、海ごみゼロ活動を行っていたこともあり、川崎事業所の活動とその思いに賛同して参画を決めました。また、これをきっかけに東海事業所のこれまでの取り組みや現状の海ごみ問題を多くの方に知ってほしいという思いもありました。
事業所から現場までは、片道1時間以上も電車と船を乗り継ぎ、さらに徒歩で45分という長い道のり。ようやく到着した現場で海岸の清掃活動に取り組みました。

橋本さん
本当に身体はクタクタになりましたが、1時間強の作業で、なんと3,300kgもの海ごみを収集することができました!
すがすがしい気分で活動を終えたのですが、じつはこのごみはわずか1週間で溜まったのだと知って驚きました。


橋本さん
私たちが清掃活動を行う1週間前には、別の団体が同じ場所をきれいに清掃していたのだそうです。伊勢湾内にはいかに大量の海ごみが漂流しているか、身をもって知ることができました。
ーーー「海ごみゼロ活動」を実施した感想や今後の展望についてお聞かせください。
橋本さん
私たちを含め、多くのボランティアが清掃活動に取り組んでも、海ごみはあっという間に溜まっていきます。海ごみゼロを目指すためには、まずは根元を抑えなければいけません。

参加人数53名。回収したごみは、約3.3トンにもなりました
橋本さん
海ごみの約8割が陸上から河川を通じて海に漂流しているといわれています。私たちの日々の暮らしのなかで、河川へのごみの不法投棄を撲滅できるよう、意識して生活していく必要があると思います。
地球規模の課題解決へ貢献するため、ごみ問題について考え、行動する。私たちが取り組む清掃活動が、皆さんの気づきや行動のきっかけになれば、こんなにうれしいことはありません。
「ほんの少しの活動が海の未来を変える」。我々は、海ごみゼロ活動を継続し、人・社会・地球のWell-beingに貢献していきます。

森 久子
味の素株式会社
川崎事業所 環境担当
1990年入社。川崎工場総務・製造課を経て、品質保証グループにて医薬用アミノ酸の原薬GMP ICHQ7Aに適合した製造管理のためのプロジェクト担当として従事。2012年より現在の川崎事業所 安全・環境グループにて環境法令の行政対応を担当。
「全ての成功は行動を起こすところから始まる」新しいことを始めるってスゴく勇気がいることですが、やってみてダメなら戻ればいい。でも始めなければ何も変わらないどころか、時代の流れに取り残されてしまう。最初の一歩を踏み出す時に頭をよぎる一言です。
休日は犬と遊んだり、家族とお酒を飲みながら食事をするのが至福のひと時です。

橋本 隆
味の素株式会社
東海事業所 安全環境部 環境グループ
1992年入社。川崎工場「味の素®」製造課を経て、川崎事業所の安全・環境グループにてISO14001・ISO45001の認証を担当。2021年より、現在の東海事業所 安全環境部環境グループの環境チームリーダーとして、川崎事業所と同様のISO14001・ISO45001認証担当、環境法対応に従事している。
座右の銘「努力に勝る天才なし。一生勉強(中村社長と全く同じ)」、仕事におけるモットー「楽しくなければ仕事ではない」を胸に、常に勉強、仕事の楽しさを追い求めてポジティブマインドで業務を行っています。
現在は、単身赴任5年目に突入し、かなり料理の腕も上がりました。今は更に得意料理に磨きを掛けているところです。
2026年2月の情報をもとに掲載しています。
川崎事業所の海ごみゼロ活動
清掃活動
開催場所:川崎市川崎区 味の素株式会社 川崎事業所周辺の多摩川沿いおよび幹線道路沿い
実施日:2025年9月24日
参加人数:約420人
ごみ回収量:約100kg
海洋プラスチック問題についての講演会
実施日:2024年10月
講師:国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)中嶋亮太氏
テーマ:「プラなし博士が語る深海に広がるプラスチック汚染と未来への行動」
参加者:約220名(対面・オンライン合計)