活動レポート

鈴木孝幸、山本篤、鳥居健人が初共演!「勝ち飯®」教室から学ぶ「DE&I」と「Well-being」<前編>

2024年(令和6年)開催のパリ2024パラリンピック競技大会の水泳において、華々しい活躍を見せた鈴木孝幸選手。自らがもつ日本記録を更新し、金・銀・銅あわせて4つのメダルをつかみとりました。

そんな鈴木選手をはじめ、元パラ陸上選手の山本篤さん、ブラインドフットボール(ブラインドサッカー®)元男子日本代表の鳥居健人選手のパラアスリート3名が一堂に会するイベントが開催されました。それが「勝ち飯®」教室です。会場は東京都パラスポーツトレーニングセンター。小学生とその保護者を対象にして、パラスポーツの魅力に触れる体験会も同時開催されました。

このイベントは、味の素社が推進する「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」の考えに基づいたもので、取り組みの成果が存分に発揮される場となりました。その模様を前編・後編の2回に分けてお届けします。

鈴木 孝幸 氏

パリ2024パラリンピック競技大会、パラ水泳日本代表。男子50m平泳ぎ(SB3)金メダルなど計4個のメダルを獲得。

鳥居 健人 氏

パリ2024パラリンピック競技大会、ブラインドフットボール日本代表メンバーとして出場。

山本 篤 氏

元パラリンピック陸上競技日本代表。北京2008パラリンピック競技大会から4大会連続出場。2024年5月に現役引退。

パラリンピアン3名が初顔合わせ。それぞれが織りなす化学反応にも注目

2025年(令和7年)2月11日(祝)、東京都パラスポーツトレーニングセンターが主催する「勝ち飯®」教室が開催されました。「勝ち飯®」教室は、味の素社が2009年(平成21年)から続けている勉強会。アスリートやパラアスリートの挑戦を「食」と「栄養」の面から後押しする「ビクトリープロジェクト®」の一環で、日常生活にも活かせる栄養プログラムをレクチャーします。

東京都パラスポーツトレーニングセンターは、パラスポーツの次世代を担う選手を育成・輩出することを目的とした施設です。そんな重要な施設で「勝ち飯®」教室が初めて開催されることに加え、勉強会とパラスポーツ体験会の二部構成という新たな試みも実施されました。

勉強会には、一般公募で集まった小学生とその保護者42名が参加しました。

「勝ち飯®」教室では、これまでさまざまなゲストを招いてきましたが、今回は山本篤さん、鳥居健人選手、鈴木孝幸選手のパラリンピアン3名が集結。

左から、鳥居健人選手、山本篤さん、鈴木孝幸選手

山本さんは、北京2008パラリンピック競技大会から4大会連続で日本代表として活躍し、複数のメダルを獲得。現役引退後は後進の育成やパラゴルフに打ちこんでいます。

パリ2024パラリンピック競技大会での鳥居選手、鈴木選手の活躍はまだ記憶に新しいところ。鳥居選手はブラインドフットボール男子日本代表として活躍し、鈴木選手は水泳で金・銀・銅あわせて4つのメダルを獲得しました。

じつをいうと、3名がこうした場で顔を合わせるのは今回がはじめて。初共演の3名が織りなす化学反応にも期待が高まります。

当事者が表舞台に立つことで、DE&Iの本質がより明確に

今回の「勝ち飯®」教室は二部構成となっており、前半は「食」と「栄養」にまつわる座学を、後半はパラスポーツ体験会を行いました。これらのプログラムを通して、パラアスリートや参加者を含むあらゆる人たちのWell-being(ウェルビーイング:心身ともに健康で、社会的にも満たされた状態)を促進することが目的です。

ところで、なぜ味の素社はパラスポーツの魅力発信やパラアスリートの支援を行っているのでしょうか。もちろん「ビクトリープロジェクト®」におけるアスリート支援の一環でもありますが、その背景には、味の素社が推進している「DE&I」が息づいています。

DE&Iとは、Diversity(ダイバーシティ/多様性)、Equity(エクイティ/公平性)、Inclusion(インクルージョン/受容)それぞれの頭文字をとった言葉で、互いに尊重しながら成長できる環境をつくろうという考え方です。見据えているのは、誰もが自分の可能性を最大限に発揮できる社会。そこに障がいの有無やバックグラウンドの違いは関係ありません。

味の素社の従業員である尾城淳一さんが司会を務めたことも、特別な意味があります。

尾城さん自身、生まれつき聴覚に障がいがあります。尾城さんが人前で堂々と司会を務めあげることはDE&Iの姿勢そのものを象徴しているといえるでしょう。

人の心を動かせるのは、なにもパラアスリートだけではありません。一従業員の尾城さんが表舞台に立つからこそ、多様な視点が見えてきます。

DE&I推進に取り組むのは尾城さんや運営スタッフだけではありません。味の素社内でもDE&Iの理念が着実に浸透しており、この日も有志の社員がボランティアスタッフとして参加しました。

手話とアプリを駆使して勉強会をナビゲート

司会を務めた尾城淳一さんは、普段、味の素社のデジタルコンテンツに関わる業務を担当し、障がいがある方にも伝わりやすいコンテンツづくりに取り組んでいます。また、社内のDE&I推進活動にも積極的に参加して、当事者目線を活かした提案や情報発信にも力を注いでいます。

そして、パリ2024パラリンピック競技大会では「ビクトリープロジェクト®」のメンバーとして現地に滞在し、陰ながらパラアスリートをサポートしました。

司会中の尾城さん。このときばかりは得意のジョークも控えめ

この日は、文章読み上げアプリと手話を活用しながら参加者たちをナビゲート。同じく「ビクトリープロジェクト®」のメンバーである蘆名真平さんに進行役を引き継ぎ、いよいよ勉強会がスタートです。

「食」と「栄養」が強さの秘密?パラアスリートの食卓事情

「保護者の皆さんは、居眠りしないようにしてくださいね」。そんな蘆名さんのジョークで始まった「勝ち飯®」勉強会。目的をかなえる身体づくりのための栄養プログラム「勝ち飯®」をテーマにして、約40分間に渡り講義が行われました。

進行役の蘆名さんがゲストの知られざる一面を引き出します

勉強会の雰囲気は終始なごやか。序盤、山本さんが子どもたちに「パラリンピックを知ってる人は?」と挙手を呼びかけると、鈴木選手がすかさず「僕がメダリストだって知ってるよね?」と畳みかけ、会場が大きな笑いに包まれました。

ゲストの軽妙なトークに会場が笑いに包まれます

蘆名さんは「食」と「栄養」の観点から、パラアスリートたちの強さの秘密を深掘り。目標を達成するために必要なことは?と尋ねられた鳥居選手は自身の経験をもとに次のようにコメントしました。

鳥居選手

睡眠・栄養・練習など、大切なことはいろいろありますが、一番大切なのは栄養だと思っています。もともと自炊は好きでしたが、パラアスリートとして活動するようになってからは献立も工夫するようになりました。身体づくりに適した食材や回復を促す食材などを意識して取り入れています。

「私の調理動画が教材のように使われるとは(笑)」と、鳥居選手

鳥居選手が発した「自炊」という言葉に、いまいちピンとこない参加者たち。目が見えないはずのブラインドフットボールの選手がどうやって料理をしているの?そんな心の声が聞こえてくるようです。そこで蘆名さんが鳥居選手の調理動画をスクリーンに投影。手の感覚や聴覚だけでフライパンをふるう姿に、参加者の視線は釘付けになりました。

ブラインドサッカー® 鳥居健人選手が味の素KK「Cook Do®」で回鍋肉をつくる

鳥居選手の調理については、ストーリー内の記事でもくわしくご紹介しています。

勉強会が無事終了----かと思いきや、まさかのサプライズ

終盤はクイズ形式で、その日学んだことのふりかえり。保護者たちが挑戦したのち、勉強会はゲスト3名のコメントで締めくくられました。

鳥居選手

食事はおいしく、楽しく、考えて――。これはお世話になっている栄養士さんが教えてくれた言葉です。おいしく食べることは大前提ですが、栄養バランスを考えることも大切です。今晩の夕食からぜひ意識してみてください。

山本さん

実家で出る料理は、いつも"ザ・「勝ち飯®」"といった感じでした。そういった環境で育ってきたから、39歳になっても自己ベストを更新できたのだと思います。食生活を見直すのは大変ですが、ちょっとしたことから「勝ち飯®」を取り入れてみてはどうでしょうか。

「我が家の朝ごはんは必ず『白米』。パンや麺は食べない」と山本さん

鈴木選手

アスリートが練習以外の面でも努力していることが伝わったと思います。食事というのは身体の栄養だけではなく、心の栄養にもなります。アスリートともなるとストイックな食生活が求められる場面もありますが、皆さんはまず楽しい食事を心がけてみてください。

こうして勉強会が無事終了----かと思いきや、ここで突然のサプライズ。鈴木選手がおもむろにバッグからなにかを取り出すと、参加者たちから驚きの声が上がります。その視線の先には、なんとパリ2024パラリンピック競技大会で獲得した金メダルが。

なんと、鈴木選手によるメダル授与式が!?

そこから、「メダル受賞の体験会」に発展。じゃんけんを勝ち抜いた小学生3名の胸に、それぞれ金・銀・銅のメダルが輝きました。
鈴木選手が「皆さん、よく頑張りました」と一声かけると、会場は笑いと拍手でいっぱいに。大いに盛り上がるなか、後半のパラスポーツ体験会へと移っていきました。その模様は後編の記事でお届けします。

このなかから、未来のオリンピアンが現れるかも!?

堂々と人前に出ることで、みんなの「知る・見る・気づく」を促す

今回の勉強会について、司会の尾城さんにお話を伺いました。

―――勉強会を振り返ってみていかがですか?

尾城さん:今回は、テキスト読み上げアプリと手話を同時に使いながら司会をしました。手話を取り入れたことで、耳が聞こえない人たちが普段どのようにコミュニケーションをとっているのか、参加者の方々にも知ってもらえたのではないでしょうか。ただ今日の体験で終わらせるのではなく、家族と話し合うきっかけにしてほしいですね。

手話を交えながら語る尾城さん

―――司会を務めるうえで、工夫したことはありますか?

尾城さん:アプリがテキストをどこまで読み上げているのかわからないので、その音声をさらに書き起こしアプリでテキスト化しながら進行していました。じつは、裏でかなり忙しく動いていたんですよ(笑)。

―――DE&Iを社内外に浸透させるために、尾城さんができることは何だと思いますか?

尾城さん:まずは堂々と前に出ることですね。みんなの「知る・見る・気づく」を促すためには、実際に対話を重ねていくことが欠かせません。だから何でも聞いて!

―――尾城さんは意外とおしゃべりで、知らない人ともすぐに仲良くなれるから、その役割がぴったりですね(笑)。

尾城さん:試行錯誤を重ねながら、いろいろなことにチャレンジしていきたいです。いつも新しいコミュニケーションの方法を模索しています。人にはそれぞれ相性や考え方の違いがあります。それでも人と人との間にある壁を少しでも取り除いていきたいんです。

DE&Iが本来の「ゴール」であり、ビジネスはそれを目指すための「手段」であるべき

続いて、進行役の蘆名さんにお話を伺いました。

―――本日の勉強会を振り返ってみて、いかがでしたか?

蘆名さん:とても豪華なイベントになりましたね。山本さん、鳥居選手、鈴木選手がこうした場で共演するのは初めてだったので新鮮でした。それぞれの境遇や価値観が異なり、非常に興味深かったです。一人につき1時間くらい講演していただいてもよかったかも(笑)。

―――来場者の手ごたえはいかがでしたか?

蘆名さん:皆さん、座学にも集中して取り組んでいましたし、パラスポーツ体験会も心から楽しんでいる様子でした。お子さんはもちろん、保護者の方々にとっても発見の多いイベントになったはず。大人にも悩みや不安はありますし、パラアスリートの前向きな姿勢に元気をもらえた方も多かったのではないでしょうか。

―――今回の勉強会では、尾城さんが司会役、蘆名さんが進行役という分担でしたね。

蘆名さん:尾城さんのように障がいのある方が、先陣を切って前に出ることに大きな意義があると思います。もちろん、それには勇気が必要ですし、ときには傷つくこともあるかもしれません。それもあって、尾城さんからは前に進み続けようとする強い覚悟を感じます。

―――DE&Iを社内に浸透させるために、蘆名さんができることは何だと思いますか?

蘆名さん:自分のビジョンを明確にし、コツコツと発信していくことが重要だと感じています。今、アメリカではちょっと風向きが変わってきていて、DE&Iの方針を見直す企業も出始めています。そんなことで本当にいいの?って思いますよね。企業の本当の志が試されている時代だといえるでしょう。DE&Iは「ゴール」であり、ビジネスはそれを目指すための「手段」であるべき。それくらいの気持ちで今後も活動を進めていきたいです。

味の素社の取り組みにはメディアも注目

この日は各メディアの記者も取材に訪れており、世間からの関心の高さがうかがえました。記者からは「これほどのゲストが揃うなら、参加料をとってもおかしくないのでは」といった驚きの声や「食のメディアに関わっているので、ゲストの食生活についてくわしく知りたい」といったコメントが寄せられました。

体験を通じて学びを深める「勝ち飯®」勉強会は、尾城さんが提案する「知る・見る・気づく」のアクションとも重なります。難しい言葉を使わなくても、行動ひとつでDE&IやWell-beingといった言葉の意味がぐっと身近なものになります。言い換えるなら、行動を起こさなければ、目指すゴールは遠いままなのかもしれません。

後編では、パラスポーツ体験会の模様や、パラアスリート3名のインタビュー、ボランティアとして参加した従業員の声など、盛りだくさんの内容でお届けします。

鈴木 孝幸

1987年生まれ、静岡県浜松市出身。早稲田大学教育学部卒業後、2009年株式会社ゴールドウイン入社。アテネ2004パラリンピックから6大会連続でパラリンピックに出場。東京2020パラリンピックでは出場した5種目すべてでメダルを獲得。その功績を認められ令和3年度紫綬褒章を受章。パリ2024パラリンピックでは男子50m平泳ぎ(SB3)金メダル他、銀メダル2個、銅メダル1個を獲得。

鳥居 健人

1991年生まれ、埼玉県越谷市出身。小学5年生のとき、担任教諭のすすめでブラインドフットボールの世界へ。その4年後、アルゼンチンで行われた国際試合に初出場。2007年より、3人制のパラスポーツ「ゴールボール」のプレーヤーとしても活動。2019年10月より参天製薬株式会社 基本理念・CSV推進部に所属。パリ2024パラリンピックの日本代表メンバーとして出場。

山本 篤

1982年生まれ、静岡県掛川市出身。左足の大腿部を切断。義肢装具士の専門学校で競技用義足に出合い、陸上を始める。北京2008パラリンピックから4大会連続出場。リオデジャネイロ2016パラリンピックでは走り幅跳びで銀メダル、4×100mリレーで銅メダルを獲得。パラリンピック冬季競技のスノーボードへの挑戦をきっかけに、2017年よりプロに転向。平昌2018冬季パラリンピックに、スノーボードで出場を果たした二刀流アスリート。東京2020パラリンピックの走り幅跳び(T63)では4位入賞。2024年5月、神戸で開催された世界パラ陸上競技選手権の後に現役を引退。

尾城 淳一

味の素株式会社 グローバルコミュニケーション部
2013年味の素社に入社。Web、SNSなど、自社のデジタルコンテンツ関連に携わる。「自身の目で見て何を感じたか」をモットーとしており、日頃から足を使って情報を集めることを心がけている。
味の素グループのWorkplace(味の素グループ内でのSNS型コミュニケーションプラットフォーム)では、DE&I推進の取り組みを通して感じたことや気づきを自ら発信する「OSHIRO'S EYE」という動画を積極的に配信している。

蘆名 真平

味の素株式会社 コーポレート本部 グローバルコミュニケーション部
スポーツ栄養推進グループ マネージャー

2006年入社。2012年ブラジル法人に出向。「アミノバイタル®」事業と「ビクトリープロジェクト®」を立ち上げる。リオデジャネイロ2016大会は現地にて日本代表選手団をサポート。4年後の東京大会は打倒日本を掲げてブラジル版「ビクトリープロジェクト®」の立ち上げ、ブラジル選手団をサポート。2023年より現職。

※味の素㈱は、TEAM JAPANゴールドパートナー(調味料、乾燥スープ、栄養補助食品、冷凍食品、コーヒー豆)です。

2025年7月の情報をもとに掲載しています。

味の素グループは、アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献します

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