この商品の開発には、味の素社も大きく携わっているとのこと。
味の素社 S&I事業部 新事業創造チームの豊泉俊一郎さんは、これまでも「BASE FOOD®」や調理ロボット「I-Robo」の共創を担当し、多くの企業と驚くようなオープンイノベーションを推進してきました。
そんな豊泉さんが、今度はユーグレナ社とタッグを組み「おいしくて栄養も摂れる」という子ども向けドリンクの開発に挑戦!さて、いったいどんな商品ができあがったのでしょうか。
ユーグレナ社のお二人と豊泉さんのインタビューで、その模様をお届けします!
三重 啓次郎 氏
株式会社ユーグレナ
D2C食品ブランド
ブランドマネージャー
藤田 杏奈 氏
株式会社ユーグレナ
D2C商品戦略チーム
豊泉 俊一郎
味の素株式会社
S&I事業部 新事業創造チーム
子ども向けのユーグレナドリンク!それって、どんな味がするの?
―――新商品「からだにユーグレナ フルーツミックス」&「いちごミックス」は、ユーグレナ社初の「子ども向け」ドリンクだそうですね。まず「ユーグレナって子どもも飲めるんだ」と驚きました。
藤田
ユーグレナは自然由来の食品なので、もちろん小さな子どもにも安心して飲んでいただけます。そもそもユーグレナとは「藻(も)」の一種なんです。ユーグレナの特徴は植物と動物両方の性質を持っているという点。通常、私たちが野菜・肉・魚などから摂取している、たんぱく質や炭水化物、カルシウムなどを含む59種類もの栄養素をユーグレナは持っているんです。
―――え? たんぱく質や炭水化物もですか?
藤田
ええ。その他にも、子どもの成長に必要なビタミンB群、脂質、ビタミンK、鉄、マグネシウム、亜鉛など幅広い栄養が含まれていて、ユーグレナ配合のこのドリンク1本で不足しがちな栄養素を補えることができるんです。
―――なるほど。栄養面ではとても魅力的ですね。で、実際、味はどうなんでしょう? 良薬口に苦しとも言いますし......、子どもにも飲みやすいですか?
藤田
おいしさにはこだわりましたので安心してください!目指したのは "おいしく、健康的に、飲みやすく"。「からだにユーグレナ フルーツミックス」は、国産りんごやパインアップル、バナナの果汁を使用し、「からだにユーグレナ いちごミックス」は旬の時期に収穫した厳選されたいちごと、国産のりんご果汁を使用し、ミルクでバランスよく仕立て、子どもたちが自分から「飲みたい!」と言ってくれることを目指した、甘さひかえめのやさしい味に仕上がっています。
ユーグレナってなんだろう?
ユーグレナとは
ユーグレナ(和名:ミドリムシ)とは、植物と動物両方の性質を持つ微細藻類、いわゆる「藻(も)」の一種です。5億年以上前から生命を育んできたユーグレナ。そのなかには野菜・肉・魚に含まれるビタミン、ミネラル、アミノ酸、不飽和脂肪酸など59種類もの栄養素や、9種の必須アミノ酸がバランスよく含まれており、人間が生きていくために必要な栄養素の大半を持つスーパーフードだと言われています。
株式会社ユーグレナとは
2005年(平成17年)に東大発のバイオベンチャーとして創業したユーグレナ社は、このユーグレナを食品用途で屋外での大量培養に世界で初めて成功した企業。創業以降、ユーグレナの活用可能性の拡大に力を注ぎ、フィロソフィーとして「Sustainability First」、パーパスとして「人と地球を健康にする」を掲げて、食品や化粧品の開発やバイオ燃料事業などを展開しています。
味の素社×ユーグレナ社による商品開発で、シニア層に次ぐ、第二のコアユーザー層を作れ!
―――そもそもなぜ、味の素社とユーグレナ社が一緒に開発をすることになったのですか? その出会いについて教えてください。
豊泉
きっかけは数年前、ユーグレナ社の研究者である鈴木健吾さん(同社共同創業者 兼エグゼクティブフェロー)から味の素社に「商品開発でユーグレナをさらに世の中に広めていきたい、何か一緒にできないか」とお声がけいただいたことです。これを起点にユーグレナ社が2023年(令和5年)にリリースした、宇宙でも発育・栽培できる可能性を秘めた食材を用いたカップ麺「2040年サステナブルラーメン」の開発などをお手伝いして。そのつながりから今回の子ども向けドリンクの開発もご一緒することになりました。
―――最初から「子ども向けドリンクを作ろう」ということは決まっていたのですか?
三重
いえ、プロジェクトスタート時には何も決まっていませんでした。まず前提として、私たちの販売している食品「からだにユーグレナ」ブランドは、シニア層のお客さまがメインユーザーでした。そして私たちはこの「ユーザーの偏り」を課題と捉え、飲料商品のリニューアル、リブランドを検討していたんです。その検討調査のなかで「シニア層よりも若いユーザー」の存在が明らかになってきて。そこから「新商品で、シニア層に次ぐ新たなユーザー層を獲得することができるのでは」という考えが生まれ、「第2の柱となるユーザー層を獲得すること」が今回の開発軸になりました。
―――なるほど。その開発軸のもと、開発する商品コンセプトやターゲットなどを決定するところから、味の素社も参加していったということですか?
豊泉
そうですね。味の素社は大きく分けて5つの分野でお手伝いをしました。
まずは「戦略策定」から「コンセプト設計」に取り組み、そこから「受容性評価」や「おいしさ設計技術®」による味の調整、そして「商品のプロモーション検討」です。
―――え!? それはもう、お手伝いの域を超えているのでは......?
豊泉
そうかもしれませんね(笑)。「なぜ、ユーザーはユーグレナを購入するのか」など、ユーグレナの魅力や訴求力がどこにあるかを確認する作業から、じっくり一緒に取り組みましたから。
三重
スタートから、チームという感じでしたよね。そこからソーシャルリスニングや、生活者との1対1のインタビューなどで、「誰をターゲットにするか」「どんな悩みがある人たちなのか」「どんな商品なら手にとってもらえるのか」を検証し、その上で見えてきたのが「子ども向け商品」への可能性でした。
―――具体的にはどんなターゲット設定なのでしょうか?
三重
ターゲットは未就学児から小学校低学年(9歳くらい)までの「子ども」をもつ、「子どもに対して栄養課題を持っている子育て層」です。「ユーグレナの力がどこに求められているか」を考えたとき、出てきたのが「子どもの食事、栄養面に悩んでいる子育て層」で、彼ら彼女らが抱える悩みに寄り添い、サポートしたいという思いで、商品開発を進めていきました。
藤田
多くの子育て層の皆さんは「好き嫌いや食べムラがあって子どもの栄養が心配。でも仕事をしながらだと子どもと向き合える時間にも限りがある......」という悩みを抱えています。その悩みを少しでも解消するために作ったのがこのドリンクです。子どもに毎日ジュース類を飲ませることに罪悪感がある方もいらっしゃるかもしれませんが、そんな思いも軽減できる甘すぎない仕上がりです。
三重
「子どもが口にするもの」に気を使われる方にも安心していただける、自然由来のユーグレナを配合した栄養バランスの良いドリンクなので、ぜひ、試していただきたいですね。
味の素社の「おいしさ設計技術®」を活かし、子どもも「おいしい」ユーグレナドリンクが完成
―――ユーグレナ社の皆さんは、共創のなかで「味の素社ならでの技術」、「共創の効果」などを感じたポイントはありましたか?
三重
「甘すぎない」など親として安心して与えられて、子どもからも"おいしい"と感じてもらえることを目指すために嗜好性や味づくりでは味の素社さんの「おいしさ設計技術®」を活用した支援をいただきました。
豊泉
味の素社では、おいしさを評価する手法として、「官能評価」という「人がおいしさをどう感じるか」という調査をよく実施します。今回も「目標としているおいしさが実現できているのか」「本当にこの味で購入したいと思うのか」など含め、何度もこの調査を実施しました。そしてそこから得た課題をもとに配合やコンセプトを変えるなど、お二人と一緒にデータを読み解き、試行錯誤していきました。
三重
並行して進めていたのがプロモーション方法の検討です。豊泉さんには、プロジェクトの進行の過程で都度、課題や検討について壁打ちをさせていただいて、これも本当にありがたかったです。愛があるからこそ、厳しい言葉もいただきましたし、「鍛えられたな」と実感しています。
藤田
豊泉さんは、私たちがステップアップするのをちゃんと見てくださっていて、"ちょっと辛口"のコメントもしてくださいます(笑)。それを私たちは噛みしめていました。
豊泉
大変失礼しました(笑)。同じチームメンバーと思っているからこその言葉です。
共創によって培われた「ユーグレナ社独自の商品開発力」。徹底した消費者目線が完成度を上げた
―――チームとして2社が本気で取り組んだからこそ得られた、共創の効果などはありますか?
三重
自社の商品開発力の向上ですね。じつは最初から「自社の商品開発力をもっと高めていきたい。そのために開発上の課題がどこにあるか、どうステップを踏むべきなのかを一緒に考えていただきたい」と、豊泉さんにはご相談していたんです。味の素社さんは長年、食品領域でたくさんのヒット商品を出される高い商品開発力を持っていらっしゃいます。私たちもケイパビリティを開発したいと考えていました。
豊泉
リクエストを受けて目指したのは、ユーグレナ社での再現性が高く、商品のヒット確率も高い商品開発ステップを確立することです。そのお手伝いができればと考え、商品作りはもちろん、一つひとつの会議やステップの踏み方にも真剣に向き合っていました。
藤田
スタートからここ2、3年は週1回のペースで豊泉さんが当社に来てくださり、ひざを突き合わせて1時間半ほどのミーティングを実施。商品企画から開発、販売まで、とにかくチームの一員としてプロジェクトに向き合ってくださって。ここでの取り組みを通じて、自分の中に「商品開発への取り組み方のベース」が根づいたように思います。
三重
仮説から始まり、それをどう評価して、実現させていくか。社内の会話もプロセスや開発軸を意識するなどの変化があり、少しずつユーグレナ社らしい商品開発スタイルが確立されつつあると感じます。
豊泉
取り組みを通じて、感じていただけたのは「味の素社のDNA」の部分だと思っています。たとえばそれは、「商品を自分の子どものように育てる」といった「お客様視点で考え、最後の最後まで壁にぶつかっても粘り切る精神などだと私は思っています。完成した商品を見て、本当に、お二人がお客様のことを考えに考え抜いた商品だと感じました。
藤田
確かに今回徹底的にお客様視点に立ちました。「お客様のために何ができるのか」から少し目をそらすと間違った道を進んでしまう。迷った時には、お客様視点に戻って軸を確認できたからこそ、新商品完成まで辿り着けたように思います。
三重
「誰の、何を解決するための商品です」という私たちの思いが販売サイドにも伝わり、開発と販売が一体となって「たくさんの人に広げていこう」と今、動いています。こういった社内の変化も今回の共創の大きな効果ですね。
―――その他に、このプロジェクトを通して感じたことなどがあれば教えてください。
藤田
私としては、プロジェクトスタート以降、どんどん豊泉さんがユーグレナを好きになってくださるのを肌で感じられたこともうれしかったです(笑)。
三重
来社される度にユーグレナカラーである緑色の所持品が多くなっていったのがうれしかったですね。今日も緑の入った服を着ていらっしゃいますが、ミーティング中も「からだにユーグレナ」ドリンクをごくごく飲んでくださって、豊泉さん流の愛を感じていました(笑)。
豊泉
じつはこのプロジェクトに関わるようになって、家族そろってすっかりユーグレナ社のドリンクにはまっているんですよ!私はグリーンスムージー派で、娘はフルーツグリーンオレ派。ユーグレナ社のみなさんは、ユーグレナを活用した自社の製品がいかにサステナブルで、健康によいものかを知っています。だからこそユーグレナ愛が強い。その思いをプロジェクト進行中ずっと浴びていたので、私もユーグレナ愛が強くなっていきました。商品を好きになることも、商品開発を成功させるための大切な要素ですよね。
共創は "Eat Well, Live Well."を実現するASVのひとつの姿。今後も、多くのオープンイノベーションを実現させたい
―――このプロジェクトは、この後どう展開していくのでしょうか?
藤田
最初にお話ししたとおり、味の素社さんとユーグレナ社との共創は、今回の子ども向けドリンクだけではありません。子ども向け商品の開発は「子どもの栄養サポート」シリーズとして続いていく予定です。今後も、今回学んだプロセスを踏まえ、新たなユーザー軸の確立を目指して、前進していきたいと考えています。
三重
すでに動き出している共創プロジェクトもありますが、「からだにユーグレナ フルーツミックス」と「からだにユーグレナ いちごミックス」に関しても、まだ終わりではありません。販売データなどから、良かった点、悪かった点をしっかり洗い出して次につなげていきたいです。
また、今回は「人と地球を健康にする」という当社のパーパスに沿うプロジェクトを実現できたと実感しています。さらにユーザーの皆さんが「健康的な暮らしを実現するためにユーグレナに求めている」ことを再認識し、これを叶えていくことの大切さを改めて感じることができました。私たちが展開するヘルスケア事業もバイオ燃料事業も、人や地球を健康にするもの。今後も、今回のように社会的意義のあるプロジェクトを実行し、そこで得た経済的循環をさらに社会に還元できるよう、力を尽くしていきたいと強く感じました。
豊泉
まだまだこのプロジェクトは続いていきます。ぜひ、ユーグレナ社と味の素社の取り組みを今後も楽しみにしていてほしいです。
また、「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」というパーパスを掲げる私たちもこの共創を通して、社会的意義のあるプロジェクトをサポートし、さらに、当社と親和性のある精神をもった企業の発展を支援できたことに意義を感じています。
豊泉
もしかすると、今回の共創を知って「味の素社ってこんなこともやっていたの?」と驚く方もいるかもしれません。しかし味の素社にとって、「豊富な栄養を含むユーグレナを一緒においしく、もっと世の中に広げていくこと」は、まさにASVそのものと言える取り組み。
私自身、今回、ゼロからユーグレナ社さんの商品開発をサポートできたことに手応えを感じましたし、「自社だけではチャレンジできない経験ができる」、「自社のユニークネスを再確認できる」といった共創ならではのメリットを感じました。
今後もこうした社会的意義のある共創を通じ、さらに多くの企業とのネットワークを作り、新たな挑戦の基盤を作っていきたいですね。それこそが私たちソリューション&イングリディエンツ事業部が取り組むASVのひとつの姿だと感じています。
2024年12月の情報をもとに掲載しています。