最近注目の「フレイル」。 あなたは大丈夫ですか
・握力が弱くなった
・活動量が減った
・歩く速さが遅くなった (横断歩道を渡りきれないなど)
・疲れやすい
・体重が減った
こんな悩みを年齢のせいと思って放置していませんか。その症状、もしかしたら「フレイル(虚弱)」かもしれません。
フレイルを改善するための3つの柱
フレイルになってしまっていることに気づいたけれど、どうしよう。諦める必要はありません。フレイルになった場合、3つの柱に取り組むことで改善できることがわかっています。
・しっかり食べて栄養を摂る
多様な食品をまんべんなく食べる、食べるために噛む力、飲み込む力を維持する、十分なたんぱく質・エネルギーを摂るなど、まず栄養の面から改善しましょう。
・しっかり運動する
適度に歩いたり、ちょっと頑張って筋トレしてみたり。無理せず少しずつ運動していきましょう。
・社会参加し、外出や交流を楽しむ
趣味の活動、ボランティア、町内会など身近なところから社会参加をして、人とのつながりを保ちましょう。
要介護を招く、フレイルの悪循環
きっかけは「食欲がなくなる」など、ささいなことかもしれません。しかし、食べられないことで低栄養状態に陥り、筋肉が減り(サルコペニア)、筋力が衰え(ロコモティブシンドローム)、歩きにくく、動かなくなり、代謝が落ちて食欲が落ちる。この繰り返しで、フレイルの症状はどんどん悪化していき悪循環に陥ってしまいます。
フレイルの要因「低栄養」とは
低栄養状態とは、必要な栄養素が摂れていない状態です。特にたんぱく質とエネルギーが十分 に摂れていないこと。体重がどれくらいの割合で減少しているか、また血清アルブミン値※が一定以下になっているかなどで判断されます。
※ 血清アルブミン値:アルブミンは血液中の主要なたんぱく質で、体の栄養状態を示す大事な指標の1つです。
低栄養状態になると、病気にかかりやすい・骨が弱くなる・ 脱水・免疫力や体力の低下 ・認知機能の低下 ・筋肉量や筋力の低下などが起こります。また、肥満より、やせの方が死亡のリスクが高いという調査結果もみられています。
「食」から始めるフレイル予防
不足しがちな栄養をしっかり摂り、「低栄養対策」することは、フレイル予防にも重要です。
しっかり食べることで、必要なエネルギー・たんぱく質などの栄養素が十分に摂取できれば、筋肉や内臓をつくっているたんぱく質を維持することができます。
そうして丈夫な体になることで、転倒、骨折しにくい体になり、筋肉や皮膚が強くなるほか、風邪などの感染症にかかりにくくなり、病気や怪我からの回復も早くなります。
食を充実させ栄養を十分に摂ることで、元気で意欲的に毎日を過ごすことができるのです。
栄養の基本は、いろいろな食品を食べること
栄養の基本は、いろいろな食品を食べることからはじまります。
脳と体の基本的なエネルギー源となるごはんなどの主食だけではバランスの良い食事とはいえません。
血液や筋肉・強い骨を作るたんぱく質。しっかり動くためのエネルギーになる油脂。体の調子を整えるビタミンとミネラル。
毎日いろいろな食品をまんべんなく食べることで、フレイルの予防につなげることができます。
フレイル・サルコペニア予防のためにたんぱく質をしっかりと
たんぱく質は、血液や筋肉、骨など、体の材料となる大切な栄養素です。
しかし、加齢によって、食事の量が減るとともに、筋肉をつくる力(筋たんぱくの合成力)が低下します。近年、加齢にともなうたんぱく質摂取の必要性が重要視されています。
摂取量は、体重1kg当たり 1日1g以上が 望ましいとされています。
エネルギーも不足しないように体重の減少をチェック
若い頃の健康づくりは、メタボ対策が中心で、エネルギーの摂り過ぎに気をつけていましたが、65歳頃からは反対に、エネルギー不足に注意が必要になってきます。体重の減少は、低栄養を発見するための大事な指標です。やせてきていないか、定期的に体重を測るようにしましょう。
筋肉づくりには、たんぱく質を摂ることが大事です。しかし、エネルギーが不足していると、摂ったたんぱく質は筋肉づくりではなく、エネルギーとして使われてしまいます。たんぱく質とエネルギーの両方を十分に摂りましょう。
体づくりのために 他にも大事な栄養素
たんぱく質やエネルギーだけが必要な栄養素ではありません。カルシウムや鉄、ビタミンなども摂取が必要です。
カルシウムは、丈夫な骨の材料になる、筋肉や神経の働きをサポートするなどの働きがあります。
牛乳・チーズ・干しエビ・水菜・生揚げなどに多く含まれます。
赤血球のヘモグロビンの材料になり、全身に酸素を供給するのに使われるのが鉄です。
鉄は、レバー・あさり・煮干し・ひじき・ほうれん草などに多く含まれます。
ビタミンB群は、代謝を助けてエネルギーをつくり出すなどの働きがあります。レバー・うなぎ・納豆・卵・ナッツ類などに含まれます。
体の維持やエネルギー代謝を高めるために、これらの栄養素を積極的に摂りましょう。
ビタミンDにはカルシウムの吸収を助け骨を丈夫にする、筋肉の合成を促すなどの働きがあります。
また、ビタミンDは、適度に外に出て、体の一部が日光にあたることでもつくられます。
ビタミンDを多く含む食材には、サケ・サンマ・干ししいたけ・卵黄などがあります。
食が細ってきたら、こんなことを心掛けよう
では、食が細ってきたらどんなことを心がければ良いのでしょうか?食が進まない...、一度にたくさん食べられない...、そんなときは食事の摂り方を工夫しましょう。
1. まずは「おかず」から食べる
肉や魚、卵、大豆製品など、たんぱく質がとれる主菜を優先して食べましょう。
2. 食事自体を楽しんで食欲アップ
家族や友人と一緒に食事を楽しむと箸が進むことも。また、旬の食材や、盛り付け方、器などで日々の食事に変化をつけるのもよいでしょう。
3. 数回に分けて食べる
食欲がないときは少しずつ、数回に分けて食べるとよいでしょう。
4. 間食を上手に利用する
間食は食事で不足しがちな栄養を補給できるよい機会。たんぱく質が摂れるものがおすすめです。
乳製品(ヨーグルト・チーズなど)、大豆製品(豆乳類)、卵を使ったもの、たんぱく質が摂れる
栄養補助食品などを活用しましょう。
栄養補助食品の活用もひとつの方法
しっかり食事を摂るのが理想ですが、難しいときも...。そんなときは、たんぱく質、エネルギーがバランスよく豊富に配合された栄養補助食品を、上手にとり入れるのも方法です。
食欲や体力が落ちてきたと感じるとき、食事が十分にとれないとき、たんぱく質が不足しているとき、食事の偏りが気になるとき。こんなときには栄養補助食品もとり入れてみましょう。
筋たんぱく合成を促す司令塔と言われる「ロイシン」などの必須アミノ酸をバランスよく含む栄養補助食品もあるので、効果的に使うといいでしょう。
まずは気軽なウォーキングから運動をはじめよう
元気な体づくりのためには、運動も大事。
ここでは、だれでも取り組めるウォーキングを活用した実践方法「コグニウォーキング」をご紹介します。
コグニサイズとは国立長寿医療研究センターで開発された認知症予防のための運動方法です。
運動で体の健康を促すと同時に、脳の活動を活発にする機会を増やし、認知機能の維持・向上をはかることを目的としています。
cognition(認知)とexercise(運動)を組み合わせてcognicise(コグニサイズ)といいます。
引き算やしりとりしながら歩く
100から3ずつ引きながら歩きます。慣れてきたら、引く数を変えて難しくしてみましょう。
2人以上で歩くなら、しりとりなどもおすすめ。食べ物、植物などテーマを決めて行うのもよいでしょう。
ウォーキングには正しいフォームを意識して
ウォーキングを継続的に行うためには、基本の正しいフォームを意識することも大切です。
以下のような内容を意識し、心身の調子に合わせて少しずつ時間を増やしてウォーキングしてみましょう。
・肩・首・腕の力を抜く
・あごを引いて、視線は遠くに
・手は後ろに大きく振る
・胸を張って背筋を伸ばす
・つま先で地面を蹴る
・かかとから着地
・歩幅を広めに
いかがでしたか。
食の細りや、体重の減少などが気になる方や、他にもこの記事の内容に思い当たる所があった方は、身体が弱ってしまわないうちにぜひ、フレイル予防を始めてみてくださいね。
この記事は、「食から始めるフレイル予防の本(監修 桜美林大学 老年学総合研究所 所長 鈴木 隆雄氏)」の内容をもとに、加筆および再構成を行ったものです。
監修:桜美林大学 老年学総合研究所 所長 鈴木 隆雄
2022年3月の情報をもとに掲載しています。
心身の弱まり「フレイル」とは
「フレイル(虚弱)」とは、加齢にともなって、体力(筋力)や精神力など心身の活力が低下し、要介護の状態に近づくことです。 早めの対策で元に戻る可能性があります。
さきほどの5つの悩みのうち3つ以上が当てはまる方は要注意。「フレイル」の可能性があります。