「基礎中の基礎のそのまた基礎もわからない!」とお嘆きの人たちにむけて、まずは料理に興味をもってもらえたらと、この企画は始まりました。
ナビゲートするのは“非料理男子”のフリーライターMさん。予備知識以前のギモンや謎(?)をちょっとずつ解明して料理男子を目指します。
「下味」の意味とは?料理初心者が知りたい味付けの基本と下ごしらえ
「非料理男子ライター」のMです。
食べることは大好きなんですが、「料理を作る」となると話はべつで、自分がキッチンに立つ姿をイメージすることすらなく、今日まで生きてきました。
ターニングポイントは先日開かれたBBQでのこと。男友達がテキパキと料理の準備を進めるなか、料理のできない僕はただそれを見守ることしかできず、どこか気が晴れない一日を過ごすことに。
「いまどき料理ができない男ってヤバいのか......?」
そういえば、数年前から書店のレシピ本コーナーに「男子向け」をアピールした本が増えている気がする。ライフスタイル雑誌では男心をくすぐる調理家電の特集が組まれることも珍しくない。
「これってもしかして、時代に取り残されてる......?」
まずい! これはまずい! 腐ってもライターの端くれ。ブームを素通りしてしまっては、今後の進退に関わりかねないぞ。
ということで、さっそくリサーチを開始。基本の知識くらいは知っておこうとパソコンに向かいます。
そしたら気づいてしまったのですよ。ビギナー向けの「簡単レシピ」にもかかわらず、大半の料理に「下味」を付ける工程があることを。
たとえば鶏肉を使ったレシピなら――、
「塩コショウで下味をした鶏肉に......」
「混ぜ合わせた★(調味料)で鶏肉に下味を付けよく揉み込み......」
といった具合です。
知らない言葉ではないけれど、単なる「味付け」となにが違うんだろう?!
う~む、気になってきたぞ。
リサーチするときは専門書に頼るのがライターの鉄則!
さっそく取り寄せた『調理用語辞典』(全国調理師養成施設協会 改訂版)を調べてみました。
引用:したあじ【下味】生の材料にあらかじめ調味料、香辛料等で味をつけておくこと。焼き物、蒸し物などに用いる下処理の一種である。
なるほど。つまり「下味」とは、調理前の材料に味をつけておく下ごしらえというわけね。
味付けをするタイミングは、てっきり焼いたり炒めたりしている最中だけかと思っていました!
思えば、よい原稿を書くためにはていねいな下準備が必須。まかさこんなところでライターの仕事とつながるとは!
肉に下味をつける理由は?〜塩コショウ、しょうが醤油、料理酒、ヨーグルトそれぞれの意味
調査を進めると、やはり下味はさまざまな料理に用いられています。
ステーキなら鉄板にのせる前に牛肉に塩コショウをふっておいたり、豚の生姜焼きならフライパンで焼く前に豚肉を生姜醤油に浸けておいたり。下味は火を通す前の必須工程。
調理前に味付けすることで調味料の風味がなじみやすく、よりいっそうおいしくなるというわけです。
さらに下味は、味を付ける以外にもさまざまな効果があります。
たとえば、焼き魚をつくるとき。
事前に切り身に「塩」と「酒」をふりかけておくと、いやな生臭さを抑えてくれます。
野菜に塩をふると、しんなりさせる役割もあるそうです。
そうそう、テレビの料理番組でシェフが目線ほどの高さから塩をふりかけている場面を見たことをありませんか? てっきりテレビ映えのために、かっこつけているだけだと思っていましたが、あの仕草にもちゃんと意味がありました。
少し高い位置からの方が塩を広い範囲にまんべんなくふれるんだそうです。
塩をふるときには高い位置からカッコ良くふってみましょう。一口コンロの狭いキッチンもライブキッチンさながらの空間に早変わりしますよ。たぶん。
そのほか、牛肉を焼き肉のタレに漬けるレシピもありました。
あと、驚いたのはヨーグルト。鶏肉に浸けておくとやわらかく、ジューシーになるのだとか。ヨーグルトはデザートに食べるものとばかり思っていたのですが、意外な底力があるようです。
「から揚げ」の下味の付け方は多種多様。「ほんだし®」もおすすめ
下味を使ったレシピはまだまだありますよ。みんなが大好きな「鶏のから揚げ」なら、下味に塩こしょうを使う場合もあれば、醤油、酒、生姜を使うことも。これは、肉の生臭さを抑えたり、風味をプラスするのが目的です。
「ほんだし®」の下味が香りとコクをプラスするレシピ「塩から揚げ」
AJINOMOTO PARKの「レシピ大百科」では「塩から揚げ」を紹介していますが、驚きの調味料が登場します。その調味料とはなんと「ほんだし」! そりかえったカツオのロゴが目印のあの「ほんだし」です!
なんでも、かつお節を使ったほんだしには、香りとコクをプラスする効果があるのだとか。それが唐揚げにもいかんなく発揮されるのです。いろんな料理の味付けに試して、うま味をブーストさせたくなりますね。
ほんだしを使うのはまだまだ序の口。世の中には、にんにく味噌で下味をつけた「味噌から揚げ」やウスターソースやオイスターソースを使った「ソースから揚げ」といった二度見必至の変わりダネも。
から揚げレシピは、もはや何でもありの無法地帯。裏を返せば、下味には無限の可能性があるということですね。
好きな調味料を加えて自分好みの下味を探してみるのも楽しそう!
原材料・製法で味わいが変わる「塩」
いまやスーバーで気軽に購入できる塩ですが、大昔は金と同等の価値があるほどの貴重品でした。
古代ローマでは役人や兵士の給料として支給されており、ラテン語の塩を意味する「サラリウム」が英語の「サラリー」(給料)に派生したという説も伝わっています。
いまでは考えられない感覚ですが、そういった歴史的背景を思うと塩のありがたみが増しますね。
しょっぱさの正体は、主成分の塩化ナトリウムに由来しています。一般的に含有量が多いほど塩辛さが増すので購入する際は商品の「製造方法の表示」を参考にしましょう。
「製造方法の表示」に明記されている「原材料」欄にも注目です。原材料は海水、海塩、岩塩、湖塩、天日塩のいずれかと決まっていて、それぞれ味に個性があります。
また、味わいにも個性があります。たとえば海水から作られる「瀬戸のほんじお」には、同じく海水からとった天然のにがり成分(カリウム、マグネシウム、カルシウムなど)が含まれています。そのため、いわゆる「塩カド」のとれたまろやか~な味わいに。さらに、にがりが入っている分しっとりした口あたりになるのだそうです。
「塩」と一口にいっても、原材料や製法によって味わいはさまざま。初心者のうちはチンプンカンプンかもしれませんが、慣れてきたら料理によって「塩を使い分ける」という高等テクも可能に。まずは家にある塩の成分表示をチェックしてみてはいかがでしょうか。
下味を制する者は料理を制す
いろいろ調べてみて、下味が料理のおいしさを底上げすることがわかりました。
僕が口にしてきたあらゆる料理に、ちょっとしたひと手間がかけられているわけだ。夜食に買ったスーパーの惣菜にも、取材で食べた極厚ステーキにも、居酒屋で出されたなんてことのないお通しにもきっと。
下味の効果や役割を知ったら、なんだか料理男子に一歩近づいた気分。なにやら急に興味が湧いてきました。
こうなると、焼き魚や照り焼きチキン、豚の生姜焼きなど、なんにでも挑戦できそうな気がしてくるから不思議です! さらにこの調子で、料理男子を目指します! 次回も乞うご期待!
2020年12月の情報をもとに掲載しています。