活動レポート

オリーブオイルやキャノーラ油が紙パックに!J-オイルミルズの「スマートグリーンパック®」とは?

味の素グループは、持続可能な循環型社会を実現するため、プラスチック廃棄物ゼロ化に積極的に取り組んでいます。2022年(令和4年)には、味の素社を象徴する「味の素®」と「うま味だし・ハイミー®」が紙パッケージ化されました。
そして、グループ会社である株式会社J-オイルミルズは、2022年(令和4年)8月、食用油で展開している環境配慮商品「スマートグリーンパック®」シリーズに、JOYL「AJINOMOTO 焙煎ごま香味油」(300g)を追加しました。

すでに発売されているJOYL「AJINOMOTOさらさら®キャノーラ油」(700g)、JOYL「AJINOMOTO大豆の油」(700g)、JOYL「AJINOMOTOこめ油」(700g)、JOYL「AJINOMOTOオリーブオイル エクストラバージン」(500g/300g)、JOYL「AJINOMOTOごま油好きの純正ごま油」(500g)を合わせると、紙パッケージを採用した食用油は全5油種7品のラインナップに。

これまで、食用油といえばプラスチックや瓶の容器が一般的でした。紙の容器に油を注いでも問題はないのでしょうか?そもそも素材に「紙」を選んだ理由とは?「スマートグリーンパック®」誕生の経緯や開発秘話、今後の展望などを商品開発部門の宮﨑朋江さんと、容器開発部門の日高和弘さんに聞きました。

各部門が結束して、次世代のパッケージを模索

味の素グループに属するJ-オイルミルズは、2002年(平成14年)設立の食用油メーカー。100余年の歴史をもつ「ホーネンコーポレーション」、「味の素製油」、「吉原製油」が合併して生まれた、製油業界のリーディングカンパニーです。

J-オイルミルズの紙パッケージの食用油シリーズの画像

J-オイルミルズでは、「スマートグリーンパック®」が発売される20年以上前から環境に配慮したパッケージの開発に取り組んできました。その代表例が「AJINOMOTOさらさら®キャノーラ油」にも使用されている「1000gエコボトル」です。軽量化を繰り返して資源を約26%削減しています。

2000年代半ばには、「スマートグリーンパック®」のコンセプトにも通ずる紙パッケージの「1000gエコパックス」や、プラスチック容器よりもゴミの量が少ないパウチタイプの商品も登場。しかし、定着するには至りませんでした。生産戦略部 包装技術グループの日高和弘さんは、当時をこう振り返ります。

株式会社J-オイルミルズ 生産戦略部包装技術グループ 日高和弘氏の写真

生産戦略部 包装技術グループ 日高和弘氏

日高:エコパックス自体は、お客さまからも好評でした。しかしながら、製造機器の老朽化を理由に製造中止になってからは、長く日の目を見ることはありませんでした。

風向きが変わったのは2019年(令和元年)頃から。各部門の従業員で結成されたパッケージ委員会の定例会で、次のような意見が挙がります。

「全社を挙げて、環境問題に向きあうべきではないか」

同年に開催されたG20大阪サミットでも海洋プラスチックごみ対策が大きく取り上げられ、国内のメーカーにも解決のためのアクションが求められていたのです。

委員会は「パッケージ」という切り口から、課題解決の糸口を模索。しかし、既存パッケージをリニューアルするくらいでは大きな効果は望めません。資材削減に成功したエコボトルもこれ以上の軽量化は困難でした。そこで、委員会はかつて開発した紙パッケージに着目。コンセプトを根本から見直す方向に大きく舵を切ったのです。

従来の商品開発であれば、開発部門と設計部門が中心になって進められますが、今回は生産戦略部の設備チームや製造現場を担う工務チームなども参加。プロジェクトマネージャーは、油脂事業統括部 家庭用事業部の宮﨑朋江さんが務めました。

株式会社J-オイルミルズ 油脂事業統括部家庭用事業部 宮﨑朋江氏の写真

油脂事業統括部 家庭用事業部 宮﨑朋江氏

宮﨑:紙パッケージは、ペットボトル容器とは製造工程が大きく異なります。カートンを広げたり、注ぎ口を貼り合わせたりするための製造ラインを一から用意する必要がありました。とはいえ、出来るだけ早く発売したいというジレンマもあり、各部門の担当者と慎重に協議を重ねました。

プロジェクトの立ち上げから2年が経過した2021年(令和3年)、開発チームはとうとう「スマートグリーンパック®」シリーズの販売にこぎつけます。宮﨑さんいわく「異例の開発スピード」なのだとか。その第一弾はキャノーラ油とごま油の定番商品で固めました。

紙パッケージ化で、プラスチック使用量を約6割削減

スマートグリーンパックのロゴ

今回、「スマートグリーンパック®」に採用された紙パッケージは、従来のペットボトル容器と比較してプラスチック使用量を約60%以上削減することに成功。さらに、製造から廃棄に至るまでに排出される二酸化炭素も、同じく従来のペットボトル容器と比較して26%以上抑えることができます。

一見、何の変哲もない紙パッケージに見えますが、じつはおいしさを保つための秘密が隠されています。パッケージ内部は紙やポリエステル、ポリエチレンを重ねた5層構造になっており、品質劣化の原因になる酸素と光をしっかりとガード。賞味期限も大幅に伸びて、キャノーラ油やごま油、こめ油であればペットボトル容器と比較して倍の2年近く香りや風味が楽しめるのです。

こうした高い酸素バリア性・遮光性は、紙パック酒の技術を応用したもの。「もちろん油が染み出ることもありません」と日高さんも太鼓判を押します。

試験だけでも5,000回以上!使いやすくて便利な「ダブル構造キャップ」

「環境負荷が少なくても使い勝手が悪くては定着しない」。宮﨑さんがそう話すように、今回の紙パッケージには便利な機能が随所にちりばめられています。

たとえば、用途に合わせて注ぐ量を調整できるダブル構造のキャップ。少し油を注ぎたいときはキャップのノズルから、鍋に油をなみなみと注ぎたいときはキャップを外して、と便利に使い分けられます。宮﨑さんにとってはもっとも妥協できなかった機能だそうで、発売スケジュールに影響が出るほど設計を吟味したそうです。

AJINOMOTOごま油好きの純正ごま油の写真

宮崎:キャップのノズルに返しをつけたり、口径を広げたり。25種類の試作を用意して理想のキャップを追求しました。キャップの開閉や油の注入など、試験だけでも5,000回を越えています。

さらに、パッケージの側面にあるオレンジ色の部分にも注目!ちょうど持ちやすい位置に滑り止めのエンボス加工が施されています。その名も「持つ位置ガイド」。こちらの機能もテストを繰り返すなかで、付け加えられたものです。

純正ごま油のペットボトル容器側面の写真

宮崎:形を自在に変えられるペットボトル容器であれば、持ち手を付けることもできますが、紙パッケージは直方体と決まっています。しかし、開発チーム内で持ちにくさを指摘する声も少なくありませんでした。そこで考えついたのが「持つ位置ガイド」です。これなら手から滑り落ちづらいので火のそばでも安心して使えます。

使い終わったらキャップを外してごみ箱へ*。小さく畳めるのでゴミもかさばりません。また、開封日を書きこめる「開封日メモ」欄もお客さまから好評なのだとか。

*自治体の分別ルールに従ってください

「スマートグリーンパック®」シリーズが「プラスチック廃棄量ゼロ」の決め手に

2022年(令和4年)3月、「スマートグリーンパック®」シリーズ第二弾にあたる「オリーブオイル エクストラバージン」「こめ油」「大豆の油」が販売開始となり、ラインナップがさらに充実。その一か月後に施行された「プラスチック資源循環促進法」も追い風になりました。

宮﨑:調査したところ、環境問題やSDGsなどを潜在的に意識しているお客さまが増えている印象です。そのような意識の変化に加えて、紙パッケージならではの利便性も購買の後押しになっているようです。

今秋、「スマートグリーンパック®」シリーズはラインナップをさらに拡充。テレビCMや動画配信サイト、SNSなどを積極的に活用して、魅力を伝えていきます。

宮﨑:紙パッケージの発売は、社会貢献活動だけが目的ではなく、J-オイルミルズの将来にも大きく関わっています。環境破壊で引き起こされた異常気象で作物の品質が劣化してしまうと、それを原料とする商品にも影響が及ぶわけです。今後、私たちは環境問題とどのように向き合っていくべきなのか。食用油メーカーとしてのあり方を突き詰めていきたいです。

味の素グループは、2030年度(令和12年度)までにプラスチック廃棄量をゼロにすることを目指しています。グループの一員であるJ-オイルミルズでは、「スマートグリーンパック®」シリーズが壮大な目標を叶える決め手になるかもしれないと、期待が高まっています。

株式会社J-オイルミルズ油脂事業統括部家庭用事業部宮﨑朋江氏の写真

宮﨑 朋江

油脂事業統括部 家庭用事業部
2017年入社。
入社以来、油脂事業統括部 家庭用事業部にて製品開発に従事。
印象に残っている仕事は、入社後間もなく担当した、当社のごま油に、味の素社「丸鶏がらスープ」をサンプルとしてつけたこと。「やみつきのおいしさ」の組み合わせで大好評でした。
開発者であると同時に消費者でもある感覚を大事にしています。
生まれも育ちも東京都葛飾区。今も葛飾区で仕事と子育てに奮闘中です。

株式会社J-オイルミルズ生産戦略部包装技術グループ日高和弘氏の写真

日髙 和弘

生産戦略部 包装技術グループ
2000年味の素製油入社(キャリア)。
現在に至るまで一貫して包装包材の設計開発に従事。(2013年から2019年、資材購買を担当)
いちばん印象に残っている仕事は、ギフト用蒸着ボトルの開発。それまでの丸缶からボトルへの大きな転換でした。
心がけていることは「コストを上げずに付加価値を上げる開発」。パッケージ視点から商品価値を上げる開発をしたいと思っています。
鹿児島県種子島出身。

2022年9月の情報をもとに掲載しています。

味の素グループは、アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献します

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