現在の港区麻布十番四丁目辺りの古川という小さな川に、一の橋、小山橋、二の橋が並んでいます。この二の橋の畔に、かつて「味の素®」の麻布工場がありました。敷地は450坪ほどで決して広くはありませんでしたが、建物や設備は近代的に整備されており、薬品の試験施設も備えていました。
1908年9月、池田博士と特許共有契約を締結した二代鈴木三郎助は、大きな問題を抱えていました。それは、「味の素®」の事業化を決定したものの、特許の製法でそのまま工業生産できるかということ。そのための試作をしたのが、麻布工場だったのです。
うま味調味料「味の素®」の工業生産の技術責任者である鈴木忠治は、1908年10月から「味の素®」の試作をスタート。休みも取らず終始現場に来ては、製造工程や設備について注意深く研究しました。また、池田博士も時々工場を訪れて技術上の指示・助言を与えたと言われています。こうした彼らの奮闘の結果、2か月後の12月、ようやく初めてグルタミン酸ナトリウムの試作品がこの地でできあがりました。
創業家の思い入れの強い麻布十番でのエピソードは、こちらでさらに詳しく知ることができます。
2019年4月の情報をもとに掲載しています。