100年以上の歴史を誇る味の素社の企業活動の中で、時代の流れとともに、実は大きく変わり続けてきた味の素社のロゴマーク。過去のものの中には、なんと、有名グラフィックデザイナーのソール・バス氏の作品も含まれています。
今回の記事では、そんな味の素社のロゴマークの歴史を一挙公開!みなさんはいくつご存知ですか?
1908年(明治41年)~ 味の素ブランドの認知度を高めた商標ロゴ
手軽に料理をおいしくできるうま味調味料「味の素®」は、ごはんづくりの心強い味方。キッチンに常備されている方も多いかもしれませんが、「味の素®」が"世界初"のうま味調味料であることはご存知でしょうか。その歴史はとても古く、誕生はなんと1909年(明治42年)までさかのぼります。おなじみの商品が、100年以上も前から販売されていたとは驚きですよね。
この頃の日本がどんな時代だったかというと、日露戦争が終結し、日本が農業中心から工業中心へと変わろうとしていた頃です。「日本人の栄養状態を改善したい」という想いで生み出されたのが、うま味調味料の「味の素®」。味の素社の原点には、「おいしく食べて健康づくり」という志があるのです。
「味の素®」の一般発売に先行して作られたのが、割烹着姿の女性に「味の素」の文字を配した、通称"美人マーク"。
これは1908年(明治41年)に作られた味の素社最初の商標で、パッケージや広告用に使われていました。
このデザインには、料理用の調味料であることを伝える目的と、「家庭に親しまれるように」という願いが込められています。その後、美人マークは、少しずつ形を変えながらも、1973年(昭和48年)まで60年以上にわたって使われ続けました。
女性の髪形や服装が和装から洋装に変わっていく様子から、時代の流れを感じることができます。
「ストーリー」では、こちらの記事でも"美人マーク"について紹介しています。
美人マーク以上に長きにわたって親しまれているのが、1909年(明治42年)から今でも使われ続けている商標の"お椀マーク"。こちらはお吸い物をイメージしたザインで、美人マーク同様「味の素®」が料理用の調味料であることを表しています。お椀マークは、明治から昭和にかけて、商品を宣伝するためのホーロー看板などに広く使用され、軒先に吊るされました。
ほかにも、月に1回のペースで新聞広告を載せ、全国の取扱店にも看板を掲げるなど、積極的な広告宣伝活動を行ったことで、「味の素®」の名称は、大正末期には一般家庭に広く浸透。調味料としての確固たる地位を築いていったのです。商標ロゴである美人マークやお椀マークも、味の素ブランドの認知度の向上に大きく貢献しました。
1970年(昭和45年)~ 高度成長期に求められた企業のシンボルマーク
1970年頃の日本は高度成長期の真っただ中にあり、人々の生活にも大きな変化が表れ始めていました。企業としてのシンボルマークのニーズが高まり始めたのもこの頃。こうした時代の流れを受けて、味の素社では、1970年(昭和45年)企業ロゴを導入することとし、"aマーク"のデザインを採用しました。
新しいロゴが誕生した1970年(昭和45年)には、ロングセラー「味の素KKのほんだし®」、1972年(昭和47年)には「味の素KKの冷凍食品」が誕生。商品の幅がぐんと広がったのもこの時期です。ちなみに、当時の日本国民の憧れていた代表的な商品は3C(カラーテレビ、クーラー、車)。同じく1970年(昭和45年)には、日本万国博覧会(通称大阪万博)が開催されました。
1973年(昭和48年)~ 巨匠ソール・バス氏による新たなaマークデザイン
第一次オイルショックが始まった1973年(昭和48年)には、世界を代表する米国人グラフィックデザイナー、ソール・バス氏による新たな"aマーク"が誕生。創業以来使われていた美人マークに代わり、「味の素®」の瓶や缶に、このaマークが付けられようになりました。
企業イメージの浸透には、代表商品である「味の素®」の広告を企業の顔として活用することが不可欠であり、そのためには新しいデザインのシンボルマークが必要だと考えたからです。
1985年(昭和60年)~ 新たなブランドイメージを浸透させたNACS
「国際科学技術博覧会(科学万博-つくば'85)」が開催された1985年(昭和60年)は、日本中がバブルで沸いていた頃。企業理念やビジョンを明確に表現する"コーポレートアイデンティティ"の動きが盛り上がる中、味の素社もその流れに乗り遅れることなく、初めて横文字のロゴを採用しました。
また、"NACS(ナックス)"と呼ばれる"A"に三角形の赤マークを配した当時のコミュニケーションシンボルを、当時大量に放映していたテレビコマーシャルのエンドカット(最終画面)に音声付きで導入。新聞や雑誌、ポスターなどにも統一的に使用したほか、当時盛んだったギフト商品にもまた、NACSを添えてお届けしました。
こうした甲斐あって、NACSの認知率は、導入した1986年(昭和61年)時点で60%を超え、1988年(昭和63年)には全体で80%、若年層では90% に。また、20代の味の素社に対する好感度も1984年(昭和59年)の26%から1986年(昭和61年) の59%へと短期間で大幅にアップしました。NACSを大々的に広めることで、新たなブランドイメージを一気に浸透させることに成功したのです。
その後、何度か改修されたものの、NACSは長寿ロゴとして幅広い世代に親しまれました。
1999年(平成11年)~ コーポレートスローガンをCMジングルとともに導入
1999年(平成11年)に"あしたのもと"のコーポレートスローガンとともに登場したのが、おしゃれに生まれ変わった新たなロゴ。無限性を示す"インフィニティ"の意味を持たせた"A"のデザインはこの時に生まれ、現在のロゴにもそのアイデンティティが受け継がれています。
さらに、このスローガンをCMジングルにのせて伝えることで、多くの方々の心に企業メッセージをお届けすることに成功。日経調査の「最も知名度の高い企業スローガン」のランキングでは、常に上位にランクインするなど、評判を呼びました。「おいしさ、そして、いのちへ。」にスローガンを刷新した2010年(平成22年)のランキングでも同様のランキングで4位に選ばれるなど、グループの認知度アップに貢献しています。
2009年(平成22年)~ 海外において"ACOS"を導入
海外において、競合のグローバルジャイアントの統一されたブランディング戦略に対し、それまでローカルブランドを中心に展開してきた海外リテール食品事業に、自社のコーポレートブランディングのグローバル戦略(日本を除く)の一環として導入し2017年まで活用されました。
海外では日本語の"AJINOMOTO"を正しく発音できないエリアがあったり、文字に頼るとつづりが長いため覚えにくいなどコミュニケーション上の難点をクリアするとともに、多岐にわたって展開している食品事業の多様性をも表現するため、カラーのリングを付与しました。また、ロゴとしての視認性を高めるねらいもありました。
2017年(平成29年)~ 言語を超えて親しまれるグローバルブランドロゴの誕生
2017年(平成29年)から現在まで、味の素グループ共通のブランドロゴとして導入されているのが「味の素グループグローバルブランドロゴ(Ajinomoto Group Global Brand Logo=以下AGB)。
このロゴは、全世界の味の素グループのASVを軸とした企業活動全般のシンボル、グループの企業価値をグローバルに蓄積していく、ブランディングのシンボルとして開発・導入されました。
新デザインの"A"は無限大∞の意味を、"A"から"j"にかけて流れるラインは、料理や食事、快適な生活を楽しむ人の姿を、‟j"の下から右上に伸びるラインは、味の素グループが未来へ向けて成長、発展するようにという願いを表しています。
1909年(明治42年)の創業以来、積極的に海外展開を進めてきた味の素グループでは、2022年(令和4年)3月時点で126法人(うち、国内:味の素㈱を含む38法人、海外:88法人)が世界36の国・地域(日本を含む)で事業展開を進めています。
"言語を超えて"グループの象徴として認知できるような、親しみやすいデザインのブランドロゴを。
現在のAGBには、このような想いが込められているのです。
2023年3月の情報をもとに掲載しています。
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