今回はYouTubeチャンネル登録者数29万人を誇る投資系インフルエンサー、上岡正明さんをお招きし、味の素社IR担当の朴さんによる個人投資家や株主の皆さまに向けた取り組み解説とともに、個別株の魅力や選び方についてお届けします。
上岡さんによると、個別株購入のポイントは「その企業のことをよく知ること」だそう。
味の素グループは、さまざまなステークホルダーとのコミュニケーションを重視し、個人投資家や株主の皆さま向けにも味の素グループのファンになっていただくための施策を実施しています。
おふたりの対談の中で、上岡さんが知らなかった味の素グループの新たな一面が明らかに……。一体どんな展開になったのでしょうか。
上岡 正明 氏株式会社フロンティアコンサルティング
代表取締役社長
金融、経済、世界のNEWSをほぼ毎日発信する投資系インフルエンサー
朴 佑奈味の素株式会社
コーポレート本部 IR室
投資家との対話、IRイベントの企画・運営、開示資料作成、社内IRなどを担当
チャンネル登録者数29万人超えの投資系YouTuber、上岡正明さんってどんな人?
ーーーまずは簡単に上岡さんのご経歴を教えてください。
上岡さん
PR会社を経営しながら、株式投資に関する情報をYouTubeやXで発信しています。
4年前、新型コロナウイルスの影響で記者会見やイベントが軒並みストップしたことがきっかけで、YouTubeでの情報発信を始めました。チャンネル登録者数は(2025年3月時点で)およそ29万人です。
朴さん
29万人!株式投資歴はどれくらいですか?
上岡さん
20歳のころに始めたので、投資歴は25年以上です。当時はテレビの放送作家として働いていました。
ちょうどネット証券が出始めたころ、先輩から「株をやらないと流行に遅れる。上岡もやったほうがいい」と言われたのをきっかけに、株式投資を始めました。小泉政権下の株高やリーマンショックの大暴落など、浮き沈みを経験しましたね。これまでに株式投資で形成した資産は5億円以上です。
上岡正明はこう考える!「個別株」を購入したほうがいい理由
ーーー2024年(令和6年)にスタートした「新NISA」をきっかけに、株式投資を始める人が増えています。株式投資について、簡単に教えてもらえますか?
上岡さん
株式への投資では、投資信託と個別株に投資する方法があります。投資信託とは、投資家から集めた資金を専門家が運用し、その利益を投資額に応じて分配する「商品」を指します。
投資信託と個人株投資の違いや、投資信託の仕組みについてくわしくはこちら
上岡さん
まず投資信託ですが、これは一般的な投資信託は市場の平均的なリターンを目指す手法なので、安定したリターンが期待できます。
ただ、投資信託は個別株よりリスクが低い代わりに、リターンが比較的少ない。加えて、市場の分析や投資先の選択をプロに任せるため、個人投資家としてのスキルが身につきにくいと考えています。
ーーーなるほど、では個別株投資はいかがでしょうか。
上岡さん
個別株投資では、自分の経験とスキルによって資産を大きく増やすチャンスがあることが最大のメリットですね。単純計算で、保有している企業の株価が3倍になれば、自分の資産も3倍になります。
反対に、価格変動リスクが大きい点がデメリットです。価格変動が大きいと、値動きに一喜一憂して感情的な投資判断になりやすいので注意が必要です。もちろん、投資信託も個別株も金融商品なので、元本割れのリスクはどちらにもあります。
ーーー新NISAの成長投資枠では投資信託に加え個別株が購入できます。上岡さんは新NISAを利用した個別株への投資について、どのように考えていますか?
上岡さん
新NISA制度を使った投資としては、私は投資信託と個別株を組み合わせた「コアサテライト戦略」をおすすめしています。具体的には、投資資金の半分を「コア」となる投資信託にまわして、もう半分を「サテライト」として成長が期待できる個別株に投資する方法です。
個別株の運用がうまくいけば、平均値以上のリターンが期待できます。もしうまくいかなかったとしてもコアは守られているので、投資信託の運用から平均的なリターンが期待できます。個別株の良さを享受しつつ安定感が増すので、初心者の方にはおすすめです。
新NISAの「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の違いを知りたい方はこちら
まずは身近な企業から!初心者向け個別株選びの心得
ーーーコアサテライト戦略のお話、とても参考になりました。ここからは、個別株を始めたい!と考えたときに、投資初心者を悩ませる「銘柄選び」についてお伺いします。
上岡さん
これから銘柄を選ぶ方は、応援したい身近な企業から調べるのがいいと思います。たとえば利用している銀行や、最寄りのスーパーを運営する企業、日頃使っている製品や日用品を製造・販売している企業など、興味を持てそうなところから。まずはスマホで調べてみるのが第一歩ですし、「四季報*」を手に入れて調べてみるのもいいですね。
上岡さん
初めは、株価が上下したときになぜそうなったのかを自分で分析できる企業に投資することが大切です。調べる企業が決まったら、証券会社のホームページやアプリで、株価のチャートをチェックします。初心者の方は、チャートや企業の売上を見ながら企業を分析してみるとよいと思います。
ーーーチャートについては遠くから眺めたことはあるけれど、どう見ればいいかわからないと悩んでいる方は多そうですね。
上岡さん
では、分析に必要な最低限の情報をまとめて解説しますね。
上岡さんによる「チャートの見方」と「値動きの予測方法」はこちら
上岡さんによる「初心者におすすめの個別株の選び方」はこちら
味の素社IR担当者はこう考える!企業はココを見てほしい!
ーーーさて、ここからは味の素社IR担当の朴さんにもお話を伺います。IR(インベスター・リレーションズ)とはどんなお仕事なのでしょうか?
朴さん
上岡さんから「個別株投資を始める際には身近な企業が取り組む事業を調べてみるとよい」とお話をいただきました。投資家の皆さまに味の素グループの事業や戦略、魅力を発信するのが、我々「IR担当者」の役割の一つです。
上岡さん
あらためて、味の素グループの企業概要について教えてください。
朴さん
味の素グループはアミノ酸をベースに事業を展開しています。100年以上続けているアミノ酸の研究を、食品はもちろん食品以外にも応用して製品・サービスを提供しているのが特徴です。
たとえば、アミノ酸のはたらきを応用し、独自技術を活かした医薬品の製造開発受託(CDMO)や、アミノ酸の製造過程で生じる副産物から開発した、半導体に使われる絶縁フィルムなども提供しています。
アミノ酸をベースにした事業展開
上岡さん
え?味の素グループって半導体関連の事業にも取り組んでいるんですか?
朴さん
そうなんです。味の素ビルドアップフィルム®(ABF)といいまして、全世界のパソコンやサーバーなどで使用される半導体向け絶縁材として、95%以上のシェアがあります。 ABFの開発は、アミノ酸の製造工程で生じた副産物がきっかけになっているんです。ABFの登場によって半導体パッケージ基板における細かな加工が可能となり、高性能なCPUやGPUの開発に欠かせない存在になりました。
上岡さん
それは知りませんでした。半導体銘柄として味の素社の名前を目にすることはなかったように思います。日本の企業が半導体やAIで世界に誇れるシェアをもっているのはすごくいいと思います。
朴さん
食品事業を持続的に成長させながら、このような事業を含むバイオ&ファインケミカル事業をさらに伸ばし、2030年には、食品事業とバイオ&ファインケミカル事業の事業利益を1:1にするという目標を掲げています。
2030年に向けた味の素グループの成長
上岡さん
今後ますます注目を集めそうですね。味の素社の株価はどのように推移しているんですか?
朴さん
2024年(令和6年)の12月に上場来高値を更新しました。2030年までに「2022年度と比較してEPS*3倍」と目標を掲げ、達成に向けて取り組んでいます。
過去5年間の事業利益と株価推移
上岡さん
事業利益の成長に合わせて株価も着実に上がっているように見えますね。業績が成長している理由には、どんな背景があるんですか?
朴さん
海外食品事業や、電子材料事業、CDMO事業などが成長ドライバーとして業績をけん引しています。
朴さん
味の素社では「ASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)」という考え方を重視しています。ASVとは、事業を通じて社会課題を解決しながら、経済価値も創造する取り組みのこと。従業員一人ひとりが常にASVを意識、実践しています。
また2023年(令和5年)には、日本企業の多くで発表している中期経営計画を廃止し、2030年の味の素グループのありたい姿を定め、その実現に向けて経営する方針にかじを切りました。
上岡さん
時代にマッチしている考え方ですね。長期的なスパンでビジョンに向かって軌道修正できる柔軟性を感じます。
朴さん
ありがとうございます。はたらく人の数が増えるほど、組織は硬直しやすくなると思いますが、味の素社では部署を超えたローテーションや手挙げ制の新規事業プロジェクトなど、従業員が主体的に挑戦できる環境を整備しています。結果、日々会社の様々なところでイノベーションが起きていると実感しています。
事業に関する説明会からナイジェリアの現地リポートまで!味の素グループの発信は世界をめぐる
朴さん
個人投資家の方に味の素グループをもっと知って、ファンになっていただきたいと思い、さまざまなイベントを企画しています。
たとえば、2024年(令和6年)12月に実施した個人投資家の皆さま向けの説明会では、半導体事業に関わる研究員や、海外法人で活躍している現地従業員が登壇しました。当事者ならではの具体的なエピソードをお話ししたことや、リアルタイムで受け付けたご質問にお答えしたことについて、視聴者の皆さまからうれしいご感想を頂きました。
楽天証券株式会社 オンライン個人投資家説明会(2024年12月17日(火)配信)
そのほかにも個人投資家様向けのイベントはこちらからご覧いただけます。
上岡さん
個人投資家向けのイベントに研究員が登壇するのはあまり聞いたことがありません。当事者のリアルな声が聞けるのは興味深いですよね。
朴さん
また「IRトピックス」と称して、さまざまな取り組みを毎月動画で発信しています。味の素グループが実際にどのような活動をしているのか、投資家の方々に伝えきれていないと考えたのが発信のきっかけです。
各地域での営業の様子や、工場の生産現場、マーケティングの進化などに関する映像を現地で撮って作成しているので、文章だけよりも伝わりやすく、幅広い年代の方にご視聴いただいています。IRトピックスは味の素社公式ホームページの「IRニュース一覧」からご覧いただけます。
上岡さん
すばらしい取り組みですね。では、株主優待はどのような制度が設けられているんですか?
朴さん
毎年3月31日を基準日として、100株以上を半年以上継続保有されている株主様を対象に、味の素グループ製品詰め合わせをお送りしています。投資家の皆さまの期待に応えられるように、中身は毎年変えています。
1,500円相当の優待品の一例
朴さん
また、株主様限定のイベントを充実させています。たとえば2024年度(令和6年度)には、神奈川県川崎市にある当社施設、「クライアント・イノベーション・センター」や東京都調布市の「味の素スタジアム」の見学ツアーを実施しています。普段は入れない施設を見学できるとあって、大変多くの株主様からご応募をいただきました。
ーーー上岡さん、味の素社の取り組みを紹介してきましたが、いかがでしたか?
上岡さん
すごくおもしろいなと感じました。とくに半導体向け材料事業の話は私も知らなかったので勉強になりました。食品と半導体は性質がまったく異なる事業なので、味の素社の食品事業のブランドイメージを生かしつつ発信ができれば、企業としての認知がさらに拡大するのではないでしょうか。
朴さん
ありがとうございます。味の素グループでは「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」をパーパスに掲げています。食の課題だけではなく、皆さんの幸せな生活に寄り添えるような企業でありたい。そして株主の皆さまのWell-beingにも貢献したい。味の素グループが大切にしている考え方を一貫して投資家の方々に伝えられるように、今後も頑張っていきたいと思います。
図解でわかる、投資信託の仕組み
上岡さん
個別株に投資する株式投資は自分で投資判断するのに対し、投資信託は証券会社を通じて専門家に運用を任せます。
投資信託とは、投資家から集めた資金を専門家が運用し、その利益を投資額に応じて分配する商品を指します。
株式投資と投資信託の運用方法
投資信託のしくみ
新NISAの「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の違いとは?
上岡さん
新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」と呼ばれる2つの投資枠が設けられています。2023年(令和5年)までの旧NISAとは異なり、新NISAではつみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能です。成長投資枠では投資信託に加えて上場株式が投資対象となります。
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上岡正明さんが解説!初心者でもわかるチャートの見方
上岡さん
チャートは「ローソク足」「出来高の棒グラフ」「移動平均線」の3つの要素で構成されています。
<チャートの構成要素>
ローソク足
ローソク足(ローソクあし)は、株式相場の値動きを一目で理解できるようにつくられたサインです。始値、終値、高値、安値の4つの要素で構成されており、株価チャートではローソク足が時系列に沿って並んでいます。ひとつのローソク足が表すのは、1日、1週間、1か月など、チャートごとに決められた「特定の期間」です。
ローソク足が「陽線」のときは、その期間で株価が値上がりしたことを指します。一方、「陰線」のときは、その期間で株価が値下がりしています。
出来高の棒グラフ
出来高とは、証券取引所で売買が成立した株式の取引高を指します。出来高の棒グラフは、市場の勢いや人気度を測る指標として用いられます。たとえば、売る側と買う側の双方に希望者が増え、売買が活発になると取引高が増加し、棒グラフが大きくなります。
移動平均線
移動平均線とは、特定の期間で株価の終値の平均値を計算した折れ線グラフを指します。
移動平均線は株価の傾向や流れの方向性を探る手がかりとして用いられます。1か月の値動きを1本のローソクで表す「月足チャート」でよく利用されるのは、6か月移動平均線や12か月移動平均線、36か月移動平均線です。ほかにも、1日の値動きを1本のローソクで表す「日足チャート」では5日移動平均線や25日移動平均線、1週間の値動きを1本のローソクで表す「週足チャート」では13週移動平均線や26週移動平均線がよく利用されます。
応援したくなる身近な企業を育てるつもりで長期運用
上岡さん
私が企業分析で重要だと考えているのは「平行線」です。
平行線とは、値動きの傾向をつかむためにチャートに引く「トレンドライン」を組み合わせた線です。チャートで自動的に表示されている移動平均線とは異なり、自身でチャートに書き込みます。
平行線の引き方
①証券会社のホームページで、気になる銘柄のチャートを開き、チャート内のツールで、株価が上昇を始めた際の安値と、右肩上がりの値動きの一時的な安値を直線で結ぶ
②ローソクの高値にあわせて、平行線を引く
一見不規則にみえる値動きでも、2本の平行線を引くことで範囲内を行ったり来たりしながら株価が推移していることがわかります。平行線は、今後の値動きを予測する際の手がかりになります。
上岡さん
初心者の方は、「平行線」と「売上高」を見ながら企業を分析してみることもよいと思います。たとえば上昇トレンドにおいては、安値の平行線に近い価格で購入すると利益を出しやすいといえます。週足、月足での平行線や過去の高値・安値を参考に、自分がどのタイミングで購入するかを検討します。
また、売上高をしっかり見たほうがいいと思います。もし売上高が伸び悩んでいるとしたら、他社にシェアを奪われていたり、時代の変化についていけていなかったりと、いくつかの原因が考えられます。
ーーー売上高が増加するのは、人や社会に必要とされている証拠と考えられますよね。また、短期と長期ではどちらがおすすめでしょうか。
上岡さん
短期トレードはプロや機関投資家が成果を争っている激戦区です。投資初心者が短期トレードに参入しても勝ち目は薄いでしょう。まずは応援したくなる身近な企業を探し、企業と二人三脚で株を育てるつもりで長期的に運用する。これが投資初心者の勝ちやすい戦略だと考えています。
上岡正明
株式会社フロンティアコンサルティング 代表取締役社長
経済記者・経済コメンテーター(テレビ・ラジオ出演多数)。SNS総フォロワー約40万人。のべ26冊・累計105万部のベストセラー作家(海外翻訳12冊)。未上場から上場企業まで広報PRを手掛けたクライアントは300社以上。 MBA(情報工学博士前期課程)修了。
神経脳科学の学会で論文等を発表する傍ら、成蹊大学、帝塚山大学、多摩大学で広報論などの客員講師を歴任。東京都中小企業振興公社やドバイ政府、韓国大使館などでも講演・監修・広報専門家としてのアドバイザーなどを務めている。
朴 佑奈
味の素株式会社 コーポレート本部 IR室
2018年入社。財務・経理部門にて、原価計算・単体決算業務やSAP会計基盤システム導入を経験。2021年よりIR室にて投資家対話、IRイベントの企画・運営、開示資料作成、社内IR等を担当。休日はピラティスや旅行でリフレッシュ。日々プレッシャーも大きいですが、資本市場の皆さまに当社の成長ストーリーを分かりやすく伝え、共感・応援いただけた時にやりがいを感じます。社内外で関わる全ての方々に「一緒に働けてよかった」と思っていただけるように、常に明るく楽しみながら挑戦し続けたいです。
<用語解説>
EPS
EPS(Earnings Per Share)とは、企業の1株当たりの純利益を示す指標です。「当期利益」を「発行済み株式数」で割って算出されたもので、一株に対して最終的な当期利益(当期純利益)がいくらあるかを表します。
四季報
四季報とは、東洋経済新報社より年に4回発行される"会社辞典"。正式名称は「会社四季報」。上場企業の業績、財務内容、株価の動きなどのデータが網羅され、株式投資のみならずマーケティングや就職活動にも活用されています。
2025年3月の情報をもとに掲載しています。
※以下は、味の素株式会社(当社)が、当社のWEBマガジン「ストーリー」の記事とすることを目的として、上岡正明氏に依頼、同氏と契約のうえ、同氏と当社IR室メンバーが対談を行ったものです。この対談は、味の素株式会社の株式やその他投資・金融商品の勧誘を目的としたものではありません。また、上岡氏の発言はすべて上岡氏の個人的な見解に基づくものであり、事前に当社が依頼・指示した内容ではなく、更に、当社の公式発表や見解を表すものではありません。