基礎より手前の料理のギモン

みりんってなに?どうして料理に必要なの?初心者にとって謎の調味料「みりん」を調べてみる

料理ができたらいいな……と思ってはいるものの、レシピを見てもどこから手をつけていいのかわからない。スーパーマーケットに行ってもどんな食材や調味料を買えばいいのかわからず、ただただ立ち尽くす……。
そんな“非料理男子”のフリーライターMさんが、予備知識以前のギモンや謎(?)を解明し、料理男子を目指します。
今回のテーマは「みりん」。どんな味だっけ? なんで料理に入れるの? いまいち実態のつかめない調味料に、疑惑の目を向けるMさん。さっそく調べてみました!

しれっとレシピにまぎれこむ謎の調味料・みりん

みなさんは、料理の"さしすせそ"を知っていますか? 料理に欠かせない調味料の頭文字を並べたもので、それぞれが:さとう(砂糖)、:しお(塩)、:す(酢)、:せうゆ(醤油)、:みそ(味噌)となるそうです。

「そ」に「味噌」をあてるのズルくない? という疑問は置いておくとして、この"さしすせそ"以外にレシピでよく目にする調味料があるんですよ。

それが「みりん」です。

料理ビギナーの人でも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。いろいろなレシピ...とくに和食レシピに登場するんですよね。

なにかヒントがつかめるかもと、まずはスーパーマーケットの調味料売り場に行って愕然としました。

なにせ「本みりん」「みりん風調味料」「みりんタイプ発酵調味料」......といろいろなバリエーションがあるんですから。ほかの調味料では考えられない! 醤油風調味料とか味噌タイプ発酵調味料なんてそうそうお目にかかりませんよね?

容量や価格設定もまちまちだし、みりん、って一体なに?どれを何のためにいつ買えばいいの!?

みりんの正体はなんとお酒! 調味料としてもすぐれもの

売り場で考えていても怪しいだけなので、帰宅して『調理用語辞典』(全国調理師養成施設協会 改訂版)を手に取りました。さっそく「みりん」を引いてみると――。

引用:しょうちゅう(甲類または乙類)や40%程度のアルコールに蒸したもち米とうるち米こうじを混和し、40~60日間熟成させて糖化を行い、かすをしぼり取って得られる酒。

かすをしぼり取って得られる酒......。え? お酒だって!? しれっと調味料売り場に並んでいるくせに、じつはお酒だったとは! う~む、正体を知ると一気に興味が湧いてきたぞ。

もち米、うるち米こうじ、アルコールを原料とする「みりん(本みりん)」のアルコール度数は14%ほどで、酒税法でもしっかりとお酒に分類されています。現在は飲用ではなく調味料としての用途が主流になっているそうですが、焼酎やアルコールで割って飲用に特化したみりんもあり、こちらは「本直し」や「柳蔭(やなぎかげ)」といった名前でお酒として流通しています。

本みりんは独特の甘みやコクがあり、料理に使うと味に奥行きが出るほか、「照り」や「つや」を与えるのだとか。また、素材の臭み消しや味が染みやすくなるなど、アルコールならではの効果もあるそうです。さらに食材の煮くずれを防ぎ、うま味成分をとじこめる働きまであるとは!

いいことづくめの本みりんですが、料理に使う際には注意が必要。 アルコール分を多く含んでいるので、加熱しない料理に使うときは、一度鍋などで煮こんでアルコールを飛ばす「煮切り」のひと手間が欠かせません。

じゃあ、みりん風調味料とみりんタイプ発酵調味料は何者!? ということになりますよね。それぞれの特徴をちょっとまとめてみました。

みりん風調味料:
みりん風調味料とは、水あめ(糖類)や米、米麹、うま味調味料などを調合したもので、いわばみりんの代用品。アルコール度数が1%未満なので煮切りする必要もありません。調味料扱いだから価格もお手ごろです。ただし、臭み消しや煮くずれ防止といったアルコール由来の効果はないので要注意。

みりんタイプ発酵調味料:
みりんタイプ発酵調味料とは、もち米、米麹、アルコールを発酵させてみりんの風味に近づけた調味料。8~20%のアルコール分を含んでいるので、臭み消しなどにも使えます。しかし、塩を加えているので、醤油や塩といった調味料は控えめに入れましょう。

ものぐさな筆者は、手間いらずのみりん風調味料に惹かれますが、一度ホンモノの味も知っておくべきかしら。料理上級者を気取ってシチュエーションに応じて使い分けるのも楽しそうです。

【脱線コラム】
江戸時代、女性ウケ抜群のお酒だったみりん

みりんは、いつから日本で親しまれるようになったのでしょうか。起源は諸説ありますが、少なくとも戦国時代にはお酒として飲まれていたことがわかっています。江戸時代に入り、戦乱もなく穏やかな時代には、ほんのりと甘いみりんは女性やお酒の苦手な人たちの間で広く浸透しました。
そしていよいよ調味料としての出番は、江戸時代後期から。うなぎのタレやそばつゆに使われるようになり、当時編纂された百科事典『守貞謾稿(もりさだまんこう)』にも、記述が残されています。

時代は移り、戦後になってからはみりんの調味料としての利用が広まってきたことで、昭和30年代(1956年〜)には酒税法の見直しによってみりんが大幅減税されることに。それをきっかけにして一般家庭でも使われるようになり、いまや欠かせない調味料になっています。

ちなみにみりんは漢字で【 味醂 】と書きます。

みりんの起源は、諸説ありますが、中国から伝わった「密淋(ミイリン)」という甘いお酒だという中国伝来説と、もともと日本古来の「練酒」「白酒」に腐敗防止の焼酎が加えられたものという日本誕生説などがあります。
(参考)全国味醂協会 https://www.honmirin.org/knowledge/

照り・つやなくして、料理の見映えせず!?

さて、みりんによって料理に照り・つやが出ることは書きました。しかし、具体的に「照りが出る」「つやがある」ってどういう状態なのでしょうか。再び『調理用語辞典』を引いたところ「主に料理の仕上がりの光沢のことをいう」と、なんとも味気ない。

それってどういう状態のこと?ということで「AJINOMOTO PARK」の「レシピ大百科」にアクセス! 試しに「照り」や「つや」でキーワード検索してみると、食欲をダイレクトに刺激するようなレシピがたくさん出てきました。

「ぶりの照り焼き」「ねぎの照り焼きハンバーグ」「じゃがいもと手羽先のつや煮」「海老のつや煮」――、どれも照り照りでつやつやのおいしそうな"光沢"があって、思わずため息がこぼれます。これらのレシピは、当然のことながらみりんを使っています。もし、照り・つやがなかったらPCモニターの前でここまでテンションが上がることもなかったでしょう。

これまで味ばかりを気にしていたけれど、みりんの効果を知って料理の見映えの大切さにも気づけました。
みりんについて興味を持ったことさえなく、その価値をまったく分かっていなかったせいで損をしてきたかと思うほど。

みりんをひと足しすれば、甘みやコクで味に奥行きを出し、食欲をそそる照りやつやを与えることを知ってしまったからには、もうみりんなしでは料理を語れない!?
まさに「照りを知る者は富む」。
ということでまた一歩、料理男子に近づいたのでした!

2021年9月の情報をもとに掲載しています。

味の素グループは、アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献します

味の素グループは、

アミノサイエンス®で人・社会・地球の

Well-beingに貢献します

「最新記事」一覧を見る