世界のリメイクごはん

お供え物のお下がりでつくる「焼き豚と豆腐のオイスターソース炒め(豆腐火腩)」

お供え物のお下がりでつくる「焼き豚と豆腐のオイスターソース炒め(豆腐火腩)」
おいしく食べることと同時に、いま私たちは、残った食材や料理を、最後まで大切に食べることが求められています。そこで、海外に目を向けると、その国ならではのステキなアイデアがありました。シリーズでご紹介します。
第二回目は、香港から。情報提供と写真は香港在住の大澤真木子さん、お供え物に用意される豚の丸焼きの「お下がり」を活用した家庭料理です。

道教の風習「豚の丸焼き」のお下がりを家庭料理に

西洋と東洋の入り混じった文化をもつ香港。1842年から1997年までイギリスの支配下であったことも香港が国際都市として発展し、世界中の美食があつまった要因でもあります。ミシュランの星付きレストランから、昔ながらの庶民の味を伝承する食堂まで、多種多様な味覚を楽しむことができます。

そんな香港の家庭を覗くと、地元の民間信仰である道教の神様が、今も多くの家の祭壇に飾られ、毎日お線香や供物が上げられています。道教の風習のひとつが、結婚式やお店の開店や事業のキックオフなどに使われる豪勢な「豚の丸焼き」や、祭日のお供えに使われる肋骨部分の切り身(燒腩)。これは広東の食文化の名品、ロースト(燒味)で、香港の伝統的な食品であると共に、「お供えもの」の主役でもあります。行事が終わったあとは「お下がり」となり、昔から積極的に再利用されています。身の部分は調理用の食材に、頭部や足など骨の部分はスープやお粥の出汁に。
今回はこの身の部分を活用した料理をご紹介しましょう。

焼き豚と豆腐と干し椎茸の煮込み料理

焼き豚を使う香港らしいメニューなので、市販品の焼き豚を使った料理にも活かせます。
主な材料は焼き豚と豆腐と干し椎茸。干し椎茸は水で戻し、戻し汁は煮込みに使います。豆腐を少し多めの油で揚げ焼きし、表面に焼き色をつけます。残った油を軽く拭き、薄切りしょうが、刻んだニンニク、エシャロット(刻んだ玉ねぎでもOK)を入れて油に香りをつけます。そこに焼き豚と椎茸、紹興酒を入れて炒めます。もうここで良い香りがキッチンを包みます。さらに、調味料(オイスターソース、醤油、砂糖)と豆腐と干し椎茸の戻し汁、刻んだネギを入れて煮込みます。お好みで水溶き片栗粉を入れればできあがり!

うま味をおいしく活かす香港の調理法

材料の準備ができていれば15分ぐらいの簡単な料理ですが、焼き豚がとてもやわらかくなっているはずです。そのポイントは紹興酒です。紹興酒は良い香りをつけ、コクを出し、素材をやわらくしてくれる香港の料理に欠かせない調味料です。この料理のように、焼き豚が作られてから時間が経っている時に、この紹興酒が良い役割をしているわけです。お肉をやわらかく調理したい時に参考にしたい調理法ですね。炒める時に使えばアルコールは飛びますからお子様でも大丈夫です。
そして、乾燥した椎茸はグアニル酸をはじめとするうま味の多い食材。やわらかくなった焼き豚と戻した椎茸は相乗効果でうま味がより感じられる料理に様変わりします。

この「豆腐火腩」、現地で食べてみたいなと思われたら香港のカフェやファミレスのメニューで探してみてください。ぶっかけご飯の「豆腐火腩飯」としてメニューに載っていることがよくあります。その理由は、香港人の「子供のころの懐かしい味」だからです。このローストは、新年や中秋節などの行事食としても用意されるので、その場合は食べ残りですが、それも同じように、このメニューに使い回しされます。
お腹ぺこぺこで家に帰った時、家族が作ってくれた「豆腐火腩飯」はほんのり甘い思い出。"男のロマン"とインターネットで流行語にもなったこともあるくらい、香港人の永遠の人気メニューなのです。

テキスト:村上千砂(TNC inc.)

フードプランナー、「Maison de Tsuyuki」料理人。大阪芸術大学卒業後、株式会社日本リクルートセンター入社。その後、フリーの編集者として活動し2004年に株式会社TNC設立。国内外の取材を通じた「食」の縁は仕事も人生も豊かにした。

2021年10月の情報をもとに掲載しています。

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硬くなったパンとトマトでつくる「トマトのパン粥」

硬くなったパンとトマトでつくる「トマトのパン粥」

おいしく食べることと同時に、いま私たちは、残った食材や料理を、最後まで大切に食べることが求められています。そこで、海外に目を向けると、その国ならではのステキなアイデアがありました。シリーズでご紹介します。
最初は、イタリアから。情報提供と写真はイタリア・ローマ在住の田島麻美さんから、硬くなってしまったパンでつくるひと皿です。

ルーツはマンマの知恵と愛情から

イタリア人の「おふくろの味」とも言われる「パッパ・アル・ポモドーロ」 が今回ご紹介する料理です。 「パッパ」は「お粥(のような流動食)」、日本語で幼児が使う「まんま」という意味があります。そのため、パッパ・アル・ポモドーロは、日本語では「トマトのパン粥」と訳されます。

パッパ・アル・ポモドーロは、フィレンツェを中心とするトスカーナ地方の農民が考案した「クチーナ・ポーヴォエラ(貧しい料理)」が起源の料理ですが、今ではイタリア中で愛される家庭料理の代表メニューになっています。

イタリアでは、どの家庭でも「食べ物を無駄にしない」というのが鉄則。硬くなってしまったパンで、おいしい料理が作れないか?イタリアのマンマは知恵を絞って考えました。残り物でもおいしく、そして健康に良い料理を家族に食べさせたいというマンマの愛情と知恵が集結した結果、「パッパ・アル・ポモドーロ」という料理が生まれたのです。

材料は家庭常備の5種類だけ

パッパ・アル・ポモドーロは、食べ残して硬くなったパンを再利用することを目的とした極めてシンプルな料理です。硬くなったパーネ・トスカーノというトスカーナ地方の塩なしパンをトマト、ニンニク、オリーブオイル、野菜のコンソメスープで煮込んでバジルを乗せたもので、味付けは塩、胡椒のみです。

作り方をご紹介しましょう。完熟トマトの皮を剥き、ざく切りにします。フライパンでオリーブオイルを熱し、ニンニクを入れて香り付けをした後、トマトを加えてソース状になるまで火を通し、塩、胡椒で味付けをします。一口大にちぎるか切ったパンを熱い野菜のコンソメスープに浸して柔らかくします。スープを含んだパンをトマトソースに加えてさらに煮込み、バジルの葉を乗せて出来上がり。

熱々のまま食べてもよし、夏は冷蔵庫で冷やすと食欲をそそります。完熟トマトがない時は、市販のホールトマト缶やトマトソースでも代用できます。塩の入ったパンを使うなら塩分は控えめに。

地中海式ダイエットの要素もある健康的な料理

パッパ・アル・ポモドーロはそのおいしさだけでなく、健康的な料理として知られています。消化が良く、トマトが含む豊富なビタミンCやミネラルを効率よく体内に吸収できるため、子どもや高齢者、また風邪や二日酔いなど体調が優れない人でも安心して食べられる栄養満点のメニューなのです。

材料となる食材と調理法は、ユネスコの世界無形文化財遺産にも登録されている「地中海式ダイエット」の長所を持ち合わせています。健康的な体を維持するための食事法として知られる地中海式ダイエットは、ただ痩せることが目的ではなく、心身ともに健康な生活を送るための考え方でもあります。

甘酸っぱいトマトの酸味と野菜のうま味で煮詰めて柔らかくなったパンのお粥は、トマト(あるいはトマトソース)、パン、オリーブオイル、ニンニク、バジル、コンソメといった、家庭のキッチンの常備品で材料が全てそろうため、「ちょっと小腹がすいた」とき、「体調がイマイチで買い物に行きたくない」ときなど、思い立ったらすぐ手軽に作れるのもこの料理の特徴でしょう。

小さい頃、具合が悪い時などにマンマが作ってくれたパッパ・アル・ポモドーロの味は、たくさんのイタリア人の記憶に染み付いた「優しいマンマの味」。その素朴な味わいは、温かい家族や賑やかな食卓の記憶とも結びついています。心と体が疲れた時、この一皿があれば元気を回復できる。イタリア人にとって、パッパ・アル・ポモドーロはそんな元気の源となる料理なのです。 (※ 「パッパ・アル・ポモドーロ」は、「パッパ・コル・ポモドーロ」と言われることもあります)

テキスト:村上千砂(TNC inc.)

フードプランナー、「Maison de Tsuyuki」料理人。大阪芸術大学卒業後、株式会社日本リクルートセンター入社。その後、フリーの編集者として活動し2004年に株式会社TNC設立。国内外の取材を通じた「食」の縁は仕事も人生も豊かにした。

2021年9月の情報をもとに掲載しています。