味の素食品社の川崎工場では、2023(令和5)年4月から、汚れのないストレッチフィルムを集め、水平リサイクルの取り組みが始まっています。グローバルでも重要性が高まってきている水平リサイクルとは、一体どのような取り組みなのでしょうか。
今回の記事では、ストレッチフィルムの「水平リサイクル」について、味の素食品社と野添産業(株)の取り組み事例をご紹介します。
水平リサイクルとは?
循環型社会の実現が叫ばれる中、いま注目を集めているのが「水平リサイクル」です。
水平リサイクルとは、使用済みの製品を原料として、再び同じ種類の製品に生まれ変わらせるリサイクル法です。リサイクルで生まれた原料を使って「ペットボトルからペットボトル」「アルミ缶からアルミ缶」「段ボールから段ボール」「ビンからビン」といった製品が再生産されます。
この水平リサイクルは、新たな原料を必要としないため資源を効率的に有効活用できるほか、原料の採掘や輸送などにかかるCO2の排出量も削減できるなど、環境負荷の軽減に役立っています。
プラスチック廃棄物 を削減していく上でも、水平リサイクルは大切な取り組みであるため、近年ではペットボトルを筆頭に、さまざまなプラスチック製品の水平リサイクルの技術開発が進められています。
味の素グループにおいても、より環境負荷が低く、効率的な方法でのプラスチック廃棄物ゼロ化の実現むけ、さまざまな取り組みを推進しています。
運用7か月で約6.2トンの水平リサイクルを実現!
味の素食品社の川崎工場では、2023(令和5)年4月から、水平リサイクルの取り組みを開始しました。
対象品は、汚れのない透明なビニール素材のプラスチック廃棄物。工場内の各所に専用の回収場所を設け、梱包材として使われている「ストレッチフィルム」のほか、包材や原料を覆っているビニール袋などをポリエチレンやポリプロピレンなどの材質別に回収しています。
これらのプラスチック廃棄物は有価物として包材の総合メーカーである野添産業(株)に売却。同社の工場で再生原料に加工および製品化され、再び商品として出荷されていきます。
年12,000㎏のストレッチフィルムの排出を見込んでいる味の素食品社の川崎工場ですが、2023年(令和5年)4月から10月までに6,190㎏の水平リサイクルを実現(2023年実績)。現在も、順調に運用が進められています。
ストレッチフィルムとは?
ストレッチフィルムとは、透明なフィルムでできたポリエチレン製の梱包材。商品に巻き付けて結束・固定することで、搬送時の型崩れや荷崩れを防ぐことができます。伸縮性があるほか、静電気や摩擦力などによる自己粘着性も備えているため、形状を問わず梱包できるのが特長。異なる形状の箱の積み重ねなど、不定形の物もまとめることができる万能包装材として、流通の現場で重宝されています。
ストレッチフィルムリサイクルのながれ
業界に先駆けて15年前から使用済みプラスチック廃棄物の有価回収に取り組んできた野添産業(株)では、包材の販売や回収だけでなく、自社の再生原料生産工場でリサイクルまでを行い、プラスチック廃棄物に再び命を吹き込んでいます。
回収したストレッチフィルムやゴミ袋は、工場で破砕。さらに粉砕工程を経たスクラップ材をペレット形状にして再原料化し、フィルム成形してから、さまざまなサイズの袋やシートにして製品化しています。
味の素食品社の川崎工場では、水平リサイクルされた再生ストレッチフィルムを購入し、倉庫からの商品発送などに活用することで、資源循環にも貢献しています。
工場で使われるストレッチフィルムでリサイクル
国内外における味の素グループの環境負荷低減への取り組み
味の素グループでは、有効利用されずに環境に流出するプラスチックを2030年度までにゼロにすることを目標に掲げ、グループ全体で戦略的に取り組んでいます。
プラスチック廃棄物の削減には、使用量を減らすリデュースだけでなく、リユースやリサイクルにも積極的に取り組んでいくことが大切です。
プラスチックの使用については、製品の安全性や品質に必要な最小限の用途と量に厳選し、使用するプラスチックはすべてモノマテリアルまたはその他のリサイクルに適した素材に転換していきます。また、味の素グループの製品を生産・販売するそれぞれの国・地域における回収・分別・リサイクルの社会実装に向けた取り組みも支援していきます。
2022年度(令和4年度)におけるグループ全体のプラスチック使用量は69,000トン。そのうち64,000トンを製品の包材が占めており、すでにモノマテリアル包材や紙への転換が約48%まで進んでいます。残りのプラスチック包材についても、リサイクル可能な包材への転換のための技術開発やリユースを進めています。
また、国内だけでなく海外のグループ企業も、プラスチック廃棄物削減に取り組んでいます。
海外でのプラスチック廃棄物削減取り組み事例
[フランスの事例]
Ajinomoto Frozen Foods France SAS(フランス味の素冷凍食品社)は、冷凍食品工場で使用していた、主力商品のマカロン製造トレイを、使い捨てのポリスチレン製から、リサイクルを可能にするためブラックカーボン添加物を除去したポリエチレン製に変更。工場内で洗浄後90%のトレイを再利用可能にしました。
これにより、年間86トンのプラスチック廃棄物を削減。230万枚のトレイが再利用されたことで、40万ユーロのコスト節約になりました。
[スペインの事例]
アミノ酸をベースとしたバイオスティミュラント製品の製造・販売を行っているアグロ2アグリ社(A2A社:味の素グループ会社で、スペインの農業資材メーカー)では、国内のBtoB顧客、BtoC顧客向けに納品しているバイオスティミュラントの液体製剤がはいっているコンテナ容器(IBC)を回収・洗浄し、再度リサイクルIBCとして活用しています。
*バイオスティミュラントとは
バイオスティミュラント(biostimulant)とは、世界中から関心が集まっている新しい農業資材の一種で、植物のストレスを制御することで、気候や土壌の状態から影響を受けるダメージを軽減し、植物が本来持っている能力を引き出し、健全な植物を提供する新しい技術です。
味の素グループは、Well-being=「健幸」、すなわち健康で幸せな暮らしのため、2030年までに、「環境負荷を50%削減」と「10億人の健康寿命を延伸」という2つのアウトカムの両立実現に向けて邁進していきます。
2024年4月の情報をもとに掲載しています。