研究開発

毎日のスキンケアで環境問題に貢献!?
味の素社のサステナブルな保湿剤「AJIDEW®」に迫る!

あなたが毎日使っている化粧水や美容液、そしてボディケア、ヘアケア商品などに、じつは味の素社の技術が使われているかもしれません。

味の素社が開発した保湿剤「AJIDEW®」(アジデュウ)は、1971年(昭和46年)から50年以上にわたって多くの化粧品メーカーの商品に採用されてきました。

「AJIDEW®」は、肌が自ら生み出すNMF(Natural Moisturizing Factor:天然保湿因子)と同じ成分であり、自然なうるおいを与えることができるアミノ酸系の化粧品素材です。

この「AJIDEW®」の注目すべき点は、時代に先駆けてサステナブルな製造工程で作られていること。人にやさしいのはもちろん、地球にもやさしい「AJIDEW®」とは一体どんなものなのか?サステナビリティを体現する味の素社の保湿剤「AJIDEW®」の秘密に迫ります。

味の素社の素材があなたの化粧品に入っているかも!?

「AJIDEW®」は、1971年(昭和46年)から製造されている50年以上の歴史を持つ素材。植物由来の天然保湿成分で、肌や髪に自然なうるおいを与えることができます。

「AJIDEW®」は、日常生活で失われてしまうNMFを肌に補い、べたつかずに高保湿できる機能性や感触が好まれており、その質の高さから国内外の多くの化粧品メーカーに採用されてきました。そんな「AJIDEW®」だからこそ、皆さんが毎日使っているスキンケア、ヘアケア商品の中にも、じつはこっそり入っているかもしれないのです。

「AJIDEW®」ってどんなもの?

では、いよいよここから「AJIDEW®」の中身を探っていきましょう。

私たちの皮膚は、体内の水分を保つ重要な役割をもっています。その皮膚のもっとも外側にあるのが角層。この角層にはNMF(Natural Moisturizing Factor:天然保湿因子)という、うるおい成分が存在しています。

そしてこのNMFを構成するのがアミノ酸やPCA(ピロリドンカルボン酸)。PCAは人の肌の他にも、キノコや玉ねぎ、小麦や大豆などにも含まれる天然成分です。PCAそのものにはほとんど吸保湿性はないのですが、これがナトリウムとくっついてPCA-Na(ピロリドンカルボン酸のナトリウム塩)になるとすぐれた保湿力を発揮します。

*吸保湿性:水分を吸収しやすく、一旦吸収したら放出しにくいという性質。

このPCAこそが、味の素社「AJIDEW®」の主成分なのです。

ここからは「AJIDEW®」の生産方法をご紹介します。

「AJIDEW®」の主成分であるPCAの原料は、サトウキビなどの農作物。これらを発酵させて抽出したグルタミン酸(アミノ酸の1種)を、さらに煮込むことでPCAが作られます。つまり、「AJIDEW®」は、植物由来の天然保湿成分なのです。

肌にやさしい天然保湿成分PCAを活用し、味の素社はこれまで、「AJIDEW®」をはじめとするさまざまな保湿素材を開発し、日本やアメリカ、ヨーロッパなど世界中に販売しています。

【PCAを主成分とする味の素社の保湿素材のラインナップ】

味の素社では、AJIDEW®シリーズをはじめとして、天然保湿成分PCAを主成分とする保湿剤を製造しています。簡単にラインナップをご紹介します。

AJIDEW®シリーズ

AJIDEW®NL-50、AJIDEW®A-100

NMF成分として人の皮膚内にもともと多く存在しているPCAおよびPCA-Naにより、肌や毛髪をみずみずしく保つ。

AJIDEW® ZN-100

健康な肌に欠かせないミネラル、亜鉛と、PCAがくっついたPCA亜鉛により、過剰な皮脂を抑え、肌や頭皮にサッパリとした感触を与えられるだけでなく、コラーゲンの産生促進や分解を抑制する働きなど、肌悩みに寄り添うマルチファンクショナルな機能を持つ。

PRODEW®シリーズ

PRODEW® 500/PRODEW® 600

PCAに加えて、皮膚や毛髪のアミノ酸組成を参考に調合されたアミノ酸カクテル。さまざまなアミノ酸を補給することで、日常生活で失われる肌や髪の本来のチカラを引き出し、美しく保つ。

植物由来で、かつすぐれた保湿力とべたつきの少なさを基本特徴とする「AJIDEW®」や「PRODEW®」は、それぞれの持つ機能にあわせて、多くの化粧品メーカーの石鹸、洗顔料、シャワージェル、スキンケア、ヘアケア商品、近年ではメイクアイテムまで、幅広い商品に採用されています。

もっと知りたい!「NMF(天然保湿因子)ってなに?保湿剤とは?」

NMF(Natural Moisturizing Factor)とは、皮膚の角質層に存在する保湿成分の総称です。日本語では「天然保湿因子」と訳されます。

「NMF」についてくわしく知る前にまず、理解しておきたいのが、私たちの肌(皮膚)の仕組みです。

私たちの身体の中には、体重の約60~70%にもなる水分が蓄えられています。先にも少し紹介しましたが、これを失わないための重要な役割を担っているのが皮膚。そしてこの皮膚のもっとも外側にある「角層」の薄い層こそが、「保湿」と「バリア機能」を担い、肌の健康を保っています。

そんな大事な役割を持つ角層ですが、なんと角層はキッチンで使うラップ(0.01~0.03mm)ほどの薄いもの!角層を含む表皮においても紙幣3枚分(0.1~0.3mm)ほどの厚みしかありません。

極薄ながら大切な役割を持つ角層。この角層で、保湿機能を担っているのが「NMF」なのです。

NMFは、アミノ酸42%、PCA12%、乳酸11%、尿素7%などの成分で構成されています。

NMFに、アミノ酸やPCAがどのくらい含まれているかによって肌の水分含有量が大きく変化します。これらは日常生活で簡単に失われ、少なくなると肌がカサカサと乾燥してしまうことが分かっています。乾燥から肌を守り、うるおいや柔軟性を与え、みずみずしい健康な状態として、肌本来のチカラを引き出すために使用されるのが、「AJIDEW®」などの保湿剤というわけです。

うま味調味料「味の素®」とどんな関係が?「AJIDEW®」が環境にやさしいといわれる注目の理由とは?

人の肌で自然につくられるPCAを、植物由来で生み出し、再現した「AJIDEW®」は、地球にもやさしいという点で再注目されています。ここからはその理由について探っていきましょう。

「AJIDEW®」が「地球にやさしい」とされる理由は、その製造過程にあります。前でも触れましたが、「AJIDEW®」の原料は、植物由来のアミノ酸のひとつであるグルタミン酸。このグルタミン酸の原材料はサトウキビなどの農作物です。

ではここで、「AJIDEW®」の製造過程を改めて、振り返ってみましょう。

まず、収穫されたサトウキビは製糖工場に運ばれ、そこで出た粗糖および糖蜜(サトウキビの絞り汁)は、味噌や醤油と同じ発酵法を経て、グルタミン酸が取り出されます。このグルタミン酸をさらに煮込んでできるのがPCA(PCA-Na)である「AJIDEW®」です。

そしてここがポイント!この製造の際、グルタミン酸を取り出した後に残った液体も廃棄せず、しっかりと活用するという仕組みが味の素社の「バイオサイクル」です。

じつは製造時に残った液体にはたっぷりと栄養が含まれています。だからこそ味の素社では、これを再活用して、まずはサトウキビの肥料にし、原料を余すことなく活用しています。

そしてさらに、この再利用を行うことで、肥料製造に排出されるCO2の削減にも貢献しているのです。

まとめると、味の素社では「製造時に残った副生物を廃棄せず、農作物の肥料として再利用するという」資源循環型の製造システム「バイオサイクル」を活用しており、「AJIDEW®」はこの「バイオサイクル」によって製造されています。

こうした環境課題への取り組みを行っているからこそ、「AJIDEW®」は地球にやさしいと言われているのです。

ここで「あれ?」と思う人もいるのでは?

そう、この製造工程はあのうま味調味料「味の素®」と同じなのです。「AJIDEW®」も「味の素®」も植物由来のグルタミン酸から誕生しており、どちらも味の素社が取り組む「バイオサイクル」によって作られているというわけ。

つまり、ふたつの商品はともに環境問題に貢献する、「地球にやさしい商品」なのです。

もっと知りたい!「バイオサイクルとは?」

「バイオサイクル」とは、味の素社が1970年代から取り組んでいる循環型経済の取り組みです。

ここで展開されるのは

1.サトウキビなどの農作物を栽培する

2.サトウキビなどの原料から発酵などの工程を経てアミノ酸(グルタミン酸)を製造する

3.アミノ酸から商品を製造する(うま味調味料「味の素®」、「AJIDEW®」など)

4.商品の製造過程で発生した副生物を肥料としてサトウキビなどの栽培に活用する

というサステナブルな資源循環型の製造システム。

うま味調味料「味の素®」、「AJIDEW®」などの製造の際に残った栄養たっぷりの液体(コプロと呼ばれる発酵液などの副産物)を捨てるのではなく農作物の肥料として活用する。この「バイオサイクル」によって、味の素社は50年以上、副生物を廃棄する際にかかるコスト、およびCO2を含む温室効果ガス(GHG)の削減に世界各地で取り組んできました。

「バイオサイクル」については、こちらの記事もご覧ください。

毎日使う化粧品。肌だけでなく人・社会・地球にやさしい、サステナブルな未来に貢献できる選択を

ここまで味の素社の「AJIDEW®」が、植物由来で肌にも環境にもやさしい保湿剤である理由を解説してきました。

化粧品に配合される保湿剤はさまざまな種類がありますが、「AJIDEW®」のように、サトウキビなどの作物を原料とし、発酵というナチュラルな手法で製造され、かつ副生物を無駄にしないという環境にやさしい成分は他にはありません。

まさに「AJIDEW®」は、スキンナチュラル(肌にとって自然な成分)でサステナブルな保湿剤。これを採用することで、化粧品メーカーは環境課題の解決に貢献することができ、また、ユーザーも「AJIDEW®」の入った商品を使うことで、サステナブルなサイクルの一員となり地球にやさしい習慣を手に入れることができます。

植物由来の肌にやさしい化粧品で、肌を潤し、キレイになりつつ、環境問題にも貢献できる。これってとても素敵なことではありませんか? ぜひ、毎日使用している化粧品から、サステナブルで、地球にやさしい選択をしていきたいですね。

アミノサイエンス®で新しい価値をつくり、人々の、地球環境のWell-beingに貢献していきたい

「AJIDEW®」「PRODEW®」などの開発研究に携わってきた、バイオ&ファインケミカル事業本部化成品部 パーソナルケア・マーケティンググループの原矢奈々さんは、「バイオサイクル」による保湿剤の開発、および、自らのASVについてこう語ります。

「アミノサイエンス®をもとに、高機能で環境課題にも貢献できる『AJIDEW®』のような素材を創り、化粧品メーカーさんにもユーザーの皆さんにも喜んでいただける製品、価値をワクワクしながら生み出し続けたいですね。そして、その価値を通して、地球環境とWell-beingに貢献したいです」

また、販売を手掛ける厚見真悠さん(バイオ&ファインケミカル事業本部 化成品部 パーソナルケア・マーケティンググループ)も自身のASVについて、

「すでに多くの商品に採用いただいている『AJIDEW®』ですが、まだまだ拡大の余地はあります。さらなる拡大に努め、より多くの方に自分にも地球にもやさしい生活、パーソナルケア商品を通じたWell-beingを感じていただけるようにすること。これが私のASVだと捉えています」

と語り、今後の活動への意気込みを明かしました。

味の素社の「AJIDEW®」をはじめとするアミノ酸由来の化粧品素材は、大切な資源を無駄なく利用し、利用後はまた資源に戻すための1つの選択肢です。

植物由来の原料と環境に配慮した製法、アミノサイエンス®によって、人々の肌に健やかさと美しさを与えたい。そして、地球と人々のWell-beingを実現させたい。「AJIDEW®」は、そんな思いがこもった商品なのです。

味の素社では、「AJIDEW®」などの保湿剤のほかにも、化粧品のマイクロプラスチック問題に取り組む「AMIHOPE®」をはじめとし、多くの化粧品用素材を製造しています。そしてさらに今後も、アミノサイエンス®をいかして人・社会・地球のWell-beingに貢献していきたいと考えています。

原矢 奈々(はらや なな)

バイオ&ファインケミカル事業本部 化成品部 パーソナルケア・マーケティンググループ
入社時よりバイオ・ファイン研究所にて香粧品素材の研究開発に従事。アミノ酸をもとにした新素材の開発や素材の価値向上に取り組み、お客様にその魅力をご提案するTS活動まで、研究から製品化まで一連を経験。2024年現在、マーケティンググループで新製品開発や湿潤剤の製品を担当。
休日は娘と一緒にあそび、お出かけしたり、ガーデニングで植物を愛でたり。家族とのんびりとした時間を大切に過ごしています。

厚見 真悠(あつみ まゆ)

バイオ&ファインケミカル事業本部 化成品部 パーソナルケア・マーケティンググループ
2017年入社。九州支社、東京支社で「ほんだし®」や「CookDo®」など家庭用製品の営業を経て、2023年より現在の部署にて香粧品の販売マーケティングに従事。現在は、「PRODEW®」「AJIDEW®」の販売担当と日本・中国・韓国のビジネスを担当。"Step out from my comfort zone"を心掛け、食品領域からアミノサイエンス領域のビジネスに挑戦中。
休日は、もうすぐ1歳になる息子と近所をお散歩したり、九州赴任中にハマった道の駅めぐりやキャンプ、ドライブなど、都会よりも自然を求めてアクティブに活動しています。

<用語解説>

アミノサイエンス®
アミノサイエンス®とは、アミノ酸のはたらきに徹底的にこだわった研究プロセスや実装化プロセスから得られる多様な素材・機能・技術・サービスの総称。味の素社では「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingへ貢献する」を志(パーパス)に掲げています。


ASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)
ASVとは、味の素グループの事業を通じて社会価値と経済価値を共創する取り組み。味の素社では従業員それぞれが自らのASVを掲げ、仕事を通じてその実現を目指しています。

2025年1月の情報をもとに掲載しています。

味の素グループは、アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献します

味の素グループは、

アミノサイエンス®で人・社会・地球の

Well-beingに貢献します

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