歴史・トリビア

11月24日は「和食の日」~和食文化の原点を探る 「おにぎり」と日本人の心

幼いころの遠足や運動会で頬張って食べたおにぎりに「おふくろの味」の記憶を重ねる人は多いのではないでしょうか。そんなおにぎりは、日本人のソウルフードとも言えるでしょう。

おにぎりといっても、米、具材、塩、海苔などの食材のほか、米の炊き方、塩加減、巻き方、握り方など、地域や家庭によって独自の発展を遂げ、バリエーションも豊かです。

シンプルでありながら、古くから日本人に愛され、いまなお進化しつづけるおにぎりをひもとくと、和食の歩みや日本人の食文化が見えてくるかもしれません。
今回は11月24日の「和食の日」(注)にちなんで、奥深いおにぎりの世界をご紹介します。

日本人に愛されてきたおにぎり今昔

私たちの食生活の中ではおなじみの「おにぎり」。家庭でもコンビニエンスストアでも、いつも身近にあるからこそ、これまで「おにぎり」についてじっくり考えたことがなかったかもしれません。そもそも「おにぎり」は、いつどこからやってきたのでしょうか。

それをひもとくカギは、弥生時代の遺跡にあります。真っ黒に炭化したおにぎりの化石が弥生時代の遺跡からいくつか見つかっているのです。正式には「粽状炭化米塊(ちまきじょうたんかまいかい)」と呼ばれ、今日のおにぎりとは異なる点も多いそうです。稲作が中国大陸や朝鮮半島から日本列島に伝わった頃から、日本人の暮らしのなかに「おにぎりらしきもの」があったと思うと、ロマンを感じます。

平安時代に生まれた『源氏物語』の一節でも、「屯食(とんじき)」という名前でおにぎりが登場します。

鎌倉時代に入ると、これまでの儀礼的・宗教的な意味を持った食べ物から、携帯食として実用的な食べ物へと変化します。承久の乱では京都に攻め入る武士たちにおにぎりが配られた記録があるそうです。それが梅干し入りだったというから、800年も前から愛され続けている定番おにぎりということが分かります。

江戸時代になると、仕事の合間や旅の携行食として、庶民の間で広く食べられるようになりました。海苔を巻いたおにぎりが登場するのもちょうどこの頃。
今でも親しまれている昔話「おむすびころりん」も、室町〜江戸初期までに成立した「おとぎ草子」に掲載されています。
今、私たちになじみのある「おにぎり」は、この頃に確立されたようです。

明治時代になり、日本初の駅弁や学校給食を飾ったのも、じつは「おにぎり」でした。
おにぎりは、日本の食文化の発展を担った立役者ともいえそうです。

今では、コンビニエンスストアやスーパーに行けば、おにぎりを目にしない日はありません。長い歴史のなかで時代とともに変化しながら、今も昔も私たちの暮らしを支えてくれているのですね。

古今東西のおにぎり

ところで、おにぎりといえば「三角形で海苔を使って包むもの」と思っていませんか。

ひとくちにおにぎりといっても、三角形や俵形、球形や太鼓形など、その形状だけでも数種類あり、おにぎりを包む食材も海苔だけに限りません。ゴマや小魚などをまぶしたり、漬物やお肉で捲いたり。「小さなご飯のかたまり」に、さまざまな歴史性や地域性を見ることができるのです。

おにぎりの形状のなかで三角形はもっともオーソドックスですが、球形と太鼓形は東北地方、俵形は関西地方で多く見られるそうです。皆さんにとって、なじみの形はどれでしょうか?

また、海苔以外で包むおにぎりには、奈良・三重・和歌山県の周辺で食べられている「めはりずし」があります。高菜の大きな葉の漬物で白おにぎりを包んだ素朴な味わいが魅力です。
富山では、とろろ昆布をおにぎりの周りにまぶした「とろろ昆布おにぎり」が名産になっています。

具材にいたっては、秋田のいぶりがっこ、名古屋の海老天、福岡の明太子、沖縄のスパムなど、北から南までじつに多種多様なご当地名産があります。それらをご飯の中に入れるのか、ご飯全体に混ぜ込むのか、はたまた上に載せるのかによって、無限のバリエーションが広がるのもおにぎりの魅力ですね。

そして、おにぎりを語るうえで忘れてならないのが、「梅干し」の存在。
鎌倉時代の承久の乱で配られたおにぎりには、梅干しが入っていたとされています。今も定番の具材である「梅干し」は、この頃から保存性にすぐれ、抗菌作用や疲労回復としての効果が期待されていたのです。

時代とともに変容するおにぎり

古くから私たち日本人の暮らしとともにあるおにぎり。その役割は時代によって変われど、そのときどきのニーズに応えながら進化し続けてきたからこそ、今も変わらずに私たちの暮らしを支え続けてくれているのですね。

握らないおにぎり「おにぎらず」がブレイクしたのも記憶に新しいですし、だし汁をかけるおにぎりや数種類の具材を握るおにぎりなど、従来の形にこだわらない、新しいおにぎりが次々と生まれています。

味の素グループでも、おいしさと機能性を追求した「進化形おにぎり」を手がけています。

たとえば、パワーボール。「ほんだし®」で味付けされた小さめサイズのおにぎりです。
リオオリンピックでは、エネルギーチャージの源として、日本選手たちを影ながら支えました。

「緊張していてなかなか食欲がわかない」「試合の合間は時間が短くて食べられない」といった理由で、栄養不足になりがちな選手たちにとって、強い味方となったのです。

「パワーボール」

「おにぎり丸®」は、栄養バランスを考えて製品化された、肉や野菜の入ったおにぎり用の具。
凍ったまま温かいご飯で握るだけで、簡単におにぎりを作ることができます。
おにぎりを作るママにとっての悩み「具材のマンネリ化」と「いろいろな具材にチャレンジしたいけど時間がかかる」を一気に解決しました。

「おにぎり丸牛すき焼き弁当」

和食の懐の深さは、バリエーションが無限に広がる自由さを許してくれるところにあるのかもしれません。
異なる物や文化を受け入れ、掛け合わせることで新たな価値を生み出すのが得意な私たち日本人は、和食の未来にどんな価値を生み出しているのでしょうか。そんな未来を想像するだけでワクワクしてしまうのです。

「焼きおにぎり茶漬け」

香ばしい焼きおにぎりとやさしいだし汁がベストマッチの人気の主食レシピ。

「肉巻き「ほんだし」おにぎり」

牛薄切り肉で一巻きして、香ばしく焼き上げた一品。
ご飯に染みこんだ甘辛い肉汁と一緒に召し上がれ。

「具リッチ肉みそキャベツおにぎり」

忙しい人必食!おかずと主食を兼ねる便利なおにぎり。
目にも鮮やかな具材を握り混んだ一品。

注:「和食の日」
一般社団法人 和食文化国民会議 https://washokujapan.jp/1124washoku/ より

ー日本人の伝統的な食文化について見直し、和食文化の保護・継承の大切さについて考える日ー
日本は海・山・里と豊かな自然に恵まれ、多様で新鮮な旬の食材と、うまみに富んだ発酵食品、米飯を中心とした栄養バランスに優れた食事構成をもつ、「和食」の文化があります。
「和食」は食事の場における「自然の美しさ」の表現、食事と年中行事・人生儀礼との密接な結びつきなどといった特徴を持つ、世界に誇るべき食文化です。
日本の秋は「実り」の季節であり、「自然」に感謝し、来年の五穀豊穣を祈る祭りなどの行事が、全国各地で盛んに行われる季節でもあります。
日本の食文化にとって大変重要な時期である秋の日に、毎年、一人ひとりが「和食」文化について認識を深め、和食文化の大切さを再認識するきっかけの日となっていくよう願いをこめて、11月24日を"いい日本食"「和食」 の日と制定しました。

◯一般社団法人 和食文化国民会議
世界無形文化遺産に登録された「和食;日本人の伝統的な食文化」の保護・継承に責任を持つ組織として、政府主導で設立された一般社団法人「和食文化国民会議」

2020年11月の情報をもとに掲載しています。

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