歴史・トリビア

和食ってなんだろう?素材をおいしくする日本のだしとは ~11月24日は「和食の日」

2013年12月4日、ユネスコ世界無形文化遺産(注1)に「和食:日本人の伝統的な食文化」が登録されました。日本の秋は実りの季節。この秋の日に、和食文化の大切さを再認識するきっかけとして、11月24日(いいにほんしょく)が「和食の日」(注2)となりました。

和食の魅力の一つに、「だし」があります。
おみそ汁一つとっても、だしによって味わいはまったく違いますよね。

さらに、だしのうま味を上手に使うことで、塩分や油分を控えたヘルシーな献立が実現します。
和食が「栄養バランスがよく健康的」だと言われるゆえんですね。
和食とは切っても切れない、だしの魅力についてご紹介します。

和食の基本「だし」ってなに?西洋料理・中華料理のだしとは違うの?

だしとは、「動物性、植物性の材料を煮出したり、水に浸して旨味成分を抽出した汁のこと」です。
(『調理用語辞典』より)

古くは縄文時代から、日本人は「煮る」という技術を用いてきました。その後「焼いた魚を干しただし」などが生まれ「だしをとる」という概念が形成されてきたそうです。
和食は「繊細で、味わいの調和が取れている」と言われます。これは、素材によってだしを使い分ける、和食特有の調理法によるものかもしれません。

野菜には動物性のだし(かつおぶしなど)を、肉や魚介には植物性のだし(昆布や干ししいたけ)を使い、おいしさを補い合うことで、バランスのよい一品となっているのです。

かつおや昆布、煮干しや干ししいたけーー。
これらは、和食に欠かせない「だし」をとる食材です。

一方、西洋料理、中華料理は、いったいどんな食材でだしをとっているのでしょうか?

西洋料理ではだしのことをブイヨン、フォン、中華料理では、湯(タン)といいます。
いずれも牛肉、鶏肉、魚などの動物性食材を、数時間〜数週間程度煮込み、だしをとります。

ここで、ちょっと気づきませんか?

西洋料理も中華料理も、だしをとるのに、最低でも数時間必要なのです!
そうそう気軽にだしをとろうとは思いませんよね。

じつは西洋料理も中華料理も、素材自体が強いうま味を持つ肉料理が中心となるため、だしを加える調理法が多くありません。だしの役割は、素材の風味を強調するため。肉料理には肉からとっただしを、魚料理には魚からとっただしを加え、その料理においしさをプラスしているのです。

一方、和食は、だしが素材の良さを引き出し、調和をはかるような調理法です。
和食にとってだしは、なくてはならないものなのです。和食のだしといえば、かつおぶしで5分程度、昆布で10分程度で煮出せます。

日々の調理で、気軽にだしがとれる乾物はすぐれものですね。

だしのうま味が料理をおいしくする

ところで、なぜ、だしを加えるとおいしくなるのか、ご存じですか?
だしには深いコクやまろやかさがあり、料理をおいしくしてくれますね。

このおいしさの正体とは、うま味です。

だしの主成分であるうま味とは、甘味、酸味、塩味、苦味と並ぶ基本味のひとつ。
料理にだしを加えると、味に奥行きが出てコクが増すため、おいしく感じるのです。

このうま味を発見したのは、東京帝国大学の池田菊苗博士です。

1908年(明治41年)、日本人が古くから料理に使っていた昆布だしのおいしさの正体が、グルタミン酸であることを発見。その味を「うま味」と名付けました。

うま味物質には、グルタミン酸のほか、イノシン酸、グアニル酸などがあります。

うま味物質はさまざまな食材に豊富に含まれています。グルタミン酸は昆布やトマトなどに、イノシン酸はかつお節や肉類に、グアニル酸は干ししいたけなどに多く含まれています。

グルタミン酸は、たんぱく質を構成する20種類のアミノ酸の一つ。
ちなみに、人の羊水や母乳には、グルタミン酸がたっぷり含まれています。

赤ちゃんは苦みや酸味には顔をしかめますが、うま味を味わうと穏やかな表情に。
私たちは生まれながらにして、うま味を識別できるということなのですね。

旬の食材をだしで味わうおいしいみそ汁

だしを使った手軽な和食といえば、みそ汁が思い浮かびます。
だしで味のベースを作ることで、素材のうま味が引き出され、みその風味も際立ちます。
代表的なだしの食材、かつお節、いりこ、あごは、一般的な具材ならなんでも合います。昆布だしは、魚、肉などうま味のある食材との相性が抜群です。

海の幸、山の幸に恵まれた日本には、その土地特有のみそ汁があります。季節によっても、さまざまな食材でバリエーション豊かな味を楽しむことができます。

新鮮な食材とだし、味噌さえあれば、おいしい一品になる。
みそ汁には、どんなものもおいしくしてしまう不思議な魅力がありますよね。

時代の変化とともに、新しい食材や調理法を取り入れ進化しつづける。
これこそが、みそ汁をはじめとする、和食の素晴らしさではないでしょうか。

旬の野菜や肉、魚介などを上手に使って、毎日の食事に、栄養満点のみそ汁を取り入れたいですね。

「山盛りキャベツの絶品豚汁」

豚バラ肉とキャベツで、ボリューム満点の一杯。
しょうがの風味が食欲をそそります。

「とろ玉鶏だんごの絶品汁」

小さなお子さんにも人気の鶏だんご。
とろとろ卵を溶かしながら召し上がれ。

「鮭のちゃんちゃん絶品汁」

鮭を使った食べ応えのある一杯。しめじ、長ねぎ、キャベツが入り、食物繊維も豊富。仕上げのバターがコクをプラス!

注1:「ユネスコ無形文化遺産」(農林水産省HP https://www.maff.go.jp/ より)
口承による伝統や伝統工芸品、芸能、社会的習慣や行事等の形がない文化であって、土地の歴史や生活風習などど密接に関わっている文化遺産を保護し、尊重する機運を高めるための制度。
本部の所在地はフランス共和国・パリ市にあり、「国際連合教育科学文化機関」「United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization = U.N.E.S.C.O.」からユネスコと呼ばれています。

注2:「和食の日」
一般社団法人 和食文化国民会議 https://washokujapan.jp/1124washoku/ より

ー和食の日とは日本人の伝統的な食文化について見直し、和食文化の保護・継承の大切さについて考える日ー

日本は海・山・里と豊かな自然に恵まれ、多様で新鮮な旬の食材と、うまみに富んだ発酵食品、米飯を中心とした栄養バランスに優れた食事構成をもつ、「和食」の文化があります。
「和食」は食事の場における「自然の美しさ」の表現、食事と年中行事・人生儀礼との密接な結びつきなどといった特徴を持つ、世界に誇るべき食文化です。
日本の秋は「実り」の季節であり、「自然」に感謝し、来年の五穀豊穣を祈る祭りなどの行事が、全国各地で盛んに行われる季節でもあります。
日本の食文化にとって大変重要な時期である秋の日に、毎年、一人ひとりが「和食」文化について認識を深め、和食文化の大切さを再認識するきっかけの日となっていくよう願いをこめて、11月24日を"いい日本食"「和食」 の日と制定しました。

◯一般社団法人 和食文化国民会議
世界無形文化遺産に登録された「和食;日本人の伝統的な食文化」の保護・継承に責任を持つ組織として、政府主導で設立された一般社団法人「和食文化国民会議」

2020年11月の情報をもとに掲載しています。

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