活動レポート

うんちの質を改善するアミノ酸?家畜用飼料とサステナビリティ

うんちの質を改善するアミノ酸?家畜用飼料とサステナビリティ
日々の食事の中で肉類は重要なたんぱく源です。しかし、肉類用家畜の排せつ物(うんち)から発生する過剰な窒素化合物が環境汚染の原因の一つとなっています。
味の素グループは、この問題の解決のため、アミノ酸バランス改善飼料の開発・改良・普及に積極的に取り組んでいます。

家畜のうんちが地球を汚している?

どうして家畜のうんちが環境汚染へとつながるのでしょうか。家畜が食べている飼料から順を追ってみましょう。

まず、一般的な家畜の飼料についてです。一般的な家畜の飼料は、主にトウモロコシや小麦などの天然原料の穀物、また大豆から油を搾った残りである大豆かすなど、植物性たんぱく質を配合したものです。
体内で消化・吸収されなかったたんぱく質は、窒素化合物を多く含んだうんちとして排せつされます。
窒素化合物からは、アンモニアが発生します。
アンモニアは工場や自動車の排気ガスに含まれる、硝酸などの窒素酸化物と大気中で結びつきます。
これにより大気が汚染され、呼吸器疾患や酸性雨を引き起こし、また温室効果ガスとなって地球温暖化への原因となります。

一方、土壌に浸透した窒素化合物は、土壌内の微生物や植物が利用可能な窒素量を超えると河川へ流出し、河川の下流で富栄養化を引き起こします。
富栄養化とは水中で窒素とリンが増えることです。
富栄養化により窒素・リンを栄養源とするプランクトンの異常繁殖となり赤潮などの水質汚染を、またプランクトンの死骸を分解するための水中酸素が不足し、生物の存在を脅かします。
つまり、家畜が口に入れる飼料が、めぐりめぐって大気や水の汚染へとつながる、ということになります。

具体的な割合で示してみます。一般的な配合飼料中に含まれるたんぱく質を100%とすると、豚の体内に蓄積されるたんぱく質はおよそ3分の1、33%に過ぎません。残り67%がうんちとなって豚の体の外へ出ていきます。うんちの半分が土壌の中へ蓄積し、残りの半分がアンモニアとなって大気中に放出されてしまいます。つまり、飼料中の67%のたんぱく質が、大気汚染や水質汚染の温床となる流れとなってしまいます。

一般的な配合飼料を給与された場合の、豚における窒素代謝の図。飼料中のタンパク質を100%とした場合、蓄積するのはわずか33%。34%はアンモニア排出され空気汚染の温床に、33%は土壌中へ蓄積し、大気汚染の温床になる。

うんちの質を改善するカギは、必須アミノ酸

排せつされるうんちの質が悪いのは過剰な窒素によるものです。過剰な窒素は、飼料中の必須アミノ酸のアンバランスが引き起こします。そのバランスを説明するのに「桶の理論」というものが使われます。

その前に必須アミノ酸について。

ヒトも含めた動物の体を構成しているアミノ酸は20種類あり、うち9種類が必須アミノ酸と呼ばれます。
必須アミノ酸は動物が生きていく上で必要不可欠ですが、動物は自分で合成できません。動物は、たんぱく質が含まれる食物から必須アミノ酸を摂取します。
一方で、小麦・トウモロコシなど、植物性たんぱく質の飼料は、必須アミノ酸のバランスがとれていません。その結果、家畜の体内で有効に利用されず、窒素化合物を多く含んだうんちとして排せつされてしまいます。

ここで「桶の理論」が出てきます。
桶は底板と、一枚一枚の側板の組み合わせで作られます。すべての側板が同じ長さなら水をたっぷり入れられます。しかし一枚でも短い側板があると、その側板の長さまでしか水が入らず、短い板から水がこぼれだしてしまいます。
9種類の必須アミノ酸を桶の側板とします。

必須アミノ酸「桶の理論」の図。標準的な資料ではリジンが不足しているために有効に使えないアミノ酸が多く残ります。アミノ酸バランス改善飼料ではリジンを飼料に加えることでほかのアミノ酸も有効に使えるようになります。

図のように標準的な飼料では、リシン(リジン)、トレオニン(スレオニン)、トリプトファンなどが不足しているために側板の長さにばらつきがあり、必須アミノ酸バランスに偏りが生じています。
アミノ酸バランス改善飼料は、低い側板にあたるリジンを製剤として開発・飼料に加えることで、側板の高さ=アミノ酸のバランスをそろえることができます。
ある調査によれば、豚1頭あたりの窒素排出量は1日あたり約3割減少しています。

豚1頭あたりの1日の窒素排出量を、標準的な飼料とアミノ酸バランス改善飼料とで比較。前者は1日あたり31グラムに対し、後者は22グラム。アミノ酸バランス改善飼料が約3割低い。

バランスの良いアミノ酸を家畜に与えることで、排せつされるうんちの質の改善、すなわち窒素化合物の減少が現実のものとなります。

牛の4つの胃袋にアミノ酸を浸透させるために

しかし実際の家畜でその効果を出すためには、家畜の体内の仕組みまで考えねばなりません。
例えば牛。牛は反芻動物であり、胃袋が4つあります。
乳牛に不足しがちな必須アミノ酸のリジンをそのまま与えても、大半が消化器官の最初にあたる第一胃のバクテリアにより分解されてしまい、リジンを吸収する小腸まで届きません。消化と吸収の過程では、リジンを小腸に届くまで保護することが必要です。
そして、小腸に届いた後に徐々に溶けだし、栄養成分のリジンを小腸で吸収可能とすることも必要です。これを「コントロールリリース」と呼びます。

味の素グループでは、家畜の体内で「コントロールリリース」を盛んに行わせ、アミノ酸成分を保護する独自の造粒技術を開発し、製品化しました。それが乳牛用リジン製剤「AjiPro®-L」です。

乳牛用リジン製剤AjiPro®-Lの画像

「AjiPro®-L」ではリジンのまわりに硬化植物油の外郭層を形成させることで、第一胃のバクテリアがリジンを分解することを防ぎます。そして4つの胃を通過して小腸にたどり着くと、今度は小腸の消化液のはたらきで製剤からリジンが溶出されます。そうしてリジンを小腸まで運ぶことでアミノ酸のバランスを整え、うんちの質の改善につながるのが「AjiPro®-L」の特徴です。

また「AjiPro®-L」は、リジンのほかにも不足しがちな必須アミノ酸であるメチオニンも含んでいます。リジンとメチオニンを補給することで、乳たんぱく質の改善と乳量の増加の両方が改善されている試験結果が出ています。「AjiPro®-L」は乳牛の泌乳成績の改善とサステナビリティへの貢献の両方を満たしている製品の一つです。

味の素グループとサステナビリティ

味の素グループは、事業を通じて「健康なこころとからだ」「食資源」「地球持続性」の課題解決に取り組み、世界中の人々のウエルネスに貢献すべく取り組んでいます。
味の素(株)では毎年、「統合報告書」とそれを補完する「サステナビリティデータブック」という2つのドキュメントを発行しています。

それらは、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な成長目標(SDGs)」に沿った企業目標を表明したものです。今回ご紹介した家畜用飼料の栄養改善による「地球持続性」の追求は、「味の素サステナビリティデータブック2019(5,910KB)」にも「持続的な原材料調達」の実績として例示されています。ぜひご覧ください。

2019年4月の情報をもとに掲載しています。

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