農業の人手不足で起こるフードロス
大分県中津市は、臨海部に工場を抱える工業都市です。一方で、農業従事者の高齢化や後継者不足により、耕作放棄地や放置された竹林が荒廃するという課題を抱えています。
その課題を解決すべく、中津耶馬渓観光協会が、2021年(令和3年)6月、共創施設 SHIBUYA QWS (渋谷キューズ)にて未収穫作物活用方法をテーマにワークショップを開催しました。
QWS コーポレートメンバー(法人会員)としてワークショップに参加していた、味の素社のマーケティングデザインセンター Z世代事業創造グループ(旧:Z世代創造事業部)は、新たな企画を中津市に提案。農業の後継者不足により十分に収穫できない農作物を有効活用するために、今回の実証実験がスタートしたのです。
竹林を救う!タケノコの収穫とフードロス削減
2022年(令和4年)4月下旬〜5月初旬、立命館アジア太平洋大学の学生らが、この実証実験に参加しました。地元企業・WELCOMEやまくに合同会社の指導を受け、中津市の竹林で100本を超えるタケノコを収穫し、工場でタケノコを水煮に加工するという体験です。
その年の6月には、大分県内にてスーパーマーケットを運営するトキハインダストリー社にて、Z世代が加工した「タケノコの水煮」を味の素社の「Cook Do®」青椒肉絲用と合わせて店頭販売することになりました。
さらに翌年の2023年(令和5年)には、県内外の4つの大学の学生団体から計25人が参加。中津市山国町の竹林でタケノコの収穫を行い、加工されたタケノコの水煮は大分県内のスーパーや東京の百貨店で販売されました。
伊勢丹新宿店本館の地下一階フレッシュマーケットでは、タケノコの水煮の特別販売や試食などを行いました。
また、レストランフロアでは、取り組みに賛同したレストラン(全3店舗)にて、タケノコの特別メニューを提供。食を楽しみながら、地域の課題やフードロスについても知ってもらえるイベントとなりました。
地域の課題に向き合う実証実験「MIRAINOMOTO®」プロジェクト
この取り組みは中津市にとって、未収穫作物のタケノコを利活用して消費者に届けるだけでなく、収穫や加工を楽しむ「体験型観光」として売り出し、地域活性化にも役立ちます。中津市の農政振興課は、「地域課題の解決に加え、関係人口づくりにもつなげられれば」と期待を語ります。
農業の後継者不足問題への新しいアプローチの1つともなり得る、まさに、参加者が連携し知恵と力を出し合った、循環型経済の実現を図る実証実験と言えるでしょう。
これらは「MIRAINOMOTO®」プロジェクトと名付けられ、収穫や加工を通じて農業や地域の実態に触れ、楽しみながらSDGsに貢献できる活動に取り組み、フードロスの削減や食を中心とした豊かな時間の創出に貢献することを目指しています。
Z世代が社会課題への貢献を実感できる取り組み
最後に、「MIRAINOMOTO®」メンバー であり立命館アジア太平洋大学の若林 快卓さんのコメントをご紹介しましょう。
若林さん:実際に現場に足を運び、タケノコを収穫するという貴重な体験から、課題解決への貢献を体で感じることができました。目の前の問題を自分ごととして捉えて、実際に行動して解決に繋がる活動をできたという実感が湧きました。
若林さん:まずは、私たちが収穫したやまくにタケノコをみなさんにおいしく食べてもらえたら嬉しいと思っています。そして、未収穫農作物という問題、竹害の問題について知ってもらい、問題解決に繋げられたらと考えています。一人ひとりが少しずつ意識を高めていくことで、大きな変化が起こると信じています!
味の素社は、これからも持続可能な地域づくりやフードロスの削減など、全国で行われるさまざまな取り組みを積極的に応援します。
そして、Z世代である学生たちが、農業や地域の実態に触れることで興味を持つきっかけとなり、さらにはSDGs(持続可能な開発目標)に役立つ行動につなげられるよう、継続的に支援していきます。
2023年8月の情報をもとに掲載しています。