研究開発

宇宙でアミノ酸発見!ってこれどういうこと?研究者にきいてみた

宇宙でアミノ酸発見!ってこれどういうこと?研究者にきいてみた
2022年(令和4年)6月6日、マスコミ各社から注目すべきニュースが報道されました。2020年12月に地球に帰還したJAXA(宇宙航空研究開発機構)の探査機「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星「リュウグウ」の砂から、アミノ酸が20種類以上見つかった、というものです。

アミノ酸は、私たちの体の約20%を占めるたんぱく質をつくっています。その「いのちのもと」であるアミノ酸が、地球上だけのものでなく宇宙にも存在していることが証明されました。

味の素社は、うま味成分であるアミノ酸「グルタミン酸」を主成分とした「味の素®」として世界で初めて発売した企業であり、アミノ酸研究のリーディングカンパニーです。この「グルタミン酸」を含むアミノ酸が宇宙で見つかったということについて、このニュースのどこがすごいのか、どういう意味があるのかといったことについて、味の素社の研究員である唐川さんにいくつか質問してみました。

Q:今回の発見は何がすごいのですか?

A:アミノ酸が、地球上だけでなく、宇宙にも存在していることが証明されたことがすごいのです

アミノ酸は、私たちの体に多く含まれており、生命を維持するために必要な成分です。

このアミノ酸が、原始地球上に存在していたことが「生命の起源」の1つと考えられています。アミノ酸は私たちの生命そのものを生み出す、重要な物質なのです。アミノ酸は「いのちのもと」といってよいと思います。

私たちの生命の誕生についても、「地球外起源説」、「原始大気起源説」、「原始海洋起源説」などいくつかの説がありますが、いずれにしても「生命の源はアミノ酸」だといわれています。

これまで「マーチソン隕石」をはじめ、宇宙から飛来した隕石中にアミノ酸が存在することがわかっていました。アミノ酸は宇宙にも存在すると考えられたのですが、しかし、このケースでは、隕石が地球に落下した際に、地球上のアミノ酸が混入したのではないかという疑いも残っていました。

マーチソン隕石とは

1969年、オーストラリアのマーチソンに落下した隕石には微量のグリシン、アラニン、グルタミン酸、ベーターアラニンが確認され、地球以外の宇宙にも生命体が存在した痕跡と考えられています。また、5億年前の三葉虫の化石からはアラニンなどのアミノ酸が検出されるなど、現在でも化石や隕石のアミノ酸から生命起源の謎を解く研究が続けられています。

味の素社「アミノ酸大百科」より)

今回、「はやぶさ2」により小惑星から直接採取された砂を、地球上のアミノ酸が混入しない厳重な条件で運搬し、分析されたサンプルからアミノ酸が発見されました。これによって「小惑星にアミノ酸が存在していること」が初めて証明されたのです。

つまり、地球外にアミノ酸が存在しているということが証明されました。これはすごい発見だったといえます。

Q:地球にあるアミノ酸は宇宙から来たのですか?

A:それはまだ確定ではありません ただし、太陽系の小惑星にアミノ酸が存在することはわかりました

地球にあるアミノ酸は、宇宙から飛来する隕石などにより地球に持ち込まれてきたという説(地球外起源説)と、地球上で独自につくられたという説(原始大気起源説、原始海洋起源説など)があります。

今回、小惑星からアミノ酸が発見されたことで、地球だけでなく、太陽系の小惑星にアミノ酸が存在することがわかりました。

宇宙で合成されたアミノ酸が地球にもちこまれたのか、同じような反応が地球上で起こり、アミノ酸が地球上で合成されたのか、今後のアミノ酸の起源に迫る研究の進展が期待されます。

Q:「いのちのもと」アミノ酸が宇宙にあるということは、宇宙人もいるのですか?

A:アミノ酸は生命の誕生や維持に必須の成分ですが、アミノ酸だけでは生命誕生とはならないため、今回の結果だけで、宇宙人が存在するかどうかはわかりません

生命の誕生には、アミノ酸がつながってできる「たんぱく質」や「DNA」「RNA」などが必要です。人間をはじめ、地球上の生物の起源についても、「たんぱく質」「DNA」「RNA」のうち、どれが先に生まれて進化していったのかについては諸説わかれているそうです。

今後の研究の進展により、宇宙にも「たんぱく質」「DNA」「RNA」が存在するのか、地球と同様に生命体が存在するのか、そして、その生命体がアミノ酸を利用しているのか。こういった謎が解き明かされていくことに期待します。

<用語集>

DNA

DNAとは「デオキシリボ核酸(Deoxyribonucleic acid)」を略したものです。DNAは私たちの体のすべての細胞(人間でいえば細胞の数は1人につき60兆個ともいわれています)に存在しています。DNAは「体の設計図」とも呼ばれており、DNAの情報に基づいて体の細胞や臓器、器官がつくられます。DNAの情報に基づいて子孫に受け継がれる特徴を「遺伝形質」と呼びますが、その遺伝形質を決める因子のことを「遺伝子」といいます。遺伝子の塩基配列の中には、タンパク質のアミノ酸配列の情報が入っています。


RNA

RNAとは「リボ核酸(Ribonucleic acid)」を略したものです。DNAを鋳型として合成され、その遺伝情報の伝達やタンパク質の合成を行っています。DNAとRNAはともにヌクレオチドの重合体である核酸ですが、DNAは、核の中で情報の蓄積・保存をしていますが、 RNAは、その情報の一時的な処理を担い、必要に応じて合成・分解されています。


2022年6月の情報をもとに掲載しています。

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