一方、オリンピック・パラリンピック開催国が主催者となり開催されている「栄養改善」のサミットがあるのをご存知でしょうか。
東京栄養サミット2021。栄養改善に向けた国際的取組を促進する会合です。「成長のための栄養(N4G:Nutrition for Growth)」として開催されるこのサミット。第3回目は日本政府が主催し、東京での開催となります。
本記事では、過去のN4Gすべてに参加し、2030年「食と健康の課題解決企業」を目指す味の素社が、東京栄養サミットおよびN4Gで行っている栄養コミットメントについてご紹介します。
東京栄養サミット2021とは?
東京栄養サミットは、世界各国の栄養関係者が課題解決に向けて議論し、これからの取組を発表する場です。各国政府、国際機関、企業、市民団体などのリーダーが、健康・食・強靭性等をテーマに世界の人々の栄養改善について幅広く議論し、今後の行動の方向性について共通認識を深める極めて重要な機会です。東京栄養サミット2021の参加原則として、議論に留めるのではなく、改善につなげる行動に移すための「栄養コミットメント」の作成が求められています。
栄養コミットメントとは?
2015年8月に国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)では、2030年までにあらゆる形態の飢餓と栄養不良に終止符を打ち、子どもや社会的弱者を始めとするすべての人が1年を通じて、栄養のある食料を十分に得られるようにすることを狙いとしています。その期限まで10年を切った2021年。東京栄養サミット2021の中で最も重要視されているは「栄養コミットメント」です。
栄養コミットメントとは、各国政府や国際機関、企業や市民団体など様々な関係者が、世界の栄養改善を目指すために具体的な取り組みを明示する誓約です。栄養コミットメントは、飢餓を含めたあらゆる形態の栄養不良を終結させるため、日本政府が特定した「健康」・「食」・「強靭性」の3つの「中核分野」の少なくとも1つをカバーするデータ主導のものである必要があります。栄養改善に取り組むすべてのステークホルダーは、栄養サミット2021において「SMARTコミットメント」を表明し、国際的な目標に直結する役割を果たすことを期待されています。その参加原則に準じ、味の素社も2021年11月4日に栄養コミットメントを表明しました。
- 味の素(株)、東京栄養サミット2021を契機に「10億人の健康寿命延伸」への道筋を示す「栄養コミットメント」を発表
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中核分野とは?
1. 健康:栄養のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)への総合
2. 食:健康的な食生活と栄養を促進し、生産者の生計を確保し、気候変動に対応する食料システムの構築
3. 強靭性:脆弱で紛争の影響を受けた状況下での栄養不良への効果的な対策
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SMART コミットメントとは?
栄養コミットメントを行うにあたり、以下のような条件を満たすことが期待されています。
Specific 具体的 Measurable 測定可能 Achievable 達成可能 Relevant 適切性 Time-Bound 達成期限付き
東京栄養サミット2021 味の素社の栄養コミットメント
味の素社は、「食と健康の課題解決企業」に向けて、2020-2025中期経営計画において2030年「10億人の健康寿命延伸」を目標に掲げています。
2021年10月26日、味の素社は東京栄養サミットに先立ち、「10億人の健康寿命延伸」に向けての道筋とする以下の項目からなる「栄養コミットメント」を発表いたしました。
1. 生活者との豊富な接点を活かし、うま味によるおいしい減塩の実践を支援
2. 健康に役立つ製品の提供により、生活者の健康増進に貢献
3. 健康や栄養完全の役立つ情報の提供により、生活者の意識・行動変容を支援
4. 従業員の栄養リテラシー向上
また、栄養コミットメントをグループ全体の栄養改善の中長期的な目標(KPI)として定め、東京栄養サミット2021だけでなく統合報告書内やサステナビリティデータブックでも積極的に情報を公開しています。
栄養改善に向けた味の素社の取り組み事例
国際社会での栄養に関する課題は、SDGsの目標2「飢餓をゼロに」で示される途上国の飢餓や貧困による不足栄養だけではありません。肥満や過体重、生活習慣病を引き起こす「過剰栄養」は、先進国において深刻な社会問題となっています。栄養不良の二重負荷と言われる「不足栄養」と「過剰栄養」。味の素社はこの二重負荷に対し、味の素社は様々な取り組みを行っています。
過剰栄養対策例:[おいしい減塩]Smart Salt(スマ塩)プロジェクト
2020年9月17日、味の素社は「減塩の日」に合わせて“おいしい・やさしい・あたらしい減塩”をコンセプトとする “Smart Salt(スマ塩)”プロジェクトを発足しました。プロジェクトでは以下の取り組みを通じて、生活者の減塩意識向上による過剰栄養対策に貢献しています。
1. 知ってはじめる「Smart Salt(スマ塩)」プロジェクトサイトの立ち上げ
2. Smart Salt(スマ塩)メッセージ動画の公開
3. スマ塩レシピの開発・発信
4. 「みんなの減塩調査」の実施・発信
参考:みんなの減塩調査2020 With コロナで進んだ、健康意識と行動のギャップ
5. 外部企業と連携した新たな減塩の取り組み開発
知ってはじめる「Smart Salt(スマ塩)」プロジェクトサイト
東京栄養サミット2021における味の素社の取り組み
東京栄養サミット2021の開催に先立ち、味の素社は、①ハイレベル・セッションへの登壇 ②サイドイベントへの参加 ③特設サイトでの情報発信の取り組みを行っています。
取り組み①ハイレベル・セッションへの登壇
ハイレベル・セッションとは、東京栄養サミット2021の初日・12月7日に開催される公式のプログラムです。味の素社の代表取締役社長である西井孝明がハイレベル・セッションに登壇し、主催国である日本企業の代表として、世界の栄養改善への貢献に向けた当社の栄養コミットメントを発表します。
取り組み②サイドイベントへの参加
サイドイベントとは、開催されるイベントの趣旨に沿って併催されるイベントを指します。東京栄養サミット2021では、栄養改善に向けた世界の関係者の取組を促し、SDGsの達成に一層貢献していくため、日本政府が認定する「公式サイドイベント」が併催されます。公式サイドイベントに認定された事業は、サミットロゴの使用が許可されるほか、サミット公式ホームページに掲載されます。
味の素社では、以下のサイドイベントに出演します。
上記を含めたサイドイベントは、東京栄養サミット2021公式サイドベントカレンダーで情報が更新されていきます。
日時 | サイドイベント | 概要 |
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11月9日 11月10日 |
Nature主催サイドイベント | 栄養と健康のためのフードシステムについて、主に技術イノベーション、データ活用の視点でSDGsの目標達成に向けた議論を行うイベントです。味の素グループは、うま味を活用した「おいしい減塩」をはじめとする栄養改善への貢献について発信します。 |
11月11日 | WFP×NJPPP サイドイベント『国際栄養問題に関する円卓会議』 | 日本企業と国連WFP本部間の国際栄養課題に関する情報交換及び意見交換の場となるイベントです。味の素グループの栄養コミットメントと、減塩におけるビジョンステートメントを発表します。 |
11月15日 | 世界銀行・財務省サイドイベント | 開発途上国(アフリカ、アジア、中南米)の栄養改善に関するサステナブルファイナンスについての議論を行い、当社からも支援の在り方について発信します。 |
11月16日 | GAIN・CGF共催サイドイベント | 多くの業界で重要な目標としている、職場の栄養改善に関する取り組みを共有するイベントです。当社も責任ある食品企業として、グローバル栄養戦略を通じた、従業員の栄養改善における具体的な目標や取り組みを発表します。 |
11月30日 | 味の素グループ・DSM共催イベント 「学校給食と子ども達の未来~官民連携で実現する、サステナブルで健康的な食習慣づくり」 |
N4Gの大きなテーマでもある栄養不良、なかでも子ども達の低栄養の状況は深刻です。本イベントは、味の素社・DSMが共同で開催し、両社の様々な栄養改善の取り組みの経験を活かすとともに、子どもの栄養改善における学校給食の重要性、人々の食生活の「行動の変化」をもたらすための学校給食プログラムを通じた栄養教育の重要性などをお伝えします。 |
12月1日 | ユニセフ報告会『子どもたちの栄養危機 ~コロナ禍の危機から子どもたちを守るために』 (UNICEF東京事務所/(公財)日本ユニセフ協会) |
本イベントは、子どもの発達における栄養の重要性や世界が直面する現代の課題について関心を高めることを目的とした、日本を含めた先進国の子どもの栄養課題や民間部門による栄養改善のための支援や取り組みにおける報告会です。当社は、独自のアミノ酸技術を活かした栄養改善の取り組みについて発表します。 |
12月6日 | 日本リザルツ・WFP 共催イベント | 省庁、学術界、企業、国際機関、財団、NGO等、栄養に携わる多様なステークホルダーが会し、2030年に期限を迎えるSDGs達成に向け、多機関連携のさらなる強化と栄養のUHCへの統合を実現するための議論を行います。当社も世界の栄養改善に向けた考えを発信し、コミットメントを発表します。 |
12月7日 | 経済産業省サイドイベント | 栄養管理を通じた健康寿命延伸に職場が果たすべき役割について議論を行い、世界全体で認識を共有します。味の素社は健康経営実践企業として、健康経営を通した栄養改善についての取り組みや効果を発表します。 |
12月8日 | 農林水産省サイドイベント『持続可能な「健康な食事」と「食料システム」の構築』 | 本イベントは、N4Gのテーマの中でも特に「食:健康的で持続可能な食料システムの構築」に貢献し、さらには日本の農業・食品産業等の持続可能な発展を目指し開催されます。当社においても、取り組みとコミットメントを発信します。 |
取り組み③東京栄養サミット2021特設サイトでの情報発信
味の素社では、東京サミット2021特設サイトを用意して関連情報の更新を行っていきます。東京栄養サミット2021の開催日には、特設サイト内でパネルディスカッションの実況も行います。
●公益財団法人の活動への支援
公益財団法人 味の素ファンデーション(TAF)の取り組み紹介
味の素グループは2017年、公益財団法人味の素ファンデーションを設立しました。
その目的は、広く社会からの賛同と協力を戴きながら、食を通じた栄養改善に関する事業を通じて、日本はもとより世界の重要な社会的課題の解決に寄与することであり、現在も財団への支援を続けています。具体的な事業内容は公益財団法人味の素ファンデーションサイトをご覧ください。
東京栄養サミット2021関連情報
東京栄養サミット2021に関連する情報をまとめます。東京栄養サミット2021への参画にあたっては、コミットメント申請やサイドイベント申請などの手続きが必要となり、募集は2021年11月時点で既に終了しています。イベントの特性上、元より一般の方は参加が難しいサミットではありますが、栄養に深くかかわるステークスホルダーによる情報発信は数多くなされていきますので、東京栄養サミットを機に世界の栄養改善に関心を寄せてみてください。
東京栄養サミット2021開催概要
東京栄養サミット2021は、以下の要領で開催されます。
日時 | 2021年12月7日(火曜日)~8日(水曜日) |
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場所 | 東京都内(国内は一部オフライン、海外は原則オンライン) |
主催 | 日本政府 |
想定される出席者 | 各国政府ハイレベル、国際機関、学術機関、市民社会、民間企業他 |
目的 | 世界の栄養改善の現状と課題を確認し、課題解決のための国際的な取組を推進する |
サミットのテーマ |
1.健康:栄養のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)への統合 2.食:健康的で持続可能な食料システムの構築 3.強靭性:脆弱な状況下における栄養不良対策 4.説明責任:データに基づくモニタリング 5.財政:栄養改善のための財源確保 |
形式 | ハイレベル・セッション、テクニカルセッション、+α サイドイベント |
栄養サミット(N4G)関連年表
年月 | 概要 |
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2012年5月 | 世界保健総会にて、194カ国が世界初の国際栄養目標に合意。2025年までに達成すべき目標(世界栄養目標2025)が策定 |
2013年6月 | ロンドンで、第1回栄養サミットにあたるG8ハイレベル栄養イベント「成長のための栄養(Nutrition for Growth)」が開催。 「Global Nutrition for Growth Compact」 を作成 |
2014年7月 | ギニアの首都マラボで開催されたアフリカ連合サミットで、アフリカ各国首脳が2025年までにアフリカ大陸の飢餓に終止符を打つことを約束。 日本では、「Nutrition for Growth」に呼応し、「健康・医療戦略」が閣議決定。 |
2015年8月 | 国連総会で、世界を変えるために2030年までに達成すべき17の目標「持続可能な開発目標(SDGs)が採択。2番目の目標が「飢餓をゼロ」にすること。 |
2016年8月 | リオデジャネイロで、第2回栄養サミットにあたる「成長のための栄養(Nutrition for Growth)」が開催。 |
2016年9月 | 栄養改善事業推進プラットフォーム(NJPPP)が設立。 |
2019年8月 | 第7回アフリカ開発会議(TICAD7)のサイドイベントで、「アフリカの栄養改善~東京栄養サミット2020に向けて~」開催。 |
2020年7月 | 世界的な新型コロナウイルス感染症の感染拡大が継続している状況に鑑み、東京栄養サミット2020の開催延期が決定。 |
2021年9月 | 東京栄養サミットに先立ち、「国連食料システムサミット」(FSS:Food Systems Summit)が開催。 |
2021年12月 | 東京栄養サミット2021開催。 |
関連リンク
- NUTRITION FOR GROWTH:N4G イニシアチブ公式サイト
- 外務省
- 農林水産省
- Global Nutrition Report
「Global Nutrition Report」では、栄養サミットにおけるコミットメントを収載するとともに、世界の栄養課題の現状に関するレポートを発行しています。
2021年12月の情報をもとに掲載しています。