味の素社は2017年(平成29年)に渡部選手とパートナー契約を結び、栄養戦略をサポートしています。
2026年(令和8年)2月のミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックという、渡部選手にとって最後のオリンピックを控え、味の素社は「本気のエネルギーマネジメント」に取り組んでいます。
味の素社は、ミラノ・コルティナ2026冬季大会において「#MAJINOMOTO」をコンセプトに、「本気」で頂点をめざすトップアスリートを「本気」で支えます。
この記事では、2025年(令和7年)10月に行われた渡部暁斗選手と、味の素社の「ビクトリープロジェクト®」*プロジェクトリーダーの上野祐輝さんのインタビューをお届けします。
*「ビクトリープロジェクト®」とは、国を代表する選手やその候補選手を対象に、国際競技力の向上およびメダル獲得増のため、味の素社が行う「食とアミノ酸」によるコンディショニングサポート活動です。

渡部 暁斗 氏スキー・ノルディック複合日本代表

上野 祐輝味の素株式会社
「ビクトリープロジェクト®」
プロジェクトリーダー/サポートディレクター
2025-26年シーズン限りでの引退を表明して「あとはやるだけ」
渡部暁斗選手は、白馬高校(長野県)在学中だった2006年(平成18年)にワールドカップでデビューし、そのままトリノ2006冬季オリンピックに出場。以来、オリンピックではソチ2014、平昌2018、北京2022の3大会連続でメダルを獲得し、ワールドカップでは19勝と日本人最多タイを記録しました。
キング・オブ・スキーとして一時代を築いてきた渡部暁斗選手。前回の北京2022冬季オリンピックにおいて、金メダルにわずか0.6秒差での銅メダル獲得は記憶に新しいところでしょう。決して大きくはない身体で世界の強豪と真っ向勝負してきた実績とスポーツマンシップは世界的にも高く評価されています。
37歳で迎える今シーズン、渡部選手にとってミラノ・コルティナ2026は最後のオリンピックであり、6大会連続出場、4大会連続メダル獲得に向けての挑戦になります。
ーーー2025年(令和7年)10月23日に正式に引退を表明されました。気持ちに何か変化はありましたか?
渡部選手
スッキリ晴れやかな気持ちです。今シーズン限りという決意は、これまで支えてきてくれた家族やチームには、その前から伝えてありました。ただ、正式に表明したことで「あとはやるだけ」と、いっそう気持ちが引き締まる思いです。「ビクトリープロジェクト®」の上野さんには2025年(令和7年)の春合宿でお伝えしたんでしたよね。

上野さん
ええ。あの日から「最後のオリンピック」に向けて準備が始まりました。
ーーー今シーズンの調子はいかがですか?
渡部選手
すごくいいですね。2017年(平成29年)から「ビクトリープロジェクト®」にサポートしていただいているのですが、今シーズンは早い段階から自分の摂るべき栄養が把握できて、これまでで一番いいと感じています。
上野さん
栄養の摂り方について毎年、試行錯誤を続けてきましたが、今年は渡部選手自身が「何をどれくらい食べればベストの体重でいける」ということを、しっかり把握されています。長年、経験されてきたいろいろなパーツが、ひとつに組み合わさっているように思います。
瞬発力と持久力。人生の大半は、その矛盾に向き合う時間だった
ーーー「ビクトリープロジェクト®」ではどのようなサポートを行っていますか?
上野さん
勝つための栄養戦略を渡部選手と話し合いながら決めていきます。味の素社の最大の強みであるアミノ酸に関する知見をもとに、食事全般のプランをご提案しています。

上野さん
試合当日、最高のパフォーマンスを支える栄養戦略をいかに作り上げられるか。とくにノルディック複合は、ジャンプは瞬発系、クロスカントリーは持久系。相反する体力が求められるという、非常に特殊な競技です。
ノルディック複合とは?
ノルディック複合は、ジャンプとクロスカントリーの両種目の成績によって順位を競います。19世紀中頃にノルウェーで誕生し、「ノルディック・コンバインド」とも呼ばれます。本場ヨーロッパでは優勝者に「King of Ski」という称号が与えられます。
オリンピックでは前半にジャンプ、後半にクロスカントリーを行う「グンターゼン方式」です。ジャンプの飛距離による得点差はクロスカントリーのタイムに換算され、選手はタイム差ごとに順次スタートします。距離は10km(基本的に1周2.5km×4周)。ゴール到着順が最終的な順位になります。
種目は、個人がノーマルヒルとラージヒルの2種目。団体ではトリノ2006冬季オリンピック以降はラージヒルで行われています。
日本勢はアルベールビル1992冬季オリンピック、リレハンメル1994冬季オリンピック、いずれも団体で金メダルを獲得。その後、北京2022では団体と、個人で渡部暁斗選手が銅メダルを獲得しています。

平昌2018冬季オリンピック ノルディック複合 個人 ノーマルヒル

平昌2018冬季オリンピック ノルディック複合 個人 ノーマルヒル
渡部選手
前半のジャンプは可能な限り軽い体重で飛びたいし、後半のクロカンはできる限りパワーを持続させて速く走り切りたい。陸上競技でいうと、走り幅跳びと1万メートル走を同じ日に行うようなもので、つくづく矛盾をはらんだ競技だと思います(笑)


北京2022冬季オリンピック ノルディック複合 個人 ラージヒル
渡部選手
だからトレーニングする時も食べる時も、常に矛盾に直面します。ぼくの競技人生の大半は、その矛盾に向き合う時間だったと言っても過言ではありません。イメージとしては、常に秤を睨みながら分銅をこっちに載せたり、あっちに移したり、また戻したり......みたいなことをしています(笑)
メダルに向け、とことん本気の「PROJECT180」に詰め込まれた"本気"
ミラノ・コルティナ2026に向け、渡部選手と上野さんは綿密な計画を練り上げてきました。「ビクトリープロジェクト®」の9年間にわたる栄養サポートの集大成ともいえるプロジェクトが「PROJECT180」。そのテーマは「"とことん"細部までこだわる、やり切る」です。

ーーー「PROJECT180」の180は何を意味しているのでしょうか?

上野さん
ミラノ・コルティナ2026では、ジャンプとクロスカントリーのインターバルは3時間。「PROJECT180」には180分という意味と、もうひとつ、スピード系から持久系へと、180度異なる競技に対応する挑戦の意味も込められています。

180分のインターバルの中で、カラダを180度トランスフォームする
ーーー栄養戦略プランに渡部選手からリクエストされた点は?
渡部選手
平昌2018の時のプランをベースに、毎シーズン、いろいろと試行錯誤してきました。たとえば1日4本飲むのがベストだった補食が、年齢とともにだんだんキツくなってくる。ちょっと量が多い、その割には空腹感が残るとか。今年は上野さんに相談して固形物を入れていくことにしました。
上野さん
以前から渡部選手は「噛みたい、噛みたい」とおっしゃっていましたね。咀嚼したいんですよね。それで「パワーボール®」を取り入れました。

2025年9月にプレダッツォ(イタリア)で開催された「サマーグランプリ」でのオリンピック本番を想定したインターバルのシミュレーションの様子
(写真左)オフィシャルトレーニングジャンプ 1本、トライアルジャンプ 1本、本番ジャンプ 1本、計3本のジャンプ中に補食を1本ちびちび飲みで摂取
(写真右)本番ジャンプ後、Mixゾーン前からエネルギーミックスドリンク摂取開始

(写真左)「固形物でエネルギー摂取をしたい」という渡部選手の希望で「パワーボール®」を導入。また、よりエネルギーを摂取しやすくするために、"だし湯(汁物作戦)"を採用
(写真右)クロスカントリーウォーミングアップ前、「アミノバイタル®」を摂取し準備完了

「パワーボール®」とは、小ぶりで食べやすい「ほんだし®」を使ったおにぎり。「試合前にエネルギーを補充したいが、緊張して食欲がわかない」「試合間の時間が短くて食べられない」などのアスリートのリクエストに応えて、味の素社が開発しました。
https://story.ajinomoto.co.jp/history/038.html
渡部選手
同じ栄養量でも咀嚼するとエネルギーの入り方が違うんですよ。
上野さん
「パワーボール®」以外にも、平昌2018以降に開発された「アミノバイタル® MOMENT®」を取り入れるなど、全エネルギーの摂り方を見直して進化させています。
ーーー「PROJECT180」では緻密な計算のもと、選手に必要なエネルギー量やたんぱく質量などが算出されていると聞きます。
上野さん
今はエビデンスに基づいて、競技に必要な栄養を算出できる計算式があります。渡部選手に必要な栄養もそれを使って割り出せます。問題は、それをどう摂るかなんですね。机上でどれだけ計算できても、実際に現場でそれだけ食べられるのか?お腹に不快感が出ないか?実際にやってみないとわかりません。

上野さん
9月に行われたスキージャンプの大会「サマーグランプリ」では、ミラノ・コルティナ2026の本番会場(イタリア・プレダッツォ)で練習できたので、私も帯同して、その点を確認してきました。しかし、それが2月の氷点下のオリンピック本番でも同じようにいくかどうかはわかりません。だからこそ余裕を持って、すべてをガチガチに決めないことも大切になります。

本番会場でトライアルしたニュートリションプラン

サマーグランプリ中の打ち合わせの様子
競技を続けるモチベーション。根底にあるのは「自分が変わる楽しさ」
渡部選手はミラノ・コルティナ2026で6大会連続出場になります。一見してスレンダー、外国選手とは歴然とした体格差がありながら、世界のトップでありつづけた20年。何がこれほど長く、渡部選手を競技に向かわせてきたのでしょうか。
ーーーこの20年間をご自身はどう評価されていますか?
渡部選手
競技を始めた頃はいつまで続けようとか、何を成し遂げようとか、そういうことはあまり考えていませんでした。なぜこんなに長く続けられるのかと、よく聞かれますが、ぼくはジャンプを跳ぶのが楽しいし、スキーに乗って雪の上を滑るのが好きなんです。その気持ちを忘れずに、スキーに対する愛を持ち続けてこられたことが、自分の一番誇れることかなと思います。

ーーーその気持ちを持ち続けられる理由を知りたいです。
渡部選手
ぼくは自分のスキーに何か変化や向上、改善みたいなものが見られた瞬間が一番楽しい。その先に、メダルや優勝といった成果がついてくるのだと思います。根底にあるのは、自分が変わる楽しさ。栄養戦略もそうです。これまでのプランに変化を加えるのは怖いことです。でもぼくは変化を、向上を求めているから、その一歩を踏み出す勇気が必要。それがぼくの挑戦です。
ーーーオリンピックに向けて、今、どんなことを意識しながら過ごされていますか?
渡部選手
心に余裕を持つことを大事にしています。オリンピックシーズンになると、自分だけでなく周りもすごく気合いが入ってくるんですよ。どんどん盛り上がって、大きなうねりみたいな波が生まれる。それに飲まれないように気をつけています。逆に、いい波が来た時に、しっかり乗れるように万全の準備をしています。波待ちをしている感じですね。この感覚はこれまで出場した5大会の経験から得られたものだと思います。
ーーー最後のオリンピックになります。
渡部選手
はい。家族やチームもその覚悟を持って、「これが見納め」という気持ちで見守っていてくれているのを感じますし、そこから受け取るパワーも感じています。今はぼく自身、オリンピックの雪の上で迎える最後の瞬間を楽しみにしています。

「ビクトリープロジェクト®」は、ぼくを試合に送り出し、迎え入れてくれるホーム
ーーー味の素社「ビクトリープロジェクト®」はミラノ・コルティナ2026に向けて選手に「本気のサポート」を準備中です。渡部選手にとって「ビクトリープロジェクト®」はどんな存在ですか?
渡部選手
本当に多大なサポートをしていただいていると思います。とくに上野さんは合宿にも来てくれて、ぼくの状態を理解して、期待以上の栄養戦略を提案いただいています。
ーーーオリンピック会場ではどんなサポートが?
渡部選手
宿舎に迎え入れてくれる家族みたいな存在です。とくに北京2022の試合後、実感しました。零下20度のレース会場から、体中冷え切って帰ってきた時に飲んだ一杯の豚汁は忘れられません。身も心も生き返ったように温まりました。
ーーーラストランに向けて「ビクトリープロジェクト®」に期待や要望があれば。
渡部選手
いや〜、あとはもう、オリンピックでぼくがメダルを取るってことを信じてもらうだけです。
上野さん
私は取れると思っています。何より私が望むのは、渡部選手に「オリンピックを最後までやりきった!」と言ってもらえるように最後まで伴走したい、それだけです。
2026年(令和8年)2月、ミラノ・コルティナ2026で、渡部選手はどんなジャンプを見せてくれるでしょうか。味の素ストーリーも「ビクトリープロジェクト®」のみなさんといっしょに応援します。

渡部選手(左)と上野さん(右)。インタビューにはリラックスした雰囲気で、自身の言葉で応えてくれた渡部選手。ちなみに愛読書は、井上雄彦さんの『スラムダンク』や『バカボンド』だそう。「競技の本質が描かれていて何度も読み返しています」(渡部選手)
渡部選手が「エコパートナー」 Allbirdと取り組むCO2排出削減
雪が降らなければスキーはできない。渡部選手は気候変動を自分ごととしてとらえ、「次世代のためにも雪を残さなくては」という使命感を持って環境問題に取り組んでいます。
2022年(令和4年)から、渡部選手はアメリカのシューズブランドと「エコパートナー契約」を結び、受け取ったスポンサー料を気候変動の要因の一つとされるCO2排出を減らす活動に充て、「CO2排出量実質ゼロ」で競技活動を行うプロジェクトに取り組んでいます。「エコパートナー」とは、環境に優しい製品とかサービスを展開している企業だけに限定するパートナーです。
2022〜2023年シーズンの実績では、渡部選手世帯が1年間に排出したCO2、52トンを、北海道の森林クレジット(国が認証する森林によるCO2吸収量)の購入により、排出量を実質ゼロにしています。

渡部 暁斗
スキー選手(ノルディック複合)
1988年生まれ。長野県白馬村出身。北野建設スキークラブ所属。白馬高校在学中にトリノ2006冬季オリンピックに出場。2009年世界選手権団体で金メダルを獲得。2011ー12シーズンはW杯4勝、個人総合2位と世界のトッププレーヤーに。ソチ2014冬季オリンピックで日本人として23年ぶりとなる銀メダルを獲得。平昌2018冬季オリンピックでも個人ノーマルヒルで2大会連続の銀メダルを獲得。また2017-18年シーズンは、W杯において悲願の総合優勝を達成。北京2022冬季オリンピックでは個人ラージヒルで銅メダルを獲得し、オリンピックの個人戦で3つのメダル獲得は日本のノルディック複合界で最高の成績。2025年10月、引退を表明。

上野 祐輝
味の素株式会社
コーポレート本部グローバルコミュニケーション部 スポーツ栄養推進グループ シニアマネジャー
「ビクトリープロジェクト®」プロジェクトリーダー/サポートディレクター
大学時代はアメリカンフットボール部で活躍。いちプレイヤーとして「アミノバイタル®」を愛用。2008年、味の素株式会社入社。8年間、九州や東京の大手エリアで家庭用商品の営業として精力的に活動。「いつかスポーツに関わる仕事を」という想いから、2016年に「ビクトリープロジェクト®」メンバー公募に手を挙げる。現在はブレイキン、バドミントンをはじめ、数々のアスリートたちをサポートする、プロジェクトのリーダー。2017年から渡部暁斗選手の栄養戦略を担当。
※味の素㈱は、 TEAM JAPANゴールドパートナー(調味料、乾燥スープ、栄養補助食品、冷凍食品、コーヒー豆)です。
2026年1月の情報をもとに掲載しています。
