DE&Iってなに?味の素グループの取り組みからわかるD&Iとの違いとは?
DE&Iとは、一人ひとりの個性を認め、それぞれの人に平等に活躍機会が与えられ、いきいきと働ける組織環境を目指すこと。
その一環として、味の素社では、食を通じて、多様性を尊重した豊かな社会づくりを目指す「食のダイバーシティプロジェクト」を進めてきました。また、東京支社、大阪支社で、組織の枠を超えたワークショップを実施。はたして、どのような気づきや発見があったのか? その模様をレポートします。
多様な個性をもつ人々のWell-beingを目指す「食のダイバーシティプロジェクト」
「食のダイバーシティプロジェクト」は、味の素社の社内有志で立ち上げました。さまざまな人々が自然に混ざり合う社会を目指すという志のもと、パラアスリートや障害をもつスポーツ愛好家の食への向き合い方、食の価値について体験的に学び、発信しながら仲間同士がつながっていくDE&Iの推進活動です。
2023年度(令和5年度)はおもに視覚障がいをもつブラインドサッカー®の選手と連携した調理体験ワークショップを実施。パラアスリートの食への向き合い方を探求し、多様な個性をもつ人々のこころとからだの健康の基盤となるWell-being(ウェルビーイング:心身ともに健康で、社会的にも満たされた状態)を実現するためのヒントを探ります。
ワークショップ中の選手を取材し、ナビゲーターを務めたのは、このプロジェクトのメンバーで、自身も耳が聞こえない立場である尾城淳一さん。普段は、味の素社 グローバルコミュニケーション部に所属しており、社の広報活動を担当しています。
また、味の素グループのWorkplace(味の素グループ内でのSNS型コミュニケーションプラットフォーム)において、DE&I推進の取り組みを自ら発信する「OSHIRO'S EYE」という動画を積極的に配信しています。
視覚に頼らずプレーする、ブラインドサッカー®女子日本代表強化指定 竹内真子選手の「食」に迫る
2023年(令和5年)11月、味の素社大阪支社のキッチンにて日本ブラインドサッカー協会との共同企画によるワークショップが催されました。尾城さんと大阪支社の有志、日本ブラインドサッカー協会の関係者が参加し、ブラインドサッカー®チーム「兵庫サムライスターズ」の竹内真子選手をゲストに招きました。
弱視である竹内選手はブラインドサッカー®女子日本代表の強化指定選手で、この日は、参加者の前でドリブルやパスまわしを披露してくれました。
「料理は趣味であり、調理中はリラックスできる時間」と話すように、竹内選手は普段から自炊し、味の素社製品を愛用しています。なかでも「鍋キューブ®」をよく使うのだとか。
竹内:いろいろな食材が楽しめて栄養もしっかりとれる鍋料理がお気に入りです。ただ、調味料の配合に手間取りやすいので、1個入れれば味つけできる「鍋キューブ®」を重宝しています。
この日は、「豚バラと水菜のはりはり鍋」や「すくい豆腐と油揚げと小松菜の味噌汁」「ほんだし®」おにぎり(パワーボール®)などの5品を調理しました。
尾城さんは調理や食事の合間を縫い、スマートフォンのテキスト読み上げ機能を駆使して、竹内選手とコミュニケーションを図ります。
尾城:竹内さんはどのようにして、料理の出来上がりを見極めているんですか?
竹内:鍋物や煮物をつくるときは、キッチンタイマーでしっかり時間を測り、香りで判断しています。
さらに尾城さんは、竹内選手が黒いまな板で食材をカットしていることに気づきます。これを使うと食材とまな板の色のコントラストがはっきりと出て、カットしやすくなるそうです。
調理と食事を楽しんだら、「『食』の価値」についてのディスカッションです。
「料理は趣味であり、リラックスして心から楽しむ時間。おいしいが一番。 」「最初はカレーを焦がしたり沸騰でこぼれたりしたが、片付けや手順を覚えることで、最後までつくれるようになった。料理がおいしくできるようになって、とても楽しい。」という竹内さんの発言をきっかけに、
「竹内さんの調理の手際のよさに、ただただ感心するばかり」「視界が限られる方も料理を楽しんでいることがわかった」「一人で楽しむ『食』もあれば、みんなでにぎやかに楽しむ『食』もある」「『食』や『スポーツ』をきっかけにして、人と人との輪が広がる」
などの意見が交わされ、終始盛り上がりを見せました。
アスリート紹介
兵庫サムライスターズ
竹内真子(たけうち まこ)
1995年(平成7年)生まれ、兵庫県加東市出身。2018年(平成30年)、盲学校の恩師であり、兵庫サムライスターズの監督でもある桝岡良啓氏に誘われて、当チームに参加する。サポーターからスタートし、やがてプレーヤーとして活動するようになった。2023年(令和5年)、女子日本代表キャプテンとして「IBSA ブラインドサッカー®世界選手権 2023」に出場し準優勝を果たす。
徹底した自炊へのこだわり!ブラインドサッカー®男子日本代表強化指定 鳥居健人選手が「食」を通して、伝えたかったこと
2024年(令和6年)3月7日、神奈川県川崎市にある味の素社川崎工場に隣接する「味の素グループ うま味体験館」で、日本ブラインドサッカー協会、参天製薬株式会社および味の素社東京支社との共同企画によるワークショップを開催しました。
ゲストは、ブラインドサッカー®チーム「free bird mejirodai」の得点源を担う選手で、参天製薬株式会社の従業員である鳥居健人選手。竹内選手と同じく、ブラインドサッカー®の男子日本代表強化指定選手に選ばれています。
この日は、大阪で行われたワークショップ第一弾の流れを踏襲して、鳥居選手と味の素社東京支社の若手メンバーたちがキッチンスペースで調理を体験。
今回は、日本ブラインドサッカー協会の関係者だけではなく、参天製薬株式会社の従業員のみなさんも加わったことで、参加者は倍以上に増え、にぎやかに開催されました。
鳥居選手は「Cook Do®」を使った「回鍋肉」と「丸鶏がらスープ™」を使った「卵スープ」を、参加者は「ペペロンチーノ」や「ほうれん草のミックスビーンズサラダ」「鶏チャーシュー」などをつくりました。
鳥居選手は1歳のときに視力を失いましたが、持ち前の好奇心を活かして、幼いころから料理にもチャレンジ。鳥居選手のご両親が共働きのため、中学生のころから妹さんのためにごはんをつくっていたそうです。
「妹の『おいしい!』の一言が欲しくて工夫を繰り返すうちに、料理の楽しさに目覚めました」と話します。
さらに「自炊へのこだわりは、チームメンバーのなかでもトップクラス」と続けて、料理の腕を披露しました。ちなみに鳥居選手は、タイマーで計る竹内選手と違い、食材の火の通り具合を手で触って確認するというワイルドなスタイル。(※決してマネしないでください!)
「100℃の熱さまでなら大丈夫!さすがに揚げ物は無理ですけどね(笑)」とジョークを交えながら、回鍋肉と卵スープの調理を手際よく同時進行していきます。
食後のディスカッションでは、鳥居選手が今回のワークショップにかける思いを語ってくれました。
鳥居:「食」はあらゆる人にとって欠かすことのできない営みです。そこに障がいをもつ人、もたない人の差はありません。二者の間に壁があるとするならば、それはお互いを知る機会が少ないから。理解してほしい、とは言わないけれど、せめて私たちのことを知ってほしい。今回のようなワークショップがお互いを認め合う第一歩につながるのだと思います。
参加者からは「多様な個性を認め合おうとする姿勢が、人として大事なことなのだと学んだ」「今後は先入観にとられずに、相手と向き合っていきたい」「少しのやさしさと少しの気づかいで、みんなが住みやすい社会へと変えられる気がしました」といった意見が挙がりました。
アスリート紹介
free bird mejirodai
鳥居健人(とりい けんと)
1991年(平成3年)生まれ、埼玉県越谷市出身。小学5年生のとき、担任教諭のすすめでブラインドサッカー®の世界へ。その4年後、アルゼンチンで行われた国際試合に初出場を果たす。2007年(平成19年)より、3人制のパラスポーツ「ゴールボール」のプレーヤーとしても活動した。現在、ブラインドサッカー®男子日本代表強化指定選手として、パリの国際大会へ日本代表メンバ―としての参加、および同大会でのメダル獲得を目指している。2019年(令和元年)10月より参天製薬株式会社 基本理念・CSV推進部に所属。
人それぞれの「当たり前」と向き合うことが「DE&I」実現の道しるべに
「料理に打ち込む鳥居選手の姿を多くの人に知ってほしかった」と、ワークショップに参加した、参天製薬株式会社 基本理念・CSV推進部部長の長谷川成男さんは話します。
長谷川:私はSantenで企業理念を社内外に浸透するプロジェクトに関わっていますが、今回のように食を通じて、ここまで心を通わせられる味の素さんの取り組みに共感するとともに、理念浸透の観点から大変うらやましく思いました。今後もこのような場が増えるといいですね。
視覚を閉ざされた状態での調理は人並外れたことのように思えますが、鳥居選手や竹内選手にとっては日常の一コマに過ぎません。そんな、人それぞれの「当たり前」に気づいたとき、豊かな社会づくりの道が拓かれます。
今後も味の素グループは「DE&I」の実現に向けて、さまざまな活動に取り組んでいきます。
イベントを終えて~ 今回のナビゲーター 尾城淳一
職場の人から「聞こえない人って普段の食事はどうしてるのか、いつも困ってることはあるのか?」という会話から「たしかに自分が困ったことは思いつくけど、自分とはちがう障がいをもつ人だと、どうなんだろう?」といった疑問が生まれ、「食とダイバーシティプロジェクト」がスタートしました。
今回の2回にわたる取材は、私にとっても驚きと発見の連続となりました。解決できる方法を見つけるためには「お互いを知ること」「尊重して協力し合うこと」がとても大事。これは障がいをもつ・もたない人だけでなく、自身の経験上では国籍・言語・文化・性別が違う人に接するときにも同じことがいえると感じています。
尾城淳一
グローバルコミュニケーション部
Panasonicから、2013年(平成25年)味の素社に入社。Web、SNSなど、自社のデジタルコンテンツ関連に携わる。「自身の目で見て何を感じたか」をモットーとしており、日頃から足を使って情報を集めることを心がけている。 味の素グループのWorkplace(味の素グループ内でのSNS型コミュニケーションプラットフォーム)では、DE&I推進の取り組みを通して感じたことや気づきを自ら発信する「OSHIRO'S EYE」という動画を積極的に配信している。
- 「障がいの有無に関わらず、いきいきと共生する社会」を考える―味の素社とのDE&I交流ワークショップ開催|参天製薬株式会社
2024年4月の情報をもとに掲載しています。