活動レポート

嗜好性推定AIってなに?「これ食べたかった!」をAIが提案してくれる時代

皆さんは、毎日の献立をどのように決めていますか?限られた時間の中でつくりやすくて、家族が好き嫌いなくちゃんと食べてくれて、栄養バランスがよくて……など熟考した結果、結局いつもと同じラインナップに、なんてことありますよね。

「献立づくりが負担」「レパートリーを増やしたい」「脱マンネリしたい」。そんな思いを抱える人におすすめなのが、味の素社の献立提案webサービス「未来献立®」です。この「未来献立®」はユーザーの好みに応じて、栄養バランスも考慮しながら、毎日の献立を提案してくれます。


そしてこの「未来献立®」に使われているのが、味の素社が開発した「嗜好性推定AI」という技術です。

この「嗜好性推定AI」は、単なるレシピ提案をするだけではありません。今後、毎日の食生活の重大なサポート役ともなり得る味の素社のAI技術の活用事例について、くわしくご紹介します。

嗜好性推定AI搭載の献立提案webサービス「未来献立®

Q:嗜好性推定AIってなに?

A:ユーザーが「おいしい」と感じる料理の傾向を学習して、好みのメニューを予想し、教えてくれるAIです。

「ハンバーグが好き」「トマトが嫌い」など、料理・食材の好き嫌いは誰にでもありますよね。嗜好性推定AIは、そうした具体的な好き嫌いをもとに、ユーザーの味や風味などの好み(嗜好)を推定して、献立を提案してくれます。

「嗜好性」とは、個人が料理の味や風味、食感に対して持っている「自分の好みに合う」という意識のことです。「おいしい」とか「この料理が好き」は食べたときの感情で、そうした感情の記憶が蓄積されることによって、その人の「嗜好性」がつくられます。

この嗜好性推定AIの技術が使われているのが、味の素社の献立提案webサービス「未来献立®」です。

使えば使うほど、自分と家族の好みを学習してくれる「未来献立®

「未来献立®」では、利用者登録をする際に、まずユーザーが「好きな料理」や「苦手な食材」などを選びます。すると入力された情報をもとに、「AJINOMOTO PARK」にある「レシピ大百科」のレシピを組み合わせ、嗜好性推定AIがユーザーの好みに合いそうな献立を提案します。その献立の中から、ユーザーが「おいしそう!」と思ったものを登録していくと、さらに好みの傾向を学習していき、提案する献立にも好みを反映してくれるという仕組みです。

嗜好性推定AI開発で目指したのは、料理人的な思考回路

Q:どうしてAIに私の好みがわかるの?

A:料理人の考え方をもとにして、食材の味や風味を学習させているからです。

味の素社は、2023年(令和5年)から嗜好性推定AIの開発を始めました。開発のヒントとなったのは、料理人が常連客の好みを理解しておすすめ料理を提供するという、ごく日常的な姿でした。その技術をブレイクダウンしてAIに行わせることができないかと考えたのです。

たとえば、お客様が「このほうれん草のおひたしおいしい!」と言ったとします。そのとき料理人は、「ほうれん草のおひたしが好きなんだ」と受け止めるのではなく、「おひたしのだしの味や風味が好きなのかな?」と考えます。そのように考えることで、料理人は毎回ほうれん草のおひたしを出すのではなく、お客様の好みの味や風味を考慮しながら食材を変え、飽きさせないようにバリエーション豊かな料理を出せるんです。

メニューの調理法や味のデータベースをAIに学ばせる

しかし、料理人が日常的に行っていることを「AJINOMOTO PARK」のような大量のレシピに対してわたしたちが行うのは困難。実際に料理を作って分析する必要があり、かなりの時間と労力がかかってしまいます。それを効率的に行うために、AIの活用を考えました。

料理人は、レシピを見ればその料理がどのような味や風味、食感なのかが、だいたいわかるそうです。それは、食材の調理法や調味料の味を熟知しているからできること。つまり、「だし感」「辛味」「酸味」など、味や食材についての情報をもっと細かく項目立てたデータベースを作ってAIにレシピとともに覚えさせれば、料理人と同じことができるようになるんです。

この「嗜好性推定AI」を使えば、より個人に寄り添った献立の提案ができるようになります。家族全員の好みを入力すれば、それらすべてを考慮し、みんなが満足できる献立を提案することもできるのです。

また味の素社としては、「この味が今人気」「この食材の組み合わせが好まれている」などのユーザーデータを蓄積することで、マーケティングや商品企画にも活用できると考えています。

食卓のコミュニケーションも豊かに

Q:嗜好性推定AIによって、私たちの暮らしはどう変わるのですか?

A:料理がもっと楽しくなる!さらに、食わず嫌いを減らせるかも!

嗜好性推定AIの活用によって「レシピを見て作ってみたけど思ったより好みじゃなかった」といったことが減るでしょう。そうすると、新しいレシピに挑戦するモチベーションもアップします。幅広い食材・調理法との出会いが増えれば、味付けや調理法によって食わず嫌いだった食材が克服できるかもしれません。

さらに献立のマンネリ化も防げますし、食卓が豊かになれば会話やコミュニケーションも豊かに。こうして料理がもっと楽しいものになっていくのではないでしょうか。

快適で充実した生活は、健康寿命の延伸にもつながる

味の素社では、嗜好性推定AIを活用し、お客様のニーズや好みに合わせたレシピを提案することによって、食生活全体をより健康的なものにシフトさせていくようなサービスの開発を目指しています。

塩分や糖分の摂取量を調整したり、生活習慣病の予防や健康維持、高齢の方にも食べやすくおいしい献立が提案できれば、「おいしい」と「健康」を無理なく続けられる食生活が実現するはずです。

こういったサービスを、味の素グループが目指している「健康寿命の延伸」にも貢献できるよう発展させていきたいです。

さらには、「味の素社のサービスを使うと、レシピ検索に時間を取られずゆとりが生まれ、生活が快適になる」と感じていただけるようにしていきたい。

AIの技術を活用することで毎日の食事にワクワク感や満足感をもたらすことができ、その結果多くの皆さまの心と体の健康をサポートすることにつながれば、これほどうれしいことはありません。

<記事監修>

川﨑 寛也

味の素株式会社
食品研究所ウェルネスソリューション開発センター 体験価値設計グループ

2004年入社。博士(農学)。実家は明治20年創業の西洋料亭「西洋亭」(根室で創業。現在は廃業)。食品研究所、イノベーション研究所を経て、2021年より食品研究所エグゼクティブスペシャリスト。特定非営利活動法人 日本料理アカデミー理事。研究分野は、おいしさの科学、プロの調理技術の解明、食の体験と心理的価値の関連解明など。おもな著書に『味・香り「こつ」の科学』『おいしさをデザインする』『だしの研究』(以上、柴田書店)、『日本料理大全 だしとうま味、調味料』(NPO法人日本料理アカデミー)ほか。『味の素パークマガジン』にて「レシピのスキマ」連載中。

西田 実紗

味の素株式会社
食品研究所ウェルネスソリューション開発センター 体験価値設計グループ

2014年入社。食品研究所での味覚の研究開発や、米国大学での官能評価(人の感覚を用いて食品の味を表す技術)の研究開発を経て、2023年より現職にて嗜好性推定AIの開発と製品の体験評価を担当。業務では、生活者視点を常に忘れずに「生活者にとって価値ある製品やサービスを作ること」に貢献できる仕事をすることを心掛けている。
休日は旅行へ行き、現地のおいしい食を堪能することが大好きです。

2025年12月の情報をもとに掲載しています。

味の素グループは、アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献します

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