じつは味の素社は長年のアミノ酸研究から、このセラミドに代わる「エルデュウ®(ELDEW®)」という化粧品原料を開発しているのです。
「セラミドの代わりってどういうこと?」「食品のイメージが強い味の素社がなぜ化粧品の原料を?」と、さまざまな疑問が湧いてきますよね。
そこで、美容ライターの中田ゆきさんが味の素社の化粧品開発/マーケティング担当者のもとへ向かい、その秘密と真実をくわしく伺ってきました!

杉井爽
味の素株式会社
化成品部パーソナルケア・マーケティンググループ

原矢奈々
味の素株式会社
化成品部開発グループ

中田ゆき
美容・ファッションライター
味の素社は化粧品の原料をつくっている?
「味の素社」と聞いて私たちが真っ先に思い浮かべるのは、毎日の食卓を支える食品会社のイメージ、ですよね。ですが、その根底にあるのは創業以来100年以上にわたって磨き上げられてきた「アミノ酸研究」の知見と技術です。
味の素グループは、この知見や技術を、食品だけでなく健康、医療、先端技術などさまざまな分野の価値創出へと応用してきました。こうした独自の科学的アプローチを「アミノサイエンス®」といいます。
じつは味の素社では、1970年代から化粧品原料の研究開発を進めてきました。「食品メーカーが化粧品の原料?」と驚かれる方も多いかもしれませんが、人の肌はもちろん、うるおい成分であるNMF(Natural Moisturizing Factor:天然保湿因子)の多くはアミノ酸からできています。つまり、化粧品原料の開発は、まさに「アミノサイエンス®」が活かせる分野なのです。
現在、味の素グループは世界55か国、5,000社以上の化粧品メーカーへ原料を供給し、数万アイテムもの化粧品に採用されているという知られざる大きな実績を持っています。
味の素社のスキンケアブランド「ジーノ」も、まさに長年のアミノ酸研究の結晶。保湿成分を贅沢に配合した処方で、乾燥やゆらぎに悩む多くの方から高い支持を集めています。
そして今回、私がとくに注目したのが、味の素社が開発した「エルデュウ®(ELDEW®)」という原料です。いま化粧品業界で脚光を浴びている「セラミド」に代わるキー成分として、世界のコスメ開発者から熱い視線が集まっています。
一体なぜアミノ酸の専門家が「セラミドに代わる成分」を生み出したのか? その真相を確かめるべく、開発/マーケティングの担当の杉井爽さん、原矢奈々さんにお話を伺いました!
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最近よく聞く成分「セラミド」とは?
中田さん
最近、美容界やSNSで「セラミド」という言葉を非常によく聞きます。そもそも、なぜこれほどセラミドやバリア機能が注目されているのでしょうか?人生100年時代の到来や細胞科学の進歩に伴い社会全体でも関心が高まり、美容界でも注目のキーワードとなっている「Longevity(ロンジェヴィティ)」※1という考え方をする上で、欠かせない成分だから、と思うのですが。
※1 Longevity(ロンジェヴィティ)
Longevityとは、「長寿・持続可能性」という意味。社会全体で健康寿命への関心が高まるなか、美容においても一時的なカバーではなく「細胞レベル※からのケアで年齢を重ねても健康的な肌環境を保ち続ける」という最新のケア概念のことです。
※角質細胞
原矢さん
まさにおっしゃる通りです。一時的なカバーではなく「素肌そのものをすこやかに整えたい」という本質的なケアを求める方が増えています。それに加えて、近年の気候変化やストレスから「肌がデリケートになった」と感じる方が増えたこと、そしてインターネット検索やAIの普及によりご自身で肌トラブルの原因や効果的な「成分」を調べる方が増えたことも大きな理由だと思います。
中田さん
その鍵としてセラミドが注目されているのですね。そもそもセラミドは肌の中でどのような働きをしているのでしょうか?
杉井さん
肌の一番外側にある「角層」は、外部刺激から体を守り、体内の水分の蒸散を防ぐ「バリア機能」を担っています。
肌を「レンガの壁」にたとえますと、アミノ酸(NMF:天然保湿因子)を含んだ角層細胞が「レンガ」、そのすき間を埋める細胞間脂質(セラミド、コレステロール、脂肪酸でできています)が「セメント」の役割を果たしています。この「レンガ」と「セメント」が隙間なく組み合わさることで強いバリア機能を保つことができます。

中田さん
つまりセラミドは、乾燥や刺激に負けないすこやかな肌を保つために欠かせないのですね。
杉井さん
その通りです。ただしセラミドだけを補えば良いわけではありません。角層細胞の中にある「アミノ酸(NMF)」と、それを取り囲む「細胞間脂質(セラミド・コレステロール・脂肪酸)」のバランスが整って初めて、健康な肌環境が保たれます。なかでもセラミドは大切な役割を担っているのでかなり注目されているわけです。
セラミドの役割や肌構造について、さらにくわしく知りたい方は、教えて!アジパンダ®「セラミドってなに?」をご覧ください。
セラミドと似た働きをする原料エルデュウ®とは?
中田さん
なるほど、細胞間脂質のひとつであるセラミドは肌にとって必要なんですね。多くの化粧品に配合されているのはそういう理由なんですね。
杉井さん
1980年代頃からセラミドが注目を集め始めましたが、じつはセラミドそのものは水にも油にも溶けにくい粉末状の原料で、化粧品へ配合するのが極めて難しいという技術的な課題がありました。そのうえ価格も非常に高価なのです。
中田さん
なんと......!セラミドは簡単に配合できる成分ではないのですね。原料が高価で、化粧品に加工するのも難しいとなると、製品の価格にも跳ね返ってきますし、メーカー側も配合量や処方に悩まされそうです。
杉井さん
まさにそこに着目して味の素社は、長年の研究で培ったアミノ酸技術を応用し、セラミドに似た構造を持ちながらも、溶けやすい「油剤」として高配合できるエルデュウ®を開発しました。

エルデュウ®のサンプルパッケージ。エルデュウ® PS-306_50g(左)/エルデュウ® PS-203_50g(右)
中田さん
粉末状で扱いづらかったセラミドの弱点を、アミノ酸を油剤化する技術で解決されたわけですね!そのエルデュウ®の原料には何が使われているのでしょうか?
杉井さん
アミノ酸に、細胞間脂質に必要なコレステロールや脂肪酸に近い植物由来の原料を組み合わせており、安定性も非常に高いのが特長です。また、独自の製造技術により化粧品メーカー様が取り入れやすい形でご提供できています。
中田さん
エルデュウ®は単なるセラミドの代用品ではなく、アミノ酸ベースだからこそ肌なじみが抜群で、細胞間脂質の構成物であるコレステロールや脂肪酸の機能まで併せ持っている。まさに「皮膚バリア構造」をそのまま再現したような原料ですね。 私たち生活者から見ても、これほど機能的な成分がしっかり入ったコスメを手に取りやすい価格で選べるようになるわけですから、本当にありがたい話です。
杉井さん
そう言っていただけるとうれしいです。原料メーカーとして、高品質なものを使いやすい形で各化粧品メーカー様へ届けることが、巡り巡って生活者の皆さまの肌を支えることにつながると信じています。

エルデュウ®は商品にあわせてさまざまなテクスチャーを実現します。
お肌とアミノ酸の関係について、さらにくわしく知りたい方は、「美容とアミノ酸|生活で役立つアミノ酸|アミノ酸大百科|味の素株式会社」をご覧ください。
「エルデュウ®」の名前の由来は?
「エルデュウ®(ELDEW®)」という名前は、ドイツ語で「油」という意味のEL (ÖL)と、英語の「露」という意味のDEWを組み合わせた造語です。肌をバリアする油(脂質)でありながら、露のようなうるおいで満たす存在になってほしい、という想いから名付けられました。油成分にも関わらず、エルデュウ®自身の約4倍の重さの水を抱え込むことができるという抱水性も表わしていますね。
じつはあなたも使っているかも? エルデュウ®は多くのスキンケアやヘアケア製品に採用されています
中田さん
1992年(平成4年)の開発以来、エルデュウ®はどれくらい世の中に広がっているのでしょうか?
杉井さん
直近2025年(令和7年)の1年間だけでも、グローバルで約3,000もの新製品に採用されています。世界55か国、5,000社以上のメーカー様への供給実績があり、累計では数万アイテムにのぼります。用途も年々広がっており、くちびるや肌に塗るリップやクリーム、洗い流して使うシャンプーやトリートメントなど、身近なさまざまな製品に使われています。
中田さん
1年間で約3,000品も!日本の技術が世界に認められていて、私まで誇らしい気持ちになります。
杉井さん
昨今のスキンケア、成分重視の流れのなか、需要はさらに高まっています。直近数年間でエルデュウ®が採用された製品数は、全世界で着実に増えていることが確認できています。
中田さん
エルデュウ®がいかに化粧品原料としてすぐれているかわかりますね。スキンケアだけでなく、リップやシャンプーなど全身のアイテムに使われているということで、私の愛用コスメやヘアケア製品にも成分として採用されている可能性が高そうです。ちなみにエルデュウ®が入っているかどうかを調べることはできますか?パッケージの裏面(全成分表示)ではどういう表記になっているのですか。
杉井さん
少し長いのですが、「ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)」という名前になります。じつは「日本化粧品検定」のテキストにも掲載されるほど知られている成分なんですよ。配合しやすく、効果も期待できるため化粧品開発者の間では「困ったらエルデュウ®」と言われているようです。

エルデュウ®の表示名称は、「ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)」※同一の表示名称を持つ他社製品も存在します
中田さん
あの敏感肌用人気ブランドや、バズり続けている大人気のリップ、そして味の素社のブランド「ジーノ」にもエルデュウ®が配合されていると伺い、興奮しました。荒れがちな肌、敏感肌の方にはぜひとも注目してほしい表示名ですね。
エルデュウ®を使用しているジーノの製品はこちらのページからご確認いただけます。
学術誌や研究論文が示す!エルデュウ®の実力とは?
中田さん
エルデュウ®は専門家間でも高評価を得ていると聞きました。
杉井さん
はい。分子生物学、生化学などを扱う国際的な学術誌「International Journal of Molecular Sciences」や欧州の処方担当者向け専門誌「Personal Care Global」にも掲載されています。
中田さん
具体的にどのような内容か教えていただけますか。
杉井さん
論文中では学術名や技術概念で語られているのですが、まさに私たちがエルデュウ®で追求しているアミノ酸技術を裏付けるような内容なんです。
学術誌「International Journal of Molecular Sciences」に掲載

「International Journal of Molecular Sciences」は、大学や研究機関などの研究者が、幅広い科学・医学分野の研究成果を発表している査読付き学術誌です。アミノ酸由来の成分(エルデュウ®のこと)により、肌の水分を抱え込む力がサポートされることが示されています。
中田さん
エルデュウ®は、学術的にも肌のバリア機能を支える存在として認められているのですね。その技術を化粧品原料として完成させたのが味の素社だからこそ、多くのコスメ開発者から頼られているのだと納得しました。
目指すはグローバルで10倍の成長!エルデュウ®の配合された化粧品を通じて、1億人のWell-being向上に貢献
中田さん
日本国内では圧倒的な実績を持つエルデュウ®ですが、今後の展望、そしてお二人のパーパス(志)をお聞かせください。
杉井さん
エルデュウ®が日常的に使え、低刺激で優秀な原料であることを世界中に広めたいです。全世界の荒れがちな肌、敏感肌に悩む方々の悩みが少しでも和らぎ、1億人の健やかな身体と心につながることを願っています。
原矢さん
私は研究所でアミノ酸に向き合ってきました。味の素グループが培ってきた「アミノサイエンス®」を活かし、多くの人のWell-being(心身の豊かさ)に貢献することが私のパーパスです。エルデュウ®は実際に採用してくださったメーカー様から長年ご愛用いただいており、「一度使ってもらえば違いがわかる!」と自信をもっておすすめできる製品です。
中田さん
エルデュウ®を知り、私も化粧品の成分表をチェックするのが楽しみになりました。(老眼鏡必須ですが!)「味の素社=食品」というイメージを持っている人に知ってほしい、世界の美を裏から支える味の素社のアミノ酸研究のとてつもない可能性を改めて実感しました。これからのさらなるグローバルな広がりに期待しています!
文:中田ゆき(美容ライター)

杉井爽
味の素株式会社
化成品部 パーソナルケア・マーケティンググループ
入社後は食品部門で営業を経験し、現在は化成品部で化粧品原料のBtoBマーケティングを担当しています。製品戦略やエリア戦略の立案・実行に携わっています。「仕事も成果もワクワクできること」を目指して奮闘中です。休日は家族との時間を大切にしています。香粧品を通じて、美と健康の可能性を追求していきたいと思います。

原矢奈々
味の素株式会社
化成品部開発グループ
入社時より研究所でパーソナルケア素材の研究開発に従事。アミノ酸を元にした新素材の開発、製品化や、素材の価値向上に取り組み、お客様にその魅力をご提案する活動まで、研究から一連を経験。マーケティンググループを経て、現在は事業側の開発グループで、新製品開発や技術と事業をつなぐ仕事に携わっています。
休日は娘と一緒にお出かけしたりガーディニングで植物を愛でたり、家族とのんびりとした時間を大切に過ごしています。

中田 ゆき
ライター。雑誌やウェブ媒体にて長年にわたり美容・コスメ業界の最前線を取材。皮膚科学に基づいた客観的な視点から、大人の肌悩みに寄り添う最新美容情報を発信している。
instagram @yuki19681224
2026年9月の情報をもとに掲載しています。