鮭といえば、塩焼きやムニエルなどの家庭料理のほかに、北海道のルイベ、岩手の紅葉漬けなど、全国各地にその土地ならではの郷土料理がありますね。
新巻鮭は、昔から「禍を避け(さけ)る」ものと考えられ、関東以北ではお歳暮や正月の縁起物とされています。鮭の子であるいくらは、子孫繁栄の意味があります。
ちなみに、鮭の身の色が赤く見えるため、まぐろやかつおなどと同じく「赤身の魚」だと思っている方が多いかもしれませんが、白身の魚なんですよ。
それでは、鮭の魅力をたっぷりとご紹介します。
私たちが食べているのは「白鮭」「紅鮭」「銀鮭」のどれ!?
私たちが店頭で目にする、もっとも一般的な鮭は「白鮭」と呼ばれているものです。九州以北の日本海や銚子以北の太平洋、オホーツク海、ベーリング海などに分布します。
収穫される時期によって「時鮭」(ときさけ・ときざけ。ときしらずとも呼ぶ)、「鮭児」(けいじ)と呼び名が変わります。
「紅鮭」は、その名の通り、身が濃い紅色をしています。北米やロシアに分布。うま味と甘味があり、塩鮭にもっとも適していると言われています。
ところで、なぜ鮭の身が赤いか、ご存知ですか?その理由は、鮭がおもに食べているものがエビやアミなど、アスタキサンチンという赤い色素を多く含むからなんですよ。
「銀鮭」は、全体的に銀色をしています。ほかの種と比べ成長が早いことから、1970年代より、東北地方で養殖されるようになりました。現在は、チリで養殖された銀鮭が店頭に多く並んでいます。
近年、鮭類の漁獲量が急速に減少しています。鮭類の全国の漁獲量は、1996年(平成8年)のピーク時の約28万7千トンと比べ、2019年(令和元年)には約80%減の約5万6千トンに。さまざまな要因が考えられるそうですが、温暖化による水温の上昇で、鮭の稚魚が成育しにくい海洋環境であることなどが指摘されています。
サーモンは鮭じゃない!?人気のトラウトサーモンの正体は?
スーパーや寿司店で、「サーモン」と名付けられている商品を見かけますよね。この「サーモン」とはなにか、ご存知でしょうか?
日本で流通する「サーモン」は、おもに、以下の3種類です。
・「キングサーモン」
キングサーモンは、日本語名「ますのすけ」です。サケの仲間でもっとも大きく、大きなもので150cmほどになります。オホーツク海、日本海北部に分布。北海道で漁獲されますが数が少なく、高値で取り引きされています。店頭に並ぶのは、おもにカナダなどで養殖されたものです。
・「アトランティックサーモン」
アトランティックサーモンは、日本語名「大西洋鮭」です。ノルウェーやチリなどで養殖されたものが、店頭に並びます。脂がのっていて、甘みがあるのが特長です。
・「トラウトサーモン」
トラウトサーモンは、海水で養殖されたニジマスの一種です。トラウトサーモンは正式名称ではなく、小売店などで販売するためにつけられた商品名。適度に脂がのっていて、うま味もあります。
近年ではサーモンの消費がとても増えていることから、世界各国で養殖がさかんです。
もちろん日本でも、養殖サーモンを多く輸入しています。
女性こそ食べてほしい!優秀食材の鮭
鮭は、必須アミノ酸がバランスがよく含まれた良質な動物性たんぱく質源です。
また、脂質、女性ホルモンの代謝、ヘモグロビンの合成を助けるビタミンB6が含まれます。
そのため、
・健康な皮膚や髪を作る
・貧血予防
・脂肪肝予防
・PMS(月経前症候群)の症状を和らげる
などが期待できます。
そのほか、腸からのカルシウムの吸収を助ける、ビタミンDが含まれます。鮭1切れ(100g)に32.0㎍含まれ、1日に必要な量(推奨量8.5㎍)を十分にまかなえます。
元気をくれる「鮭」の栄養素
■必須アミノ酸をバランスよく含む、動物性たんぱく質が豊富
■たんぱく質や脂質、女性ホルモンの代謝を助ける、ビタミンB6が含まれる
■カルシウムの吸収を助けるビタミンDも
■脂身には、DHA※1やEPA※2が含まれる
※1 DHA:ドコサヘキサエン酸。青魚に多く含まれるn-3系脂肪酸。
※2 EPA:エイコサペンタエン酸。青魚に多く含まれるn-3系脂肪酸。n-3系脂肪酸には血中中性脂肪値の低下や不整脈を防ぐなど、生活習慣病の予防効果がある。
【旬のレシピ】アレンジ自由自在!マスターしたい鮭レシピ
鮭をおいしく、ヘルシーに味わうコツをご紹介しましょう。
●ホイル焼きがおすすめ
鮭に含まれるEPA、DHAなどの良質な脂質をいただくためには、焼いて脂を落としてしまう調理法は向きません。また、ビタミンB6は水溶性のため、蒸し汁、煮汁ごと食べる調理法がおすすめです。鮭の栄養素を効率よくいただくためには、ホイル焼きがおすすめです。
●ビタミンC、βカロテン、食物繊維が含まれる野菜と組み合わせる
鮭に含まれないビタミンC、βカロテン、食物繊維が含まれる野菜と組み合わせると、栄養バランスが整います。
とくにブロッコリーやカリフラワーとは相性抜群。旬の時期には小松菜やほうれん草との組み合わせもおすすめです。
<冷蔵庫に常備!簡単保存&時短調理法>
鮭は下処理して冷蔵庫や冷凍庫に常備しておくと便利です。冷蔵なら2〜3日、冷凍なら1か月を目安に保存できます。
冷凍した鮭は、保存袋のまま冷蔵庫で解凍するか、急ぐ場合は保存袋のまま、ぬるま湯(40〜50℃)につけて解凍しましょう。
・塩......生鮭に塩をふって10分ほどおき、水気をふいて1切れずつラップで包み、冷凍保存袋に入れて冷凍。解凍したら、グリルやフライパンで焼く。
・塩麹......生鮭の重量の10%の塩麹に漬ける。解凍したら塩麹をぬぐって、グリルやフライパンで焼く。
・しょうゆ&みりん......から揚げ、照り焼き用に、食べやすく切った生鮭をしょうゆ、みりん、酒、しょうが汁などの下味に漬ける。解凍したら汁気をきって、小麦粉または片栗粉をまぶして170〜180℃の揚げ油で揚げる。
「鮭のちゃんちゃん絶品汁」
鮭のうま味とほくほくじゃがいもを存分に味わえる!
「サーモンムニエル ほうれん草クリームソース」
クリームソースでほうれん草もたっぷりいただけます。
「鮭大根」
ほんのり甘いみそ味。ごはんがすすむメニューです。
牧野先生のスペシャルレシピ
わが家では、こんなメニューが人気です。
鮭は調理前のひと手間で、よりおいしくいただけます。切り身の場合は、塩をふって臭みをとり下味をつけましょう。
・鮭の南蛮漬け
パプリカ、ピーマンを素揚げし、片栗粉をまぶした鮭をからりと揚げる。だし汁、赤唐辛子、しょうゆ、みりん、砂糖、酢を混ぜた南蛮酢を火にかけ、薄切りにした玉ねぎをさっと煮る。パプリカ、ピーマン、鮭に南蛮酢をかけて、なじませる。
・鮭フレーク
耐熱皿に鮭を並べ、塩、酒をふり、電子レンジで5分加熱。粗熱がとれたら、皮、骨を取り除き、身をほぐす。蒸し汁はとっておく。フライパンで、鮭、蒸し汁、みりん、しょうゆを入れ、火にかける。汁気がなくなるまで炒め、ごまを混ぜる。
※三色丼やおにぎりの具、混ぜ寿司の具として、常備しておくと便利です。
現在、全国各地で「ご当地サーモン」と呼ばれる養殖のブランドサーモンがたくさん登場しているのをご存知でしょうか?
ご当地サーモンは、地域ごとに工夫をこらした養殖が行われており、さまざまな味わいがあるそうです。
これは、国内でのサーモンの消費量増加にともなった安定供給のための施策でありながら、新たな名産を生み出すという意味で、地域活性化にも一役買っているのかもしれません。
サーモンに限らず、食資源の安定的な供給はこれからの社会課題です。
味の素社でも、安全・安心な製品の供給を続けるため、持続可能な原材料の調達についての取り組みを行っています。
- 泳ぐカツオの回遊ルートを追え「カツオ標識放流調査」
- 生産と流通のサステナビリティを世界のコーヒー農園から
自然の恵みに感謝して、
今日もおいしく、旬をいただきましょう。
監修:牧野直子(まきの・なおこ)
管理栄養士、料理研究家、ダイエットコーディネーター。「スタジオ食(くう)」代表。おいしくて体にやさしいレシピや健康的なダイエット法などを提案し、テレビ、雑誌、料理教室、健康セミナーなどで幅広く活躍中。共著に『2品おかずで塩分一日6g生活』(女子栄養大学出版部)ほか。
2022年2月の情報をもとに掲載しています。