<尾城さんが登場する記事はこちら>
味の素社は、パリ2024パラリンピック競技大会(2024年8月28日~9月8日開催)における日本代表選手団へのサポートとして、「Café du Dashi(カフェ・ドゥ・ダシ)」というブースを出店し、食品やアミノ酸サプリメントの提供のほかに「だし湯」やコーヒーも提供するというパラリンピック期間では初の取り組みを行いました。
尾城さんはそのサポートスタッフとしてパリに滞在。今回の記事では、そのときの様子を尾城さん自身によるコメントと写真でお届けします。
選手村の食堂はとても広かった!
パラリンピックの選手村の食堂を訪れた尾城さん。世界中のパラアスリートたちの食事を通じて大きな学びがあったといいます。
尾城さん
世界各国の多様性あふれた選手たちの動きを興味深く観察できることはめったになく、たくさんのアスリートとも話すことができ、とても良い機会になりました。ご飯を食べながら世界中の多様性のある障がいのある人たちの食事を観察できる機会はそうなかなかないことで⋯⋯
両腕がない人はどのようにして食事をとっているのかなど、とても勉強になりました。
尾城さん
食堂全体が広く、すれ違う人とぶつかることがないようスペースに余裕がありました。食事を提供するフロアは5つか6つあったと思います。目の見えない人、両腕がない人などは、ほかの選手やチームスタッフがついていました。個人的に意外に感じたのは、食器が一般的な既製品で提供されていたことです。それでもそれぞれの障がいを持つ人たちが工夫しながら食器を使いこなす様子が印象的でした。
「だし湯」を口に運んでほっとしている姿を目にして・・・
味の素社では、ビクトリープロジェクト®を推進しています。このプロジェクトは、日本代表選手とその候補選手を対象とした、国際競技力向上およびメダル獲得数増の為の『食とアミノ酸』によるコンディショニングサポート活動です。
そのビクトリープロジェクト®の一環として、パリ2024大会においては「Café du Dashi」で「だし湯」やコーヒーを提供し、アスリートたちのコンディション維持に貢献しました。
尾城さん
異国の地で重圧にさらされながら食事面でも気を付けているパラアスリートが「だし湯」を口に運んで顔がほころぶ姿をたくさん見ることができました。また、パラアスリート自身が、ほかの障がいへの感度が高いことも垣間見えました。
尾城さん
さらに「アミノバイタル®」や粉末スープなど味の素社のほかの商品も重宝いただき、異国での大会中、アスリートの「食」をサポートしてよろこばれることの重要性を肌で感じることができました。
尾城さん
水泳の鈴木孝幸選手がメダル獲得翌日にご来訪!メダル獲得のお祝いの言葉をかけたところ、手話で「ありがとう」と返してくださいました。メダルを獲得後の達成感いっぱいの表情に、私自身、自分のことのようにうれしくなり、逆に元気をもらいました。
ゴールボール、車いすバスケットボールの選手とも雑談しながら、私自身のことを聞かれて「来年東京でデフリンピック*があるよね」「成功するといいね」という話題で盛り上がりました。
ブラインドフットボール(ブラインドサッカー®)を観戦!
尾城さんは、ブラインドフットボール(ブラインドサッカー®)の男子日本代表戦を観戦。視覚障がいを持つアスリートの戦いから尾城さんは何を感じたのでしょうか。
尾城さん
私の聴覚障がいと異なり、視覚が閉ざされたなかで音を頼りに行われるブラインドフットボールは「想像できない世界」です。どうやってベストパフォーマンスを発揮できるか?私がやるならどうやってプレーするのかを考えながら観戦しました。
また、私が気になったのは、視覚障がい者の観客はどうやってその競技を楽しんでいるのかという点です。競技中に観客席を見回していると、写真のようなB4サイズくらいの青いデバイスを使って観戦している人がいました。
尾城さん
目が見えない娘さんを引率しているお母さんに、どんな機能があるのかをたずねました。
これは解説を聞きながらフィールド上のボールの所在をリアルタイムに知らせるデバイスとのことでした。
「目が見えない人が目の見えない人のスポーツを楽しむ」ためのとても画期的なツール!目から鱗(うろこ)が落ちるとともに、本当に感動しました。
ブラインドフットボール男子日本代表は残念な結果となりましたが、4年後に向けてまたがんばってほしいです。
パラリンピックのお祭り感を肌で感じた「水泳」
水泳の会場を訪れた尾城さん。フランスのサポーターの熱狂ぶりを体全体で感じたといいます。
尾城さん
水泳の会場はフランス国旗だらけで圧巻でした。私の体に響くほどの大歓声が聞こえ、パラリンピックのお祭り感や熱量を肌で感じ取れた観戦でした。
私の席の周りにいたフランス人たちも気軽にハイタッチを交わしてくるなど、観客としての一体感を味わえたのがまた心地よかったですし、鈴木孝幸選手がメダルを獲得した瞬間、一緒によろこんでくれたことがさらにうれしかったです。
私はスタートの音が聞こえないため、いつ競技が始まるかを目視しながら集中し、試合経過をじっくりと見守りました。
隻腕(せきわん)だけでなく両肩からその先が欠片している障がい者が、胴体と足のバネをうまく使いながら泳いでいる光景は迫力があり、まさに驚異的でした。
日本代表選手団でもMVP級の活躍をした鈴木選手に拍手!!!
尾城さん
国際大会で日本人選手がメダルを獲得する瞬間に立ち会えました。日本人としての高揚感はもちろん、実際にスタンドで目の当たりにしたことは、何ものにも代えがたいほどすばらしい瞬間でした。
世界初の「ろう学校」を訪問
パリには、シャルル・ミシェル・ド・レペが設立した「ろう学校」があります。ろう学校とは、耳が聞こえない子どもたちが通う学校のことです。ここは今回のフランス訪問をきっかけに、尾城さんが訪れたかった場所のひとつです。
尾城さん
耳が聞こえない地元の人は、現地でオリパラが開催されていることについてどのように感じているのでしょうか。世界で初めてつくられたろう学校(1791年設立)を訪れてみました。
学校の外壁には1924年にパリにて開催されたデフリンピックの様子が分かる貴重な写真が7枚掲示されていました。
尾城さん
学校の構内に入ることはできませんが、放課後のタイミングを狙って正門前に向かい、高校生くらいの生徒10数人に突撃取材を敢行しました。
この学校の生徒数は250人。7歳から21歳の子どもたちがフランス各地から集まって寮で生活しながら学んでいるそうです。食事は食堂でみんな集まって手話で語らいながら食べているとのことでした。
尾城さん
地元でのオリパラについて好意的にとらえていましたが、観戦への興味は薄い様子でした。しかし、来年東京で開催される「東京2025デフリンピック」に期待しているといった話を聞けました。
東京から来たことを話したら日本の人気マンガや食べ物のことなどを聞かれ、さらには「東京に行きたい!!!」という声も。日本に強い興味・関心があることがうかがえました。
番外編:パリの警察官の感度の高さに驚く
尾城さん
パリの街で、警察官にさりげなく「ご飯はいつ食べるの?」と翻訳アプリを使って声をかけてみたところ、ちょっとした雑談となりました。
「パラリンピックを見に来たんだ?」「聞こえない人はデフリンピックでしょ?」と突っ込まれ、「デフリンピック」のことを知っているなんて、日本とは異なる感度の高さに驚く出来事でもありました。
スタッフが証言!尾城さんの「コミュニケーション力」がすごい理由
今回、尾城さんとともにパリ2024パラリンピック競技大会に同行したスタッフは、何より尾城さんの「躊躇ないコミュニケーション力」に驚いたようです。はじめて会う外国の方とも長年の友人のように接することができるのは「言葉の壁」がないからではないか、とスタッフの大住さんと蘆名さんはいいます。
大住さん
今回、尾城さんとご一緒して驚いたことは「手振りと口の動きだけでなんとなくコミュニケーションできちゃう」ってことです。尾城さんはいろいろな国籍の人とすぐに友だちになってしまいます。私は英語ができるのですが、なかなか尾城さんのようにはできないです。
蘆名さん
おそらく耳が聞こえるということは「言語がちがうことで壁ができる」ことだと思うのです。尾城さんは言語のちがいに関係なく話すことができる。これは聞こえる人とは異なる感覚だと思いました。国籍や文化がちがっても、聴覚障がいを持っている人たちはサイレントのなかで生活しているので独自の共通の価値観があると思いました。たとえるならそれは国籍を超越した世界共通の価値観を共有する民族のような。それは私にとって新鮮な気づきでした。
尾城 淳一
グローバルコミュニケーション部
Panasonicから、2013年(平成25年)味の素社に入社。Web、SNSなど、自社のデジタルコンテンツ関連に携わる。「自身の目で見て何を感じたか」をモットーとしており、日頃から足を使って情報を集めることを心がけている。 味の素グループのWorkplace(味の素グループ内でのSNS型コミュニケーションプラットフォーム)では、DE&I推進の取り組みを通して感じたことや気づきを自ら発信する「OSHIRO'S EYE」という動画を積極的に配信している。
2024年11月の情報をもとに掲載しています。
<用語解説>
デフリンピック
デフリンピックとは、国際ろう者スポーツ委員会(ICSD)が主催し、デフアスリートを対象とした国際総合スポーツ競技大会です。4年ごとに開催しています。
デフ(Deaf)とは、英語で「耳がきこえない」という意味です。
デフリンピックは国際的な「ろう者のためのオリンピック」です。
「第25回夏季デフリンピック競技大会 東京2025(東京2025デフリンピック)」は、100周年の記念すべき大会であり、日本では初めての開催となります。
https://deaflympics2025-games.jp/