なぜ、人気なのか?満足度が高い理由は?この「クノール®」スープコースの企画開発を担当した鈴木さんへのインタビューを通じて、その魅力に迫ってみたいと思います。
2021年から「クノール®」の工場見学コースを新設
神奈川県川崎市にある味の素株式会社川崎工場は、1914年(大正3年)から操業、味の素グループで一番古く、歴史のある工場です。面積は約370,000m²、東京ドーム約8個分に相当する広大な敷地を有し、「味の素®」や「ほんだし®」「Cook Do®」といった主力製品の製造工場から物流センターまでを備えた「味の素グループの心臓部」ともいえる重要な拠点です。
そんな川崎工場では、一般の方を対象にした工場見学を行っています。製品の製造・出荷の工程を学ぶだけでなく、さまざまな体験ができる工場見学コースを実施しており、かつお節削り体験ができる「ほんだし®」コース、「味の素®」Umamiなるほど講座イベントコース、「味の素®親子おしごと体験」イベントコースなど幅広い年齢層に人気となっています。
- 子どもも大人も夢中になる、味の素株式会社の「工場見学」に行ってみた
そして、2021年10月、川崎工場に新しく「クノール®」スープ工場が完成。それに伴って工場見学に、新たに「クノール®」スープコースが加わりました。
なぜ?工場見学なのにユニークな演出のアトラクション
「クノール®」スープコースは、インタラクティブなゲーム、バーチャルな空間演出などを随所に盛り込んだ「体験型の工場見学」です。2021年10月のオープン当初から連日多くの方に参加いただいており、数か月先の予約まで埋まっているというほどの大人気ぶり。
この見学コースを企画した「クノール® カップスープ」のプロジェクトマネージャー、鈴木博之氏(味の素株式会社 栄養・加工食品事業部)のお話も交えながら「クノール®」スープコースの人気の秘密に迫ってみましょう。
鈴木:この工場見学コースは、より多くの生活者の方に、当社製品の製法や原料へのこだわりなどのおいしさの秘密を、楽しみながら知っていただき、今以上に味の素製品を好きになってもらいたいと願い、企画設計をしています。
「クノール®」スープコースは、ちいさなお子さま(対象年齢2才以上)から大人まで幅広い年齢層の方に楽しんでいただける内容となっていますが、メインのターゲットは小学5年生くらいのお子さんを想定しているそうです。まずは、そのコンセプトについて伺ってみました。
鈴木:「クノール®」スープコースのコンセプトは「小学5年生が五感で楽しめるような工場見学ツール」です。小学生の子どもたちにとって、スープとは家庭の食卓で出されるものであり、自分から積極的に選ぶものではありません。この見学コースに参加いただいて、子ども目線で「自分が体験したことや学んだスープの魅力」を、家に帰って家族と対話するということ。そして、その子たちが大人になったときに、自分の家庭で家族にスープを振る舞って欲しいと思っています。さらには、その子たちの成長のライフステージにあわせた形で私たちの製品が寄り添い貢献したいと考え日々製品開発を行っています。
鈴木:メインターゲットである小学5年生にとって、この工場見学を通じて現在だけでなく、未来に渡って食卓でスープを楽しんでもらえる重要なきっかけになればと思い、ただの一方通行な情報提供ではなく、五感で楽しめるようなこと、実際に自分で体験して、体感して、感じたものを持ち帰ってもらおう。その体験を咀嚼(そしゃく)してもらって、記憶に残してもらう工夫が必要だと思いました。
「クノール®」ブランドが提供できる「価値」とは?
「小学5年生が五感で楽しめるような工場見学ツール」というコンセプトを実現するためには、工場の製造ラインの見学だけでなく、「体験型」「体感型」のアトラクションが必要だということでした。
また、工場の製造部分だけを見せて説明をするだけでは「クノール®」ブランドが提供できる価値が伝えられないという課題がありました。その「クノール®」ブランドが提供できる価値とは何なのか?鈴木さんは力強く語ります。
鈴木:私たちが、「クノール®」ブランドとして提供できる価値は、ほかでもない「おいしさ」だと思うんですよね。
鈴木さんは、この「おいしさ」について、絶対的な自信と、その理由があるといいます。
鈴木:その「おいしさ」の裏付けには、原料のこだわり、製法のこだわり、実際に生活者のみなさまの手に届くまでのこだわり、安心安全のこだわり、これらがすべて「おいしさ」につながっていると考えています。工場での工程は、そのほんの一部ですから、製造ラインを見せるだけでは伝えきれません。たとえば、コーンを育てる、収穫するところから「おいしさ」への追求が始まっていることを体感していただきたいと思います。
見学コースは「うま味体験館」から、「アジパンダ®」バスに乗り込むところから始まります。
見学者は「アジパンダ®」バスに乗り込み、正門から工場の敷地内をぐるっと回って、「クノール®」工場にたどりつきます。110年も前から稼働している川崎工場の景色をゆったりと味わうのも、このアトラクションのプロローグとして大事な演出だといいます。
鈴木:川崎工場は、1つのブランドの工場だけを見るのにはもったいないぐらい広い工場です。バスの移動中に工場の中をご覧いただいて、「クノール®」スープ工場はいろんな製品を作っている工場の中の1つであるということを知っていただく良い機会だと思っています。
工場内を回って、「クノール®」スープ工場に到着して、まず、ちょっとびっくりするのが、コーンの収穫体験を、ゲームのように身体を動かしながらチャレンジする「コーンレンジャーなりきり体験」です。
鈴木:最初の「コーンレンジャーなりきり体験」は、ただの工場見学と思っている人に驚きを与えているでしょうね。「あれ?ちょっと想像と違うぞ」って。さらに、実際に、自分がコーンを収穫してつくっているような没入感を与えていると思います。
デジタルとアナログの融合、演劇的な空間がさらに「学び」を高めていく
見学者は「コーン素材研究員」の一員として、「スイートモロコシ所長」からの指令を受けて、あらゆるミッションに挑んでいきます。そのミッションをサポートするために、見学者に同行し、ナビゲートするのは白衣を着た「モンロー先生」と名乗る謎の女性です。
この「モンロー先生」のキャラクターが、体験型の「クノール®」スープコースの世界観を構築するうえで、非常に重要な役割を果たしています。
鈴木:じつは、この「モンロー先生」は複数人いるんです。正式な人数はちょっとよく分かっていないんですが(笑)わざわざ来ていただいたお客さまにちゃんと思い出を残してもらいたいということで、それぞれの「モンロー先生」自身が工夫して、ナビゲートの面白さとか、世界観など、非常にこだわりを持って進めています。リピートしていただくとまた別の「モンロー先生」に会えるという楽しみ方もありますね。
見学者が、より前のめりになれるような内容や演出は、最初の設計段階から必要だと思っていたそうです。さらに、さまざまな体験、体感を重視したデジタルとアナログの融合にも挑んでいます。
鈴木:とくにデジタル系のゲーム「バーチャルパスタキャッチ」は、プロのパスタ選別員になりきり実際のパスタ選別のスピード感を体験していただきます。ただのゲームではなく、目の前で実際のプロの選別員の様子を見ながら体験することで、安心安全をお届けする意識の高さ・こだわりも記憶に残していただけるのではと思っています。製造ラインが見られる工場見学ならではの工夫ですね。
さらに、ゲームやアトラクション以外にも、実際の工場の作業工程を見せる部分にも工夫を凝らしています。
鈴木:「クノール® スープDELI®」の工程の最後のところで、実際の製造ラインの現場をガラス越しに見られるようになっていますが、じつはあれは全面ガラス張りだったところに壁を貼り、壁の一部を丸く切り抜いているんです。結構悩んだんですけど、あのラインだけ見ていると製造工程の中の1つだということがわかりづらいので、わざわざ壁を貼ったんです。ちょっと見づらいんですが、逆に顔を近づけてのぞいてみたりという行動が生まれています。なんとなく映像として流れているのではなく、近づいて見てみると本物の製造ラインが見えるという体験から、少しでも記憶に残るといいなと思っています。
鈴木:今回建設された「クノール®」スープ工場はDX化が進んでいまして、多くの自動機械が採用されています。タイミングがあえば原料を運ぶロボットも見ることが出来るかもしれません。見学コースも生産工場ラインと同様に、デジタルとアナログ、リアルとバーチャル、体験と体感を重視した、ほかにはない工場見学として楽しんでいただけるのではないでしょうか。
体験によって、いつものスープの味がもっとおいしく!
「おいしさ」の価値を伝えるために開発された「クノール®」スープコースは、味の素株式会社というメーカーが、一般のお客さまと直接コミュニケーションをとれる貴重な機会でもあります。
鈴木:やっぱり「カップスープ」って、箱に入っていて、お湯を注いでつくるインスタントスープという印象が強いですよね。たしかにそのとおりなんですけど、手軽で手に取りやすい価格だからこそ、製品に対する私たちのこだわりが見えづらく、なかなか生活者の方々に「クノール®」スープ製品ならではの価値を伝えきれていないと感じています。
「クノール® カップスープ」は、2023年に発売50周年を迎えます。長年の蓄積も含めて膨大な研究開発、努力と工夫があるにもかかわらず、一般の方にはなかなかそれが伝わっていないという課題を抱えています。しかし、同様に見学者のアンケートから、この見学コースの成果が感じられるといいます。
鈴木:「トウモロコシがこんなに甘いと思わなかった」とか「「クノール® スープDELI®」のパスタの選別ってあんなに難しいの?」など、私たちがみなさんに気づいてほしい、知ってほしいところを体験のなかから感じてもらえる機会になっていると思います。
鈴木:さらに、最後のスープの試食では「いつものスープなのに、いつもよりおいしいと感じた」という意見も多くいただきました。これは体験を通じた「学び」がおいしさにつながっているのだと思います。
さらに多くの人に来ていただいて、体験してもらい、その体験を多くの人に話してもらって、さらに話を聞いた人に来てもらうというような循環を生んでいきたいと鈴木さんは語ります。
工場見学からみえてくる「食と健康の課題解決」とは
鈴木:いま私が、マーケティングを担当する立場にいて、製品開発やさまざまな戦略を構築するうえで大事なことは、マス(大衆)としての意見よりも、一人一人のお客さまの発言や意見、感じていることに耳を傾けるということ。その反応や表情も含めてすごく大事なんですよね。
まだ顕在化していない要望を観察し、表に出てきていないような声を聞く、それを製品の開発やマーケティング戦略に落とし込んでいくことが鈴木さんにとって非常に重要なことだといいます。
鈴木:あと、工場見学を通じて、私たちの原料へのこだわりが本当にお客さまの心に響いていて、さらにそれが製品を購入するときのポイントになっているという声も聞きました。
工場見学でのコミュニケーションを通じて、製品開発やマーケティングに反映することもできる。このフィードバックが強みとなり、自信にもつながっているといいます。
鈴木さんは工場見学を通じて、さらに見えてきたことがあるそうです。
鈴木:この工場見学の目的は、味の素社や「クノール®」製品をもっともっと好きになってもらうということです。企業としては自社のファンづくりとして当然の活動です。しかし、実際に私たちが伝えていることは、すべての食に対する大切なことであり、食に対する普遍的で重要な課題への取り組みなのではないかと思います。
味の素社の製品のファンが増えること、自分たちの製品を選んでもらうということは、食に対する大切なことを伝えるきっかけになっていくのではないかと鈴木さんはいいます。
鈴木:たとえば「クノール® カップスープ」<コーンクリーム>の原料は、もともと人の手で大切に育てられた新鮮なスーパースイートコーンです。こういった物語や、安心・安全を追求していること、私たちの製品づくりの背景やこだわりを伝えていくことで、お客さまがより食に対する価値の尊さを感じていただけるのではないかと思います。ブランドの価値を伝えることで、お客さまの日々の食生活が少し豊かになったり、安心した食生活を送れるという喜びを感じていただけたりすることに貢献できるのではないかと思っています。
製品開発を通じて、人々の食生活が豊かになる。そのために鈴木さんは、一人一人の声に耳を傾け、努力を重ねていきます。
鈴木:私たちの「おいしさ」への追求が、世界を豊かにしていく。それを形として伝えているツールの1つが、この工場見学なのだと思います。
「クノール® カップスープ」という製品を通じて、人々の生活に「おいしさ」という価値を与えること。食と健康の課題解決に向けて、今日も「アジパンダ®」バスは、体験という「学び」へと私たちをいざない、未来への夢を乗せて出発します。
鈴木博之氏
栄養・加工食品事業部
スープグループ
2007年、味の素グループに入社。東京支社にて営業を7年間担当後、2014年より3年間インドネシア味の素販売社へ出向。2018年より「クノール® カップスープ」のブランドに携わる。趣味はサッカー。「今も社内のメンバーと共に、ボールを追いかけています」。
関連リンク
味の素㈱「クノール®」スープ工場見学コース
「クノール®」スープ工場見学体験のコンセプト立案から体験設計、デジタル技術を導入したコンテンツの企画・制作をしたワン・トゥー・テンさんによる工場見学のイメージ動画です。
2022年4月の情報をもとに掲載しています。