そんな情報を入手したストーリー編集部は、さっそく「非料理系男子」のライターMさんに取材を依頼。プロジェクトの担当者に真相を聞いてもらうことにしました。改めて「Cook Do®」の魅力を深掘りすると、これまで「食卓」に届けてきた唯一無二の価値が見えてきます。
「Cook Do®」の中華料理が今夜もどこかの食卓に
こんにちは。「非料理系男子」のライターMです。「Cook Do®」の作り方が変わったとのことですが、そもそも47年間同じ作り方を貫いていたことに驚きです。
「Cook Do®」といえば、テレビCMでもおなじみの中華合わせ調味料。食材と一緒に炒め合わせるだけで手軽にプロの味が楽しめるすぐれものです。野菜炒めくらいしか作れないぼくからすれば、まさに魔法の調味料といえるでしょう。
豊富なラインナップも「Cook Do®」の魅力のひとつです。〈麻婆豆腐用〉〈青椒肉絲用〉〈麻婆茄子用〉......と、20種類以上を展開! スーパーマーケットの売り場にずらりと並ぶ光景は、それだけで歴史の長さを感じさせます。
また、新しい挑戦も続けており「Cook Do® 極(プレミアム)」シリーズや、「Cook Do® KOREA!」シリーズなども生まれています。年間一億食を売り上げるそうで、今日もどこかの食卓で「Cook Do®」の一皿がおいしそうな湯気を立てていることでしょう。
作り方をリニューアル。しかし気になる点も......
「Cook Do®」の〈酢豚用〉と〈八宝菜用〉の作り方をリニューアル!といっても具体的にどこを変えたのでしょうか。パッと見だと、あまり違いはないようでまちがい探しをしているような気分になります。ところが、新旧パッケージを比較してみると――こ、これは⁉
材料が変わって、作り方がさらに簡単になっている!たとえば〈酢豚用〉の場合だと「豚肉を揚げる」という工程が「豚肉を揚げ焼きにする」という工程に。それにともなって揚げた豚肉を「皿にとる」工程がまるっと削除されています。さらに「用意するもの」に表記されていた「卵 1/2」「生しいたけ」も姿を消しました。
「Cook Do®」〈酢豚用〉パッケージ裏面

〈八宝菜用〉も同様で、材料の「いか」と「えび(むきえび)」が「シーフードミックス」に変更。こちらも炒めた食材を皿にとる工程が削除されています。
「Cook Do®」〈八宝菜用〉パッケージ裏面

たしかに作り方は変わっています。でも、あの長年親しんできた「Cook Do®」の味はどうなってしまうのでしょうか。
"家中華"の礎を築いてきた「Cook Do®」
というわけで、味の素社 食品事業本部 コンシューマーフーズ事業部 メニュー食品グループを訪問。今回のプロジェクトを先導した浅生博信さんに作り方刷新の真意をうかがってきました。

浅生 博信
味の素株式会社
食品事業本部 コンシューマーフーズ事業部 メニュー食品グループ
―――核心にふれる前に、まずは「Cook Do®」について教えてください。
浅生さん
はい。「Cook Do®」は1978年(昭和53年)に誕生した中華合わせ調味料です。当時は「合わせ調味料」という概念自体が一般的ではなく、手軽に本格的な中華料理が作れる「Cook Do®」はとても画期的な商品でした。
原料や製法も本格的で、豆板醤(トウバンジャン)や甜麺醤(テンメンジャン)、豆豉(トウチ)などの中華調味料を自社工場でブレンドし、プロの味に近づけています。
―――ぼくも以前、川崎工場の「Cook Do®」見学コースに参加したことがあります。材料の選定基準やカットの仕方など、知れば知るほど奥が深い世界でした。
浅生さん
そうなんです。とくに中華料理は火力が重要。家庭用のコンロ、フライパンでは通常150℃程度で調理することが多いですが、それでは香ばしい本格的な中華料理を作るのはむずかしい。では、なぜ「Cook Do®」がプロの味を再現できるのかというと、シェフが中華鍋で高温調理する温度を分析し、工場でのソースの製造工程に反映させているからなんです。
―――ソースに香ばしさがついているから、家庭で誰が作ってもおいしくなるんですね。
浅生さん
そうなんです。さらに競合他社の商品と比べてもラインナップの幅が広く、全中華シリーズの売り上げを合わせると約150億円。シェアNo.1を誇ります。
※データリソース:インテージSRI+®「 全国小売店パネル調査」(2024年4月~2025年3月実施)
―――まさに"家中華"の礎を築いたブランドですね。
「Cook Do®」のリミッターを解除した「極」シリーズ
―――2023年(令和5年)に立ち上げた「Cook Do® 極(プレミアム)」シリーズの反響も気になります。
浅生さん
おかげさまで好調で累計2000万食を突破しました。通常シリーズの場合、購入者の8割がリピーターなんですが「極(プレミアム)」シリーズは購入層が異なります。

左から、「Cook Do®」(中華合わせ調味料)「極(プレミアム) 麻辣麻婆豆腐用」「極(プレミアム) 麻辣回鍋肉用」「極(プレミアム) 香辣麻婆茄子用」
浅生さん
「極(プレミアム)」シリーズの購入者のうち4〜5割が「前年から『Cook Do®』を購入しておらず、今年(アンケートをとった年)初めて『Cook Do®』を買った人」だったのです。
―――つまり新規ユーザーの獲得にも一役買っているということですね。パッケージデザインがゴージャスだから、手に取ってしまう気持ちもわかります。
浅生さん
通常シリーズは、家族みんなで食べることを前提に、幅広い世代が親しめる味に調整しています。一方で「極」シリーズは、もうどんなに頑張っても家庭では出せない味を目指しました。つまり、"リミッターを解除した大人の味わい"。たとえば、本格的なものが大好きな二人暮らしの方などがターゲットです。実際のところニーズの掘り起こしにもつながっており、今後はさらにシリーズを拡充していく予定です。
―――ちょっと野暮な質問かもしれませんが、浅生さんは普段から「Cook Do®」を使っているんですか?
浅生さん
はい、とくに〈干焼蝦仁(カンシャオシャーレン)用〉の合わせ調味料が好きで。「干焼蝦仁」はエビチリのことなのですが、これをエビではなく鶏肉で代用するとまたおいしいんです!

〈干焼蝦仁(カンシャオシャーレン)用〉を使った「トリチリ」。材料は鶏もも肉、玉ねぎ、プチトマト。鶏もも肉に片栗粉を厚めにまぶし、じっくり揚げ焼きにし、〈干焼蝦仁(カンシャオシャーレン)用〉を入れる。その後に乱切りにした玉ねぎ、トマトを加えて、完成。「いつもは卵やピーマンを使うのですが、プチトマトが家にあり使ったところ、とてもおいしく、ビジュアルも良かったです」と浅生さん
―――エビチリならぬトリチリ! 聞いているだけでおなかが空いてきます。

「Cook Do®」(中華合わせ調味料)〈干焼蝦仁用〉

普段からよく料理をしているという浅生さん。中華鍋を振って野菜炒めを作ります。「丸鶏がらスープ™、オイスターソース、XO醤で味付け。美味でした!」
料理研究家の酷評をきっかけに「料理系男子」が動いた
―――さて、ここからが本題です。〈酢豚用〉〈八宝菜用〉の作り方を見直した経緯を教えてください。
浅生さん
じつは私、もともと料理が好きなんです。自分で言うのもなんですが、けっこう得意なほうで。そんな私ですら〈酢豚用〉や〈八宝菜用〉の作り方って、ちょっと手間に感じていたんですよね。
―――浅生さん......ついに言ってしまいましたね。そう、〈酢豚用〉〈八宝菜用〉は、〈青椒肉絲用〉や〈麻婆豆腐用〉と比べると作るのがめんどうなんです!
浅生さん
シリーズのなかでも、その二品が群を抜いてめんどうなんです。でも、「Cook Do®」のような合わせ調味料は、"手軽なのにおいしい"が大事だと思っています。その目指す姿と、実際の作りやすさの間にギャップがあるなと前々から感じていました。半世紀前に考案されたものなので、仕方ないことではあるのですが......。
決定打になったのが、2024年(令和6年)にYouTubeチャンネル「料理研究家リュウジのバズレシピ」で公開された動画です。リュウジさんが「Cook Do®」シリーズ全10品をレビューするという当社が依頼したコラボ企画で、なんと〈酢豚用〉に最低ランクの「C-」評価が下されたんです......。
―――まさかの酷評!それはショックですね。
浅生さん
味自体は高く評価していただいたんですが「おいしさよりも(調理の)疲労感が出てる」と。「にんじんの下ゆで」や「卵1/2を用意する」など、細々とした手間の積み重ねが低評価につながったようです。
動画には1500件近いコメントが寄せられ、リュウジさんと同様の指摘をする方も少なくありませんでした。これはなんとかしなくては!と、作り方を見直すことになったんです。
三口コンロ前提?作り手泣かせの「酢豚用」
―――〈酢豚用〉の作り方の「豚肉を揚げる」が「豚肉を揚げ焼きにする」に変わっていて、驚きました。
浅生さん
もともと〈酢豚用〉には「豚肉を揚げる」「にんじんを下ゆでする」「具材を炒める」という工程がありました。でも、これらを並行して進めようとするとコンロが3口必要になる。それってよほど料理好きの人じゃないと再現が難しいですよね。新しい作り方ではにんじんの下ゆでも不要、豚肉は揚げ焼きでOK。「皿にとる」工程もなくなり、フライパンひとつでおいしい酢豚ができあがります。
さらに「用意するもの」から生しいたけを削除。冷蔵庫に常備していることが少ない、というのがその理由です。そして、リュウジさんにも指摘された「卵1/2個」も思い切って削除しました。

―――でも、卵がないと物足りなく感じそうです。
浅生さん
そこは片栗粉を「大さじ2」から「大さじ3」に増やして、カバーしています。下ごしらえのとき、豚肉に塩こしょうと片栗粉大さじ1を揉みこむと肉の表面がとろっとしてきて、加熱した際の肉汁の流出を防ぎます。そこに残りの片栗粉大さじ2をまぶして揚げ焼きにすると、ほどよい厚みの衣に仕上がるんです。これなら卵がなくても、やわらかジューシーな肉に仕上がり、満足感が損なわれることはありません。
―――〈八宝菜用〉も材料が減って、下ごしらえの手間がだいぶ軽減されています。
浅生さん
いか・えびをシーフードミックスで代用したのは、大きな変更点といえるでしょう。シーフードミックスは冷凍保存ができるため、使いたいときにすぐ使える。冷凍のまま白菜と同時にフライパンで加熱することで、蒸し焼きのような状態となり、身が縮み過ぎることなく、ちょうど良い火の通り具合になるんです。
あとは以前の作り方には白菜を「そぎ切りにする」とありました。
―――そ、そぎ切り......?
浅生さん
普段料理をしない人はピンとこないですよね。だから「そぎ切りにする」から「ひと口大に切る」にしました。ここは結構こだわったポイントですね。

おいしさを変えずに、作り方を刷新した本当の理由
―――調理の手間が省けるのは助かるのですが、肝心の合わせ調味料の味にも変更はあるのでしょうか?
浅生さん
いいえ、合わせ調味料には一切手を加えていません。今回のプロジェクトは、単に「つくる手間を減らす」ためのものではなく「Cook Do®」のおいしさをもっと多くの人に届けるためのアップデートなんです。それだけ「Cook Do®」のソースの味には自信がありました。あとは、購入の心理的ハードルをどう取り払うか。その答えが、今回の作り方の刷新につながったわけです。
―――おいしさはそのままに、作り方をアップデート!それを聞いて安心しました。
浅生さん
むしろ、「新しい作り方の酢豚の方が衣がカリッとしていておいしい」「シーフードミックスを使った八宝菜はうま味が強い」といった声も多く寄せられています。
さらに、パッケージの裏面にあるQRコードを読み込むと、調理動画が表示される仕掛けに。新旧2通りの作り方を紹介しているので、以前の作り方が好きだった人も、変わらず「Cook Do®」を楽しめますよ。
パッケージのおもて面にも「揚げ焼きでもっと簡単に!」「シーフードミックス使用でもっと簡単に!」と明記して「Cook Do®」を購入したことがない人でも親しみがもてるように工夫しています。
10年、20年先の「食卓」に思いを馳せて
―――より親しみやすくなった「Cook Do®」ですが、今後の展望を教えてください。
浅生さん
大きく分けて、3つのテーマがあります。1つ目は、これまでと同じように手早くつくれて、家族全員が「おいしいね」といえるような定番商品を充実させていくことです。
2つ目は、即席で楽しめる商品の強化です。たとえば「ひき肉入り麻婆豆腐」のように、お肉や野菜を改めて買わなくても、すぐに食べられるような商品です。競合他社が先行している分野でもあるので、今後はどんどん攻めていきたいです。
そして3つ目は、プレミアムな商品の拡充です。理想は週末や特別な日のちょっとぜいたくしたいときに選ばれるような商品。「極」シリーズをはじめ、大人の舌をうならせるような味を目指します。
―――ということは「Cook Do®」はまだまだ進化の途中にあるんですね。
浅生さん
はい。だからライフスタイルの変化にも積極的に対応していきたいです。2040年には26都道府県で、1世帯あたりの平均人数が2人を下回るとされています。現在の「Cook Do®」は3〜4人前を基準にしているので、いずれ生活者のライフスタイルに適さなくなる可能性もある。
あくまでも私の構想ですが、2人前を2回に分けられるような仕様や、汎用的に使えるボトルタイプなどが必要とされるのではないでしょうか。
―――これまでの取り組みが味の素社のパーパス「アミノサイエンス®で、人・社会・地球のWell-beingに貢献する」と通じる部分はありますか?
浅生さん
はい。私は「Cook Do®」の通常シリーズから「極」シリーズまで幅広く担当していますが、どの商品にも共通しているのは「驚き」や「感動」を届けたいという思いです。
ファミリー、夫婦、単身世帯......と「Cook Do®」は、あらゆる生活シーンに寄り添っています。そのなかで私たちが目指しているのは、唯一無二の価値を提供できる存在であり続けること。その姿勢こそが、私たちのパーパスに通じているのではないでしょうか。
50年近くにわたり「食卓」に寄り添い続けてきた「Cook Do®」。種類が増え、作り方が進化しても、「Cook Do®」で味わえる「驚き」と「感動」はいまもむかしも変わりません。
慣れ親しんできたあの味には、開発者たちの情熱と工夫がぎゅっと詰まっています。その背景に思いを馳せれば、いつもの一皿がさらにおいしく感じられるはず。
味の素グループではこれからも「Cook Do®」をはじめとするさまざまな製品を通じて、世界中の人々のWell-beingに貢献していきます。

浅生 博信
味の素株式会社
食品事業本部 コンシューマーフーズ事業部 メニュー食品グループ
2012年入社。大阪で家庭用営業を担当した後、事業部門へ異動。「Cook Do®」オイス
ターソース、醤シリーズ等幅広い製品のプロダクトマネージャーを経て現職。現在は、「Cook Do®」メニュー用合わせ調味料の製品開発全般を担当。常に調理者の気持ちに立ち、新たな価値提供にチャレンジ。
休日は妻と2歳と1歳の息子と4人で公園やショッピングモールに出掛けるのが楽しみ。
2025年12月の情報をもとに掲載しています。

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