活動レポート

芋煮会ってなに?日本一の芋煮フェスに味の素社が参加する理由

こんにちは、食べることが大好きなライターのあずみです。

今回のテーマは「芋煮会」。……いや正直、最初に聞いたとき思いましたよ。芋煮?それ、ただの“芋の煮物”ちゃうの? それをみんなで食べるイベントって!? なにせ関西出身の私には、まったくピンとこない響きですから。

でも、東北では「秋といえば芋煮!」と言われるほど、地域に根付いた恒例行事なのだとか。中でも、山形で毎年開催される「日本一の芋煮会フェスティバル」では、直径6メートルを超える巨大鍋で調理し、なんと約3万食をふるまうというから驚きです。

2025年(令和7年)は9月14日(日)に開催され、ニュースでも大きく取り上げられました。


そんなビッグイベントに、味の素社は10年以上前から参加し、オリジナルの「うま塩芋煮」を提供しているといいます。

そこには、一体どんなねらいや思いがあるのでしょうか。今年のフェスティバルを振り返りながら、味の素株式会社東北支社の営業担当の皆さんに、お話を伺いました。

川上 泰輝
味の素株式会社 東北支社
家庭用グループ グループ長

清水 陽介
味の素株式会社 東北支社
家庭用グループ 内勤総括
(本イベント担当)

平井 友香子
味の素株式会社 東北支社
家庭用グループ
(営業担当)

いわば"バーベキュー"のようなもの?西日本では耳慣れない「芋煮会」とは

ーーーまず聞きたいんですけど、そもそも芋煮って、どういうものなんですか?

清水

芋煮は東北地方の郷土料理で、里芋やこんにゃく、ねぎ、肉などを煮込んだ"汁もの"なんです。ちょうど里芋の収穫期にあたる9月〜11月によく食べられるんですよ。

ーーーなるほど。でも芋煮"会"とつくと、何か違うんですか?

清水

そうそう、"会"がつくとちょっと特別なんです。芋煮会は、みんなで「芋煮やろうぜ!」と声を掛け合って、大鍋を河原に持ち込んでワイワイ煮て食べる、そんな東北の秋の恒例行事です。いわば"バーベキュー"のようなものですね。地域のつながりを大切にする山形の人たちの気質にぴったりの食文化だと思います。

ーーーバーベキューみたいに河原で鍋を囲むなんて、すごく楽しそうです。

平井

そうなんです。にぎやかで楽しいんですよ。芋煮会の発祥は江戸時代とも言われていて、山形を流れる最上川の最終船着き場で、船頭さんたちが川岸の松の木に鍋を掛けて作ったのが始まりだそうです。"屋外でみんなで作って食べる文化"が今も受け継がれているんですよ。秋になると、スーパーで芋煮セットが売られていたり、大鍋をレンタルできたりします。

清水

しかも若い世代にもちゃんと根付いていて、実際に家族連れや友人同士が河原に集まって、芋煮会を楽しむ光景をよく見かけますね。

ーーー幅広い世代に親しまれているんですね。味付けにはどんな特徴があるんですか?

清水

そこがまたおもしろいんです。山形は醤油と牛肉がベースで、すき焼きっぽい甘辛テイスト。宮城は味噌と豚肉で豚汁風。地域によって味も具材も違うんです。この二大派閥が東北の芋煮文化を支えているんですよ。

山形県の、牛肉と里芋を使ったしょうゆベースの芋煮

宮城県の、豚肉と里芋を使った味噌味の芋煮

味の素社が日本最大級の"芋煮フェス"に参加する理由

ーーー味の素社は2014年(平成26年)から、東北支社の取り組みとして「日本一の芋煮会フェスティバル」に参加されています。なぜ芋煮会に関わることになったんですか?

清水

じつは昔から芋煮とは縁があったんです。というのも、山形の方々は芋煮を作るときに「ハイミー®」などのうま味調味料をよく使ってくださっていたんですよ。つまり、芋煮と味の素社の商品はもともと相性が良かったんです。

ーーーすでに地域に馴染んでいたわけですね。

清水

はい。それに東北は、全国的に見ても塩分摂取量が多いといった健康課題を抱える地域です。そこで震災後には、「東北絆ご飯」という活動を通じて、地域の健康や栄養に寄与する取り組みを進めてきました。

「東北絆ご飯」メニューの一部。季節や用途に沿ったさまざまなメニューを数多く提案

清水

その中で、塩の代わりに「ハイミー®」を使うことで減塩につなげようと、新しい芋煮のレシピを発信してきたんです。そうした流れで、フェスティバルを主催する山形商工会議所さんから、「ぜひ一緒に盛り上げましょう」と声をかけていただいたのが参加のきっかけでした。

ーーーとても自然なつながりだったんですね。

清水

そうですね。このフェスティバルは東北最大級のイベントですし、芋煮は家庭でも外食でも親しまれている"ビッグメニュー"ですから、当社としても地域の食文化に貢献できる絶好のチャンスだと考えました。

会場に設置された大鍋芋煮のクレーン車(左)と、味の素社の出店テント(右)

第3の味は塩!苦心の末に生まれた"うま塩芋煮"

ーーーフェスティバルでは、「鍋キューブ®」〈鶏だし・うま塩〉を使った"うま塩芋煮"を提供されています。なぜ塩だったんですか?

清水

せっかく参加するなら、既存の味をなぞるだけでなく、"新しい価値"を提案したいと思ったんです。すでに醤油と味噌があるなら、第3の味として塩があってもいいのではーーそんな発想から生まれたのが、うま塩芋煮です。

ーーー塩味の芋煮って、ちょっと想像がつかないです。どうやって形になっていったんですか?

清水

最初は地元の方々も半信半疑で、「塩で芋煮が作れるの?」「本当においしいの?」という声もあったそうです。でも、当時の営業担当が地元の蕎麦屋さんと一緒に何度も試作を重ねて、ようやく「これならいける!」という味にたどり着きました。今では「塩味を食べに来ました」というお客様も少なくないんですよ。

4,500食を提供! "塩目当て"のリピーターも

ーーーうま塩芋煮を提供し続けて、10年以上になるそうですね。

清水

はい、今年で11年目です。直径3メートルの大鍋を使って、スタッフ総出で調理し、今年は約4,500食を提供しました。フェスティバルでは、山形伝統の醤油味と私たちのうま塩芋煮、2種類が恒例になっていて、食べ比べを楽しみにしている方も多いんです。

味の素社の「うま塩芋煮」を調理した直径3メートルの大鍋

うま塩芋煮調理の様子

ーーー4,500食!? いったい、「鍋キューブ®」はどれくらい使うんですか?

清水

1人前1キューブですから4,500個分ですね。あまりの量なので、スタッフが餅つき用の杵で叩いて砕き、溶けやすくしてから大鍋に投入するんです。手間はかかりますが、その光景もフェスティバルならではですね。

日本一の芋煮会フェスティバル【公式】Xアカウントのポストより
https://x.com/imo2man/status/1965963953093349699

ーーー手間もスケールも桁違いですね。お客さんの反応はいかがですか?

清水

ありがたいことに好評で、「あっさりしておいしい」「塩味が好き」と言ってくださる方が年々増えています。親子連れや若いカップル、女性グループなど幅広い層に人気ですね。中には、寸胴鍋を持参して「7食分ください」という筋金入りの芋煮ファンの方もいました(笑)。

ーーーSNSでも「おいしかった」「来年も食べたい」という投稿をよく見かけました。

清水

うれしいですね。最初は"変わり種"として始めたうま塩芋煮ですが、10年以上続けてきた今では、すっかりフェスティバルに欠かせない味の一つになってきたと感じています。

フェスの熱気を売り場へ。"うま塩芋煮"拡大作戦、進行中!

ーーーフェスティバルの盛り上がりを、その先の日常につなげる動きもあるんですよね。

清水

はい。山形に44店舗(2025年10月現在)を展開する県内最大手の流通「ヤマザワ」さんと連携して、今年はフェスティバルと売り場をつなぐ取り組みに力を入れました。フェスで「塩もアリだな」と感じてもらい、その体験を日常の買い物へどうつなげていくか。そこを意識して動いてきたんです。

ーーーフェスでこれだけ人気でも、売り場ではまだこれからなんですね。

平井

そうなんですよ。毎年、芋煮シーズンになると、地元スーパーに"芋煮エンド"が立ち上がるんですけど、そこに、「鍋キューブ®」がなかなか入らないんです。

ーーー"芋煮エンド"って何ですか?

清水

スーパーの通路沿いに設けられる特設棚のことを、業界では"エンド"と呼びます。長い商品棚の端にあたる場所で、目に留まりやすいんです。芋煮エンドには、醤油やみりん、里芋、牛肉など、芋煮に欠かせない定番の食材や調味料がずらりと並びます。そこに「鍋キューブ®」が加われば、うま塩芋煮という新しい選択肢が、生活者の目に自然と届く。だからこそ、この棚に入ることを目標にしてきました。

ーーースーパーで一番目につく、あの場所ですね。

平井

そうです。でも現状では、「塩味の芋煮って本当に必要?」という声が、流通サイドにはまだ根強くて......。だから、まずはフェスで"おいしい記憶"をつくることが大事なんです。実際に食べて「おいしい」と感じた体験が、店頭で商品を手に取るきっかけになる。その流れを少しずつ育ててきました。

芋煮文化に多様な価値を生むことで拡がるビジネスチャンス

ーーー食べるという体験から広げていくわけですね。具体的にどんな仕掛けを?

平井

うま塩芋煮をもっと知ってもらうために、今年はヤマザワさんとコラボしたプレゼント企画を実施しました。店頭で味の素社商品を購入し、そのレシートをフェス会場に持ってきていただくと、「ミニ『アジパンダ®』瓶」をプレゼントするという内容です。ヤマザワのお客様をフェスに呼び込み、うま塩芋煮を味わって、「味の素®」ファンになって、また売り場に戻ってきてもらう。そんな好循環をねらいました。

ーーーお客さんの反応はいかがでしたか?

平井

とても好評でした。「ミニ『アジパンダ®』瓶」を目当てに商品を買って来場された方がたくさんいました。実際にうま塩芋煮を食べて、「こんな芋煮もあるんだ」「塩もおいしい!」と声をかけてくださる方も多くて、手応えを感じましたね。

清水

この企画と連動して、ヤマザワさんと当社のSNSでも情報を発信しました。フェスの盛り上がりとうま塩芋煮、「鍋キューブ®」をしっかり紐づけて、認知を広げる新しい試みです。その効果もあって、今年は味の素社ブースも例年以上ににぎわいました。

平井

Xでの投稿を見て、関東から「うま塩芋煮を食べに来ました!」という方もいらっしゃったんですよ。

ーーーすごい反響ですね。 ヤマザワさんも手応えを感じていたのでは?

平井

「おもしろい企画ですね」とすぐに賛同してくださって、担当者の方も当日会場へ来てくださいました。そしてついに今年、芋煮エンドの販売計画に「鍋キューブ®」を入れていただけることになったんです!

ーーーおお、それは大きな一歩ですね。

平井

ただ、実際に各店舗で展開してもらうには、現場の担当者さんに「これは売れそう」と感じてもらうことが何より大事。そこは、私たち営業が一軒ずつ現場を回って、地道に信頼を積み上げていくしかありません。

ーーーグループ長の川上さんから見て、お二人の今回の取り組みはいかがですか?

川上

二人を中心に、現場での地道な取り組みを通して、地域や流通の方々と新しい関係を築けたのは、本当に大きいと思います。これまでの活動を土台にしながら、ゼロからアイデアを出して形にしていった姿勢もすばらしかったですね。

支社内にとどまらず、関係部署とも積極的に連携し、さまざまな知見を取り入れながら、良い取り組みに結びつけてくれました。チーム全体にとっても、新しい一歩につながる活動になったと感じています。

ーーーお話を聞けば聞くほど、単に"売る"ことを超えた活動になっているように感じます。

清水

はい。もちろん商品を売ることも大事ですが、私たちが目指しているのは、芋煮の楽しみ方を広げることです。山形の醤油味、宮城の味噌味という二大定番に、塩という第三の選択肢を加えることで、芋煮の文化がもっと多彩に広がっていけばと思っています。

ーーー芋煮文化に新しい風を吹き込むような挑戦ですね。

清水

しかも「鍋キューブ®」なら、うま味で満足感を出せるので塩分控えめでもおいしい。伝統を大切にしながら健康にも寄り添う、その両立を目指しています。

日本一の芋煮会フェスティバルに「アジパンダ食堂」ブースが登場!

今年のフェスティバルには、東北で初めて「アジパンダ食堂」と提携した株式会社山形丸魚が参加。会場内に特設ブースを設け、味の素グループで発生するフードロス対象商品などを販売いただきました。

「アジパンダ食堂」は、味の素グループが展開する"子ども食堂支援×フードロス削減"を叶える新しい取り組みです。賞味期限が近いなどの理由で出荷できなくなりそうな商品を販売協力先に無償で提供し、協力先に地域のイベントなどで販売いただきます。そこで得た収益を子ども食堂の運営資金として寄付する仕組みです。

つまり、地域の人が「買って食べること」自体が支援につながるーーそんな誰もが気軽に参加できる地域一体型の取り組みです。

芋煮会当日は「Cook Do®」やAGF®コーヒーなどが並び、午前中にはすべて完売するほどの盛況ぶり!その収益は、山形県内の子ども食堂に寄付されました。

"子ども食堂支援×フードロス削減"を両立する取り組みとして注目を集める「アジパンダ食堂」。全国130か所(2025年11月現在)の提携先と取り組みを深め、地域コミュニティの活性化にも貢献していきます。

お客様の笑顔を間近で見られることが、一番のモチベーション

ーーー今後はどのように展開していくのでしょうか?

清水

これからも、うま塩芋煮の魅力をしっかり広げていきたいです。大切なのは、フェスティバルの熱量を一過性で終わらせないこと。流通との連動企画やSNSでの発信を強化しながら、フェスで感じたおいしさを購買につなげていく。その流れを確かなものにして、塩味が芋煮文化の"新たな定番"として根付くよう、着実に育てていきます。

平井

芋煮エンドに「鍋キューブ®」が並んだら終わりではなく、売れ続ける状態をキープすることが大事です。その近道は、できるだけ多くの方にうま塩芋煮を体験してもらうこと。地域の皆さんにとって、当たり前の味として受け入れられるまで、一歩ずつ広げていきたいですね。お客様の笑顔を間近で見られることが、一番のモチベーションです。

川上

今回の取り組みを活かして、山形の芋煮という地域に根付いた食の価値を、今後さらに全国へ広く発信していきたいと考えています。そのためにも、このフェスティバルのように、生活者の方々と直接ふれあえる場を大切にしていきたいです。地域の皆さんとの対話を重ねながら相互理解を深め、当社を応援してくださる皆さんとも、より近い距離でコミュニケーションを育んでいきたいと思います。こうした活動を続けながら、東北の新しい食文化を育てていけたらうれしいですね。

ーーー文化にも健康にも寄り添う、うま塩芋煮。最初は「芋煮って何やねん」って思っていたのに......すみません、もう完全に食べたくなっています(笑)

平井

ぜひ来年、フェスティバルで食べ比べてみてください。醤油と塩、どちらもおいしいですよ。レシピも公開していますので、「鍋キューブ®」で"おうち芋煮"も楽しんでくださいね。

「うま塩芋煮のレシピ」

一杯の芋煮に詰まっていたのは、地域の歴史や人のつながり、そして「うま塩味」という新しい挑戦のストーリー。取材を終える頃には、私もすっかり芋煮ファンになっていました。

伝統が少しずつ形を変えながら、次の世代へ受け継がれていくーーその姿を、これからも見守っていきたいと思います。

「うま塩芋煮」から生まれる笑顔の輪が、これからどんな広がりを見せてくれるのか。次の秋が、今から楽しみです!

川上 泰輝

味の素株式会社
東北支社 家庭用グループ / グループ長

2005年入社。新潟、広島、東京での家庭用営業を担当したのち、国内営業部門の人事全般担当マネージャーを経験。2024年より東北エリアの家庭用営業マネージャーを担い、メンバーの育成を主眼に置きながら、エリア生活者への貢献を実現すべく、日々メンバーと奮闘中。モットーは「為せば成る」「第一義」「我が生涯に一片の悔いなし」「アップデート」。
休日には大好きなオートバイに乗り、大好きな東北をあっちこっちとツーリング。

清水 陽介

味の素株式会社
東北支社 家庭用グループ / 本イベント担当

2015年入社。新潟・東京(広域営業部)で家庭用営業を担当したのち、2023年から家庭用グループの内勤総括として東北支社へ着任。現在は宮城・山形・福島3県の家庭用製品の販売管理に携わる。
趣味はランニングとサウナ。休日はランニングで汗を流し、サウナで心身を整えることで、ベストパフォーマンスを発揮!

平井 友香子

味の素株式会社
東北支社 家庭用グループ / 営業担当

2023年入社。東北支社にて家庭用営業を担当。入社後2年間宮城と福島の地場スーパーを担当し、現在は宮城県に加え、ヤマザワを中心とした山形エリアのスーパーを担当。
プライベートでは、東北大学のラクロス部でコーチとして学生に携わるほか、社会人チームで試合に出場するなどラクロスに関わり続けている。

2025年12月の情報をもとに掲載しています。

味の素グループは、アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献します

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