研究開発

超高齢化社会に挑む!食とアミノ酸で認知機能維持をサポート!

超高齢化社会が加速する中、2025年には日本人の約3人に1人が65歳になると推計されています。寿命が長くなるのは幸せなことですが、それに伴い、私たちの健康課題も変化しています。

たとえば、認知機能。ご自身はもちろん身近な人の認知機能の一部が低下してしまったら…。そんな不安を抱える方も少なくないのではないでしょうか。

味の素社では、長年に渡るアミノ酸研究を通じて、超高齢化社会における健康課題である「脳の健康」に注目し、その研究のなかで、アミノ酸が認知機能の一部の維持をサポートするという知見が見出されました。

今回の記事では、一般の方にとっては意外な組み合わせと思われるかも知れませんが、この「アミノ酸」と「認知機能維持」の関係について、その研究内容をご紹介します。

※この研究は、味の素社アミノサイエンス事業と、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 量子生命・医学部門量子医学研究所および国立研究開発法人国立長寿医療研究センターとの共同研究の内容が含まれています。

認知機能は20~30年かけて低下していく

そもそも、認知機能とは、具体的にどういうものなのでしょうか?

認知機能は、「記憶力」だけでなく、「注意力」や「実行力」など、複数の高度な脳の働きも含まれています。日常生活ではよくある、「物事を同時に行う」という能力も認知機能の一部です。

じつは、認知機能の低下は「脳内で20~30年かけて起きている」ということが報告されています。高齢になってからある日突然起きるのではなく、数十年にわたる脳の変化の蓄積が影響しているといわれています。

認知機能が低下する要因のひとつに、「日常生活の乱れ」が関係していることも明らかになっています。若いときからの日々の食事、運動、睡眠の生活習慣を整えることが重要と考えられています。

食生活から認知機能維持をサポートできる?

60歳以上の方を対象とし、食品摂取の多様性と、認知機能低下のリスクの関連について検討した研究では、食品摂取の多様性が低い(いろいろな食品を食べていない)グループに比べ、高い(いろいろな食品を食べている)グループでは、認知機能低下のリスクが低下することが報告されています。

このことからも、偏った食事ではなく、いろいろな食品を摂取することが認知機能の維持の観点から重要といえます。

食事の栄養素レベルと認知機能の関係について、三大栄養素の1つであるたんぱく質の摂取に関しても、認知機能と関連する研究結果が複数報告され、日々のたんぱく質の摂取は 認知機能の維持の観点からも重要なことが示唆されています。

また、たんぱく質を構成しているアミノ酸に関して認知機能の維持のためには、たんぱく質摂取量によらず、リジン、 フェニルアラニン、スレオニン、アラニンのアミノ酸の摂取が重要ということが国立長寿医療研究センターと味の素社の共同研究でわかりました。

出典:Kinoshita K, et al., J Nutr Health Aging, 2021; 25(2): 165-171.
調整:性、ベースライン時の年齢、BMI、教育年数、既往症(高血圧、脂質異常症、糖尿病、脳血管障害、虚血性心疾患)、 抑うつ状態(CES-D)、MMSE得点、総たんぱく質摂取量

認知機能維持のためのポイント
・食事を含む生活習慣の改善が重要
・食品摂取の多様性、バランスの良い食事が重要
・たんぱく質の摂取は認知機能の維持の観点からも重要と考えられる
・摂取が重要なアミノ酸がある可能性が示唆された

認知機能の維持のためには、たんぱく質や特定のアミノ酸の摂取も意識し、適切な食習慣を継続することが重要であると考えられます。

味の素社独自配合の7種必須アミノ酸「Amino LP7」って?

脳におけるアミノ酸の役割って?

私たちの脳内では、細胞から細胞へさまざまな情報が伝えられています。

細胞から細胞へ情報を伝える物質を神経伝達物質と呼び、その神経伝達物質の「素」となる成分が、必須アミノ酸です。

脳の機能維持や改善のために、必須アミノ酸は、極めて重要な役割を担っているのです。

研究の結果、9種類ある必須アミノ酸の中でも、脳の神経伝達物質の「素」になる重要なアミノ酸として7種必須アミノ酸 〔ロイシン、フェニルアラニン、リジン、イソロイシン、ヒスチジン、バリン、トリプトファン〕の最適配合をつきとめ、味の素社独自配合の7種必須アミノ酸「Amino LP7」の開発に成功しました。

7種必須アミノ酸「Amino LP7」って?

「Amino LP7」の認知機能に対する効果を確認するため、基礎研究で評価を行いました。

たんぱく質が少ない食事の場合、記憶・学習力が低下することが確認されましたが、たんぱく質が少ない食事とともに「Amino LP7」を摂取した場合は、記憶・学習力の低下が見られませんでした。

また、脳萎縮への効果を検討した基礎研究において、神経細胞死により引き起こされる脳の萎縮が「Amino LP7」の摂取により有意に抑制されることがわかりました。これは、脳萎縮の前段階である脳内での炎症の原因に関わる物質の1つであるキヌレニンという物質の流入を抑制し、脳内炎症を抑制する可能性が考えられています。

人を対象とした研究でも、注意機能、認知的柔軟性、精神的健康状態の向上を確認

Amino LP7の効果が、人でも見られるか、臨床試験で評価を行いました。12週間摂取する効果を確認したところ、アミノ酸が含まれていないプラセボ群と比較して、認知機能の一部である注意機能(分配的注意・転換的注意)、認知的柔軟性(外部からの情報などの刺激に対して考え方を柔軟に変える力)が改善すること、また、精神的健康状態(明るく楽しい気分、意欲的・活動的な状態など)が改善する結果が得られました。

食の力とアミノ酸で、これからの健康課題と向き合う

さまざまな研究から明らかになった、アミノ酸の新たな領域。

味の素社は、これまでもアミノ酸の研究を重ね、栄養や健康についてサポートしてきました。今後さらに加速する超高齢化社会に向けて、健康課題の解決にさらに貢献できるよう、今回の7種必須アミノ酸「Amino LP7」の開発をはじめ、独自の「認知機能維持サポートソリューション」に取り組み、人々の豊かで健康的な生活のサポートを目指していきます。

<用語集>

7種必須アミノ酸「Amino LP7」
7種必須アミノ酸「Amino LP7」とは、味の素社独自配合のアミノ酸素材のこと。ロイシン、フェニルアラニン、リジン(塩酸塩として)、イソロイシン、ヒスチジン(塩酸塩として)、バリン、トリプトファン、合計7種類の必須アミノ酸を組み合わせています。

2021年10月の情報をもとに掲載しています。

味の素グループは、アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献します

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